2024年の11月は、池袋西口の東武百貨店に日参しておりました。というのは、東京家政大学の栄養学部の学生と東武百貨店レストラン街Spiceのお店が協力してメニューを開発する「チャレンジ・ザ・グルメ2024」が開催されていたからです。(開催期間:2024.11.1~12.1 ※イベントは終了しています)。
今年のテーマは「サステナブルな美味しい未来!」ということで、植物由来の代替肉や環境に優しい油を使ったメニューとのことです。実はわたくし何を隠そうお肉大好きマンで、高くて旨い肉に目がないので、植物由来のお肉は人生で一度も口に入れたことがありません(気がついていないだけかもしれないが)。さて、ベジミートなるものは旨いのか。
イベントで提供された47メニューのうち、30日間で実際に食べたのは24メニュー、かろうじて過半数を実食できました。いただいた料理の感想を記しておきます。
【熟成肉 ハンバーグ&ステーキ Old Manhattan】植物由来!!ダブル濃厚チーズハンバーグプレート
お肉が植物由来というだけでなくチーズも植物由来というコラボで、ワンプレートに載っているものすべてが実は野菜というところでイベント趣旨に徹底しているわけですが、この組み合わせは味の面でもピッタリだったと思います。このお店はがっつり食べるために8,000円覚悟で入る肉食系の店という印象でしたが、お値段もお財布に優しくて、ベジタリアンも安心して連れて行けて、みんなに嬉しいメニューじゃないでしょうか。
【北海道イタリアン Mia Bocca】北海道産ソーセージと「農家のベーコン」のディアボラ
ピザのチーズだけでなく、そぼろのお肉も植物性由来ですが、ソーセージとベーコンは本物肉というハイブリッドな一品です。そんなわけで本物と植物由来のそぼろ肉を比べてしまうわけですが、ベジミートの存在感はソーセージ・ベーコンに負けていません。植物性チーズもとろとろで、全体的なバランスも良かったと思います。
【タイ料理 サイアム セラドン】大豆ミートのガパオチャーハン
にんにくやトウガラシなどで濃いめの味つけがあるからか、由来が動物性か植物性かに特に影響なく、肉を食ったなあという食後感になります。パプリカなどとの食感の組合せもよかったように思います。濃いめ味付けのアジア系フードには、全般的にベジミートが合いそうな印象です。
【純喫茶・スイーツ・軽食 但馬屋珈琲店】デリプランツのティラミス風クリーミーチーズケーキ
ホットコーヒーと一緒にいただきました。このクリームチーズが植物由来とは、私がスイーツを食べなれていないせいかもしれませんが、指摘されても分かりません。肝臓にダメージを負っている身としては、罪悪感なく甘いものが食べられてありがたいのでした。
【ゆであげのスパゲッティー 洋麺屋五右衛門】植物ベースのチーズとホイップで作る濃厚カルボナーラ
ランチでいただきました。バターもチーズもホイップクリームも植物由来だそうだけれど、言われたところで私の舌ではまったく区別できず、普通においしいカルボナーラとしていただきました。
【鮨処 銀座 福助】大豆ミートのビビンバ風肉寿司・ツナサラダ軍艦
握り寿司ランチに、このチャレンジメニュー2品を加えていただきました。ビビンバ風肉寿司のほうは、さすがに舌が慣れてきてベジミートだと分かりますが、味付けも絶妙で、最初からこういうものだと分かっていれば普通においしくいただけます。一方、ツナがベジミートというのは知らないとなかなか気付かなそうで、味付けがあると何の違和感もなくいただけます。いずれにせよ、寿司ネタに植物性由来の肉を使うのはおもしろくて、アイデア次第でいろいろな可能性が開けそうだと思いました。
【北京料理・餃子 銀座 天龍】大豆ミートの回鍋肉
油断して餃子一人前も一緒に頼んだら凄い量が来てしまって、テーブルに並んだ時には一瞬どうしようかと思ったけれども、結局ぜんぶさくさくおいしく食べてしまいました。味付けも濃いめで、野菜の食感も合っていて、言われないと大豆ミートとは分からなさそうです。
【牛カツ・和食 牛カツと和定食 京都勝牛】植物生まれのチーズを使用したチーズサルサ牛カツ膳
牛カツ自体を食べたことがたぶん初めて(豚カツはやたらと食べる)だったけど、チーズとの組み合わせに全然違和感がなく、さくさく食が進みました。肉自体は本物?としても、ソースなど味付けに植物由来のチーズや油を使うという選択肢が加わると、新しいアイデアや工夫の余地がぐんと広がりそうです。
【日本そば 永坂更科 布屋太兵衛】ダブルカレー南蛮そば
本物肉とベジミートの両方がトッピングされたカレーそばです。本物肉と並べて食べると、さすがに大豆ミートだということはよく分かるので、分かったうえで食感と風味を楽しむメニューでしょう。ところでカレーそばとかカレーうどんというメニューは自分から進んでオーダーすることはなくて、こういう機会でもないと食べませんが、ふつうにおいしいですね。
【ベトナム料理 ロータスパレス】食感豊かなごろごろ野菜のベトナムカレー
さすがにベジミートを食べまくって味や食感を直接経験した後だと、これぐらいの大きさの塊で入ってるものは確実にそれと分かるようになってきます。で、ベジミートをカレーの具材として、特に野菜たっぷりカレーの具材に使うというのは、味や風味の観点からも、とてもぴったり来るやり方のように思います。春巻も一緒に頼んでボリューム大満足でしたが、実質野菜ばかりでカロリーはそんなにないんだよね。
【四川料理 四川飯店】色とりどりの冬野菜きんぴら
どうやら本来は大人数で小皿でいただくメニューっぽかったのですが、ソロだったからライスセットも頼んで定食にしていただきました。そぼろ状態のベジミートで味付けもしっかりしていると、言われたところでベジミートだとは分かりません。そぼろ状ベジミートには多様な使い方がありそうな印象です。
【韓国旬彩料理 妻家房~柳香姫の台所~】大豆ミートの石焼ビビンバ
このお店は前菜バイキングが心躍ります。石焼ビビンバはメインのお肉だけでなく、バターも植物由来というところが素敵です。ベジミートは塊で存在感を主張しているのですが、鍋でじゅうっとして、溶かしたバターと絡めていただくと、本物肉とはまた異なった味わいがあって、なかなか挑戦的なメニューだと思いました。おいしかったです。
【フルーツパーラー&レストラン 果実園リーベル】ピスタチオとチーズムースのパフェ
さすがにオッサンひとりでこういう映えるスイーツを注文するのはどうかと思っていましたが、逆にこんな機会でもないと一生食べないメニューだろうと考えなおし、ドリンクバーでコーヒーを何杯かいただきつつ、完食してまいりました。罪悪感なく生クリームをいただいて大満足でした。頼んでよかった。
【季節の天ぷら 銀座ハゲ天】れんこんとさつまいもでVEGEサンド天2品盛り
ディナーの天ぷらメニューに追加でいただいてきました。そぼろ肉とチーズが植物由来のメニューです。そぼろ肉はやはりこういう形で調理されると、言われたところでベジミートだとは気がつきません。さくさくの衣と濃厚なチーズのコクが相まって、たいへんおいしくいただきました。天ぷら大好きだけど肝臓にダメージを負っている身としては、コレステロール大幅カットだと聞いて大喜び。
【海鮮和食 海鮮魚力】厚揚げでツナサラダサンド
ランチの刺身メニューに追加していただきました(ごはん少なめにした)。このツナが植物由来とは、言われてもまったく気がつきません。そもそも厚揚げでツナを挟んで揚げるという発想が私の人生からは出てこないので、感心しながらいただきました。厚揚げサンドを深堀したら、低カロリーのおもしろいメニューがいろいろできそう。
【ケーキ&洋食 66ダイニング 六本木六丁目食堂】トマトソースと秋野菜の煮込みハンバーグ
ベジミートもこれくらいの大きな塊になっていると、さすがに言われなくても分かるようになってくるのですが、カレーなどと同じく煮込み系だったり、大きくカットされた野菜と一緒になっていると、特に違和感もなくおいしくいただけるような印象です。大きな塊になるほど料理人の腕が活きてくる感じでしょうかね。
【抹茶ダイニングカフェ 京都 茶寮翠泉】秋色抹茶のレアチーズケーキ
彩りも素敵なスイーツでした。普段はオッサン一人では頼まないような素敵メニューですが、せっかくの機会を逃さず喜び勇んで注文してきました。まあ、スイーツを食べなれていないせいがあるのかどうか、言われたところで植物性由来だとは気がつかないでしょう。
【洋食&スイーツ 不二家レストラン】5種きのこのポルチーニソースオムライス
実は普段からオムライスには目がないのですが、これは食感がユニークなメニューでした。それに気を取られていると、おいしくいただいているソースに大豆ミートが使われていたことにまったく気がつかないまま、完食です。食べ終わった後に、どこにベジミートが使われているかを調べて、へーっと思ったのでした。
【ラーメン 鯛塩そば 灯花】ピリ辛!オーツ鯛らぁ麺
そぼろ肉だけでなく、オーツミルクも植物由来ということで驚きます。鯛の出汁と相性がぴったりでした。腎臓にダメージを負っているのでラーメンスープは飲まないようにしている(というか基本的にラーメンは食べない)のですが、塩分とコレステロールが低いと罪悪感なくいけます。
【火鍋・中華料理 小肥羊】大豆ミートのピリ辛あんかけ丼
そぼろ肉でこれくらい強めの味付けだと、言われたところで大豆ミートだとは分からず、ふつうにおいしくいただきました。ここのお店の本来の売りである火鍋はオーダーしなかったので、それはまた近いうちに試してみたいです。
【イタリアンバール POLLO PORRO】ポテトのガーリックチーズソース
これは何種類かの植物由来チーズとバターをブレンドしたもののようで、とろっとろの状態でおいしくいただきました。ディナーで行ったのでメインが来る前にワインと一緒にいただきましたが、確かに相性が良いです。
【インディアンダイニング&バー ロイヤルココナッツガーデン】パンプキンといんげんとキーマと3種のチーズカレー
野菜ゴロゴロ系カレーだから肉にベジミートが使われているかと思い込んでいたら、チーズ3種類が植物由来で、意表を突かれました。コクがあっておいしい。初めてのお店だったから中辛でオーダーしたけど、このチーズがあるなら辛口でいくのもおいしそう。
【とんかつ 伊達かつ】植物肉梅メンチカツと牡蠣フライ定食
実は一番驚いたのはこのお店の牡蠣(さすがに動物性)のあまりのデカさだったけれども、何も気がつかずに普通においしく植物性メンチカツもいただいておりました。植物由来肉そぼろは他のメニューでも使い勝手が良いだろうことは分かりますが、メンチカツみたいに固めてもおいしいです。ロールキャベツとか、肉まんとか、いろいろバリエーションが広がりそう。
総括
いやまあ、とにかく感心しました。うまい。さすがにデカいベジミートの塊だと本物肉?と違うことはすぐに分かるけれども、メニュー開発の工夫と料理人の腕でどうにでも美味しくなることを実感しましたし、違いがあること自体はたぶん本質的な問題ではないでしょう。
思い出したのが、もう30年ほど前の大学院生時代のできごとです。ドイツからマーティン君という留学生が日本教育史研究室に配属されたのですが、その彼が、私が初めてリアルで出会ったベジタリアンでした。で、彼が大学生協に興味があるというので(ドイツにはなかったらしい)生協食堂に連れて行ったところ、その当時は(あるいは今でも)ベジタリアン向けメニューなんてものは一切なく、メニュー表を見て困っていたマーティン君に「サラダ」をお勧めするしかなかったのですが、なんと提供されたサラダにはツナが満載されていて、彼はツナを全部よける努力をする羽目に陥ったのでした。その光景は自分にとってはなかなかのカルチャーショックで、「多様性」なるものの実態を肌で感じた出来事でした。
で、現在は東京のところどころにビーガン向けやハラルメニューのお店があるけれども、まだまだ数は少ないし、一般店舗で配慮することは(30年前の生協食堂と同じく)まだまだ広まっていないように思います。つまり、マーティン君を「ふらっ」と連れていけるお店がないということです。逆に、こういうメニューが一品目でも用意されているお店を知っていれば、そこにはどんな人(特に海外からのお客)でも安心して連れていくことができます。マーティン君にサラダを勧めてツナをよけさせるなんてガッカリなことは起こりません。(そのお店のツナは植物由来ですから)。
今後ますます国際化が進行する日本で多様な食文化が混在する状況になりつつあるとき、あるいは個人の食物アレルギー等への配慮を進めようというとき、こういうメニュー開発がいよいよ重要になっていきそうな気がします。
リンク
▼プロの料理人と学生との協働 プラントベースフードを使ったメニュー開発(東京家政大学ヒューマンライフ支援センター)
▼チャレンジ・ザ・グルメ2024(東武百貨店)
■産学連携企画 池袋東武×東京家政大学 「チャレンジ・ザ・グルメ 2024~未来のグルメにチャレンジ~」 プラントベースフードを使用した新メニューを共同開発!(@Press)
■東京家政大学の学生と東武百貨店 池袋本店 レストラン街スパイスがプラントベースフードを使用した新メニューを共同開発 ― 11月1日~12月1日の「チャレンジ・ザ・グルメ 2024~未来のグルメにチャレンジ~」で提供(大学プレスセンター)