【要約と感想】向山洋一『「いじめ」は必ず解決できる』

【要約】いじめ解決に必要なのは、近代的なシステムと、技術です。今の学校には近代的システムも技術も欠けているから、いじめが解決しないのです。

【感想】まあ技術を向上させること自体は、いいことだと思う。本書に示された技術の数々も、なるほど、迫力がないわけではない。
とはいえ、「目的」に対する吟味を失って暴走する技術ほど恐ろしいものはない。「どうやって教えるか」も重要だが、「何を教えるか」はもっと重要だ。というか、内容に対する批判的吟味から目をそらすために、むやみやたらと方法や技術に固執しているようにすら見える。重要なものに目を向けず、ひたすら技術の向上に励む姿は、ちょっと、怖い。

【言質】「近代」という言葉の用法に関するいくつかのサンプルを得た。

「学校はもっと近代的にならなければならない。」71頁
「現在の学校のほとんどは、近代的システムになっていないのである。」229頁
「学校の運営を「近代的システム」にすべきなのである。」232頁

まあ、ここで著者が言う「近代的」は、単に「官僚的」という意味に過ぎないように読める。「人権」という「近代的概念」は、考慮に入っていないように見える。

向山洋一『「いじめ」は必ず解決できる―現場で闘う教師たちの実践』扶桑社、2007年