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教育概論Ⅰ(保育)ー11

▼短大保育科 6/29(木)

前回のおさらい

・近代教育学の展開:ペスタロッチー、ヘルバルト、フレーベル、倉橋惣三。

義務教育の思想

・近代の教育思想で、教育はすべてうまくいくのか?
・学校を否定し、個人主義を貫くような、「自由権としての教育」の実態。→現実には貧民の子供が「児童労働」を行っていた。
・「義務教育」とは、誰の誰に対するどのような義務か?

思考実験:自由の落とし穴

・自由を拡大したとき、得をするのはどういう人たちか?
・強者と弱者の間の格差拡大。
・自由を<実質的に>使いこなすことができるのは金持ちだけ。貧乏人はそもそも自由に<実質的に>手が届かない。形式的に自由を与えるだけでは、意味がないかもしれない。
・「自由権としての教育」だけでは、金持ちは十分な教育を受けることができたとしても、貧乏人は教育を受けることができない。教育によって、ますます貧富の格差が広がる。
→「社会権としての教育」が必要。

社会権としての教育

社会権:形式的に自由が与えられるだけでなく、全ての人が実質的に自由を使いこなすことができるように、強者に対してハンデを設け、弱者に対して様々なアドバンテージが与えられる。生存権、労働基本権、教育を受ける権利。
・工場法制定など、児童労働の撤廃に向けての具体的な動き。
・誰が責任を持つのか?←「国家」の積極的な関与。
・自由権=国家からの自由。社会権=国家による自由。

コンドルセ marquis de Condorcet

・1743年~1794年、フランス出身。
・愛称:公教育の父
(1)子供の学習権。
(2)教育費無償。
(3)ライシテ:政治的中立や宗教的中立。

ロバート・オーエン Robert Owen

・1771年~1858年、イギリス出身。
・キーワード:性格形成学院
・工場法の展開

1802年徒弟の健康と道徳に関する法律制定。
1819年繊維工場では9歳以下の労働禁止。16歳以下は1日12時間以内に制限。
1833年12時間労働。9歳未満の労働禁止。13歳未満は週48時間。
1844年女性労働者の労働時間制限。
1847年若年労働者の労働時間を1日10時間に制限。
1870年教育法制定。公費による学校設立。

復習

・「社会権」とは何か、「自由権」との違いを踏まえて理解しよう。
・「義務教育」とは、誰の誰に対するどのような義務か、押さえておこう。

予習

・「新教育」について調べておこう。

教育概論Ⅰ(栄養)ー11

▼短大栄養科 6/27

前回のおさらい

・教育権の構造:子供、親、教師、国家の役割。
・「自由権としての教育」と「社会権としての教育」で、国家に対する期待が正反対。

国民国家と教育

・「国家」とは?
(1)country:国土。田舎。ふるさと。
(2)state:一定の領土を有し政治的に組織され主権を有するもの。法律的・理論的な意味での統一体としての国家。
(3)nation:政府の下で共通の文化・言語などを有する国民が作る国家。

国民国家

・stateとnationは一致するのか? アメリカ、スイス、中国、韓国等の例を考える。
・日本はどうか?
*国民国家:nation(国家の文化的側面)とstate(国家の政治的側面)が一致している状態。
*民族自決:一つのnation(民族)はそれぞれ一つのstate(政治的に組織された主権)を持つべきという考え。
・nationとstateを一致させるには、どうしたらよいか?

中世国家と近代国家

・中世には国民国家はなかった。
・いたのは「国民」ではなく、さまざまな「身分」だった。
・人々は自分の存在様式を、「国民」というよりも「身分」として把握していた。
・中世は、国家というよりも、国「家」。家が拡大したものとしての国。ブルボン家やハプスブルグ家。日本の大名家。封建制。領邦君主。
・絶対王政(貴族の没落によって王権に主権が一極集中する)を経て封建制が崩れ、市民革命(国民に主権が集中する)に伴って国民国家が完成する。典型例としてのフランス革命。

復習

・中世国家と「国民国家」の違いを押さえておこう。
・nationとstateの違いについて押さえておこう。

予習

・国歌の働きについて考えよう。

 

【要約と感想】プラトン『饗宴』

【要約】エロスとは何らかの対象というよりは、神(智者)と人間(無智者)を媒介する中間の存在です。エロスの働きによって、人は真や善へと向かう「愛智者」となります。

【感想】究極の真実に、人間は決してたどり着くことはできない(無知の知)。しかし人は常に真実を求めて止まない。エロスとは真実へと向かう動因であり、神と人間を繋ぐ「メディア(中間物)」だ。このように「メディア」という観点を前面に打ち出すことで、本書はプラトン哲学体系全体の中で特異な位置と役割を持つように思う。「メディア」論が適切な位置を得て、ダイナミックな哲学体系となる。

関連して、本書は、否定神学に対する違和感に一つの言葉を与えてくれる。否定神学は、排中律を駆使することで成り立っている。しかし本書は、「中を排除することの愚」を繰り返し主張する。たとえば「美しくないものは必然的に醜いとか、善くないものもまた同様に悪いとかいう風に考えてはいけません」というように。

本書が掬い取った「中」すなわち「メディア」の持つ意義という観点は、中世スコラ学の中で消えて亡くなるように見える。復活するのはカント『判断力批判』あたりか。

プラトン/久保勉訳『饗宴』岩波文庫

→参考:研究ノート「プラトンの教育論―善のイデアを見る哲学的対話法」

【要約と感想】プラトン『パイドン』

【要約】魂は死にません。そう確信して、ソクラテスは喜んで死刑を受け入れたのでした。

【感想】理不尽な死刑判決を食らったソクラテスが、まったく苦しむことなく死に向かっていく姿。これが凄い。並大抵の覚悟ではこうはいかない。

その生き様を根底から支えていたのが「魂の不死」にたいする確信だ。本書では様々な角度から「魂の不死」が証明される。その証明の説得力に関して、私が言うべきことは何もない。

今回、個人的に注目したのは、「自己同一性」という言葉だ。本書では「自己同一を保つ」という表現が多用されている。単一の形相を持ち、分解されず、恒常的な同一のあり方を「保つ」ものは、神的であり不死であるとされる。そして自己同一を保ち続ける「それそのもの」であるようなものは「イデア」と呼ばれる。逆に、自己同一を「保てない」ようなものは、死ぬ運命から逃れられないものと見なされる。

このような「自己同一性」の持続を良しとする感性は、日本人には馴染みがない。むしろ、「花の色は移りにけりな」にしろ「祇園精舎の鐘の声」にしろ「月日は百代の過客」にしろ、「自己同一」を保たないことが美の本質にあるとされる。逆に言えば、「自己同一性」への執着を把握できれば、西洋哲学の核心部分を掴めるということになる。

※9/26追記
【この本は眼鏡っ娘のことを書いている】
プラトンはソクラテスに、「一に一を加えたときに、<二となった>のは、加えられたほうの一なのか、それとも、加わった方の一なのか。あるいは、この加わった一と加えられた一とが、一方の他方への附加ということに原因して、<二となった>のか。それすらそうとは自分に納得できないからだ。」と語らせている。これはもちろん眼鏡っ娘について書かれた文章だ。
「一に一を加えて二になる」とは、「娘」に「眼鏡」を加えて「眼鏡っ娘」となることだ。しかしソクラテスはそれに対して「自分には納得できない」と疑問を呈している。なぜなら、「眼鏡っ娘」とは「二」ではなく「一」だからだ。だからソクラテスは続けてこう言う。「そもそも<一>というのが生ずることの原因は何であるのか、それを知っていると、私はもはや自分を納得させえないでいる」。これは、「娘」と「眼鏡」が合体したときに生じるのは単に「眼鏡をかけた娘」だけのはずであって、「眼鏡っ娘」が生じるわけではない、ということへの疑問だ。だからソクラテスは総括してこう言う。「そのものが生じたり消滅したり、またいま存在するというのは、いったい何を原因・根拠としてあることなのか」。彼は喝破したのだ。「眼鏡っ娘」が存在するというのは、単に「娘」に「眼鏡」が加わったせいではないのだと。
だとしたら、「眼鏡っ娘」の存在は何に由来するのか。彼はこう言う。「一に一が加えられた場合には、その附加が、二の生じる原因だとか、また分断される場合には、その分断が、原因だと、言わないように用心するのではないだろうか」。もはや明らかに、「眼鏡っ娘」の存在は「娘に眼鏡が加えられる」ということには求められない。「何であれ、ものには、それがあずかりもつところの、おのおのに独自な<存在の本来的なあり方>(ウゥシアー)があるのだ。そこで、まさにこれを分有したという仕方においてのみ、おのおののものは、生じてくるのである。それ以外の仕方を自分は知らない」。「眼鏡っ娘」とは、「眼鏡っ娘」という独自な「存在の本来的なあり方」を持っているものなのだ。

プラトン/岩田靖夫訳『パイドン―魂の不死について』岩波文庫

→参考:研究ノート「プラトンの教育論―善のイデアを見る哲学的対話法」

教職基礎論(栄養)ー10

▼短大栄養科 6/24(土)

前回のおさらい

・評価。指導要録。
・道徳の教科化。教育活動全体を通じた指導。要としての道徳科。

健やかな体(体育・健康)

・「健康で安全な生活」と「豊かなスポーツライフ」の実現。
(1)食育の推進
(2)体力の向上
(3)安全に関する指導
(4)心身の健康の保持増進

食育基本法(2005年制定)

食育基本法本文
・食育は、「生きる上での基本」「知育、徳育及び体育の基礎」であり、「心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼ」す。
・教育関係者の役割(第5条):「子どもの教育、保育等を行う者にあっては、教育、保育等における食育の重要性を十分自覚し、積極的に子どもの食育の推進に関する活動に取り組むこととなるよう、行われなければならない」
・教育関係者の責務(第11条):「あらゆる機会とあらゆる場所を利用して、積極的に食育を推進するよう努める」

学校給食法(2008年改正)

学校給食法本文
・食育の観点から学校給食の目標を改定。
→(1)家庭科・理科(2)(3)特別活動(4)理科(5)社会・キャリア教育(6)歴史地理(7)地理・政治経済
・第10条:栄養教諭による学校給食を活用した食に関する指導の推進。校長は、当該義務教育諸学校における食に関する「指導の全体的な計画」を作成する。

第3次食育推進基本計画(~2020年)

・農林水産省:第3次食育推進基本計画本文
・農林水産省:啓発リーフレット

体力の向上

・文部科学省:子供の体力向上のための取組ハンドブック。概要pdf取り組み事例一覧
・武道とダンスの必修化(2008年中学校学習指導要領改訂)

安全、健康に関する指導

学校保健安全法

学校保健安全法本文
・第5条:学校においては、児童生徒等及び職員の心身の健康の保持増進を図るため、児童生徒等及び職員の健康診断、環境衛生検査、児童生徒等に対する指導その他保健に関する事項について計画を策定し、これを実施しなければならない。
・第27条:学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、当該学校の施設及び設備の安全点検、児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全に関する指導、職員の研修その他学校における安全に関する事項について計画を策定し、これを実施しなければならない。

学校安全の推進に関する計画

・文部科学省:学校安全の推進に関する計画本文
・安全教育:安全に関する知識、行動する力。
→主体的に行動する態度、時間の確保、避難訓練、情報社会への対応等
・安全指導:学校管理下の事故、不審者侵入、交通事故、自然災害。
→安全計画の策定、人的体制の整備、安全点検、研修の推進等。

心身の健康の保持増進

・文部科学省:生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育及びスポーツの振興の在り方について本文
・生涯にわたるスポーツライフ。部活動の位置づけ←学習指導要領上に初めて定義。
・現代の課題=薬物乱用、性の逸脱行動、肥満や生活習慣病の兆候、いじめや登校拒否、感染症の新たな課題等。
・要因=子どもたちの心の成長の糧となる生活体験や自然体験等が失われてきており、自己実現の喜びを実感しにくく、他者を思いやる温かい気持ちを持つことや、望ましい人間関係を築くことが難しくなっていることなど。

復習

・「健やかな体」について、具体的にどのような領域をカバーしているか、押さえておこう。
・特に「食育」の意義について、自分の言葉で説明できるようにしよう。

予習

・「総合的な学習の時間」や「特別活動」の内容について、イメージを持とう。

課題

・締切:7/8(土)
・形式:800字程度。
・内容:「第3次食育推進基本計画」のリーフレットを読んで、自分が栄養教諭または家庭科教諭になったときに、生徒にどのようなことを重点的に伝えたいか、考えよう。