教育課程の意義と編成-8

▼第8回=11/13

前回のおさらい

・カリキュラム・マネジメント
(1)教科横断的な教育課程編成。
(2)評価とPDCAサイクルの確立。
(3)人的・物的な資源の確保。

学習指導要領総則:教育課程の編成

1 各学校の教育目標と教育課程の編成

教育課程の編成に当たっては、学校教育全体や各教科等における指導を通して育成を目指す資質・能力を踏まえつつ、各学校の教育目標を明確にするとともに、教育課程の編成についての基本的な方針が家庭や地域とも共有されるよう努めるものとする。その際、第4章総合的な学習の時間の第2の1に基づき定められる目標との関連を図るものとする。(4~5頁)

・「資質・能力」=コンテンツ(知識)からコンピテンシー(能力)への転換。「何を教えるか」から「何ができるようになるか」への転換。

総合的な学習の時間の第2の1

各学校においては、第1の目標を踏まえ、各学校の総合的な学習の時間の目標を定める。(144頁)

総合的な学習の時間:第1の目標

探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 探究的な学習の過程において、課題の解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究的な学習のよさを理解するようにする。
(2) 実社会や実生活の中から問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする。
(3) 探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、積極的に社会に参画しようとする態度を養う。(144頁)
育成を目指す資質能力とは?
② 育成を目指す資質・能力の明確化
中央教育審議会答申においては、予測困難な社会の変化に主体的に関わり、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要であること、こうした力は全く新しい力ということではなく学校教育が長年その育成を目指してきた「生きる力」であることを改めて捉え直し、学校教育がしっかりとその強みを発揮できるようにしていくことが必要とされた。また、汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流を踏まえつつ、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等をバランスよく育成してきた我が国の学校教育の蓄積を生かしていくことが重要とされた。
このため「生きる力」をより具体化し、教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力を、ア「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」、イ「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」、ウ「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」の三つの柱に整理するとともに、各教科等の目標や内容についても、この三つの柱に基づく再整理を図るよう提言がなされた。
(『学習指導要領解説 総則編』3頁)

・「汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流」とは、OECDの言う「キーコンピテンシー」が念頭にあります。

特に、OECDの「キー・コンピテンシー」の概念については、グローバル化と近代化により、多様化し、相互につながった世界において、人生の成功と正常に機能する社会のために必要な能力として定義されており、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)にも取り入れられ、大きな影響を与えている。
この「キー・コンピテンシー」の概念については、具体的には、次のような内容で構成されている。
・ 言語や知識、技術を相互作用的に活用する能力
・ 多様な集団による人間関係形成能力
・ 自律的に行動する能力
・ これらの核となる「思慮深く考える力」
(『学習指導要領解説 総則編』9頁)

2 教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成

(1) 各学校においては、生徒の発達の段階を考慮し、言語能力、情報活用能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。
(2) 各学校においては、生徒や学校、地域の実態及び生徒の発達の段階を考慮し、豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成していくことができるよう、各学校の特色を生かした教育課程の編成を図るものとする。(5頁)

(1)-1=言語能力
(1)-2=情報活用能力(情報モラル含む)
(1)-3=問題発見・解決能力

(2)-1=伝統や文化に関する教育
(2)-2=主権者に関する教育
(2)-3=消費者に関する教育
(2)-4=法に関する教育
(2)-5=知的財産に関する教育
(2)-6=郷土や地域に関する教育
(2)-7=海洋に関する教育
(2)-8=環境に関する教育
(2)-9=放射線に関する教育
(2)-10=生命の尊重に関する教育
(2)-11=心身の健康の保持増進に関する教育
(2)-12=食に関する教育
(2)-13=防災を含む安全に関する教育
(『学習指導要領解説総則編』の付録6より)

3 教育課程の編成における共通的事項

(1)内容について
・書いてあることは全部扱う。
・書いていないことも、付け加えて扱ってよい。ただし目標をはみ出したり、生徒の負担過重になってはいけない。
・教える順序は決まっていない。
・複式学級の場合は、学年別の順序は臨機応変に対応。
・生徒や地域の実態に合わせて、選択教科を開設してよい。
・道徳教育の内容に関する事項。

(2)時間数について
・各教科の授業は年間35週以上。
・特別活動(生徒会活動・学校行事)は、適切に考える。
・時間割について
(ア)「1単位時間」は、各学校が適切に定める。
(イ)10分や15分の短い時間の活用ルール。
(ウ)給食や休憩については、各学校が適切に定める。
(エ)創意工夫を活かして弾力的に編成する。
・「総合的な学習の時間」と「特別活動」の内容がカブっている場合の特別ルール。

(3)配慮事項
各学校においては、次の事項に配慮しながら、学校の創意工夫を生かし、全体として、調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。

4 学校段階間の接続

(1)小学校との接続。義務教育に対する意識。
(2)高校との接続。

復習

・「育成すべき資質・能力」について、自分の言葉で説明できるようにしておこう。
・教育課程の編成における共通事項を押さえておこう。

予習

・「主体的・対話的で深い学び」について、学習指導要領の記述を読んでおこう。