【要約と感想】荻上チキ『いじめを生む教室―子どもを守るために知っておきたいデータと知識』

【要約】いじめを解決するために必要なデータと知識は、かなり集まっています。しかし愚かで勉強不足の芸能人など、マスコミはそれらの知見をまったく利用せず、トンチンカンでいい加減でデタラメな感情論を垂れ流しています。道徳教科論者も同様に愚かです。それではいじめは解決しません。
いじめを解決するために、まず日本特有の現象を把握しましょう。それは、いじめが「教室」で起こっていることです。また、9月に深刻化し、その芽は6月にあることです。先生が解決できるということです。体罰がいじめを助長することです。
データを踏まえて、「不機嫌な教室」から「ご機嫌な教室」へと転換しましょう。「良い/悪い」ではなく「アウト/セーフ」で指導しましょう。ハイリスク層へのケアを厚くしましょう。教員のゆとりを増やしましょう。

【感想】いじめに関する総合的な知見として、2019年時点ではもっともコンパクトに良くまとまっている本かもしれない。理論、実態、予防法、解決策など、総合的な理解が得られる好著のように思う。
おとなたちが力を合わせて、いじめを解決していきたいものだ。(しかしその前に、おとな同士のいじめをなくさなければな…)

【言質】道徳教科化といじめの関連に関する言及をメモしておく。

「そもそも道徳教科化の推進論者は、その政策がいじめ対策に効くという論拠を示せていません。もともと道徳を教科化したいと考えていた人たちが、大津の事件を政治利用したにすぎないのです。」79頁

【リンク】
ストップいじめ!ナビ いますぐ役立つ脱出策

荻上チキ『いじめを生む教室―子どもを守るために知っておきたいデータと知識』PHP新書、2018年