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【感想】佐野翔音監督『こども食堂にて』

映画を観てきました。「こども食堂にて」というタイトルで、もちろん子ども食堂が舞台の話です。
いやあ、涙腺はもともと強い方ではないのですが、最後の方はずっと涙腺が崩壊したままでした。いい映画でした。

児童虐待の辛い体験を乗り越えて前向きに生きる女子大生が、子ども食堂でボランティアに携わり、様々な事情を抱える子どもや大人と関わっていく話です。体中に痣を作って被虐待の疑いが強い女の子や、悪いと分かっていながら障害を抱える子どもに手をあげてしまう母親や、実の母親に会いたいことを里親に言い出せない男の子など、生き辛さを抱える人たちを「見守ることしかできない」という子ども食堂の活動の過程で、少しずつ主人公が成長していきます。

この映画を観て、私が強く思ったことが三つあります。(1)チームの重要性、(2)食べることの意義、(3)家庭でも学校でもない第三の場所の重要性です。

(1)チームの重要性
主人公は、最初は一人で問題の渦中に突入していくのですが、何もできない自分に対する情けなさで無力感を強めるだけに終わります。しばらく「私は何もできない」と落ちこむのですが、偶然入ったガラス工芸店で、何人もの専門家が関わって初めてようやく一つの作品を作り上げることができることを聞き、考えを改めます。一人でできることには限界があるけれども、たくさんの人が役割分担をして一人一人の持ち場を誠実に守っていくことが、最終的に価値ある仕事に繋がっていきます。
そう考えると、子ども食堂の運営者が言う「私たちの仕事はここまで」という言葉は、とても含蓄が深いものに思えます。もちろんそれは行きづらさを抱える人々を突き放す言葉ではなく、自分の持ち場を誠実に守るという決意を前提として、他の持ち場を守る人々をチームの仲間として信頼する言葉でもあります。自分たちの仕事に限界はあるけれども、他の専門家たちと連携することで様々な困難を解決できると信じている言葉です。実際、この映画では、子ども食堂と児童福祉に関わる専門家たちとのコミュニケーションが、しっかり描かれています。
私も大学の教職課程を持ち場としている身として、まずは自分の持ち場をしっかりと守りつつ、他の専門家の方々との連携を深めていくことが大事なのだと、改めて認識しなおした次第です。

(2)食べることの意義
映画の舞台が「こども食堂」ということで、もちろん「食」が中心的なテーマとなっている映画です。子ども食堂の運営を裏から支える八百屋さんや魚屋さん、パン屋さんたちの温かい活動が、さりげなくも丁寧に描かれていました。また、子ども食堂のシーン以外でも、コミュニケーションツールとしての「お饅頭」の扱い方が印象的で、人と人を繋げる行為としての「食」がライトモチーフとなっているように感じました。
言うまでもなく、生きることのいちばんの基本は「食」にあります。が、このいちばん大事であったはずの「食」の土台が、現代では壊滅的に崩れてきています。特に現在では「食」が徹底的に個人化・市場化してしまい、人と人を繋げる基礎が見えなくなっています。失われた「人と人との繋がり」を取り戻す上で、「子ども食堂」が「食」を基礎に置いていることは、とても重要なことのように思います。単に話を聞いても何も話してくれない子どもも、安心して「食」に参加できる場では口を開いてくれそうな気がします。安全に「食」を楽しむことは、生きることを無条件に肯定することだからです。
よくある勘違いとして、子ども食堂は貧困の子どもを対象にしていると思われがちですが、本来はそうではありません。貧困かどうかに関係なく、子どもたちが安心して「食」に関われる場です。生きるための基礎となる「食」が安定して、初めて人と人が繋がる条件が成立するということが、よく分かる作品だと思いました。

(3)家庭でも学校でもない第三の場所の重要性
近年では、子育ては家族がもっぱら責任を負うべきものだとされがちですが、かつてはそうではありませんでした。生産力の低い時代、子育ての優先順位は低く、まずは生存に必要なカロリーを確保することが最優先事項でした。大人たちは農作業や狩猟で忙殺され、子育ては近所の小さな女の子が担当する(いわゆる子守)など、地域全体で担うものでした。現代では生産力の向上と同時に家族の島宇宙化が進行し、家族が子育ての責任をもっぱら背負うようになり、地域が子育てに関与しなくなりました。児童虐待の増加は、このような「家族にだけ責任を負わせる」ような子育て形態の変化が土台にあるように思います。
地域の存在感の低下を埋め合わせるように児童相談所など行政への期待が増してきていますが、まだまだ人員や予算が不足しているため、すべてをカバーしきることは難しい状況です。そんな中、かつては地域が行ない、本来は行政がカバーしなければいけない領域を代わりに確保しているのが、子ども食堂という存在だと思います。その存在は、作中では「家庭でも学校でもない第三の場所」と呼ばれました。
80年代から90年代にかけての少年にとって、「家庭でも学校でもない第三の場所」はゲームセンターだったりストリートだったりしました。そこでは家庭や学校の序列からは解放されて、本来の自分を取り戻せるような感覚を得られました。今では、その場所はインターネットなど仮想空間になっているかもしれません。が、仮想空間では、お腹がふくれません。「第三の場所」としての子ども食堂は、子どもたちの居場所を確保する場として、本当に貴重な存在だと思いました。

そんなわけで、この作品、派手な演出があるわけでもなければ、びっくりするようなドンデンガエシの脚本なわけでもありません。ドキュメンタリーの手法を交えた、会話中心で進行する、地味な映画であるとはいえます。が、観てよかったなと、確実に思える作品でもあると思います。いろいろな立場の人に観てもらいたいなと思いました。私個人は、地域の子ども食堂に実際に行ってみたいと思いました。観る前には心のなかに存在しなかった感情です。
上映後に行なわれた監督のトークショーも興味深く聞きました。まさか作中の重要な登場人物が監督本人だと思っていなかったので、そこそこ意表を突かれました。

2018年10月12日まで、渋谷アップリンク上映中「こども食堂にて」

道徳教育指導論-2

第2回=10/5

前回のおさらい

・道徳教育の目的←「人格の完成」「生きる力」「豊かな心」
・道徳教育は、教育活動全体を通じて行います。
・「特別の教科道徳」は、要として期待されています。

道徳の内容:何を教えるか

・週1回の「特別の教科道徳」で何をどのように教えるかは、『学習指導要領』で決められています。139~143頁を確認しておくこと。
・内容「学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の要である道徳科においては、以下に示す項目について扱う。」

A 主として自分自身に関すること
[自主、自律、自由と責任]
自律の精神を重んじ、自主的に考え、判断し、誠実に実行してその結果に責任をもつこと。
[節度、節制]
望ましい生活習慣を身に付け、心身の健康の増進を図り、節度を守り節制に心掛け、安全で調和のある生活をすること。
[向上心、個性の伸長]
自己を見つめ、自己の向上を図るとともに、個性を伸ばして充実した生き方を追求すること。
[希望と勇気、克己と強い意志]
より高い目標を設定し、その達成を目指し、希望と勇気をもち、困難や失敗を乗り越えて着実にやり遂げること。
[真理の探究,創造]
真実を大切にし、真理を探究して新しいものを生み出そうと努めること。
B 主として人との関わりに関すること
[思いやり、感謝]
思いやりの心をもって人と接するとともに、家族などの支えや多くの人々の善意により日々の生活や現在の自分があることに感謝し、進んでそれに応え、人間愛の精神を深めること。
[礼儀]
礼儀の意義を理解し、時と場に応じた適切な言動をとること。
[友情、信頼]
友情の尊さを理解して心から信頼できる友達をもち、互いに励まし合い、高め合うとともに、異性についての理解を深め、悩みや葛藤も経験しながら人間関係を深めていくこと。
[相互理解、寛容]
自分の考えや意見を相手に伝えるとともに、それぞれの個性や立場を尊重し、いろいろなものの見方や考え方があることを理解し、寛容の心をもって謙虚に他に学び、自らを高めていくこと。
C 主として集団や社会との関わりに関すること
[遵法精神、公徳心]
法やきまりの意義を理解し、それらを進んで守るとともに、そのよりよい在り方について考え、自他の権利を大切にし、義務を果たして、規律ある安定した社会の実現に努めること。
[公正、公平、社会正義]
正義と公正さを重んじ、誰に対しても公平に接し、差別や偏見のない社会の実現に努めること。
[社会参画、公共の精神]
社会参画の意識と社会連帯の自覚を高め、公共の精神をもってよりよい社会の実現に努めること。
[勤労]
勤労の尊さや意義を理解し、将来の生き方について考えを深め、勤労を通じて社会に貢献すること。
[家族愛、家庭生活の充実]
父母、祖父母を敬愛し、家族の一員としての自覚をもって充実した家庭生活を築くこと。
[よりよい学校生活、集団生活の充実]
教師や学校の人々を敬愛し、学級や学校の一員としての自覚をもち、協力し合ってよりよい校風をつくるとともに、様々な集団の意義や集団の中での自分の役割と責任を自覚して集団生活の充実に努めること。
[郷土の伝統と文化の尊重、郷土を愛する態度]
郷土の伝統と文化を大切にし、社会に尽くした先人や高齢者に尊敬の念を深め、地域社会の一員としての自覚をもって郷土を愛し、進んで郷土の発展に努めること。
[我が国の伝統と文化の尊重、国を愛する態度]
優れた伝統の継承と新しい文化の創造に貢献するとともに、日本人としての自覚をもって国を愛し、国家及び社会の形成者として、その発展に努めること。
[国際理解、国際貢献]
世界の中の日本人としての自覚をもち、他国を尊重し、国際的視野に立って、世界の平和と人類の発展に寄与すること。
D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること
[生命の尊さ]
生命の尊さについて、その連続性や有限性なども含めて理解し、かけがえのない生命を尊重すること。
[自然愛護]
自然の崇高さを知り、自然環境を大切にすることの意義を理解し、進んで自然の愛護に努めること。
[感動、畏敬の念]
美しいものや気高いものに感動する心をもち、人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めること。
[よりよく生きる喜び]
人間には自らの弱さや醜さを克服する強さや気高く生きようとする心があることを理解し、人間として生きることに喜びを見いだすこと。

内容の取り扱い:どう教えるか

道徳教育に関する配慮事項:12~13頁

・全体計画を作成する。→「重点目標」「指導方針」「他の領域との関連」「家庭や地域社会との連携の方法」
・「道徳教育推進教師」を中心に、全教師が協力して展開する。
・指導内容の重点化。
・「豊かな体験」の充実。
・いじめの防止、安全の確保。
・情報の公開。家庭や地域の人々との連携。

指導計画の作成と内容の取り扱い:141~142頁

・原則として学級担任の教師が行います。
・「道徳教育推進教師」を中心とした指導体制を作ります。
・「要としての役割」=補充・深化・統合。
・生徒自らが考え、理解し、主体的に取り組む。教師が生徒と共に考える姿勢を大切にします。
・言語活動を充実します。
・多面的・多角的な見方。
・問題解決学習、体験的な学習。
・情報モラル、生命倫理、持続可能な発展。
・授業の公開や実施、教材の開発などで、家庭や地域社会との連携。

評価

生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要があります。ただし、数値などによる評価は行いません。

道徳の教科化

・中学校では2019年度から道徳の教科化が完全実施されます。(小学校は2018年度から)。学校の判断により、先行して実施しても構いません。

「教科」とは何か?

・以前の『学習指導要領』の構成→教科:道徳:総合的な学習の時間:特別活動
・教科=(1)教科書を使う(2)点数で評価する(3)教科固有の教員免許が必要。
・かつての道徳、総合、特別活動=(1)教科書を使わない(2)点数で評価しない(3)固有の教員免許が必要ない。
→特別の教科道徳=(1)教科書を使う(2)点数ではなく言葉で評価する(3)教科固有の教員免許が必要ない。

教科化の経緯

・いじめ問題?
・教育再生会議と教育再生実行会議。

復習

・道徳科で教えるべき内容と方法について把握しておこう。
・「道徳の教科化」の内容と経緯について理解しておこう。

予習

・教育基本法の「人格の完成」について考えておこう。

教育学Ⅱ-3

■新松戸キャンパス 10/5(金)
■龍ケ崎キャンパス 10/15(月)

フランス革命と国民国家形成

・フランス革命の具体的展開。反革命からヨーロッパ全体を巻き込んだ戦乱へ。
・対仏大同盟v.s.ナポレオン。フランス大勝利。どうしてフランスは強かったのでしょうか?
・騎士+傭兵v.s.国民軍。国家総動員体制。
・名誉と金v.s.愛国心。「散兵戦術」のような戦い方。
・身分制v.s.自由と平等。ベートーベン交響曲第3番「英雄」。
・中世国家よりも国民国家のほうが強いことが誰の目にも明らかとなります。国民国家の強さの源はなんでしょう?
・ナショナリズムは、愛国心の根拠であると同時に、自由と平等の根拠ともなります。
・フランスのナショナリズムはヨーロッパ全土へ輸出され、各地域でナショナリズムが勃興します。
・その後、教育によってナショナリズムが創出、維持されます。

国旗・国歌・国語・歴史・地理

・ナショナリズムを維持するため、「教育」に期待がかかります。
・国旗:「旗」に期待される統一への働き。
・国歌:「歌」に期待される統一への働き。
・国語:「ことば」に期待される統一への働き。
・歴史:「物語」に期待される統一への働き。
・地理:「風景」「風土」に期待される統一への働き。

各国の国歌

・それぞれ国民統合の象徴として働く一方で、同時に何かしらの問題を抱えているのはどういうことでしょうか?

フランスの国歌

・「ラ・マルセイエーズ」
・国民統合=国民全員で祖国を守ったときの記憶。
・歌詞に対する疑問。

イングランドの国歌

・「God Save the Queen」
・国民統合=英国王室の賛歌。
・6番の歌詞に対する疑問。イングランドとスコットランドの関係。

ドイツの国歌

・「ドイツ国民の歌」
・国民統合=国家統合の象徴。
・1番と2番が封印。

スペインの国歌

・「国王行進曲」
・歌詞のない国歌。スペインとカタルーニャの関係。

復習

・国歌が国民統合に果たす役割について押さえておこう。

予習

・「教育勅語」について調べておこう。

教育概論Ⅱ(中高)-4

▼語学・心カ・教福・服美・表現 10/6
▼栄養・環教 10/9

前回のおさらい

・フランス革命の展開。ナショナリズムの強さの理由。
・各国の国歌。国民を統合する役割がある一方、取り残される人々の問題がありました。
・国語には国民を統合する機能がありますが、一方で方言は撲滅されていきます。

国語による国民統合(つづき)

・言葉は単なるコミュニケーション・ツールではなく、国家のアイデンティティでもあります。
・しかし、やはり言葉はコミュニケーション・ツールでもあります。教育で使うためには、どうしても科学や社会に必要なボキャブラリーを揃える必要があります。

日本語廃止論

森有礼(もりありのり)が明治初期に日本語廃止を主張しました。
・どうして後に初代文部大臣にまでなる森が日本語廃止を主張したのでしょうか?
・明治初頭では、方言(身分と地域)が多様すぎて、お互いに言葉が通じませんでした。そして、科学や社会に関する語彙が貧弱でした。

方言矯正と標準語

・第一期国定国語教科書:1904年、いわゆる「イエスシ読本」←東北方言と関東方言の矯正を狙って作られました。
・沖縄において、方言札が使用されました。
・「標準語」が開発されます。→たとえば「お父さん」「お母さん」など。
・新しい日本語を作っていくのは、文学者の役割かもしれません。

日本のナショナリズム

・明治維新(1868年):身分制社会から国民国家へ転換しました。
・文明開化:日本の伝統文化をことごとく否定し、外来文化を崇拝するムーブメントです。鹿鳴館時代とも言われたりします。
・学制(1872年):フランスの真似をした教育制度です。教育内容も西洋の翻訳にとどまります。
福沢諭吉:『学問のすすめ』など、学制の基本的な考え方に影響を与えています。立身出世主義、国民皆学、実学主義、受益者負担。
・日本の日本らしさとは何でしょうか?→天皇の再発見。

日本の祝祭日の由来について考えてみよう。

・日本の祝祭日には、必ず連休になるものと、火曜日や水曜日ならそのままになるものと、2種類に分けられます。どうしてこのような違いがあるのでしょうか?

教育勅語

・1891年渙発、1948年失効確認(衆議院、参議院)。
元田永孚(もとだながざね)と井上毅(いのうえこわし)が中心となって作成します。儒学主義と近代主義がミックスされた内容になっています。

日本近代と戦争

・日本が外国とどれくらい戦争したか、考えてみよう。
・日本の歴史全体を考えたときに、近代の戦争の特徴について考えてみよう。

教育勅語の構造

・3つのパートに分けると、理解しやすくなります。
・教育勅語には「いいことも書かれている」とか「普遍的なことも書かれている」と主張する人々は、第二パートにしか注目していません。しかし、もし単に「いいことも書かれている」だけで良いとしたら、聖書でもコーランでも論語でも良くなってしまいます。なぜ、聖書でもコーランでも論語でもなく「教育勅語」である必要があったのでしょうか。
・「日本人」という自己意識の形成にとって決定的に重要なのは、第一パートと第三パートです。第一パートの理解を抜きにして第二パートを語ることはできませんし、語る意味がありません。
・第一パートを理解するためには、日本神話(とくに天孫降臨)に対する知識が不可欠です。
・第二パートの徳目は、「儒教」の伝統的徳目に近代主義を混ぜたものです。
・教育勅語を中心とした教育体制が構築されます。修身、国語、歴史、地理との関係。
・しかしそもそも、教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのでしょうか?

ナショナリズムの力と問題

・身分制秩序を破壊して、国民を平等に向かわせる力を持っています。
・異質な集団を一つにまとめる力があり、戦争に強くなります。
・一方で、異質なものを排除しながら「純粋」さを追求していく傾向を強めます。
・排除したものを「敵」として固定し、憎しみを増幅させる作用があります。
・巨大な力と、コントロールの難しさを、併せ持っています。

復習

・「教育勅語」の構造について押さえておこう。
・教育基本法と教育勅語の違いについて押さえておこう。

予習

・「カリキュラム」という言葉の意味について調べておこう。

教育概論Ⅱ(栄養)-3

▼10/2

前回のおさらい

・前近代にはナショナリズムがありませんでした。
・country、state、nationそれぞれニュアンスが違います。国民国家とは、stateとnationの境界線が一致することを理想とする国家です。
・フランス革命の展開に伴って、ナショナリズムが発生しました(発明されました)。

国旗・国歌・国語・歴史・地理

・nationとstateを一致させるため、「教育」に期待がかかります。
・国旗:「旗」に期待される統一への働き。
・国歌:「歌」に期待される統一への働き。
・国語:「ことば」に期待される統一への働き。
・歴史:「物語」に期待される統一への働き。
・地理:「風景」「風土」に期待される統一への働き。

各国の国歌

・それぞれ国民統合の象徴として働く一方で、同時に何かしらの問題を抱えているのはどういうことでしょうか?

フランスの国歌

・「ラ・マルセイエーズ」
・国民統合=国民全員で祖国を守ったときの記憶。
・歌詞に対する疑問。

イングランドの国歌

・「God Save the Queen」
・国民統合=英国王室の賛歌。
・6番の歌詞に対する疑問。イングランドとスコットランドの関係。

ドイツの国歌

・「ドイツ国民の歌」
・国民統合=国家統合の象徴。
・1番と2番が封印。

スペインの国歌

・「国王行進曲」
・歌詞のない国歌。スペインとカタルーニャの関係。

国語による国民統合

・フランスの言語状況。フランス革命当時、フランス人が話していたのは何語でしょうか?
・「国語」と「方言」は、どこがどう違っているのでしょうか・←「方言札」による方言撲滅運動。
・東ティモール:2002年にインドネシアから独立しました。

東ティモールが実際に国語に選んだのは何語でしょうか?(ヒント:インドネシアから独立)
(1)インドネシア語:90%
(2)テトゥン語:40%
(3)英語:10%
(4)ポルトガル語:5%

・言葉は単なるコミュニケーション・ツールではなく、国家のアイデンティティとなるものです。
・しかし、言葉はコミュニケーション・ツールでもあります。科学や社会に必要なボキャブラリーも大切です。

日本語廃止論

・森有礼(もりありのり)が明治初期に日本語廃止を主張しました。
・どうして後に初代文部大臣にまでなる森が日本語廃止を主張したのでしょうか?
・明治初頭では、方言(身分と地域)が多様すぎて、お互いに言葉が通じませんでした。また、科学や社会に関する語彙が貧弱でした。

方言矯正と標準語

・第一期国定国語教科書:1904年、いわゆる「イエスシ読本」。
・東北方言と関東方言の矯正。
・方言札。
・「標準語」の開発。「お父さん」「お母さん」。
・新しい日本語を作っていくのは、文学者の役割かもしれません。

復習

・国歌や国語が国民統合に果たす役割について押さえておこう。

予習

・「教育勅語」について調べておこう。