【要約と感想】小林哲夫『ニッポンの大学』

【要約】偏差値というモノサシだけで大学を測るのは、もったいないことです。様々なモノサシで日本の大学の個性を見てみましょう。

【感想】12年前の本なわけだが、この12年での大学を取り巻く環境の変化にはけっこう驚く。
21世紀初頭も、小泉改革による規制緩和で大学が乱立したせいもあって、大学を巡る状況が大きく変化した。基本的な発想は、従来は「PDCA」のPの部分で統制していたものを、Cの部分で管理しようというものだ。端的にはマネジメント概念の導入ということになる。
そして現在は、少子化と「大学全入時代」を基調に、「選択と集中」の論理で、具体的には「3ポリシーの策定と質保証」を合言葉に、大学を巡る情勢が急速に変化しつつある。センター入試廃止によって高大接続という「入口」の部分が大きく変化するとともに、労働環境の変化に伴って「出口」の部分の改革も急速に進行しつつある。そして教育に関わる内部プロセスは、「質保証」と「PDCAサイクル」でマネジメントの対象となりつつある。
さてはて、大学は今後どうなっていくのか。巻き込まれる側としては無関心ではいられないし、主体的にどう関わっていくかが問われる問題なのであった。いやはや。

小林哲夫『ニッポンの大学』講談社現代新書、2007年