【要約と感想】田原総一朗『緊急提言!デジタル教育は日本を滅ぼす』

【要約】学校や教育がおかしくなったのは、単に「正解」を教える場所に成り下がっているからです。その経緯は、ゆとり教育をめぐる論争に色濃く刻印されています。正解のない時代を生き抜くためには、「正解」を教え込む教育ではダメです。デジタル教育は単に「正解」を教える風潮を助長するだけです。もっと人と人が触れあって、多様な考えを受容しながらも自分の意見を主張できるような教育にするべきです。

【感想】タイトルの付け方が、ちょっと微妙だ。軽薄なタイトルに対し、内容はもうちょっと地に足がついている。もう少し本質的なタイトルにした方が良かったような気がする。

本書は、ジャーナリストらしく、関係者から直接言質を取っているのが、説得力を増しているように思う。たとえば小渕恵三や山谷えり子などの政治家、あるいは前川喜平や寺脇研や小野元之などの文部官僚、丹羽健夫や藤原和博や陰山英男などの実践家、または苅谷剛彦や佐藤学などの研究者から、様々な言質を引き出している。なかなか興味深く読める。
まあ、すでに教育行政に関して知識がある向きからすればさして新しい情報ではないものの、直接的な言質を加えることで、既存の枠組みの意味をさらに確認することができる。特に臨時教育審議会の持つ意味については、ひょっとしたらけっこうエグい形で本質を抉り出している本なのかもしれないと思った。タイトルも「臨時教育審議会は日本を滅ぼした」で良かったのではないか、と思えるくらい。なかなか良い仕事をしてくれたように思う。

ほか、少国民世代(昭和ヒトケタ)の教育実体験談サンプルとしても、ちょっと重宝できる本かもしれない。戦中から戦後の価値観の転換に戸惑う軍国少年という点で、極めて典型的な言質を得ることができる。

田原総一朗『緊急提言!デジタル教育は日本を滅ぼす-便利なことが人間を豊かにすることではない!』