「講義」カテゴリーアーカイブ

教育概論Ⅱ(栄養)-9

前回のおさらい

・1998年の学習指導要領改訂。学校週五日制のねらい。
・民営化のデメリット

学習指導要領の変遷(4)

・2003年、学習指導要領の一部改訂:書いていないことも発展的な内容として教えてよいことになります。(ゆとり教育の終わりの始まり)
・2008年、学習指導要領改訂:授業時間増、指導内容の充実。→詰め込み教育の復活と単純に考えていいのでしょうか?

学力の再定義:学校教育法改定(2007年)

・2007年に学校教育法が改定され、第30条に「学力」が定義されます。

前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

・教育の主な関心が、コンテンツ(内容・知識)からコンピテンシー(能力)やソフトスキル(関心・意欲・態度)へと転換しました。89年改訂で登場した「新学力観」が法律化されたものとも言えます。
*コンピテンシー(competency):単に知識として知っているだけではなく、様々な情報を実際に活用して成果を出すことができる能力。「社会人力」とか「生きる力」とか「女子力」のような、「○○力」という言葉の流行とも関連します。
*ソフトスキル:テストなどで数値化することができないものの、成功する上で実は決定的な能力。「非認知能力」などとも重なる概念です。

知識基盤社会

*知識基盤社会(knowledge-based society):新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増すような世の中を意味します。

我が国が科学技術創造立国の実現に向けて世界をリードし、成長し続けるためには、イノベーションを絶え間なく創造できる人材の育成が求められている。「知」を巡る国際競争の激化や知識基盤社会の進展等により、産業構造の変化も急速に進んでいる現代においては、多種多様な個々人が力を最大限発揮でき、それらが結集されるチーム力が必要とされている。(知識基盤社会が求める人材像、2009年)

2018年改訂:社会に開かれた教育課程

・2018年に改訂された学習指導要領には重要なキーワードが3つあります。一つが「社会に開かれた教育課程」です。

教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、社会に開かれた教育課程の実現が重要となる。(2頁)

・「社会に開かれた教育課程」とは、これからの教育が目指すべき全体的な理念や方向性を示すものです。

このような「社会に開かれた教育課程」としては、次の点が重要になる。
① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓ひらいていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年12月)

(1)「社会に開かれた」とは、まずは学校教育の目標が社会と共有されている状態を指します。→具体的な作業として学校目標の再検討に話が繋がります。
(2)次に「社会に開かれた」とは、社会や世界に通用する資質・能力を育てることを意味します。→具体的な作業として「育成すべき資質・能力」の話に繋がります。
(3)最後に「社会に開かれた」とは、もはや学校だけが教育を独占して担うべきではない、ということを示唆しています。→具体的な作業として「チーム学校」や「コミュニティ・スクール」の話に繋がります。
・これらの理念を実現するために具体的に遂行すべき仕事の全体像が「カリキュラム・マネジメント」となります。

復習

・ゆとり教育の方向性自体は変化していないものの、具体的な教育のあり方が変化していることに注意しよう。
・「社会に開かれた教育課程」の内容を押さえておこう。

予習

・カリキュラム・マネジメントについて調べよう。

教育課程の意義と編成-8

▼第8回=11/13

前回のおさらい

・カリキュラム・マネジメント
(1)教科横断的な教育課程編成。
(2)評価とPDCAサイクルの確立。
(3)人的・物的な資源の確保。

学習指導要領総則:教育課程の編成

1 各学校の教育目標と教育課程の編成

教育課程の編成に当たっては、学校教育全体や各教科等における指導を通して育成を目指す資質・能力を踏まえつつ、各学校の教育目標を明確にするとともに、教育課程の編成についての基本的な方針が家庭や地域とも共有されるよう努めるものとする。その際、第4章総合的な学習の時間の第2の1に基づき定められる目標との関連を図るものとする。(4~5頁)

・「資質・能力」=コンテンツ(知識)からコンピテンシー(能力)への転換。「何を教えるか」から「何ができるようになるか」への転換。

総合的な学習の時間の第2の1

各学校においては、第1の目標を踏まえ、各学校の総合的な学習の時間の目標を定める。(144頁)

総合的な学習の時間:第1の目標

探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 探究的な学習の過程において、課題の解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究的な学習のよさを理解するようにする。
(2) 実社会や実生活の中から問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする。
(3) 探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、積極的に社会に参画しようとする態度を養う。(144頁)
育成を目指す資質能力とは?
② 育成を目指す資質・能力の明確化
中央教育審議会答申においては、予測困難な社会の変化に主体的に関わり、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要であること、こうした力は全く新しい力ということではなく学校教育が長年その育成を目指してきた「生きる力」であることを改めて捉え直し、学校教育がしっかりとその強みを発揮できるようにしていくことが必要とされた。また、汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流を踏まえつつ、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等をバランスよく育成してきた我が国の学校教育の蓄積を生かしていくことが重要とされた。
このため「生きる力」をより具体化し、教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力を、ア「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」、イ「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」、ウ「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」の三つの柱に整理するとともに、各教科等の目標や内容についても、この三つの柱に基づく再整理を図るよう提言がなされた。
(『学習指導要領解説 総則編』3頁)

・「汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流」とは、OECDの言う「キーコンピテンシー」が念頭にあります。

特に、OECDの「キー・コンピテンシー」の概念については、グローバル化と近代化により、多様化し、相互につながった世界において、人生の成功と正常に機能する社会のために必要な能力として定義されており、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)にも取り入れられ、大きな影響を与えている。
この「キー・コンピテンシー」の概念については、具体的には、次のような内容で構成されている。
・ 言語や知識、技術を相互作用的に活用する能力
・ 多様な集団による人間関係形成能力
・ 自律的に行動する能力
・ これらの核となる「思慮深く考える力」
(『学習指導要領解説 総則編』9頁)

2 教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成

(1) 各学校においては、生徒の発達の段階を考慮し、言語能力、情報活用能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。
(2) 各学校においては、生徒や学校、地域の実態及び生徒の発達の段階を考慮し、豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成していくことができるよう、各学校の特色を生かした教育課程の編成を図るものとする。(5頁)

(1)-1=言語能力
(1)-2=情報活用能力(情報モラル含む)
(1)-3=問題発見・解決能力

(2)-1=伝統や文化に関する教育
(2)-2=主権者に関する教育
(2)-3=消費者に関する教育
(2)-4=法に関する教育
(2)-5=知的財産に関する教育
(2)-6=郷土や地域に関する教育
(2)-7=海洋に関する教育
(2)-8=環境に関する教育
(2)-9=放射線に関する教育
(2)-10=生命の尊重に関する教育
(2)-11=心身の健康の保持増進に関する教育
(2)-12=食に関する教育
(2)-13=防災を含む安全に関する教育
(『学習指導要領解説総則編』の付録6より)

3 教育課程の編成における共通的事項

(1)内容について
・書いてあることは全部扱う。
・書いていないことも、付け加えて扱ってよい。ただし目標をはみ出したり、生徒の負担過重になってはいけない。
・教える順序は決まっていない。
・複式学級の場合は、学年別の順序は臨機応変に対応。
・生徒や地域の実態に合わせて、選択教科を開設してよい。
・道徳教育の内容に関する事項。

(2)時間数について
・各教科の授業は年間35週以上。
・特別活動(生徒会活動・学校行事)は、適切に考える。
・時間割について
(ア)「1単位時間」は、各学校が適切に定める。
(イ)10分や15分の短い時間の活用ルール。
(ウ)給食や休憩については、各学校が適切に定める。
(エ)創意工夫を活かして弾力的に編成する。
・「総合的な学習の時間」と「特別活動」の内容がカブっている場合の特別ルール。

(3)配慮事項
各学校においては、次の事項に配慮しながら、学校の創意工夫を生かし、全体として、調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。

4 学校段階間の接続

(1)小学校との接続。義務教育に対する意識。
(2)高校との接続。

復習

・「育成すべき資質・能力」について、自分の言葉で説明できるようにしておこう。
・教育課程の編成における共通事項を押さえておこう。

予習

・「主体的・対話的で深い学び」について、学習指導要領の記述を読んでおこう。

教育概論Ⅱ(中高)-9

▼語学・心カ・教福・服美・表現 11/24
▼栄養・環教 11/13

前回のおさらい

・1998年の学習指導要領改訂。学校週五日制のねらい。
・民営化のデメリット

学習指導要領の変遷(4)

・2003年、学習指導要領の一部改訂:書いていないことも発展的な内容として教えてよいことになります。(ゆとり教育の終わりの始まり)
・2008年、学習指導要領改訂:授業時間増、指導内容の充実。→詰め込み教育の復活と単純に考えていいのでしょうか?

学力の再定義:学校教育法改定(2007年)

・2007年に学校教育法が改定され、第30条に「学力」が定義されます。

前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

・教育の主な関心が、コンテンツ(内容・知識)からコンピテンシー(能力)やソフトスキル(関心・意欲・態度)へと転換しました。89年改訂で登場した「新学力観」が法律化されたものとも言えます。
*コンピテンシー(competency):単に知識として知っているだけではなく、様々な情報を実際に活用して成果を出すことができる能力。「社会人力」とか「生きる力」とか「女子力」のような、「○○力」という言葉の流行とも関連します。
*ソフトスキル:テストなどで数値化することができないものの、成功する上で実は決定的な能力。「非認知能力」などとも重なる概念です。

PISAショック

*PISA:学習到達度調査。Programme for International Student Assessment。高校1年生対象。
*OECD:経済協力開発機構。Organisation for Economic Co-operation and Development
*PISAショック:2003年と2006年の調査で日本の順位が大幅に下がったことに教育関係者一同衝撃を受けたこと。←しかし2009年と2012年の調査では順位が上昇します。
・「活用力=コンピテンシー」と「学ぶ意欲=ソフトスキル」が日本の課題であることが明確になります。
*全国学力・学習状況調査:2007年より毎年実施。小6と中3を対象。←A問題とB問題の違いに注意しましょう。

知識基盤社会

*知識基盤社会(knowledge-based society):新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増すような世の中を意味します。

我が国が科学技術創造立国の実現に向けて世界をリードし、成長し続けるためには、イノベーションを絶え間なく創造できる人材の育成が求められている。「知」を巡る国際競争の激化や知識基盤社会の進展等により、産業構造の変化も急速に進んでいる現代においては、多種多様な個々人が力を最大限発揮でき、それらが結集されるチーム力が必要とされている。(知識基盤社会が求める人材像、2009年)

→内閣府「第4次産業革命のインパクト
→内閣府「Society5.0とは

2018年改訂:社会に開かれた教育課程

・2018年に改訂された学習指導要領には重要なキーワードが3つあります。一つが「社会に開かれた教育課程」です。

教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、社会に開かれた教育課程の実現が重要となる。(2頁)

・「社会に開かれた教育課程」とは、これからの教育が目指すべき全体的な理念や方向性を示すものです。
・文科省が言う「社会に開かれた」には、具体的には次の3つの意味が込められています。

このような「社会に開かれた教育課程」としては、次の点が重要になる。
① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓ひらいていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年12月)

(1)「社会に開かれた」とは、まずは学校教育の目標が社会と共有されている状態を指します。→具体的な作業として学校目標の再検討に話が繋がります。
(2)次に「社会に開かれた」とは、社会や世界に通用する資質・能力を育てることを意味します。→具体的な作業として「育成すべき資質・能力」の話に繋がります。
(3)最後に「社会に開かれた」とは、もはや学校だけが教育を独占して担うべきではない、ということを示唆しています。→具体的な作業として「チーム学校」や「コミュニティ・スクール」の話に繋がります。
・これらの理念を実現するために具体的に遂行すべき仕事の全体像が「カリキュラム・マネジメント」となります。

育成を目指す資質能力とは?
② 育成を目指す資質・能力の明確化
中央教育審議会答申においては、予測困難な社会の変化に主体的に関わり、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要であること、こうした力は全く新しい力ということではなく学校教育が長年その育成を目指してきた「生きる力」であることを改めて捉え直し、学校教育がしっかりとその強みを発揮できるようにしていくことが必要とされた。また、汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流を踏まえつつ、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等をバランスよく育成してきた我が国の学校教育の蓄積を生かしていくことが重要とされた。
このため「生きる力」をより具体化し、教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力を、ア「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」、イ「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」、ウ「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」の三つの柱に整理するとともに、各教科等の目標や内容についても、この三つの柱に基づく再整理を図るよう提言がなされた。
(『学習指導要領解説 総則編』3頁)

・「汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流」とは、OECDの言う「キーコンピテンシー」が念頭にあります。

特に、OECDの「キー・コンピテンシー」の概念については、グローバル化と近代化により、多様化し、相互につながった世界において、人生の成功と正常に機能する社会のために必要な能力として定義されており、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)にも取り入れられ、大きな影響を与えている。
この「キー・コンピテンシー」の概念については、具体的には、次のような内容で構成されている。
・ 言語や知識、技術を相互作用的に活用する能力
・ 多様な集団による人間関係形成能力
・ 自律的に行動する能力
・ これらの核となる「思慮深く考える力」
(『学習指導要領解説 総則編』9頁)

チームとしての学校

・「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」平成27年12月。
・教職員が、様々な専門性を持つ学校外の人材と協力しながら、学校運営に当たる体制です。
←外国の教員は授業に関する業務が大半を占めていますが、日本の教員は様々な仕事を行っており、勤務時間も長いことが分かっています。
←学校が複雑化・多様化した課題を解決し、子供に必要な資質・能力を育んでいくためには、学校のマネジメントを強化し、組織として教育活動に取り組む体制を創り上げるとともに、必要な指導体制を整備することが必要です。

(1)専門性に基づくチーム体制の構築。
・心理や福祉に関する専門スタッフ:スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー。
・授業等において教員を支援する専門スタッフ:ICT、資格、外国語。
・部活動に関する専門スタッフ。
・特別支援教育に関する専門スタッフ。

(2)学校のマネジメント機能の強化。
・校長のリーダーシップの発揮。補佐体制の強化。
・管理職の養成と適材確保。主幹教諭制度の充実

(3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備。
・人材育成の促進。
・業務環境の改善。
・教育委員会等による学校への支援の充実。

コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

・「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」平成27年12月
(1)地域とともにある学校への転換。
(2)子供も大人も学び合い育ち合う教育体制の構築。
(3)学校を核とした地域作りの推進。

・すべての公立学校がコミュニティ・スクールを目ざすことになっています。(現在は約14.7%導入)
*学校運営協議会:学校を応援し、地域の実情を踏まえた特色ある学校作りを進めていく役割を果たします。
・主な役割=校長の定める学校運営の基本方針の承認、学校運営に関する意見、教職員の任用に関する意見。

復習

・ゆとり教育の方向性自体は変化していないものの、具体的な教育のあり方が変化していることに注意しよう。
・「社会に開かれた教育課程」の内容を押さえておこう。

予習

・カリキュラム・マネジメントについて調べよう。

教育の基礎理論-9

▼短大栄養科 11/13

前回のおさらい

・近代の教育思想。教育学の成立。

義務教育の思想

・近代の教育思想で、教育は本当にすべてうまくいくのでしょうか?
・学校を否定し、個人主義を貫くような、「自由権としての教育」の実態。→現実には貧民の子供が「児童労働」を行っていました。

確認:「義務教育」とは、誰の誰に対するどのような義務でしょうか?
・「子供が教育を受ける権利」はどのように生まれたのでしょうか?

思考実験:自由の落とし穴

・自由を拡大したとき、得をするのはどういう人たちでしょうか?
・自由を拡大すると、実際には強者と弱者の間の格差が拡大します。
・自由を<実質的に>使いこなすことができるのは金持ちだけです。貧乏人はそもそも自由に<実質的に>手が届きません。形式的に自由が与えられても、まったく意味がありません。
・「自由権としての教育」だけでは、金持ちは十分な教育を受けることができたとしても、貧乏人は教育を受けることができません。教育によって、ますます貧富の格差が広がります。
・貧富の格差=資本家と労働者への階層分化。

労働力の売買

・「働く」とは、経済学的にはどういうことでしょうか?
*労働力:「働く」と言うのではなく、「労働力を売る」と言います。「雇う」と言うのではなく、「労働力を買う」と言います。
・労働力の再生産は、家庭で行われます。
・労働力をモノのように売買できるようにしたことで、市場原理によって必要なところに迅速に労働力が供給され、資本主義の展開が加速します。(奴隷労働のままでは労働力の流動化が促進されず、資本主義は加速しません。)

思考実験:働いたら負け

・働いていない人ほどお金儲けができる?
・ワーキングプア:働けば働くほど貧乏になる?
・労働力は、売るよりも買う方が得?
・労働力を買うには、生産手段(土地や工場)がなければなりません。
・生産手段+原材料+労働力→商品
・モノの価格は市場原理(競争)によって決まります→労働力の価格も市場原理(競争)によって決まります。
・失業者問題。
・努力すればするほど悪循環に陥るのはなぜでしょうか。←競争する相手を間違えています。
・最も安いのは、子供の労働力です。→児童労働が発生してしまいます。
・誰もが自由で平等だったからこそ児童労働が発生してしまったのであって、もはや形式的な自由を拡大するだけでは対処不可能です。もはや努力の問題ではありません。
・児童労働を防ぐにはどうしたらよいでしょうか??? →自由を制限しなければなりません。

社会権としての教育

社会権:形式的に自由が与えられるだけでなく、全ての人が実質的に自由を使いこなすことができるように、強者に対してハンデを設け、弱者に対して様々なアドバンテージが与えられます。具体的には、生存権、労働基本権、教育を受ける権利があります。
・たとえば、最低賃金や労働時間の設定、労働組合の結成等により、成人の労働環境が守られ、児童労働の自然発生を抑制することができます。
・工場法制定など、児童労働の撤廃に向けての具体的な動きも必要です。
・誰が責任を持つのでしょうか?←「国家」の積極的な関与が期待されます。

コンドルセ marquis de Condorcet

・1743年~1794年、フランス出身。
・愛称:公教育の父。
(1)子供の学習権。
(2)教育費無償。
(3)ライシテ:政治的中立や宗教的中立。

ロバート・オーエン Robert Owen

・1771年~1858年、イギリス出身。
・キーワード:性格形成学院。
・工場法の展開

1802年徒弟の健康と道徳に関する法律制定。
1819年繊維工場では9歳以下の労働禁止。16歳以下は1日12時間以内に制限。
1833年12時間労働。9歳未満の労働禁止。13歳未満は週48時間。
1844年女性労働者の労働時間制限。
1847年若年労働者の労働時間を1日10時間に制限。
1870年教育法制定。公費による学校設立。

復習

・自由が拡大すると格差も拡大する理屈について押さえておこう。
・「社会権」の意義について押さえておこう。
・「義務教育」が成立する過程について、理論と実践の両面から押さえておこう。

予習

・「産業革命」について、おさらいしておこう。

教育学Ⅱ-8

■新松戸キャンパス 11/9(金)
■龍ケ崎キャンパス 11/12(月)

レポート課題

・締め切り:新松戸=1/18(金)、龍ケ崎1/21(月)。授業時間内に回収する。教務課や学務課には提出しないように。この日に来られないことがあらかじめ分かっている場合は、締め切り前に提出するよう工夫すること。
・形式:800字~2000字。手書き可。コンピュータ使用可。B5でもA4でも原稿用紙でもレポート用紙でも可。表紙無用。名前を忘れないように。
・内容:授業で扱ったトピックから興味・関心があるものを自分で選んで、分かったことや考えたこと、調べて深めたことなどを書く。2つ以上を組み合わせても良い。
・注意事項:剽窃が発覚した場合は、不可とする。

前回のおさらい

・学習指導要領1958年版:法的拘束力あり、道徳登場。
・逆コースと高度経済成長。

学習指導要領の変遷(2)

学習指導要領(1977年版)(1989年版)

・いわゆる「ゆとり教育」が開始されます。「個性」の尊重が合い言葉となります。
*「ゆとり教育」という言葉が意味するものについて、注意しましょう。見かけの教育現象ではなく、日本社会で本質的に進行していた事態に目を向けましょう。
・この時期(あるいは現在まで)の教育を理解するには、1984年の「臨時教育審議会」が決定的に重要です。

オイルショックと産業構造の転換

・1973年にオイルショックが起こり、高度経済成長が終わ、低成長時代に入ります。ただし日本だけ早期に復活します。Japan as No.1(1979年)からハイテク景気とバブル景気へ。
・重厚長大型産業(石油を莫大に使用する産業、少品種大量生産)から軽薄短小型産業(ロボットとコンピュータ、多品種少量生産)への転換に成功しました。
・生産主導から消費主導へ=マーケティングと宣伝広告の重要性。
・人材雇用の転換=アウトソーシング。終身雇用から流動的な雇用へ。
・知識観の転換=知識や技術の賞味期限の短縮。暗記型(知識の量)から検索活用型(思考力・判断力・表現力)へ。
・教育観の転換=「まじめ」から「個性」へ。
→1977年の学習指導要領改訂:「ゆとりある充実した学校生活の実現=学習負担の適正化」
→1989年の学習指導要領改訂:新学力観。個性。
・どうしたら「個性」を育てることができるのでしょうか?

臨時教育審議会

*中曽根康弘総理が1984年に総理府に設置し、教育改革ブームとなります。
・中央教育審議会(文部省)と臨時教育審議会(総理府)。内閣が直々に「教育改革」の前面に出てくるとはどういう事態なのでしょうか。
・キーワード=民営化、自由化、規制緩和、構造改革、小さな政府。
・電電公社→NTT(1985年)、専売公社→JT(1985年)、国鉄→JR(1987年)。
・自由化、民営化のメリット=公共部門の縮小による歳出削減。市場原理(競争原理)により、個性が伸張し、サービス全体の質が向上します。
・自由化、民営化のデメリット=後述します。

教育における市場原理

・学区制を廃止して学校選択制に転換しようとします。学校選択制の導入によって個性が伸張し、全体的にレベルアップします。
・たとえば、いじめはどうしたらなくなるでしょうか? 大学の授業がつまらないとしたら?
→バウチャー制度。私立学校も含めて競争原理に巻き込みます。
→学校民営化。すべてを競争原理に委ねます。

1998年の学習指導要領改訂

・「生きる力」の育成。教育内容の厳選、「総合的な学習の時間」の新設。
・世間一般が言ういわゆる「ゆとり教育」は、この時期の教育を指します。学校週五日制=1995年から月2回、2002年から完全実施されます。
学校週5日制のめざすものは…

学校週5日制は、学校、家庭、地域社会の役割を明確にし、それぞれが協力して豊かな社会体験や自然体験などの様々な活動の機会を子どもたちに提供し、自ら学び自ら考える力や豊かな人間性などの「生きる力」をはぐくむことをねらいとしています。
子どもたちの「生きる力」をはぐくむためには、豊かな体験が不可欠です。自然体験などが豊富な子どもほど、道徳観や正義感が身についているという調査結果も出ています。

・授業時間削減=公的部門の割合を減らし、市場に委ねる割合を増やすことです。公的な学校の時間を削減した分、私的に自由に使える時間が増えました。
・ゆとり教育の本質とは、「公・官/私・民」の配分の問題です。

復習

・いわゆる「ゆとり教育」に関して、実際には臨時教育審議会(1984)による規制緩和と構造改革が進行していた事実を認識しておこう。

予習

・民営化のデメリットについて考えておこう。