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教育概論Ⅰ(栄養)-4

■短大栄養科 5/9(火)

前回のおさらいと補足

・日本は江戸時代中期頃から生産力が向上し、子供に対するまなざしが大きく変化した。教育への関心が高まり、寺子屋などの教育機関も普及していった。このまま進めば自力で近代化を行うような実力を蓄えていった可能性もあるが、現実には西欧列強の圧力によって開国し、他律的な近代化を余儀なくされた。
・西洋列強が中華帝国やイスラム帝国に替わって世界の主役に躍り出る契機となったのは、西暦1500年前後。この時期、ヨーロッパでは(1)大航海時代(2)宗教改革(3)ルネサンスという出来事があった。ヨーロッパが強くなった理由を考えるときに、この3つの事件は重要である。
・しかしより重要なのは、この3つの事件に先行して、15世紀半ばに印刷術が発明されていたということである。

ルネサンス(15世紀)

・芸術家の誕生。神に捧げるための技術から人間を楽しませるための芸術への転回。
・孤独な読書体験。音読から黙読へ。
・自己実現の決定的な条件としてのリテラシー。
・個人的な欲望や野心を醸成する経験。

個人主義の誕生

・ヨーロッパに強大な力をもたらした新大陸発見、宗教改革、ルネサンスには、印刷術という新しい技術とリテラシーという新しい経験が共通して前提されている。
・それは同時に人間の欲望を積極的に肯定していく。個人主義の誕生。
・富を獲得し、天国を目指し、新たな娯楽に接触し、自己実現するためには、リテラシーを獲得しなければならない。
・リテラシーを獲得する手段=教育。
・リテラシーを獲得する場所=学校。

リテラシーの獲得と、モラトリアム

・生活をしていく上で、なにをするにもリテラシーが必要な世の中へと変化する。リテラシーを身につけることが、人間として生きていく上での必須の条件と見なされるようになっていく。
・リテラシーを身につける場としての学校。
・リテラシーを身につける期間としてのモラトリアム。

モラトリアム:執行猶予。労働から免除されている期間。思春期・青年期の拡張。大人と子供の距離が広がっていく。

・人々自らの生活の必要によって教育機関が作られていく。権力者によって強制的に教育や学校が押しつけられていくわけではない。(むしろ権力者にとってみれば、一般民衆が教育水準を高めることは脅威となる)

コンピュータ・リテラシー

・印刷術の登場に見られるように、新しいメディア技術の展開が人間の生活を大きく変化させる場合がある。それは現代のコンピュータの登場によって人々の生活が劇的に変化したことを考えると、わかりやすい。

コンピュータ・リテラシー:コンピュータを使って情報を得たり発信したりすることができる能力。

・ここ数年で、就職活動をするにもコンピュータ・リテラシーが必須な世の中へと劇的に変化した。コンピュータが使えないと、まともに就職もできないような世の中。→たとえば「履歴書」とは何か。

欲望の解放と制御

市民社会:欲望の体系(ヘーゲル『法の哲学』)。個人主義(欲望にまみれた利己的人間)を満足させるために組み立てられた世の中。
・世界の経済的発展は「欲望の解放」によって促進される。「欲望の制御」を厳しくしすぎると、世界は停滞する。
・しかし人間の欲望には際限というものがない。解放された欲望は、そのままでは世界そのものを破壊してしまう。
・欲望を解放して、自分勝手な利己的人間だらけになって、なおかつ世界を破滅させないような方法はあるか? →民主主義

市民革命と民主主義

・民主主義とは何かを考えるとき、その成立過程を捉えるために市民革命について見ていく必要がある。

市民革命:時に暴力行為を伴った、世の中の仕組みの根底からの変化。領邦君主や貴族が中心だった世の中から、市民が中心の世の中へ。
市民:新興ブルジョワ。中産階級。三鷹市民とか八王子市民というような、固有領域の住民という意味での「市民」ではない。大雑把には、固有の資産を持ち、知識と教養を備えた人々のことで、基本的に金持ちで白人の男性のみ。

市民革命重要人物政治思想書教育思想書
清教徒革命1642トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』
名誉革命1688ジョン・ロック『市民政府論』『教育論』
アメリカ独立戦争1776トマス・ペイン『コモン・センス』
フランス革命1789ジャン・ジャック・ルソー『社会契約論』『エミール』

・市民革命の政治思想と、市民社会に必要な新たな人間像は、セットになっている。新しい世の中には、新しい人間が必要。

復習

・「リテラシー」という言葉の意味と、それが教育に対して持っている意義をしっかり理解しよう。

予習

・「社会契約論」について、調べておこう。

流通経済大学 教育学Ⅰ(5)

■龍ケ崎キャンパス 5/8(月)
■新松戸キャンパス 5/12(金)

前回のおさらいと補足

・日本は江戸時代中期頃から生産力が向上し、子供に対するまなざしが大きく変化した。教育への関心が高まり、寺子屋などの教育機関も普及していった。このまま進めば自力で近代化を行うような実力を蓄えていった可能性もあるが、現実には西欧列強の圧力によって開国し、他律的な近代化を余儀なくされた。
・西洋列強が中華帝国やイスラム帝国に替わって世界の主役に躍り出る契機となったのは、西暦1500年前後。この時期、ヨーロッパでは(1)大航海時代(2)宗教改革(3)ルネサンスという出来事があった。ヨーロッパが強くなった理由を考えるときに、この3つの事件は重要である。
・しかしより重要なのは、この3つの事件に先行して、15世紀半ばに印刷術が発明されていたということである。

個人主義の誕生

・ヨーロッパに強大な力をもたらした新大陸発見、宗教改革、ルネサンスには、印刷術という新しい技術とリテラシーという新しい経験が共通して前提されている。
・それは同時に人間の欲望を積極的に肯定していく。個人主義の誕生。
・富を獲得し、天国を目指し、新たな娯楽に接触し、自己実現するためには、リテラシーを獲得しなければならない。
・リテラシーを獲得する手段=教育。
・リテラシーを獲得する場所=学校。

リテラシーの獲得と、モラトリアム

・生活をしていく上で、なにをするにもリテラシーが必要な世の中へと変化する。リテラシーを身につけることが、人間として生きていく上での必須の条件と見なされるようになっていく。
・リテラシーを身につける場としての学校。
・リテラシーを身につける期間としてのモラトリアム。

モラトリアム:執行猶予。労働から免除されている期間。思春期・青年期の拡張。大人と子供の距離が広がっていく。

・人々自らの生活の必要によって教育機関が作られていく。権力者によって強制的に教育や学校が押しつけられていくわけではない。(むしろ権力者にとってみれば、一般民衆が教育水準を高めることは脅威となる)

コンピュータ・リテラシー

・印刷術の登場に見られるように、新しいメディア技術の展開が人間の生活を大きく変化させる場合がある。それは現代のコンピュータの登場によって人々の生活が劇的に変化したことを考えると、わかりやすい。

コンピュータ・リテラシー:コンピュータを使って情報を得たり発信したりすることができる能力。

・ここ数年で、就職活動をするにもコンピュータ・リテラシーが必須な世の中へと劇的に変化した。コンピュータが使えないと、まともに就職もできないような世の中。→たとえば「履歴書」とは何か。

欲望の解放と制御

市民社会:欲望の体系(ヘーゲル『法の哲学』)。個人主義(欲望にまみれた利己的人間)を満足させるために組み立てられた世の中。
・世界の経済的発展は「欲望の解放」によって促進される。「欲望の制御」を厳しくしすぎると、世界は停滞する。
・しかし人間の欲望には際限というものがない。解放された欲望は、そのままでは世界そのものを破壊してしまう。
・欲望を解放して、自分勝手な利己的人間だらけになって、なおかつ世界を破滅させないような方法はあるか? →民主主義

市民革命と民主主義

・民主主義とは何かを考えるとき、その成立過程を捉えるために市民革命について見ていく必要がある。

市民革命:時に暴力行為を伴った、世の中の仕組みの根底からの変化。領邦君主や貴族が中心だった世の中から、市民が中心の世の中へ。
市民:新興ブルジョワ。中産階級。龍ケ崎市民とか松戸市民というような、固有領域の住民という意味での「市民」ではない。大雑把には、固有の資産を持ち、知識と教養を備えた人々のことで、基本的に金持ちで白人の男性のみ。

市民革命重要人物政治思想書教育思想書
清教徒革命1642トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』
名誉革命1688ジョン・ロック『市民政府論』『教育論』
アメリカ独立戦争1776トマス・ペイン『コモン・センス』
フランス革命1789ジャン・ジャック・ルソー『社会契約論』『エミール』

・市民革命の政治思想と、市民社会に必要な新たな人間像は、セットになっている。新しい世の中には、新しい人間が必要。

復習

・「リテラシー」という言葉の意味と、それが教育に対して持っている意義をしっかり理解しよう。

予習

・「社会契約論」について調べておこう。

 

教育概論Ⅰ(栄養)-3

■短大栄養科 5/2(火)

前回のおさらい

・かつて「教育」は行われていなかった。「教育」とは異なる形による発達や成長への働きかけを「形成」と呼ぶ。
・「成人式」の形は、いまと昔はまったく異なっていた。「死」と「再生」を象徴する儀式を突破して共同体の正式メンバーに加入することを「イニシエーション」と呼ぶ。
・人々は、学校や教育がなくとも、知恵と経験を後の世代に継承し、生活を続けていた。

日本での近代教育の始まり

・西暦1750年あたり、江戸時代中期頃から子供に対する意識は変わり始めていた。←生産力の向上、遺産相続への関心、家意識の形成、商品経済の展開、識字能力の有効性の拡大、寺子屋の増加、往来物。

寺子屋

・庶民のための教育機関。
・庶民の生活に密着して、そろばんや習字を教えた。
・一般民衆が自分たちのために必要とした教育機関。幕府や藩など支配者層が上から押しつけたのではなく、下からの自発的な要求によって自然発生的に増加していった。

・学問水準も向上していた。儒学、蘭学、国学の展開。←長期間にわたる平和と繁栄。
・日本は独自に近代化への準備を始めていた。が、決定的な転換点はヨーロッパとの接触に刺激を受けた明治維新(1868年)。
文明開化=日本を文明化から遅れた後進国であると自覚し、多くの日本の伝統的な習慣や仕来りを野蛮な習俗として否定し、西洋由来のモノや制度や考え方を崇拝した。
・明治維新≒西欧列強に由来する国民国家システムと市民社会の学習と模倣。教育制度に関しては、明治5年(西暦1872年)の学制

世界史のなかの明治維新

・かつて、ヨーロッパは貧乏な辺境地域に過ぎなかった。世界の中心は中華帝国とイスラム帝国にあった。
・西暦1500年あたりから逆転が始まる。
・ペリー来航時(1853年)の世界情勢。ヨーロッパの手が及んでいない地域がどれくらい残されているか考えてみよう。

>1828年:オーストラリア全土植民地化
>1840年:アヘン戦争(中華帝国)
>1853年:クリミア戦争(イスラム帝国)
>1857年:インド大反乱(インド亜大陸)
>1882年:エジプト保護国化(アフリカ大陸)
>1890年:フロンティアの消滅(アメリカ大陸)
>19世紀末:東南アジア、タイ以外植民地化

福沢諭吉の見た西欧列強の強さの秘密。『学問ノススメ』『文明論之概略』。表面上の物質的繁栄が重要なのか?

→科学技術?
→資本主義
→民主主義
→国民国家

ヨーロッパはどうして強くなったのか?

・ヨーロッパが急激に強くなり始めた西暦1500前後に、ヨーロッパで起こっていたこと。
(1)大航海時代
(2)宗教改革
(3)ルネサンス
・これらを共通に可能にする技術としての印刷術。

印刷術とリテラシー

リテラシー:文字を読んだり書いたりすることができる能力。文字を使って情報を得たり発信したりすることができる能力。
*印刷術:1450年前後にグーテンベルクが発明。

コロンブスの大西洋横断(1492年)

・どうして我々は自分の目で確かめたことがないにもかかわらず、「地球が丸い」ということを知っているのか? →本に書いてあるから。
・実際は、コロンブス以外の知識人も地球が丸いことを知っていた。他の知識人は地球の正確な大きさも把握していたから大西洋横断は不可能だと思っていたが、コロンブスは無知で無謀だったために冒険に乗り出した。
・印刷術による科学知識の普及。地理情報の伝播。正確な地図や海図。船乗りに必要な科学的知識。
・かつて手写しで作られていた本は、高価で稀少なものだった。これによって知識が伝播するには、コストがかかりすぎた。印刷術は知識の伝播範囲を格段に拡大し、速度を飛躍的に高める。
・冒険に出るためには、本を読んで知識を得ることが必須。知識は力。情報を得る決定的な手段としてのリテラシー。
・個人的な欲望や野心を達成するための技術。

ルターの宗教改革(1517年)

・カトリックとプロテスタントの違い。
・「聖書を読む」という行為を可能にするためには、聖書というモノそのものを低価格で供給する印刷術の存在が前提。
・印刷術が存在しない世界での情報発信の難しさ。ルターとヤン・フスの比較。
・世界を変革するためには、自分の意見を無差別かつ広範囲に、そして正確に発信することが必要。情報発信の決定的な手段としてのリテラシー。
・個人的な欲望や野心を実現するための手段。

復習

・日本の教育が近代化する前提を押さえておこう。
・1492年以降、ヨーロッパが世界の中心に躍り出る世界史的な過程を押さえておこう。
・「リテラシー」という言葉の意味と、それが教育に対して持つ意義を押さえよう。

予習

・「ルネサンス」という言葉の意味について調べておこう。
・民主主義とは何か、自分なりに調べておこう。

流通経済大学「教育学Ⅰ」(4)

■龍ケ崎キャンパス 5/1(月)
■新松戸キャンパス 5/5(金)

前回のおさらい

・かつて「教育」は行われていなかった。「教育」とは異なる形による発達や成長への働きかけを「形成」と呼ぶ。
・「成人式」の形は、いまと昔はまったく異なっていた。「死」と「再生」を象徴する儀式を突破して共同体の正式メンバーに加入することを「イニシエーション」と呼ぶ。
・人々は、学校や教育がなくとも、知恵と経験を後の世代に継承し、生活を続けていた。

日本での近代教育の始まり

・西暦1750年あたり、江戸時代中期頃から子供に対する意識は変わり始めていた。←生産力の向上、遺産相続への関心、家意識の形成、商品経済の展開、識字能力の有効性の拡大、寺子屋の増加、往来物。

寺子屋

・庶民のための教育機関。
・庶民の生活に密着して、そろばんや習字を教えた。
・一般民衆が自分たちのために必要とした教育機関。幕府や藩など支配者層が上から押しつけたのではなく、下からの自発的な要求によって自然発生的に増加していった。

・学問水準も向上していた。儒学、蘭学、国学の展開。←長期間にわたる平和と繁栄。
・日本は独自に近代化への準備を始めていた。が、決定的な転換点はヨーロッパとの接触に刺激を受けた明治維新(1868年)。
文明開化=多くの日本の伝統的な習慣や仕来りは野蛮な習俗として否定され、西洋由来のモノや制度を崇拝した。
・明治維新≒西欧列強の国家システムの学習と模倣。教育制度に関しては、明治5年(西暦1872年)の学制

世界史のなかの明治維新

・かつて、ヨーロッパは貧乏な辺境地域に過ぎなかった。世界の中心は中華帝国とイスラム帝国にあった。
・西暦1500年あたりから逆転が始まる。
・ペリー来航時(1853年)の世界情勢。ヨーロッパの手が及んでいない地域がどれくらい残されているか考えてみよう。

>1828年:オーストラリア全土植民地化
>1840年:アヘン戦争(中華帝国)
>1853年:クリミア戦争(イスラム帝国)
>1857年:インド大反乱(インド亜大陸)
>1882年:エジプト保護国化(アフリカ大陸)
>1890年:フロンティアの消滅(アメリカ大陸)
>19世紀末:東南アジア、タイ以外植民地化

福沢諭吉の見た西欧列強の強さの秘密。『学問ノススメ』『文明論之概略』

→科学技術?
→資本主義
→民主主義
→国民国家

ヨーロッパはどうして強くなったのか?

・ヨーロッパが急激に強くなり始めた西暦1500前後に、ヨーロッパで起こっていたこと。
(1)大航海時代
(2)宗教改革
(3)ルネサンス
・これらを共通に可能にする技術としての印刷術。

印刷術とリテラシー

リテラシー:文字を読んだり書いたりすることができる能力。文字を使って情報を得たり発信したりすることができる能力。
*印刷術:1450年前後にグーテンベルクが発明。

コロンブスの大西洋横断(1492年)

・どうして我々は自分の目で確かめたことがないにもかかわらず、「地球が丸い」ということを知っているのか? →本に書いてあるから。
・実際は、コロンブス以外の知識人も地球が丸いことを知っていた。他の知識人は地球の正確な大きさも把握していたから大西洋横断は不可能だと思っていたが、コロンブスは無知で無謀だったために冒険に乗り出した。
・印刷術による科学知識の普及。地理情報の伝播。正確な地図や海図。船乗りに必要な科学的知識。
・かつて手写しで作られていた本は、高価で稀少なものだった。これによって知識が伝播するには、コストがかかりすぎた。印刷術は知識の伝播範囲を格段に拡大し、速度を飛躍的に高める。
・冒険に出るためには、本を読んで知識を得ることが必須。知識は力。情報を得る決定的な手段としてのリテラシー。
・個人的な欲望や野心を達成するための技術。

ルターの宗教改革(1517年)

・カトリックとプロテスタントの違い。
・「聖書を読む」という行為を可能にするためには、聖書というモノそのものを低価格で供給する印刷術の存在が前提。
・印刷術が存在しない世界での情報発信の難しさ。ルターとヤン・フスの比較。
・世界を変革するためには、自分の意見を無差別かつ広範囲に、そして正確に発信することが必要。情報発信の決定的な手段としてのリテラシー。
・個人的な欲望や野心を実現するための手段。

ルネサンス(15世紀)

・芸術家の誕生。神に捧げるための技術から人間を楽しませるための芸術への転回。
・孤独な読書体験。音読から黙読へ。
・自己実現の決定的な条件としてのリテラシー。
・個人的な欲望や野心を醸成する経験。

復習

・日本の教育が近代化する前提を押さえておこう。
・1492年以降、ヨーロッパが世界の中心に躍り出る世界史的な過程を押さえておこう。
・「リテラシー」という言葉の意味と、それが教育に対して持つ意義を押さえよう。

予習

・民主主義とは何か、自分なりに調べておこう。

教職基礎論(栄養)-3

▼短大栄養科 4/29

前回のおさらい

・公立学校の教員は「公務員」である。
・公務員には憲法を遵守する義務がある。
・地方公務員法と教育公務員特例に規程された服務義務。

教師のなりかた

教員免許状

・教師になるには、まず教員免許状を取得しなければならない。
・開放性の原理:大学で教師を養成する。一般教養の重要性。戦前の師範学校で行われていた師範教育との違い。
・教員免許状には、3種類ある。

(1)普通免許状:学位および教職課程の履修における単位の修得により授与される。専修免許状(修士)、一種免許状(学士)、二種免許状(短大)の3種類がある。

(2)特別免許状:優れた知識経験を持つ社会人を学校現場に迎えるために授与される免許状。

(3)臨時免許状:普通免許状を有する者を採用できない場合、例外的に授与される助教諭の免許状。

・教員免許更新制:10年の有効期限。更新するためには免許状更新講習(30時間以上)を受講・修了しなければならない。

教育職員免許法教育職員免許法施行規則を参照。

教職課程

普通免許状を取得するために、(1)教科に関する科目、(2)教職に関する科目、(3)教科又は教職に関する科目、(4)教育職員免許法施行規則第66条の6に関する科目を修得しなければならない。

(1)教科に関する科目:教師になったときに教える学問領域の内容に関わって、専門の知識や技能を修得する。

(2)教職に関する科目:教科指導の方法や生徒指導、学級経営、進路指導、道徳教育など、「教育者」としての専門的知識や技能を修得する。

(3)教科又は教職に関する科目:教師の個性。

(4)66条科目:日本国憲法、体育、外国語コミュニケーション、情報機器の操作。

教育実習・栄養教育実習

・教職に関する科目の必修単位。
・事前指導、事後指導(1単位)
・学校での実習(栄養教諭=1週間、中学校=3週間)
○指導教諭等からの説明
・学校経営
・校務分掌の理解
・服務等
○児童及び生徒への個別的な相談、指導の実習
・指導、相談の場の参観、補助等
○児童及び生徒への教科・特別活動等における指導の実習
・学級活動及び給食の時間における指導の参観、補助
・教科等における教科担任等と連携した指導の参観、補助
・給食放送指導、配膳指導、後片付け指導の参観、補助
・児童生徒集会、委員会活動、クラブ活動における指導の参観、補助
・指導計画案、指導案の立案作成、教材研究等
○食に関する指導の連携・調整の実習
・校内における連携・調整(学級担任、研究授業の企画立案、校内研修等)の参観、補助
・家庭・地域との連携・調整の参観、補助等

教員採用試験

・公立学校の教員採用選考試験は、各都道府県および政令指定都市の教育委員会がそれぞれ実施している。
・試験内容は、教育委員会ごとに異なる。
・主に、筆記試験(一般教養・教職教養・専門教養)、面接試験(集団・個人)、模擬授業、論文試験、実技試験などがある。
・特別選考枠。
・近年は、人物重視の傾向にある。
・臨時採用。

・国立大学付属学校や私立学校は、各学校・法人単位で採用が行われている。
・教員適性検査。

教員採用試験の勉強の仕方

・各自治体の試験の特徴を知る。過去問の収集と分析を行う。
・自分の資質と個性について自覚する。
・目指す教師像、なりたい教師像、志望動機を明確に言語化する。
・個性と志望動機にマッチした勉強法を考える。

復習

・教師のなりかたを踏まえて、自分のキャリアについて見通しを立てよう。

予習

・教師の仕事の内容について、どういうことをするのか、自分の学校での経験を振り返って考えてみよう。