【感想】三菱一号館美術館「上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展」

 三菱一号館美術館の「上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展」を観てきました。

 上野リチは、ウィーン応用美術大学で学び、ウィーン工房に参加したデザイナーです。
 作品そのものは、手書きの味が残るフリーハンドの線と、微妙に彩度を下げた色のチョイスと配置が絶妙で、ぱっと一目で「かわいい」と思えるものばかりですが、近寄ってじっと凝視してもやはり「かわいい」のでした。個人的には70年代りぼんオトメちっくの陸奥A子や田渕由美子のカラーイラスト、あるいは榛野なな恵の低彩度カラーイラストを想起します。アール・ヌーヴォともアール・デコとも異なる何らかのデザイン・センスの系譜があるように感じます。そのセンスに名前を付けるなら、やはり「おとめチック」になりそうです。シンプルな機能美を旨とするブルーノ・タウトとそりが合わなかったのは、まあ当然のように思えます。彼におとめチックの要素はありません。

 学問的な興味は、やはり「応用美術」の概念的な位置づけにあります。純粋美術とは異なる「応用美術(あるいは装飾美術)」の価値というものが、どう認められていったか、あるいは認められていかなかったか。そのあたりの概念的なインスピレーションは展覧会そのものからは得られなかったので、買ってきた図録を見ながら改めて考えることにするのでした。
 「cafe1894」が満員で、上野リチ展タイアップの見た目も麗しい色とりどりの創作メニューをいただけなかったのは、多少の心残りであります。
(2022年5/13訪問)