鵜殿篤 のすべての投稿

【教育学でポン!?】2022年6月19日

夏になった感じ。暑い。
【本日の歩数】4902歩■自宅と学校を往復。

働き方改革

■職員室で見る朝焼けに涙して~教員と家族から500件のSOS~(NHK WEB特集)
■あなたの先生は大丈夫?教師の過重労働 その果てに何が(クロースアップ現代)
教師聖職者論の呪いがまだかかっています。

■学校だよりで募集をかける「教師不足」の深刻度 教師不足で過労の「ドミノ倒し」が起こる(東洋経済ONLINE)
小泉改革(つまり新自由主義)の負の側面が誰の目にも明らかな形で浮上しています。

■部活の地域移行、文科省が言わない3つの重要課題(妹尾昌俊)
総論賛成で方向が固まったので、あとは各論を丁寧に詰めていく段階になりました。

■放課後も土日も…先生の常識変える 部活動顧問「働き方改革」の鍵は 神戸の中学校で先進的取り組み(神戸新聞NEXT)
体育会系の教員が反対するのでトップダウンでしかうまくいかないということか。

学校

■子供たちの前で威張ることでしか存在感を示せない…そんな残念な熱血教師がいまだに頼りにされるワケ 子供をダメにする学校は職員室の雰囲気を見れば一発でわかる(PRESIDENT Online)
子ども相手に威張る人って、逆に立場が上の相手にはペコペコ平身低頭で気持ち悪いんですよね。赤シャツ体質。

■黒板はそのままに…廃校をリノベーションしたカフェ誕生 卒業生も多く訪れる場に【宮崎発】(テレビ宮崎)
古民家カフェが定着したので、廃校カフェもいけるか。

教育全般(国内)

■「子ども関連予算倍増」表明も…財源は? 子ども政策抜本改革に問われる総理の本気度(ABEMA TIMES)
「内閣府」が担当するよりはマシになって、くらいの期待度で。

■東京都小学校PTA、全国組織退会へ 全国初 「現場の声反映なく」(毎日新聞)
終わりの始まりになるのか。

■大学数学にも浸透してきた「暗記だけの学び」 理解を大切にした学びを伝え続けたい(現代ビジネス)
「理解」が大切なのは、教育学も歴史学も同じです。

■蔓延する英語教育の謎ランキング:英語教育実施状況調査と英検IBAの謎集計(寺沢拓敬)
「モンドセレクション最高金賞」くらいの信用度と思えばいいのかな。

■上司はいない、ノルマも最小限だが… 大学教授が「驚くほどよく働く」ワケ(幻冬舎GOLD ONLINE)
個人事業主が上司もいないのによく働くのと同じかと。

■日本の「お金」の教育がいまだに欧米に比べて時代遅れなワケ(幻冬舎GOLD ONLINE)
「労働者の権利」の教育の方が先です。

【教育学でポン!?】2022年6月17日

実習巡回指導で栃木県喜連川まで行くとなれば、真面目に仕事を終えた後に、喜連川城にも寄る。喜連川藩は室町幕府鎌倉公方の流れを汲む名門足利家が支配し、実質5000石足らずなのに大名格扱いの上、参勤交代が免除されるなど、日本全国の藩の中でも特別な位置を占める藩でした。喜連川城は関東らしい土の城で、巨大な空堀や広大な曲輪の跡を明瞭に観察できます。本丸跡には街を一望できるスカイタワーが建っていますが、東日本大震災の影響で傾いてしまった上、大雨の影響で改修も進まず、進入禁止。廃墟と化しつつあって、どうなるのか。城の天辺は見晴らしも良く、麓には日帰り温泉施設もあって、良いところです。
【本日の歩数】14219歩■喜連川陣屋と城にアタック。

働き方改革

■中学校の部活動に変化 『部活指導員』導入で教員の負担削減(FBSニュース)
■部活動の地域移行へ“指導者バンク”新設 モデル校から「ワークライフバランス充実」「専門的指導で技術向上」の声 鹿児島・薩摩川内(南日本新聞)
学校に任せていてはうまくいかないので、地方自治体が仲介役になる他、民間企業が参入して事業展開するケースも増えてくるでしょう。

校則

■黒染め指導、「適法」確定 最高裁、元生徒側の上告退ける(共同通信)
■黒染め校則「適法」確定 元生徒側上告退ける―最高裁(時事通信)
■「髪の黒染め指導で不登校に…」府立高の元生徒の上告棄却『指導に違法性はなし』確定(MBSNEWS)
あくまでも教育のシロウトが下した単なる法的判断に過ぎず、教育学的には別の判断になります。

ジェンダー

■50年超の歴史ある「女子大」来年から”男女共学化”に…在校生ら”前向きな声”の一方で戸惑いも「男子がいるとビジュアル良くしないと」(MBSNEWS)
共学にするのは、教育的な理由ではなく、経営的な理由。

学校

■統合する岡山県北2つの小学校の児童が交流会「寂しいけど新たなスタートに」【岡山・美作市】(RSK山陽放送)
全国各地で続々と統廃合が進みます。

教育全般(国内)

■こども家庭庁の設立準備室が発足 23年創設向け300人体制(共同通信)
■こども家庭庁設立準備室を新設 来年4月の庁発足に向けて(TBS NEWS DIG)
準備が9割。

■東京書籍が現職教員にアドバイザー報酬 文科省指導「疑義生じる」(毎日新聞)
■教科書最大手の東京書籍、現職教員らに「アドバイザー」報酬支払い…文科省が行政指導(讀賣新聞オンライン)
■東京書籍、現職教員に報酬 調査委「手続き不適切」(時事通信)
明治時代から連綿と続く教科書疑獄。あの手この手で近づいてきます。

■学校給食、道内では無償化・助成広がる 食材高騰対策に子育て支援・人口維持の狙いも(テレビ北海道)
有効な税金の使い道です。

■PTA全国団体から脱会検討 都内公立小の組織(共同通信)
京都市P連の脱会は否決されましたが、こちらはどうなるか。

教育全般(海外)

■そもそも「学習塾」が存在しない…教育大国・北欧フィンランドが「学校の勉強」だけで成り立っているワケ 「貧富によって受けられる教育に格差があってはならない」(PRESIDENT Online)
隣の芝生は青く見えやすいものですが、教員がプロフェッショナルとして社会的に尊敬されているのは羨ましい限りです。

【教育学でポン!?】2022年6月16日

研究室に忘れ物をしてしまったことに、家の近くまで返ってきてから気づく。
【本日の歩数】9127歩■自宅と学校を2往復。

働き方改革

■子供も親も知らない「卒業式にいない先生」の正体 担任、部活顧問も担う「非正規教員」の実態(東洋経済ONLINE)
■文科省が蓋をする「教師の非正規率」の衝撃実態 20%を超える勢いで上昇、自治体間で3倍の差(東洋経済ONLINE)
そういうことです。この件に関して勘違いしている記事も度々散見されるので、その都度私も指摘しているところです。

■教員志願者を増やす取り組み実施へ(テレ玉)
ソレジャナイ感がすごい。まず現職先生の仕事を減らそう。

■“教員が忙しすぎ”問題 「答えを見つける教育」への転換で教員数は半分にできる(マネーポストWEB)
「ファシリテーター」が必要になると「教員が要らなくなる」という論理が、意味不明。むしろもっと必要になります。

ICT

■ICTによる授業改善からデジタル・シティズンシップ教育まで! 私立小学校の9事例を紹介「GIGA元年 192の物語 ~私立小×GIGAリアルドキュメンタリー~」レポート(EdTechZine)
意欲を感じる素晴らしい実践事例ばかりで、刺激を受けます。みんなでこの知恵を共有していきましょう。

■「STEM目指す女子への偏見ない」日本が世界1位。現実とギャップ(BUSINESS INSIDER)
個人的には「オタク蔑視」の風潮が諸悪の根元のように思います。

校則

■【解説】なぜツーブロックは禁止? 生徒主体で“ブラック校則”を「自分で考える校則」に 岡山(KSB瀬戸内海放送)
少しずつですが、日本も変わりつつあります。

教育全般(国内)

■こども家庭庁法が成立 少子化、虐待、貧困対策(共同通信)
■【声明】すべての子ども若者のみなさんへ、こども基本法ができました!#子どもの権利(末冨芳)
■【解説】こども政策のスタートへ!#こども家庭庁 何が良くなる?略称#こども庁?#子どもの権利(末冨芳)
まだスタート地点に立っただけで、本当の勝負はこれからです。

■2か月以上“トップ”不在 名古屋市の教育長に文科省元課長を起用の人事案 議会に提出へ(CHUKYO TV NewsWEB)
■沖縄で唯一教育長がいない村、5度目の否決 2年9カ月不在なぜ(沖縄タイムス)
2015年の教育委員会改革によって教育長へ権限が集中し、人事に際して警戒感が強くなっている可能性はあるか。

■沖縄県の「教育大綱」を作成へ 教育会議開催(琉球朝日放送)
総合教育会議の記事でした。

■理解無視、暗記だけの数学は歯止めが必要な理由 数学の教えと学びに必要不可欠な視点は何か(東洋経済ONLINE)
「理解」するとよく分かって面白くなるのは、数学に限りませんね。

■スポーツの教育的価値はどう認識されている?スポーツ・部活動に携わる指導者・選手・保護者500名超に調査を行いました!!【2022年アンケート調査結果】(FUNDO)
客観的な指標に基づくデータではなく、あくまでも自己申告の集計です。

■寺子屋を運営するのは高校生…そのメリットは 「小学生に距離が近い」ことと… 静岡・藤枝市(LOOK静岡朝日テレビ)
教える側の高校生にも力がついています。

【教育学でポン!?】2022年6月14日

卒論指導がだんだん本格的に。みんな頑張ろう。
【本日の歩数】8569歩■自宅と学校を往復。

働き方改革

■「休日の部活動の段階的な地域移行」23年度にも、先行する渋谷区の実際 「渋谷ユナイテッド」設立し合同部活動スタート(education×ICT)
教育長経験者が一般社団法人の代表理事になって、自治体主導で地域移行を実現しようという仕掛け。全国的なモデルになるか。

■沖縄県の教員志願者 減少の歯止めかからず 昨年度から10%減 県教育庁が発表(沖縄タイムス)
「説明会を増やす」って、ソレジャナイ感が半端ない。

■指導力不足教員は免職を 免許更新制の廃止で提言―自民党(時事通信)
専門家に対する敬意がまったく感じられない、ものすごい上から目線でした。仮に口を出すにしても、まず金を出してからにしてほしい。

ICT

■幼稚園や保育園も進むIT化。連絡帳から学習ロボットまで、ITツールがどんどん身近に――第13回教育総合展「EDIX東京」展示会場レポート⑭(こどもとIT)
幼児教育のIT化は、民間企業の草刈り場と化すのか。

■「いつまで手書きにこだわるの?」幼稚園の先生「おたより」をめぐる世代間ギャップ(マネーポストWEB)
「慣れれば早くできる」なら、ICTに慣れればいいのに。

校則

■制服か?私服か?生徒自身が服装選ぶ「制服自由週間」 全日制課程の高校で県内初の試み 富山・魚津市(チューリップテレビ)
一年生がダブダブの制服を着ているところを見ると、なくしちゃって構わないと思っちゃいます。

インクルーシヴ教育

■特別支援教室「指導期間は最長2年に?」新ガイドラインの内容やねらいとは――東京都教育委員会インタビュー(LITAKICO発達ナビ)
あとは人とお金が増えるか。

学校

■“午前5コマ授業” 小学校で広がる新たな時間割とは(NHK)
そもそも「1コマ45分」という設定に教育学的根拠はなく、単に大人の都合で決まっているに過ぎません。だとしたら大人の都合で「1コマ40分」にしてもいいわけです。ちなみに教育学的には、1コマ15分くらいが良いと思います。

教育全般(国内)

■こども家庭庁法、15日成立 少子化、虐待防止に新組織創設へ(共同通信)
■こども家庭庁設置法案、15日成立へ 2023年4月発足目指す(毎日新聞)
■「こども家庭庁」設置法 あす成立へ 岸田首相「子ども真ん中社会目指す」(FNNプライムオンライン)
ひとまずこれで決着がつくようなので、後期の「教育制度論」の授業内容を変えなければいけません。

■内閣府「子どもの貧困」調査で教育格差明らかに、「緩やかな身分社会」の実態 龍谷大・松岡亮二、データで継続把握する意義(education×ICT)
前半は身も蓋もない事実が数字で以て明らかになる系の記事でしたが、後半に魂が籠もっていました。

教育全般(海外)

■ドイツ語圏の教育現場で静かに流行しつつある「幸せになる方法」を教える授業とは(COURRiER JAPAN)
科目としての「幸福」というのは、ちょっと意表を突かれる。

【要約と感想】ダンテ『神曲【完全版】』

【要約】ダンテは地獄・煉獄・天国を巡る数奇な体験を得て、詩を詠みました。
 まず古代詩人ウェルギリウスの案内で地獄を経巡ります。地獄では、カトリック法王を始めとして、様々な罪を犯した人々が呵責ない責めにあって苦しむ様子を見ます。中には旧知の人々もいましたが、地獄に落ちて当然の奴らなので悲しんではいけません。
 煉獄では、天国に行くまでに様々な罪科の禊ぎを済ませるために苦しんでいる人々を見ます。中には旧知の人々もいて、地上に戻ったらよろしく伝えてくれと言われます。
 天国に入ると、それまで案内を努めてくれた頼もしいウェルギリウスの姿は見えなくなり、代わって初恋の女性であったベアトリーチェが至高天まで先導してくれます。ご先祖様から激励されたり、キリスト教の聖人たちと学理問答をしたりして、最終的に神の領域に辿り着きますが、それは言葉にできません。

【感想】予習をぬかりなくしたので噂には聞いていたものの、初恋の人ベアトリーチェをここまで神々しく描くというのは、いやはや、ちょっと私の感覚からは理解しがたい。やり過ぎ感がすごい。単に好きというレベルを遙かに超えるストーカー的偏執も含みこんだような情念を感じて、そこそこ怖い。

 地獄編は、訳者もノリノリに翻訳している感じが伝わってきて、けっこう楽しい。コントのような展開も多い。地獄に落ちた人々は基本的にダンテの独断と偏見で選ばれている。露骨に党派性が現れていて、槍玉に挙げられた人たちがちょっとかわいそうではある。しかし一方、党派性を離れて、キリスト教の原理原則に従って地獄に落ちざるを得なかった人々の立ち居振る舞いには、見所が多い。具体的には例えば男色などカトリック教義的に許容できない人々は、原理原則に従って地獄に落とされるものの、人格的矜持は高潔に保っていたりする。そういうところにキリスト教原理主義をはみ出す「人文主義」の臭いを感じる。
 天国篇は、訳者も言っていたように、確かに抽象度がくんと上がって、物語的に興趣が減じる上に、人文主義の臭いもなくなる感じがする。まあ個人的にはキリスト教神学の構成に興味があるので、そこそこおもしろく読める。

 文体的には、いわゆる「直喩」のオンパレードで、意外性のある喩えも多く、とても楽しい。現代で言えば、お笑いのくりぃむしちゅー上田のツッコミ(まるで○○のようだな!)を想起させる直喩だ。具体的な次元では遠くかけ離れていても形式的には似ている、というものを繋げて表現する才能は、ダンテと上田はよく似ているのかもしれない。

【今後の研究のための備忘録】子どもに関する言及
 各所に子どもに関する言及があったので、サンプリングしておく。というのは、子どもに対する意識が中世と近代を切り分けるメルクマールだ、というアリエス『子供の誕生』が示唆するテーゼを検証する資料になるからだ。ダンテが属するのが中世なのか近代なのか、あるいはアリエスのテーゼそのものが信用に足るのかを検証するために、『神曲』の記述は有力な資料になる。

ウゴリーノ伯爵がおまえ〔ピーサ〕を裏切って
 城を敵方に明け渡したという風評があるにせよ、
 おまえは子供をああした刑に処するべきではなかった。
ああ第二のテーバイよ、ウグイッチョーネやブリガータ、
 また前に詩に出たあと二人の子供たちは
 年端もゆかず無邪気だった。
(地獄編第33歌85-87)

 ウゴリーノ伯爵と共に塔に閉じ込められた幼い子どもたちが餓死に追い込まれるという陰惨な場面で、よほど印象深いのか、訳者も何回も繰り返し言及している。ただ個人的に注目したいのは、ダンテが子どもたちを「年端もゆかず無邪気」と表現し、父親との連帯責任を取らせることに批判的な姿勢を示しているところだ。アリエス的な理論枠組みからは、少々外れている。

そこで私は、人間の罪から免れる〔洗礼の〕前に
 死の歯にかまれてしまった
 あどけない幼児たちと一緒にいる。
三つの聖なる徳に身を包むことをしなかった人たちと
 そこで私は一緒なのだ。
(煉獄篇第7歌31-35)

 ダンテの案内役ウェルギリウスがどうして天国に行けないかを説明している箇所で、子どもへの言及がある。イエス降誕前に死んだウェルギリウスはもちろんイエスに対する信仰を持てるはずがないわけだが、それを理由として天国に行かせてもらえない。日本人からしたらわけが分からない変な理屈だ。ダンテも同じように感じていたらしく、何カ所かでこの理屈に言及して疑問らしきものも呈しているが、最終的には神の摂理として受け容れている。問題は、天国に行けない人々の中に、洗礼を受ける前に亡くなった「幼児」も含まれていることだ。これもやはり日本人からしたら意味が解らない理屈だが、ダンテも不審に思いつつ神の摂理として受け容れている。キリスト教の子ども観を考える上では重要なポイントになる。

だから、自分たちの行いやその功徳とは関係なく、
 もっぱら最初の視力の鋭さの違いによって
 子供たちは違った段に据えられている。
世界がまだ創られたばかりのころには
 ただ両親に信仰がありさえすれば、
 無垢な子供たちはそれで十分救うことができた。
そのはじめの時代が過ぎた後は
 罪のない男の子は割礼を受けることにより
 天へ舞いあがる力をその羽に得た。
しかし恩寵の時代が到来した後は
 キリストのまったき洗礼を受けぬ場合は
 このような無垢な子供たちもあの下界にとどめおかれた。
(天国篇第32歌73-84)

 いわゆる「洗礼」というものの秘儀を担保するためには、洗礼前の用事を犠牲にしても構わない、というところか。目の前の人間に対する救いよりも神学の論理的一貫性の方が大事というカトリック教義。

信仰と清純は幼児たちの中にしか
 見あたらなくなりました。しかもそのいずれもが
 頬に髭が生えるよりも前に逃げ出してしまいます。
口がまだまわらないころは、断食を守る子供も、
 舌がまわりだすと、食物の如何や月日の如何を問わず、
 大食らいとなってしまうのです。
口がまわらないころは、母親になついて言うことを
 よく聞いた子供も、弁が立つようになると、
 母親は墓にいる方がよい、などと思うようになるのです。
(天国篇第27歌127-135)

 子どもたちにピュアさを見出すのは近代的な心性だという見解があるが、これを見るとダンテは近代的だということになってしまう。アリエスのテーゼが間違っているのか、本当にダンテが近代的なのか、あるいは別の解釈があるか。

【今後の研究のための備忘録】個性に関する記述
 「個性」というものを考える上で興味深い箇所があったのでサンプリングしておく。

すると彼がまた尋ねた、「では訊くが、もし地上で人が
 市民生活を営まないとすれば、事態はさらに悪化するだろうか?
 私が答えた、「むろん悪くなります」
「とすると人がさまざまの職務についてさまざまの生活を送ることなしに
 地上で市民生活が満足に営まれるだろうか?〔答えは〕
 否だ。その点は君らの師の書物にもはっきりと出ている」
こうして彼はここまで演繹的に論をひろげ、
 ついで結論をくだした、「そうしたわけだから
 君らの職務には職掌柄さまざまの根が必要とされるのだ。
それである人はソロンに、ある人はクセルクセスに、
 またある人はメルキゼデク、またある人は
 空中飛行をこころみて子をなくした人のように生まれつくのだ。
天球は回転しつつ、正確に仕事を営み、
 人間という蝋に型を捺すが、
 ひとりひとりが生まれる家に区別はつけていない。
それでエサウとヤコブは体内にいるうちからすでに違っていた。
 それでクィリヌスのような男が生まれ出たりするのだ。
 実父の身分が賤しいからマルスが彼の親ということになっている。
もし神の摂理に力がなかったとするならば、
 生まれ出た子は必ず生みの親に似、
 かつ似通った道をたどるはずだ。
これで前に見えなかった点が見えるようになったろう。
 君の訳に立てば私には嬉しいのだ。だから
 いま一つ補足して君の身に着けさせようと思う、
運命が性に合わないと、性に合わぬ土地にまかれた
 種と同じで、およそ生命のあるものは
 どうしても育ちが悪くなる。
自然によって人々各自の中に据えられたこの基盤に
 もし下界の人が留意し、かつそれに従うならば、
 人々はみなその処を得るはずだ。
しかるに君らは剣を帯びるべく生まれついた人を
 無理強いに宗門に入れ、
 説教をするべく生まれついた人を国王に仕立てたりする。
君らが道を踏みはずす原因は実はそこにあるのだ」
(天国篇第8歌115-148)

 人それぞれに持ち味や特徴があって、それに応じて相応しい役割が与えられるのが一番理に適っているという主張だ。これはたとえばガチガチの身分制では成立しない考えで、脱中世的な発想なのかもしれない。またあるいは119行に「市民生活」とあるように、適材適所の経済活動を想定した理屈なので、フィレンツェの卓越した商業活動が背景にあるのだろう。これが「個性」という概念の展開とどう関係してくるのか。

【今後の研究のための備忘録】近代科学観?

実験こそ人間の学芸の流れの変わらぬ泉なのです。
(天国篇第2歌96)

 訳註によれば「フィレンツェ市は(中略)ルネサンス期には自然科学の研究が非常に盛んになった学芸の都市である。その種の実験の精神ははやくもダンテのこの詩行に観取される。」とされる。一般的に科学的な実験で最初に名を挙げたのはイギリスのロジャー・ベーコンで、生年は1214年~1294年だ。ダンテはベーコンの約半世紀後に生まれているので、ベーコンの影響があっても不思議ではない。が、註が指摘しているとおり、ベーコン云々というより、フィレンツェの先進的な学芸を観取するところなのだろう。「ルネサンス」というものを考える上でもかなり気をつけるべき論点になる。

【今後の研究のための備忘録】三位一体

その時が来るに及び、神は造物主から離れていた人性を
 永遠の愛の働きによって
 神に、神の位格において、結びつけました。
(天国篇第7歌31-33)

 三位一体の秘儀について語られているところだが、訳者はペルソナを伝統通り「位格」と訳している。

この人性が結びついていた
 〔神の〕位格が蒙った非礼を考えてみると、
 かつてなく不当な罰といえるわけです。

 こちらは人性と神性の結びつきという観点から神のペルソナについて語った部分だ。問題になるのは、この「位格」という言葉の具体的な中身になる。

ダンテ/平川祐弘訳『神曲【完全版】』河出書房新社、2010年<1966年