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道徳教育指導論-1

第1回=9/28

授業の目的

・本講義は教員免許状取得に関わる授業であり、特に「道徳の理論及び指導法」について扱います。

目標

・道徳の意義や原理等を踏まえ、学校における道徳教育の目標や内容を理解する。
→道徳の本質(道徳とは何か)を説明できる。
→道徳教育の歴史や現代社会における道徳教育の課題(いじめ・情報モラル等)を理解している。
→子供の心の成長と道徳性の発達について理解している。
→学習指導要領に示された道徳教育及び道徳科の目標及び主な内容を理解している。

・学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育及びその要となる道徳科における指導計画や指導方法を理解する。
→学校における道徳教育の指導計画や教育活動全体を通じた指導の必要性を理解している。
→道徳科の特質を生かした多様な指導方法の特徴を理解している。
→道徳科における教材の特徴を踏まえて、授業設計に活用することができる。
→授業のねらいや指導過程を明確にして、道徳科の学習指導案を作成することができる。
→道徳科の特性を踏まえた学習評価の在り方を理解している。
→模擬授業の実施とその振り返りを通して、授業改善の視点を身に付けている。

教科書

※現行(平成29年3月)の『中学校学習指導要領』および『中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』を手に入れておくこと。冊子でも手に入るし、無料でpdfファイルを手に入れることもできます。
・必要に応じてプリントを配布します。プリントの内容はWEBサイトにアーカイブします。

指導案と模擬授業

・一人一回は必ず模擬授業を行ってもらいます。人数が多い場合は、グループを作って、複数で一つの授業を行います。
・模擬授業開始は、第6回目か第7回目あたりに始めます。(人数やグループ数によって調整します)。
・模擬授業に当たって、必ず「指導案」を作成してください。
・指導案は、模擬授業終了後、提出すること。

評価

・期末テスト、模擬授業、指導案によって評価します。
・目標に即して、評価の基準を設定します。
・テストには、スマートホンを含めて、あらゆるものを持ち込み可とします。
・出席が足りなかった者には受験を認めません。

道徳教育の目的

人格の完成(教育基本法)

・「教育基本法」第一条

教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

・「人格の完成」とはどういう状態でしょうか?
・そもそも「人格」とは何でしょうか?

生きる力(学習指導要領)

・「学習指導要領」では、児童生徒に「生きる力」を身につけさせることが目標となっています。
・生きる力=知・德・体のバランス。

豊かな心(学習指導要領:総則)

道徳教育や体験活動、多様な表現や鑑賞の活動等を通して、豊かな心や創造性の涵養を目指した教育の充実に努めること。
学校における道徳教育は、特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり、道徳科はもとより、各教科、総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて、生徒の発達の段階を考慮して、適切な指導を行うこと。
道徳教育は、教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき、自己の生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とすること。
道徳教育を進めるに当たっては、人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭、学校、その他社会における具体的な生活の中に生かし、豊かな心をもち、伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛し、個性豊かな文化の創造を図るとともに、平和で民主的な国家及び社会の形成者として、公共の精神を尊び、社会及び国家の発展に努め、他国を尊重し、国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓く主体性のある日本人の育成に資することとなるよう特に留意すること。(3頁)

復習

・道徳教育の目的について、自分の言葉で説明してみよう。

予習

・『学習指導要領』の「特別の教科 道徳」(139~143頁)を読んでおくこと。
・模擬授業のグループ分けや日程調整を行います。目星をある程度つけてきてください。

教育概論Ⅱ(中高)-3

▼語学・心カ・教福・服美・表現 9/29
▼栄養・環教 10/2

前回のおさらい

・前近代にはナショナリズムがありませんでした。
・country、state、nationそれぞれニュアンスが違います。国民国家とは、stateとnationの境界線を一致させた国家のありかたを示す言葉です。
・フランス革命の経緯から、ナショナリズムの発生について確認しました。

国旗・国歌・国語・歴史・地理

・nationとstateを一致させるため、「教育」に期待がかかります。
・国旗:「旗」に期待される統一への働き。
・国歌:「歌」に期待される統一への働き。
・国語:「ことば」に期待される統一への働き。
・歴史:「物語」に期待される統一への働き。
・地理:「風景」に期待される統一への働き。

各国の国歌

・それぞれ国民統合の象徴として働く一方で、同時に何かしらの問題を抱えているのはどういうことでしょうか?

フランスの国歌

・「ラ・マルセイエーズ」
・国民統合=国民全員で祖国を守ったときの記憶。
・歌詞に対する疑問。

イングランドの国歌

・「God Save the Queen」
・国民統合=英国王室の賛歌。
・6番の歌詞に対する疑問。イングランドとスコットランドの関係。

ドイツの国歌

・「ドイツ国民の歌」
・国民統合=国家統合の象徴。
・1番と2番が封印。

スペインの国歌

・「国王行進曲」
・歌詞のない国歌。スペインとカタルーニャの関係。

国語による国民統合

・フランスの言語状況。フランス革命当時、フランス人が話していたのは何語でしょうか?
・「国語」と「方言」は、どこがどう違っているのでしょうか。
・「方言札」による方言撲滅運動。
・東ティモール:2002年にインドネシアから独立しました。

東ティモールが実際に国語に選んだのは何語でしょうか?(ヒント:インドネシアから独立)
(1)インドネシア語:90%
(2)テトゥン語:40%
(3)英語:10%
(4)ポルトガル語:5%

・言葉は単なるコミュニケーション・ツールではなく、国家のアイデンティティとなるものです。
・しかし、言葉はコミュニケーション・ツールでもあります。科学や社会に必要なボキャブラリーも大切です。

日本語廃止論

・森有礼(もりありのり)が明治初期に日本語廃止を主張しました。
・どうして後に初代文部大臣にまでなる森が日本語廃止を主張したのでしょうか?
・明治初頭に日本語が置かれていた状況。方言(身分と地域)が多様で、言葉が通じませんでした。また、科学や社会に関する語彙が貧弱でした。

方言矯正と標準語

・第一期国定国語教科書:1904年、いわゆる「イエスシ読本」。
・東北方言と関東方言の矯正。
・方言札。
・「標準語」の開発。「お父さん」「お母さん」。
・新しい日本語を作っていくのは、文学者の役割かもしれません。

復習

・国歌や国語が国民統合に果たす役割について押さえておこう。

予習

・「教育勅語」について調べておこう。

教育概論Ⅱ(栄養)-2

▼9/25

前回のおさらい

・ナショナリズムとは、国家の構成員が「私は○○人である」という自覚を持っている状態です。

ナショナリズム(つづき)

前近代:封建国家の自己認識(日本)

・たとえば江戸時代、日本人の多くは「私は日本人である」という自覚を持っていなかったし、持つ必要もありませんでした。
←身分制社会では、自己認識は身分に依拠していました。たとえば「私は侍である」とか「私は農民である」など。そうでなければ、身分制を基礎とした社会秩序が保てません。「侍と農民で身分が違おうが、同じ日本人だ」とはならないし、なってはいけないわけです。
←あるいは幕藩体制においては、自己認識は主従関係に依拠し、日本という単位は視野に入ってきませんでした。たとえば「私は赤穂藩士である」とか「私の殿様は吉良だ」などとなります。主従関係が強固に結ばれることによって、社会秩序が保たれました。「主人が異なっていようが、同じ日本人だ」とはならないし、なってはいけないわけです。
・このように、前近代=封建国家においては、身分地域によって自己認識が分裂していました。
・逆に言えば、身分制が廃止され、地域間格差がなくならないと、「同じ○○人である」と思える条件ができません。
・国家の構成員が「私は日本人である」という自覚を強烈に持つ条件が整うのは、身分制が廃止(四民平等)され、中央集権国家(廃藩置県)ができる近代以降のことになります。
・明治維新によって日本に誕生したのが、国民国家(nation-state)です。

前近代の自己認識(ヨーロッパ)

・中世は、国家というよりも、家が拡大したものとしての国「家」でした。
←百年戦争(1337年~1453年)の推移を参考のこと。現代の国家間同士での戦争とはかなり様相が異なっています。
・具体的には、ブルボン家やハプスブルグ家など領邦君主による封建制。「家政学(Oikonomicos)」とは、もともとこのような「国-家」を運営するための学でした。もともと「家政」を行っていたのは「家長=男性」です。
・絶対王政(貴族の没落によって王権に主権が一極集中する)を経て封建制が崩れ、市民革命(国民に主権が集中する)に伴って国民国家が完成します。典型例は、フランス革命(1789年)です。

国民国家と教育

*「国家」を英語に翻訳すると?
(1)country:国土。田舎。ふるさと。
(2)state:一定の領土を有し政治的に組織され主権を有するもの。法律的・理念的な意味での統一体としての国家。
(3)nation:共通の文化言語などを有する国民が作る国家。

国民国家

・stateとnationは同じものでしょうか? 韓国、スイス、中国等の例を考えてみましょう。
→韓国:state=2、nation=1
→スイス:state=22、nation=4
→中国:state=1、nation=56
・日本はどうでしょうか?
国民国家:nation(国家の文化的側面)とstate(国家の政治的側面)が一致している状態です。
民族自決:一つのnation(民族)はそれぞれ一つのstate(政治的に組織された主権)を持つべきという考えです。
・nationとstateを一致させるには、どうしたらよいでしょうか? たとえば1つのstateの中に3つのnationがあったら→
(1)3つのnationそれぞれに対応する新しいstateを作る=分離独立
(2)3つのnationを1つのnationに統合してstateに合わせる=国民統合
・どうやって?←教育で。

フランス革命と国民国家形成

・フランス革命の具体的展開。反革命からヨーロッパ全体を巻き込んだ戦乱へ。
・対仏大同盟v.s.ナポレオン。フランス大勝利。どうしてフランスは強かったのでしょうか?
・騎士+傭兵v.s.国民軍。国家総動員体制。
・名誉と金v.s.愛国心。「散兵戦術」のような戦い方。
・身分制v.s.自由と平等。ベートーベン交響曲第3番「英雄」。
・中世国家よりも国民国家のほうが強いことが誰の目にも明らかとなります。国民国家の強さの源はなんでしょう?
・ナショナリズムは、愛国心の根拠であると同時に、自由と平等の根拠ともなります。
・フランスのナショナリズムはヨーロッパ全土へ輸出され、各地域でナショナリズムが勃興します。
・その後、教育によってナショナリズムが創出、維持されます。

復習

・封建国家と国民国家の違いを押さえておこう。それを踏まえて、具体的に江戸時代と明治時代の違いを説明できるようにしよう。
・nationとstateの違いについて押さえておこう。

予習

・国歌の働きについて考えてみよう。

教育の基礎理論-2

▼短大栄養科 9/25

前回のおさらい

・東洋古代の教育:「育」と「教」の漢字の源。
・西洋古代の教育:ソクラテスの思想。

大人と子供の境界線

・教育基本法第一条によれば、教育の目的は「人格の完成」でした。「人格の完成」とは、日常的なことばで簡単に言い換えれば、「大人になる」ということになります。
・「教育」とは、「子供」だった存在を「大人」へと成長させる手助けと言うこともできます。

【思考実験】「子供」と「大人」の違いとは?

・自分が「子供」なのか「大人」なのか、生活を振り返って考えてみよう。
・「大人」の条件とは何か、考えてみよう。

・現在は、様々な基準で大人と子供の間に境界線が引かれています。
・たとえば、労働(働いているのが大人、働いていないのが子供)、経済的自立、年齢制限(酒や煙草を許されるのが大人、許されないのが子供)、選挙権、結婚、子供を持つなどという基準が考えられます。

【思考実験】「子供」とはどういう存在か?

・子供は……かわいい・守ってあげたい・将来の世の中のために大切・初々しい・無邪気・純粋・天真爛漫

・しかし実は、日本でもヨーロッパでも、「子供」をこのように考え始めたのはそう昔の話ではありません。
・かつて、「大人」と「子供」の間には、現在のような明確な境界線はありませんでした。

子供はいなかった?

・かつての世界では、「7歳」という年齢が大きな境界線となっていました。
労働:7歳以後、人々は働いていました。つまり大人たちの仲間として世界と関わっていました。子供の仕事としては、日本では柴刈りや馬引、水汲みなどに従事している姿が絵の中に残されています。
遊び:同様に、遊びは子供だけの特権ではなく、大人も一緒に楽しむものでした。日常生活のなかに、定期的に「遊び」が組み込まれていました。
→昔は、労働や遊びという点で、大人と子供に明確な区別はありませんでした。

生理的早産

・人間以外の高等哺乳類は、誕生してからすぐに親と同じような行動をとることができます。しかし人間の赤ん坊は「能なし」で生まれてきます。他の高等哺乳類と同じだったとしたら、人間はあともう一年は母親の胎内にいる必要があります。
・この一年早く生まれてくることを「生理的早産」と呼びます。この現象こそが、人間を人間たらしめているという仮説と言えます。
・生物学的・自然科学的な過程によって必然的に成長が決められるのではなく、歴史的・文化的な過程によって選択的に成長が決まります。ここに人間らしい「個性」が生まれるわけです。

人間はどこから人間か?

・かつては「7歳」に境界線がありました。7歳未満の存在が「人間」として扱われていなかったのではないかという疑惑は、埋葬、捨て子、マビキなどの在り方に見ることができます。
・妊娠中絶は殺人か? →昔と今とでは、「なかったことにする」という意味で、やっていること自体は変わりません。単に「どこから人間か」という境界線が移動しているだけなのかもしれません。

昔の「家族」の生活を考えてみよう

・「家族」は子育てしていたでしょうか?
*生産力:生産力の低い世界では、子供も労働しなければ家族が生きていけません。父親も母親も、生きるための労働で精一杯であって、子育ての優先順位は下がっていきます。
*社会(ムラ)と家族との関係:現在は家族が独立した島宇宙のようになって社会から隔絶していますが、かつては家族と社会(ムラ)の間の境界線は曖昧でした。家族が子育てをできなければ、社会全体でそれを担います。

復習

・「子供」が「大人」になるとはどういう意味なのか、自分の生活を振り返って考えてみよう。
・「家族」の変化によって「子供」へのまなざしが変化する理屈をまとめておこう。
・アリエスやポルトマンの学説を確認しておこう。

予習

・「イニシエーション」という言葉の意味を調べておこう。

参考文献

フィリップ・アリエス『<子供>の誕生』
主にフランスにおいて「子供期」がどのように生じてきたかを分析した社会史研究書。中世まで人々は子供に無関心だったが、17世紀から子供と大人の間の境界線が厚くなっていったという見解。

カニンガム『概説子ども観の社会史』
ヨーロッパと北米において、子どもの実際と観念がどのように変化したかを概観した社会史研究書。20世紀における急激な変化を強調。

柴田純『日本幼児史』
日本において7歳という境界線がどのように生じたかを分析した歴史学の本。古代・中世の人々は子供に対して無関心だったが、江戸中期以降に子供に対する心性が大きく転回したという見解。

教育課程の意義と編成-1

▼第1回=9/24

授業の目的

・本講義は教員免許状取得に関わる授業であり、特に「教育課程の意義及び編成の方法」について扱います。

目標

・「教育課程」とは何かについて理解する。
・教育課程を編成する原理について、教科を横断する内容等も含め、基本的な考え方のパターンを理解する。
・『学習指導要領』の性格を理解する。
・現行『学習指導要領』の背景を理解する。
・カリキュラム・マネジメントの基本的な考え方を理解する。
・『学習指導要領』の変遷と背景について理解する。
・「評価」の意義と、様々な方法について理解する。

教科書

※現行(平成29年3月)の『中学校学習指導要領』および『中学校学習指導要領解説 総則編』を手に入れてください。冊子でも手に入るし、pdfファイルでも手に入ります。
・必要に応じてプリントを配布します。プリントの内容はWEBサイトにアーカイブします。

評価

・期末テストによって評価します。
・目標に即して、評価の基準を設定します。
・テストには、スマートホンを含めてあらゆるものを持ち込み可とします。
・出席が足りなかった者には受験を認めません。

教育課程とは何でしょうか?

・英語の「カリキュラム」を翻訳したものです。
・教育実践のサイクル。目的:計画→実践→評価→改善
・目的を達成するためには、適切に計画を立てなければなりません。
・復習:教育の目的とは何だったでしょうか??

教育の計画

※いつから、いつまで、どこで、だれが、誰に対して、何を、どのように教えるか?
・いつから:現在は義務教育は6歳からですが……
・いつまで:現在の義務教育には留年がありませんが……
・どこで:現在の日本では学校ですが……
・だれが:現在の日本では、教員免許を持って正式に採用された者ですが……
・誰に対して:現在の日本では子供ですが……
・何を:
・どのように:

教育計画の主体

※だれが、どのような権利で、どのように決めるか?
・だれが:家庭、教師、学校、国家?
・どのような権利で:
・どのように:

学習指導要領

・文部科学省が示す教育課程の基準です。

「学習指導要領とは、こうした理念の実現に向けて必要となる教育課程の基準を大綱的に定めるものである。」(2頁)
「学習指導要領が果たす役割の一つは、公の性質を有する学校における教育水準を全国的に確保することである。」(2頁)
「各学校においては、教育基本法及び学校教育法その他の法令並びにこの章以下に示すところに従い、生徒の人間として調和のとれた育成を目指し、生徒の心身の発達の段階や特性及び学校や地域の実態を十分考慮して、適切な教育課程を編成するものとし、これらに掲げる目標を達成するよう教育を行うものとする。」(4頁)

復習

・教育課程とは何か、自分の言葉で説明してみよう。
・『学習指導要領』の性格について、大雑把に押さえておこう。

予習

・実際にカリキュラムを組む「まねごと」を行います。
・自分が中学生の頃の時間割を思い出しておこう。