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【紹介と感想】荒木紀幸『新モラルジレンマ教材と授業展開 考える道徳を創る(中学校)』

【紹介】新学習指導要領は「考え、議論する道徳」というキーワードを打ち出していますが、道徳の教科書は相変わらず特定の徳目を一方的に上から注入するような旧態依然のクローズエンド型教材に終始していて、これでは子供の道徳的判断力が育つわけがありません。本当に「考える道徳」を創るためには、教師や教科書が一方的にあらかじめ決まった答えを教えるのではなく、オープンエンド型の教材を使用し、子供たちが主体的に道徳的判断力を鍛えるような授業を行なうべきです。
本書は実際に中学校の道徳の授業で使用できるオープンエンド型の教材を多数用意し、授業の狙いや展開、板書の仕方、教材の特徴や注意点等を添え、「考える道徳」を創るためのヒントを提供しています。

【感想】これまで時間をかけて着実に積み重ねてきた実践経験を土台にしている上に、コールバーグの道徳性発達理論を背景にして議論を組み立てているため、論理的にも実践的にも説得力が高い。昨今の「道徳の教科化」によって、こういった説得力のある道徳的判断力養成のモラルジレンマ実践が増えるのか、それとも旧態依然の徳目注入主義が跋扈するのか、あるいは面倒臭い道徳教育を忌避する傾向が続くのか、実態を注目していかなくてはならない。

荒木紀幸編著『考える道徳を創る 中学校 新モラルジレンマ教材と授業展開』明治図書、2017年

【要約と感想】アリストパネース『蜂』

【要約】陪審制の裁判で他人に罰を与えることが快感になりすぎて狂ったように裁判に出席しようとする父親を、合理的な考えの若者がなんとか止めようとして、様々な工夫をしました。タイトルの「蜂」とは、被告を有罪にしなければ気が済まない人々を、誰彼かまわず指す蜂に喩えた皮肉です。

【感想】まあ、端的にいって、あまりおもしろくない。喜劇ということだけれども、くすりとも笑えない。それは作者のせいでも訳者のせいでもなく、作品と読者を隔てる時間のせいだろうとは思う。作品の背景となる習慣や固有名詞が体感的に分かっていれば、げらげら笑えたのかもしれない。アイスキュロスやエウリピデスの悲劇が時を超えてもやはり悲劇であるのに対して、アリストパネースの喜劇がまったく笑えないのは、少々興味深い現象ではある。
とはいえ、アリストパネースが描いたような、相手がどうあろうととにかく刺したくて仕方がない人間というものの性向は、現代のネット社会では日常的に確認できるものではある。2500年経っても人間がさほど進歩していないことはよく分かった。そういう普遍的な人間の愚かさを切り取ってみせるところに、アリストパネースの古典としての価値があるということか。

アリストパネース/高津春繁訳『蜂』岩波文庫、1955年

教育概論Ⅱ(栄養)-9

前回のおさらい

・1998年の学習指導要領改訂。学校週五日制のねらい。
・民営化のデメリット

学習指導要領の変遷(4)

・2003年、学習指導要領の一部改訂:書いていないことも発展的な内容として教えてよいことになります。(ゆとり教育の終わりの始まり)
・2008年、学習指導要領改訂:授業時間増、指導内容の充実。→詰め込み教育の復活と単純に考えていいのでしょうか?

学力の再定義:学校教育法改定(2007年)

・2007年に学校教育法が改定され、第30条に「学力」が定義されます。

前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

・教育の主な関心が、コンテンツ(内容・知識)からコンピテンシー(能力)やソフトスキル(関心・意欲・態度)へと転換しました。89年改訂で登場した「新学力観」が法律化されたものとも言えます。
*コンピテンシー(competency):単に知識として知っているだけではなく、様々な情報を実際に活用して成果を出すことができる能力。「社会人力」とか「生きる力」とか「女子力」のような、「○○力」という言葉の流行とも関連します。
*ソフトスキル:テストなどで数値化することができないものの、成功する上で実は決定的な能力。「非認知能力」などとも重なる概念です。

知識基盤社会

*知識基盤社会(knowledge-based society):新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増すような世の中を意味します。

我が国が科学技術創造立国の実現に向けて世界をリードし、成長し続けるためには、イノベーションを絶え間なく創造できる人材の育成が求められている。「知」を巡る国際競争の激化や知識基盤社会の進展等により、産業構造の変化も急速に進んでいる現代においては、多種多様な個々人が力を最大限発揮でき、それらが結集されるチーム力が必要とされている。(知識基盤社会が求める人材像、2009年)

2018年改訂:社会に開かれた教育課程

・2018年に改訂された学習指導要領には重要なキーワードが3つあります。一つが「社会に開かれた教育課程」です。

教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、社会に開かれた教育課程の実現が重要となる。(2頁)

・「社会に開かれた教育課程」とは、これからの教育が目指すべき全体的な理念や方向性を示すものです。

このような「社会に開かれた教育課程」としては、次の点が重要になる。
① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓ひらいていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年12月)

(1)「社会に開かれた」とは、まずは学校教育の目標が社会と共有されている状態を指します。→具体的な作業として学校目標の再検討に話が繋がります。
(2)次に「社会に開かれた」とは、社会や世界に通用する資質・能力を育てることを意味します。→具体的な作業として「育成すべき資質・能力」の話に繋がります。
(3)最後に「社会に開かれた」とは、もはや学校だけが教育を独占して担うべきではない、ということを示唆しています。→具体的な作業として「チーム学校」や「コミュニティ・スクール」の話に繋がります。
・これらの理念を実現するために具体的に遂行すべき仕事の全体像が「カリキュラム・マネジメント」となります。

復習

・ゆとり教育の方向性自体は変化していないものの、具体的な教育のあり方が変化していることに注意しよう。
・「社会に開かれた教育課程」の内容を押さえておこう。

予習

・カリキュラム・マネジメントについて調べよう。

教育課程の意義と編成-8

▼第8回=11/13

前回のおさらい

・カリキュラム・マネジメント
(1)教科横断的な教育課程編成。
(2)評価とPDCAサイクルの確立。
(3)人的・物的な資源の確保。

学習指導要領総則:教育課程の編成

1 各学校の教育目標と教育課程の編成

教育課程の編成に当たっては、学校教育全体や各教科等における指導を通して育成を目指す資質・能力を踏まえつつ、各学校の教育目標を明確にするとともに、教育課程の編成についての基本的な方針が家庭や地域とも共有されるよう努めるものとする。その際、第4章総合的な学習の時間の第2の1に基づき定められる目標との関連を図るものとする。(4~5頁)

・「資質・能力」=コンテンツ(知識)からコンピテンシー(能力)への転換。「何を教えるか」から「何ができるようになるか」への転換。

総合的な学習の時間の第2の1

各学校においては、第1の目標を踏まえ、各学校の総合的な学習の時間の目標を定める。(144頁)

総合的な学習の時間:第1の目標

探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 探究的な学習の過程において、課題の解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究的な学習のよさを理解するようにする。
(2) 実社会や実生活の中から問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする。
(3) 探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、積極的に社会に参画しようとする態度を養う。(144頁)
育成を目指す資質能力とは?
② 育成を目指す資質・能力の明確化
中央教育審議会答申においては、予測困難な社会の変化に主体的に関わり、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要であること、こうした力は全く新しい力ということではなく学校教育が長年その育成を目指してきた「生きる力」であることを改めて捉え直し、学校教育がしっかりとその強みを発揮できるようにしていくことが必要とされた。また、汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流を踏まえつつ、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等をバランスよく育成してきた我が国の学校教育の蓄積を生かしていくことが重要とされた。
このため「生きる力」をより具体化し、教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力を、ア「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」、イ「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」、ウ「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」の三つの柱に整理するとともに、各教科等の目標や内容についても、この三つの柱に基づく再整理を図るよう提言がなされた。
(『学習指導要領解説 総則編』3頁)

・「汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流」とは、OECDの言う「キーコンピテンシー」が念頭にあります。

特に、OECDの「キー・コンピテンシー」の概念については、グローバル化と近代化により、多様化し、相互につながった世界において、人生の成功と正常に機能する社会のために必要な能力として定義されており、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)にも取り入れられ、大きな影響を与えている。
この「キー・コンピテンシー」の概念については、具体的には、次のような内容で構成されている。
・ 言語や知識、技術を相互作用的に活用する能力
・ 多様な集団による人間関係形成能力
・ 自律的に行動する能力
・ これらの核となる「思慮深く考える力」
(『学習指導要領解説 総則編』9頁)

2 教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成

(1) 各学校においては、生徒の発達の段階を考慮し、言語能力、情報活用能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。
(2) 各学校においては、生徒や学校、地域の実態及び生徒の発達の段階を考慮し、豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成していくことができるよう、各学校の特色を生かした教育課程の編成を図るものとする。(5頁)

(1)-1=言語能力
(1)-2=情報活用能力(情報モラル含む)
(1)-3=問題発見・解決能力

(2)-1=伝統や文化に関する教育
(2)-2=主権者に関する教育
(2)-3=消費者に関する教育
(2)-4=法に関する教育
(2)-5=知的財産に関する教育
(2)-6=郷土や地域に関する教育
(2)-7=海洋に関する教育
(2)-8=環境に関する教育
(2)-9=放射線に関する教育
(2)-10=生命の尊重に関する教育
(2)-11=心身の健康の保持増進に関する教育
(2)-12=食に関する教育
(2)-13=防災を含む安全に関する教育
(『学習指導要領解説総則編』の付録6より)

3 教育課程の編成における共通的事項

(1)内容について
・書いてあることは全部扱う。
・書いていないことも、付け加えて扱ってよい。ただし目標をはみ出したり、生徒の負担過重になってはいけない。
・教える順序は決まっていない。
・複式学級の場合は、学年別の順序は臨機応変に対応。
・生徒や地域の実態に合わせて、選択教科を開設してよい。
・道徳教育の内容に関する事項。

(2)時間数について
・各教科の授業は年間35週以上。
・特別活動(生徒会活動・学校行事)は、適切に考える。
・時間割について
(ア)「1単位時間」は、各学校が適切に定める。
(イ)10分や15分の短い時間の活用ルール。
(ウ)給食や休憩については、各学校が適切に定める。
(エ)創意工夫を活かして弾力的に編成する。
・「総合的な学習の時間」と「特別活動」の内容がカブっている場合の特別ルール。

(3)配慮事項
各学校においては、次の事項に配慮しながら、学校の創意工夫を生かし、全体として、調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。

4 学校段階間の接続

(1)小学校との接続。義務教育に対する意識。
(2)高校との接続。

復習

・「育成すべき資質・能力」について、自分の言葉で説明できるようにしておこう。
・教育課程の編成における共通事項を押さえておこう。

予習

・「主体的・対話的で深い学び」について、学習指導要領の記述を読んでおこう。

教育概論Ⅱ(中高)-9

▼語学・心カ・教福・服美・表現 11/24
▼栄養・環教 11/13

前回のおさらい

・1998年の学習指導要領改訂。学校週五日制のねらい。
・民営化のデメリット

学習指導要領の変遷(4)

・2003年、学習指導要領の一部改訂:書いていないことも発展的な内容として教えてよいことになります。(ゆとり教育の終わりの始まり)
・2008年、学習指導要領改訂:授業時間増、指導内容の充実。→詰め込み教育の復活と単純に考えていいのでしょうか?

学力の再定義:学校教育法改定(2007年)

・2007年に学校教育法が改定され、第30条に「学力」が定義されます。

前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

・教育の主な関心が、コンテンツ(内容・知識)からコンピテンシー(能力)やソフトスキル(関心・意欲・態度)へと転換しました。89年改訂で登場した「新学力観」が法律化されたものとも言えます。
*コンピテンシー(competency):単に知識として知っているだけではなく、様々な情報を実際に活用して成果を出すことができる能力。「社会人力」とか「生きる力」とか「女子力」のような、「○○力」という言葉の流行とも関連します。
*ソフトスキル:テストなどで数値化することができないものの、成功する上で実は決定的な能力。「非認知能力」などとも重なる概念です。

PISAショック

*PISA:学習到達度調査。Programme for International Student Assessment。高校1年生対象。
*OECD:経済協力開発機構。Organisation for Economic Co-operation and Development
*PISAショック:2003年と2006年の調査で日本の順位が大幅に下がったことに教育関係者一同衝撃を受けたこと。←しかし2009年と2012年の調査では順位が上昇します。
・「活用力=コンピテンシー」と「学ぶ意欲=ソフトスキル」が日本の課題であることが明確になります。
*全国学力・学習状況調査:2007年より毎年実施。小6と中3を対象。←A問題とB問題の違いに注意しましょう。

知識基盤社会

*知識基盤社会(knowledge-based society):新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増すような世の中を意味します。

我が国が科学技術創造立国の実現に向けて世界をリードし、成長し続けるためには、イノベーションを絶え間なく創造できる人材の育成が求められている。「知」を巡る国際競争の激化や知識基盤社会の進展等により、産業構造の変化も急速に進んでいる現代においては、多種多様な個々人が力を最大限発揮でき、それらが結集されるチーム力が必要とされている。(知識基盤社会が求める人材像、2009年)

→内閣府「第4次産業革命のインパクト
→内閣府「Society5.0とは

2018年改訂:社会に開かれた教育課程

・2018年に改訂された学習指導要領には重要なキーワードが3つあります。一つが「社会に開かれた教育課程」です。

教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、社会に開かれた教育課程の実現が重要となる。(2頁)

・「社会に開かれた教育課程」とは、これからの教育が目指すべき全体的な理念や方向性を示すものです。
・文科省が言う「社会に開かれた」には、具体的には次の3つの意味が込められています。

このような「社会に開かれた教育課程」としては、次の点が重要になる。
① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓ひらいていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年12月)

(1)「社会に開かれた」とは、まずは学校教育の目標が社会と共有されている状態を指します。→具体的な作業として学校目標の再検討に話が繋がります。
(2)次に「社会に開かれた」とは、社会や世界に通用する資質・能力を育てることを意味します。→具体的な作業として「育成すべき資質・能力」の話に繋がります。
(3)最後に「社会に開かれた」とは、もはや学校だけが教育を独占して担うべきではない、ということを示唆しています。→具体的な作業として「チーム学校」や「コミュニティ・スクール」の話に繋がります。
・これらの理念を実現するために具体的に遂行すべき仕事の全体像が「カリキュラム・マネジメント」となります。

育成を目指す資質能力とは?
② 育成を目指す資質・能力の明確化
中央教育審議会答申においては、予測困難な社会の変化に主体的に関わり、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要であること、こうした力は全く新しい力ということではなく学校教育が長年その育成を目指してきた「生きる力」であることを改めて捉え直し、学校教育がしっかりとその強みを発揮できるようにしていくことが必要とされた。また、汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流を踏まえつつ、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等をバランスよく育成してきた我が国の学校教育の蓄積を生かしていくことが重要とされた。
このため「生きる力」をより具体化し、教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力を、ア「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」、イ「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」、ウ「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」の三つの柱に整理するとともに、各教科等の目標や内容についても、この三つの柱に基づく再整理を図るよう提言がなされた。
(『学習指導要領解説 総則編』3頁)

・「汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流」とは、OECDの言う「キーコンピテンシー」が念頭にあります。

特に、OECDの「キー・コンピテンシー」の概念については、グローバル化と近代化により、多様化し、相互につながった世界において、人生の成功と正常に機能する社会のために必要な能力として定義されており、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)にも取り入れられ、大きな影響を与えている。
この「キー・コンピテンシー」の概念については、具体的には、次のような内容で構成されている。
・ 言語や知識、技術を相互作用的に活用する能力
・ 多様な集団による人間関係形成能力
・ 自律的に行動する能力
・ これらの核となる「思慮深く考える力」
(『学習指導要領解説 総則編』9頁)

チームとしての学校

・「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」平成27年12月。
・教職員が、様々な専門性を持つ学校外の人材と協力しながら、学校運営に当たる体制です。
←外国の教員は授業に関する業務が大半を占めていますが、日本の教員は様々な仕事を行っており、勤務時間も長いことが分かっています。
←学校が複雑化・多様化した課題を解決し、子供に必要な資質・能力を育んでいくためには、学校のマネジメントを強化し、組織として教育活動に取り組む体制を創り上げるとともに、必要な指導体制を整備することが必要です。

(1)専門性に基づくチーム体制の構築。
・心理や福祉に関する専門スタッフ:スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー。
・授業等において教員を支援する専門スタッフ:ICT、資格、外国語。
・部活動に関する専門スタッフ。
・特別支援教育に関する専門スタッフ。

(2)学校のマネジメント機能の強化。
・校長のリーダーシップの発揮。補佐体制の強化。
・管理職の養成と適材確保。主幹教諭制度の充実

(3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備。
・人材育成の促進。
・業務環境の改善。
・教育委員会等による学校への支援の充実。

コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

・「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」平成27年12月
(1)地域とともにある学校への転換。
(2)子供も大人も学び合い育ち合う教育体制の構築。
(3)学校を核とした地域作りの推進。

・すべての公立学校がコミュニティ・スクールを目ざすことになっています。(現在は約14.7%導入)
*学校運営協議会:学校を応援し、地域の実情を踏まえた特色ある学校作りを進めていく役割を果たします。
・主な役割=校長の定める学校運営の基本方針の承認、学校運営に関する意見、教職員の任用に関する意見。

復習

・ゆとり教育の方向性自体は変化していないものの、具体的な教育のあり方が変化していることに注意しよう。
・「社会に開かれた教育課程」の内容を押さえておこう。

予習

・カリキュラム・マネジメントについて調べよう。