【要約と感想】芳沢光雄『論理的に考え、書く力』

【要約】ゆとり教育は大失敗です。数学が本質的に理解できていないバカばかりになっています。マークシート式試験は廃止して、記述式にするべきです。数学を本質的に理解するためにも、読解力が極めて重要です。

【感想】タイトルと中身がズレていて、実質的にはゆとり教育を含めて、入試政策批判の本だった。
まあ、数学に関わる人が危機感を持つこと自体は、わからなくもない。私自身も、数学ができない学生に愕然とすることは多い。子どもたちが数学を好きになって、得意になるよう、いろいろ手だてを考えていく必要は、確かにある。たとえば著者が言うように、教科書を厚くして分かりやすく工夫するのは一つの手段だろう。
また、大学入試が教育の論理ではなく経営の論理に浸食されていることについては、私も著者と危惧を共有する。入試に限らず、経営の論理は教育的な営みを破壊しつつある。非常にまずい事態に陥っている。

とはいえ、著者は教育学の論理には通じていないようで、いろいろ「?」なところはある。たとえばフランスのバカロレアを見習えと書いているが、それはつまり各大学が独自の入試問題を作らなくなるということだと理解しているのかどうか。文科省がAO入試を増加させようとしているのも、諸外国の入試制度に見習ってのことだと認識しているのかどうか。数学を愛するあまりなのかどうか知らないが、諸外国の教育制度との比較の視点は、極めて弱い。

まあ、10年ごとの教員免許更新講習を担当している身としては、「無駄だ」というご意見には、思わず頷いてしまうところではある。意味がないどころか、有害だろう。廃止した方がいい。
まあ、どうせやらなければいけないものであれば、せめて先生方にとって有意義な時間になるよう、精一杯頑張って工夫しますけどね。

芳沢光雄『論理的に考え、書く力』光文社新書、2013年