【要約と感想】小針誠『アクティブラーニング―学校教育の理想と現実』

【要約】アクティブラーニングという言葉に乗せられて右往左往していませんか。これ、よく考えると(あるいは考えなくても)、とても胡散臭い言葉ですよ。歴史的に何度も失敗を繰り返しているし、理論的にも無理があるし、そもそも学校教育の理想と現実のギャップを踏まえれば、変だってことが分かりそうなもんですよね。

【感想】いい本だった。とてもありがたい。アクティブラーニングの胡散臭さに対しては授業でも多角的に指摘しているつもりではあるが、今後は「アクティブラーニングに違和感を抱いたら、この本を読め」と言っておけば足りそうだ。
個人的には、アクティブ・ラーニング問題の本質は、「教育目的」に対する議論を欠いたままで「主体性の調達」に躍起になっているところにあると思っている。本書は戦中にも「主体性の調達」のためにアクティブラーニングが利用された例を的確に指摘していて、とても説得力がある。現在のアクティブラーニングも、所詮は知識基盤社会や第四次産業革命下で斜陽化しつつある日本の産業界に寄与できる有能な人材を作ろうという偏った目的に奉仕するために構想されているだろうことは、誰の目にも明らかだろう。ここが胡散臭さの一番の根底にある。

と言いつつも。やはり教育に携わる身としては、教師が一方的に知識を与える19世紀型授業よりも、学習者の興味や関心に基づいて内側から個性を伸ばす21世紀型スタイルの方が、人間形成にとって本質的な在り方だろうという直感を抱くのも確かなのだった。時の政権や偉い役人たちが命令するから行なう他律的なアクティブラーニングではなく、「教育目的に即して本質的な教育方法=メトーデ」を模索しながら構想された主体的なアクティブラーニングであれば、きっと子どもたちの成長に資する有益な実践になるはずだ。そう信じて、頑張ろう。

小針誠『アクティブラーニング―学校教育の理想と現実』講談社現代新書、2018年