「azabu2018d」タグアーカイブ

道徳教育指導論-8

道徳の模擬授業について

テーマの選び方

・『学習指導要領』「特別の教科 道徳」の内容に目を通し、22の徳目のうち、どのテーマを子どもたちに重点的に教えたいかを考える。
・選んだ徳目について、『学習指導要領解説編 特別の教科 道徳』の該当部分に目を通し、その徳目の本質について考えを深める。
・徳目の本質を考えるのに適した教材を選ぶ。

教材の選び方

・本来は「教科書」から教材を選ぶ。道徳の教科書には、掲載されているそれぞれの教材が22の徳目のうちのどれに対応しているのか明示してあるので、選びやすい。
・教科書はまだ発行されたばかりで手に入りにくいので、それ以外の教材から選ぶのも暫定的に可とする。

指導案の書き方

・主題名には、22の徳目のうちの何を扱うかを明記する。【 】の中には、学習指導要領の何に対応しているかを記号で明記する。(A-3とかC-14など)
・資料名には、授業で扱う資料のタイトルを明記する。
・主題設定の理由には、(1)教育内容(2)教育対象(3)教材(4)他教科・他領域との関連について記入する。
(1)教育内容には、この単元でどのような道徳的価値を伸ばすかを記入する。学習指導要領で説明されている道徳科の本質を踏まえて考えること。
(2)教育対象には、どのような生徒に教えるのか、個性を踏まえて記述をする。模擬授業の場合は仮想で書くしかないが、いちおうイメージを膨らませて想像で書いておく。
(3)教材には、その教材の特徴や個性を踏まえた上で、道徳教育の本質とどのように関わっているかを書く。道徳教育の本質を踏まえた上で、着実に教材を読み解き研究する姿勢が要求される。
・本時のねらいには、単元全体の中、この授業で特に何を狙いとするかを記入する。
・指導過程には、具体的にどのように展開するかを書く。「発問」の内容をしっかり決め、それに対する生徒たちの反応を想像しながら、想定される事態について細かく記入しておく。
・評価は、学習指導要領の観点に従うこと。

資料やワークシートのコピー

・水曜日までにpdfファイル等を電子メールに添付して送ってくれば、授業にかかる費用内で対応しておく。それを超えたら、基本的には自腹とする。
・印刷部数は30部程度。

道徳教育指導論-6

第6回=11/2

前回のおさらい

・道徳科の評価の特徴=生徒を比べるのではなく、個人的な成長に注目します。進学資料には使用しません。

道徳教育の歴史(日本編)

教育勅語(1890-1945)

・1891年渙発、1948年失効確認(衆議院、参議院)。
・元田永孚(もとだながざね)と井上毅(いのうえこわし)が中心となって作成します。儒学主義と近代主義がミックスされた内容になっています。

教育勅語の構造

・3つのパートに分けると、理解しやすくなります。
・教育勅語には「いいことも書かれている」とか「普遍的なことも書かれている」と主張する人々は、第二パートにしか注目していません。しかし、もし単に「いいことも書かれている」だけで良いとしたら、聖書でもコーランでも論語でも良くなってしまいます。なぜ、聖書でもコーランでも論語でもなく「教育勅語」である必要があったのでしょうか。
・教育勅語の性格を理解する上で決定的に重要なのは、第一パートと第三パートです。第一パートの理解を抜きにして第二パートを語ることはできませんし、語る意味がありません。
・第一パートを理解するためには、日本神話(とくに天孫降臨)に対する知識が不可欠です。
・第二パートの徳目は、「儒教」の伝統的徳目に近代主義を混ぜたものです。そもそも、教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのでしょうか?

教育勅語の失効

・1948年、衆議院と参議院での決議。何が問題だったのでしょうか?
・問題は「主権在君」と「神話的国体観」にありそうです。

学習指導要領(1947年版と1958年版)

・1947年版学習指導要領には道徳科がありませんでしたが、1958年版学習指導要領には「特設道徳」が登場します。

逆コース

・中国(1949年)と朝鮮半島(1950年)の情勢が変化し、冷戦体制によって、GHQの方針が転回しました。
サンフランシスコ平和条約(1951年)。
池田ロバートソン会談(1953年)
・教育二法(1954年)。「教育公務員特例法の一部を改正する法律」と「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」。
・地方教育行政の組織及び運営に関する法律(1956年)。教育委員選出を公選制から首長による任命制に転換。

試験のためのチェックポイント

道徳教育の目的

□教育基本法が目指す教育の目的「人格の完成」に道徳教育がどのように関わっているか理解し、説明できる。
□学習指導要領が掲げる「生きる力」を実現するために道徳教育が果たすべき役割について理解し、説明できる。
□学習指導要領に示されている「豊かな心」と道徳教育の関係について理解し、説明できる。

道徳教育と道徳科の関係

□「道徳教育」と「道徳科」の違いと関係について、説明できる。
□学校教育全体の中で道徳科が果たすべき役割と意義について、説明できる。
□国語や理科等の「教科」が道徳教育にどのように関係するか、学習指導要領に即して理解し、具体的に説明することができる。
□道徳が教科化されたことで、何がどのように変わったか説明できる。

道徳科の内容と方法

□道徳科で何を教えるのか、領域が4つに区分されていることなど、学習指導要領に則って内容を理解している。
□「考え、議論する道徳」への転換の意義について理解し、授業のあり方を具体的にどう変えていかなければならないか、説明できる。
□「自己を見つめる」「物事を広い視野から多面的・多角的に考える」「人間としての生き方についての考えを深める」という道徳科の方法が、具体的にどういうことか説明できる。

道徳科の評価

□道徳科における評価の役割と意義を理解している。
□道徳科の評価について、他の教科等とは異なる特徴を理解している。

道徳教育指導論-5

第5回=10/26

前回のおさらい

・教え方:考え、議論する道徳

評価

生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要がある。ただし、数値などによる評価は行わないものとする。(143頁)

「特別の教科 道徳」の指導方法・評価等について(報告)
【道徳科における評価の基本的な考え方】
○ 児童生徒の側から見れば、自らの成長を実感し、意欲の向上につなげていくものであり、教師の側からみれば、教師が目標や計画、指導方法の改善・充実に取り組むための資料
○ 道徳科の特質を踏まえれば、評価に当たって、
・ 数値による評価ではなく、記述式とすること、
・ 個々の内容項目ごとではなく、大くくりなまとまりを踏まえた評価とすること、
・ 他の児童生徒との比較による評価ではなく、児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め、励ます個人内評価として行うこと、
・ 学習活動において児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかといった点を重視すること、
・ 道徳科の学習活動における児童生徒の具体的な取組状況を一定のまとまりの中で見取ることが求められる。

【道徳科の評価の方向性】
○ 指導要録においては当面、一人一人の児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子について、発言や会話、作文・感想文やノートなどを通じて、
・ 他者の考え方や議論に触れ、自律的に思考する中で、一面的な見方から多面的・多角的な見方へと発展しているか(自分と違う意見を理解しようとしている、複数の道徳的価値の対立する場面を多面的・多角的に考えようとしている等)
・ 多面的・多角的な思考の中で、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているか(読み物教材の登場人物を自分に置き換えて具体的に理解しようとしている、道徳的価値を実現することの難しさを自分事として捉え考えようとしている等)といった点に注目して見取り、特に顕著と認められる具体的な状況を記述する、といった改善を図ることが妥当。
○ 評価に当たっては、児童生徒が一年間書きためた感想文をファイルしたり、1回1回の授業の中で全ての児童生徒について評価を意識して変容を見取るのは難しいため、年間35時間の授業という長い期間で見取ったりするなどの工夫が必要。
○ 道徳科における学習状況や道徳性に係る成長の様子の把握は、「各教科の評定」や「出欠の記録」等とは基本的な性格が異なるものであることから、調査書に記載せず、入学者選抜の合否判定に活用することのないようにする必要。

教科等における道徳教育

国語:「第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき、道徳科などとの関連を考慮しながら、第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について、国語科の特質に応じて適切な指導をすること。」(23頁)
具体的には24~25頁。

理科:「第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき、道徳科などとの関連を考慮しながら、第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について、理科の特質に応じて適切な指導をすること。」(82頁)
「生命を尊重し、自然環境の保全に寄与する態度を養うようにすること。」(82頁)

特別活動:「目標:集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ、様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して、次のとおり資質・能力を育成することを目指す。 」(147頁)
「第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき、道徳科などとの関連を考慮しながら、第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について、特別活動の特質に応じて適切な指導をすること。」(151頁)
「生徒及び学校の実態並びに第1章総則の第6の2に示す道徳教育の重点などを踏まえ、各学年において取り上げる指導内容の重点化を図るとともに、必要に応じて、内容間の関連や統合を図ったり、他の内容を加えたりすることができること。」(151頁)

道徳教育の全体計画

・学校の教育目標等を踏まえ、道徳教育の重点目標を定める。
・教育目標や重点目標は、教育関係法規を前提とした上で、時代や社会の要請や学校や地域社会の実態を踏まえて策定する。
・重点目標を踏まえ、各教科等で具体的にどのような指導をするか構想する。

道徳教育の歴史(西洋編)

・ソクラテスの教育。
・無知の知、産婆術、汝自身を知れ。
・外側から何らかの基準を与えるのではなく、人間の本質からあるべき姿を引き出す。

復習

・道徳科の評価の特徴について押さえよう。
・各教科等での道徳教育の具体的なあり方について押さえよう。
・「全体計画」の構造について押さえておこう。

予習

・「学習指導要領」の変遷について調べておこう。

道徳教育指導論-4

第4回=10/19

前回のおさらい

・教育基本法第一条:教育の目的は「人格の完成」です。
・個性:代わりがない、アイデンティティ:変わらない、自由:責任。

道徳教育の意義

我が国の教育は、教育基本法第1条に示されているとおり「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われ」るものである。
人格の完成及び国民の育成の基盤となるものが道徳性であり、その道徳性を育てることが学校教育における道徳教育の使命である。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』1頁)

・道徳教育の意義を、教育の目的と関連づけて理解すること。

我が国の学校教育において道徳教育は、道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うものとされてきた。これまで、学校や生徒の実態などに基づき道徳教育の重点目標を設定し充実した指導を重ね、確固たる成果を上げている学校がある一方で、例えば、歴史的経緯に影響され、いまだに道徳教育そのものを忌避しがちな風潮があること、他教科に比べて軽んじられていること、読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導が行われる例があることなど、多くの課題が指摘されている。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』1~2頁)

→道徳の教科化(平成27年3月)。

「特定の価値観を押し付けたり、主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることは、道徳教育が目指す方向の対極にあるものと言わなければならない」、「多様な価値観の、時に対立がある場合を含めて、誠実にそれらの価値に向き合い、道徳としての問題を考え続ける姿勢こそ道徳教育で養うべき基本的資質である」との答申を踏まえ、発達の段階に応じ、答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の生徒が自分自身の問題と捉え、向き合う「考える道徳」、「議論する道徳」へと転換を図るものである。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』2頁)

考え、議論する道徳

思春期にかかる中学生の発達の段階においては、ふだんの生活においては分かっていると信じて疑わない様々な道徳的価値について、学校や家庭、地域社会における様々な体験、道徳科における教材との出会いやそれに基づく他者との対話などを手掛かりとして自己との関わりを問い直すことによって、そこから本当の理解が始まるのである。また、時には複数の道徳的価値が対立する場面にも直面する。その際、生徒は、時と場合、場所などに応じて、複数の道徳的価値の中から、どの価値を優先するのかの判断を迫られることになる。その際の心の葛藤や揺れ、また選択した結果などから、道徳的諸価値への理解が始まることもある。このようなことを通して、道徳的諸価値が人間としてのよさを表すものであることに気付き、人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念に根ざした自己理解や他者理解、人間理解、自然理解へとつながっていくようにすることが求められる。
(中略)
指導の際には、特定の道徳的価値を絶対的なものとして指導したり、本来実感を伴って理解すべき道徳的価値のよさや大切さを観念的に理解させたりする学習に終始することのないように配慮することが大切である。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』14~15頁)

自己を見つめる

よりよく生きる上で大切なものは何か、自分はどのように生きるべきかなどについて、時には悩み、葛藤しつつ、生徒自身が、自己を見つめることによって、徐々に自ら人間としての生き方を育んでいくことが可能となる。したがって、様々な道徳的価値について、自分との関わりも含めて理解し、それに基づいて内省することが求められる。その際には、真摯に自己と向き合い、自分との関わりで改めて道徳的価値を捉え、一個のかけがえのない人格としてその在り方や生き方など自己理解を深めていく必要がある。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』15~16頁)

物事を広い視野から多面的・多角的に考える

人としての生き方や社会の在り方について、多様な価値観の存在を前提にして、他者と対話し協働しながら、物事を広い視野から多面的・多角的に考察することが求められる。
(中略)
諸事象の背景にある道徳的諸価値の多面性に着目させ、それを手掛かりにして考察させて、様々な角度から総合的に考察することの大切さや、いかに生きるかについて主体的に考えることの大切さに気付かせることが肝要である。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』16頁)

人間としての生き方についての考えを深める

人間にとって最大の関心は、人生の意味をどこに求め、いかによりよく生きるかということにあり、道徳はこのことに直接関わるものである。
そもそも人生は、誰かに任せることができるものではない。誰かの人生ではなく一人一人が自分自身の人生として引き受けなければならない。他者や社会、周囲の世界の中でその影響を受けつつ、自分を深く見つめ、在るべき自分の姿を描きながら生きていかなければならない。その意味で、人間は、自らの生きる意味や自己の存在価値に関わることについては、全人格をかけて取り組むのである。
また、人間としての生き方についての自覚は、人間とは何かということについての探求とともに深められるものである。生き方についての探求は、人間とは何かという問いから始まると言ってもよい。人間についての深い理解なしに、生き方についての深い自覚が生まれるはずはないのである。言い換えれば、人間についての深い理解と、これを鏡として行為の主体としての自己を深く見つめることとの接点に、生き方についての深い自覚が生まれていく。そのことが、主体的な判断に基づく適切な行為の選択や、よりよく生きていこうとする道徳的実践へつながっていくこととなる。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』16~17頁)

道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる

道徳的判断力は、それぞれの場面において善悪を判断する能力である。(中略)
道徳的心情は、道徳的価値の大切さを感じ取り、善を行うことを喜び、悪を憎む感情のことである。(中略)
道徳的実践意欲と態度は、道徳的判断力や道徳的心情によって価値があるとされた行動をとろうとする傾向性を意味する。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』17頁)

道徳科の指導の基本方針

(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』74~76頁)

道徳科の特質を理解する

道徳科は、生徒一人一人が、ねらいに含まれる道徳的価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を広い視野から多面的・多角的に考え、人間としての生き方についての考えを深める学習を通して、内面的資質としての道徳性を主体的に養っていく時間である。

信頼関係や温かい人間関係を基盤に置く

道徳科が学級経営と深く関わっていることを理解し、学級における信頼関係に基づく温かい人間関係を築き上げ、心の交流を深めることが大切である。

生徒の内面的な自覚を促す指導方法を工夫する

道徳科は、道徳的価値についての単なる知的理解に終始したり、行為の仕方そのものを指導したりする時間ではなく、ねらいとする道徳的価値について生徒自身がどのように捉え、どのような葛藤があるのか、また道徳的価値を実現することにどのような意味を見いだすことができるのかなど、道徳的価値を自己との関わりにおいて捉える時間である。

生徒の発達や個に応じた指導方法を工夫する

生徒一人一人が、道徳科の主題を自分の問題として受け止めることができるように指導を工夫し、興味や関心を高められるように配慮することが大切である。

問題解決的な学習、体験的な活動など多様な指導方法の工夫をする

実際の生活においては、複数の道徳的諸価値が対立し、葛藤が生じる場面が数多く存在する。その際、一つの答えのみが存在するのではなく、生徒は時と場合、場所などに応じて、複数の道徳的諸価値の中からどの価値を優先するかの判断を迫られることになる。こうした問題や課題について、多面的・多角的に考察し、主体的に判断し、よりよく生きていくための資質・能力を養うことが大切である。このためには、問題解決的な学習が重要である。

道徳教育推進教師を中心とした指導体制を充実する

校長の方針を明確にし、道徳教育推進教師を中心に指導体制の充実を図るとともに、道徳科の授業への校長や教頭などの参加、他の教師との協力的指導、保護者や地域の人々の参加や協力などが得られるように工夫する。

復習

・道徳の目的と、それに関連した指導のあり方について、総合的に理解を深めておこう。

予習

・『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』74~83頁を読んで、「指導の基本方針」および「指導案」と「指導の工夫」について大雑把に把握しておこう。

道徳教育指導論-3

第3回=10/12

前回のおさらい

・何を教えるか=22の徳目を全部あつかいます。

道徳教育の意義

我が国の教育は、教育基本法第1条に示されているとおり「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われ」るものである。
人格の完成及び国民の育成の基盤となるものが道徳性であり、その道徳性を育てることが学校教育における道徳教育の使命である。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』1頁)

・道徳教育の意義を、教育の目的と関連づけて理解しよう。

人格の完成

・教育基本法第一条:教育の目的は「人格の完成」です。
・人格とは何か? 目に見えないし、触ることができないし、科学的に存在を確かめることができません。
・「好き」と「愛してる」という言葉の意味の違いを通して、「人格」について考えてみよう。

 好き愛してる
個性代わりがある代わりがない
タイプ言える言えない
数値化表せる表せない
アイデンティティ変わる変わらない
様相主観的な感情存在のあり方
対象モノ(純粋理性)人格(実践理性)

・モノと人格は、存在のしかたが全く異なります。人格とは、代わりがなく、変わらないようなものです。
・「人格を尊重する」とは、どういうことでしょうか。→モノとして扱わないことです。

個性

・個性=Individualityの翻訳語です。
・「個」性と見るか、個「性」と見るかで、意味が異なってきます。もともとは「個」性で、長所とか特徴とか持ち味などという言葉とはニュアンスが異なります。
・他のものと交換することができない、かけがえのない、なにか。それが取り去られたら、私が私でなくなってしまう、なにかのことです。それは究極的には「自由」とか「意志」とか「自律」という概念に関わってきそうです。
・「個性を尊重する」とはどういうことでしょうか?
・教育者が言ってはならない、個性を否定するような言葉に気をつけましょう。
・一人一人の個性を大事にするとはどういうことでしょうか?

アイデンティティ

・日本語では「自我同一性」や「存在証明」などと訳されることがあります。「あの私」と「この私」が一致していることを証明したいときなどに用いられます。「IDカード」=Identity card。
・自同律(principle of Identity):「A=A」「わたし は わたし」
・この世に変化しないものなどあるでしょうか? 「A→A’」
・私は常に変化し続けている(新陳代謝)にも関わらず、どうして常に「わたしはわたし」と言うことができるのでしょうか?
・わたしの属性について考えてみましょう。A=X、A=Y、A=Z・・・・。常に一致しているのは何でしょうか? 主語と述語の関係に注目してみましょう。
・常に主語であるものにはアイデンティティが成立していそうです。
・述語に重点を置くか、主語に重点を置くかで、同じ文章でも世界の見え方や関わり方が異なってきます。
・「主体性」や「自主性」とは何でしょうか?

自由と責任

・教育基本法第一条に続けて書かれている「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」とは何でしょうか?
・モノは自由ではないが、人格は自由です。
・教育とは、自由でないようなものを、自由にするための営みであると言えそうです。→カント「人間は教育によって初めて人間となることができる。」
・子供は不自由で、大人が自由? →子供は生理現象に無条件に従わざるを得ませんが、大人は同じ生理現象に対しても様々な選択肢を持っています。
・モノは物理法則に従わざるを得ませんが、人格を持つ者は自分でルールを作ってそれに従うことができます。
*立法能力:自分でルールを作って、自分で守ることができるような力のことです。他人の作ったルールに従う(他律)のではなく、自らの意志でルールに従う(自律)ことができる力のことです。

復習

・教育基本法第一条「人格の完成」は何を目指しているのか、自分の言葉で説明できるようにしよう。
・「人格」の形成が道徳教育の土台となることを意識しておこう。

予習

・特別の教科道徳の時間ではなく各教科で行なう道徳教育とはどのようなものか、具体的に考えてみよう。