「講義」カテゴリーアーカイブ

教育の基礎理論-10

前回のおさらい

・コンドルセとオーエン。
・教育権の構造。教職の専門性。

産業革命と「学校」

・いま我々は「学校」というものの存在を当り前に思っているが、日本史や人類史の全体を視野に入れると、「学校」というものが例外的な存在であることがわかる。我々の祖先の大多数は「学校」に通っていなかったし、それでも世の中は回っていた。
・「すべての子供たちが学校に通うのが当り前」という感覚を、いちど立ち止まって疑ってみよう。ここから「学校」や「教育」が持つ意味が浮かび上がってくる。
・はたして「教育」には意味があるだろうか? 子供たちはなぜ「勉強」しなければいけないのだろうか? 「学校」にはどんな存在意義があるのだろうか?

・まず「学校」が資本主義の世界でどう機能しているかを見えやすくするために、思考実験をしてみよう。

【思考実験】ジャイアン・スネ夫・のび太のうち、「学校」の成績が人生を左右するのは誰か?

▼答え:のび太

▼理由:(1)ジャイアンの家は「自営業」であり、ジャイアンは跡継ぎである。学校のテストの点が良かろうと悪かろうと、ジャイアンの将来の職業は変わらない。
(自営業は、誰かから給料がもらえるわけではないので、自分自身の活動によって商品価値のある物や情報やサービスを生み出さなければならない。しかしその活動をうまく行うための具体的で実践的なスキルを「学校」で教えてもらえることはあまり期待できない。)

(2)スネ夫の家は「資本家」であり、自分自身が労働する必要はない。スネ夫は出来杉くんのような才能ある人材に投資するだけで儲かるのであって、自分自身が高学歴である必要はあまりない。スネ夫にとって「学校」とは、自分が投資するに値する有能な人間を生産してくれる場所である。スネ夫が出来杉くんにはラジコンを貸すのに、のび太には貸さない理由を考えよ。

(3)のび太の家は「労働者」であって、自分自身が労働する必要がある。生涯賃金を上げようと思ったら、良い企業に雇用される必要がある。そのためには良い大学を出なければならないし、そのためには良い高校を出なければならない。学校のテストの点は、のび太の人生をダイレクトに左右する。
(ちなみに、自営業は自分の活動で生み出した物や情報やサービスを売ってお金を稼いでいるが、労働者が売っているものは何か?)

(4)オマケ:しずかちゃんの生き方には「専業主婦」という選択肢が色濃く反映されている。彼女はどうしていつもお風呂に入っているのか? 「ジェンダー論」等で学んだ知見を活用して考えること。

※この見解は特定の観点(産業主義・功利主義)からの価値観に基づいており、「人格の完成」という観点から相対化される。

立場によって「学校」の見え方が異なる

・資本主義世界の立場によって、「学校」への期待のかけかたの重点が異なる。
・「労働者」のキャリアは、少なくとも就職先は学校でのテストの結果が大きく左右する。
・しかし「実家の商店の跡継ぎ」になるジャイアンにとって、「学校」の勉強にはどういう意味があるだろうか?
・「家族」が必要としている教育内容は、はたして「学校」が提供している教育内容で満足させられるだろうか?

産業革命と階層分化

・「産業革命」とは何か?
自給自足の世界から、分業の世界へ。
・土地利用法の変化。生活(衣食住)のためにあらゆるニーズを土地から生産→換金するために商品価値のある単一作物を生産。
・余談:生活(衣食住)の市場化。「家事」とは何か? 市場化されないものなどあるのか?
・年貢(モノ中心経済)から賃金労働(お金中心経済)への変化。
・エンクロージャー(囲い込み)。農村からの人口流出。労働力しか売るもののない人々(→労働者)の発生。
・労働力を購入するのは、工場。大量の労働力を必要とする産業。
・ヒトとカネとモノの大量移動と流動化=原始蓄積。「二つの国民(資本家と労働者)」の形成。
・急速な都市の形成(たとえばマンチェスターやリバプール)。都市スラム問題。浮浪者問題。腐敗選挙区問題。
・産業革命が進行すると、独立自営農民がいなくなり、資本家と労働者に分解していく。→階層分化。

復習

・立場によって「学校」の機能の見え方が異なる理屈を押さえておこう。
・産業革命に伴って生じた社会の変化を押さえておこう。

予習

・「メリトクラシー」と「隠れたカリキュラム」という言葉について、調べよう。

教育課程の意義と編成-9

▼11/20(月)

前回のおさらい

・評価。指導要録。
・発達の支援。学級経営の充実。生徒指導提要。
・学校運営。学校評価。校務分掌。

学習指導要領の吟味

・討論を通じて、『学習指導要領』が目指す教育の方向性を確認しよう。
▼文部科学省が意図していることを正確に読み取り、目指している教育の構造を理解しよう。(思考力)
▼把握した文部科学省の意図が、はたして本当に有効かどうか、有効としたらどのような効果をもたらすか、様々なデータや知識、あるいは自分の経験と照らし合わせて判断しよう。(判断力)
▼教育の課題に対する自分の意見をまとめ、適切なキーワードを使用して、論理的にわかりやすく伝えよう。(表現力)

(1)『学習指導要領』で育成を目指すとされている「資質・能力」の設定は適切だろうか? 世界や日本社会の変化に対する現状認識が適切かどうか、社会で必要とされる「人材」の設定が適切かどうかを考えて、学習指導要領が育成を目指す資質・能力を吟味してみよう。
(2)「社会に開かれた教育過程」について。これまで学校教育で学んだ知識が本当に社会に出てから通用しないのか、本当に学校教育を社会に開くように変える意味があるのかどうか、吟味してみよう。
(3)「カリキュラム・マネジメント」について。教科横断的な資質・能力は本当にこのやり方で身につくのか、吟味してみよう。

参考資料

育成を目指す資質・能力
社会に開かれた教育課程
カリキュラム・マネジメント
主体的・対話的で深い学び

教育学Ⅱ(龍ケ崎)-7

■龍ケ崎キャンパス 11/20(月)

前回のおさらい

・人間以外の動物は本当にスポーツをしないのか。スポーツをしないとしたら、どうしてか?
・人間以外の動物がスポーツをしないとしたら、どうして人間だけがスポーツをするのか?

▼人間だけがスポーツをするという意見
(ア)人間には主体性があるが、動物は調教や命令によって動くだけ。
(イ)人間は手足を器用に操れるが、動物はできない。
(ウ)人間にはスポーツをする余裕があるが、動物は生きるために精一杯で余裕がない。
(エ)人間は勝利や名誉を求めるが、動物は求めない。
(オ)人間は達成感や自己満足を求めるが、動物にはない。
(カ)人間は娯楽を求めるが、動物は求めない。
(キ)人間は言葉を使ってコミュニケーションして団体行動ができるが、動物にはできない。
(ク)人間にはルールを作ってそれを守る能力があるが、動物にはない。
(ケ)人間は文化を持っているが、動物には持っていない。

▼動物もスポーツをするという意見
(ア)ウォーキングをスポーツと呼ぶなら、動物もやっている。

意見の吟味

・単に自分が思っていることを言うだけでなく、他の人が言った意見を受け止め、理解し、自分のものとすることに意味がある。物事を多面的・総合的に理解することができる。
・とはいえ、それぞれの意見はまだしっかり吟味されていない。
→人間だけがスポーツをするという意見に関して、納得できる意見が上位に来るように順位をつけてみよう。
→一位と最下位の意見について、どうしてその順位にしたか、理由を説明してみよう。

・また、知識を単に他人事として理解するのでは勉強する意味はあまりない。学んだ知識を自分の生き方に反映させ、知識を社会と繋げて活かしていくところに「勉強」の意味がある。
→自分自身がスポーツをする理由を考えてみよう。
→自分に主体性はあるか、手足を器用に操れるか、余裕があるか、勝利や名誉を求めるか、達成感はあるか、娯楽なのか、団体行動ができているか、ルールを守っているか、文化を持っているか、考えてみよう。
→自分が十分に身につけているものと足りないものを考えてみよう。

教育学Ⅱ(新松戸)-8

前回のおさらい

・教育勅語の働き。
・ナショナリズムの力と問題。

教育基本法体制

・1947年法律第25号。日本国憲法と密接に関係。(2006年改訂)
・日本国憲法が国作りの「理念」を表現しているとすれば、教育基本法は具体化への「方法」を示す。
・「教育勅語」と正反対の理念。

教育勅語の失効

・1948年。衆議院と参議院での決議。何が問題だったのか?
・「主権在君」と「神話的国体観」。

主権在民と基本的人権

*主権在民:国民ひとりひとりが「主人公」であるという政治体制。人間は誰か別の存在のために使われる「脇役」ではない。
*基本的人権:ひとりひとりが自分の人生の主人公となって生きることができるためには、これだけはどうしても必要になるという最低限の権利。幸福権や職業選択の自由や財産の自由や身体の自由などなど。

学校教育法

・1947年法律第26号。いわゆる「6・3・3制」
・複線制(フォーク型)から単線制へ。
・女性の地位の変化。
・教員養成の変化。師範学校から開放制へ。

教育委員会法

・1948年。公選制教育委員会。
・教育基本法第10条。「不当な支配」とは何か?
・政治と教育の分離。

学習指導要領(1947年版)

・「学習指導要領(試案)」。「試案」とはどういうことか。
・法的拘束力なし。
・道徳科なし。
・社会科の新設。「主人公」として生きるためには、基本的人権だけでは不十分。ガイドブックも必要。
・家庭科の男女共修。

生活綴方(せいかつつづりかた)

*無着成恭『山びこ学校』。1948年、山形県山元中学校。1951年、クラス文集を『山びこ学校』として刊行。
*綴方:いわゆる作文。

地域教育計画、コア・カリキュラム

*川口プラン:海後宗臣
*コア・カリキュラム:梅根悟、ジョン・デューイ

復習

・教育基本法体制の仕組みについて押さえよう。

予習

・「逆コース」という言葉について調べよう。
・高度経済成長について調べておこう。

 

教育概論Ⅱ(栄養)-9

▼11/14

前回のおさらい

・学習指導要領の中の「家庭科」。

学習指導要領の変遷(0)

教育勅語

・1891年渙発、1948年失効確認(衆議院、参議院)。
・元田永孚と井上毅。儒学主義と近代主義のミックス。

日本近代と戦争

・日本が外国とどれくらい戦争したか、考えてみよう。
・日本の歴史全体を考えたときに、近代の戦争の特徴について考えてみよう。

教育勅語の構造

・パートが3つに分かれている。
・教育勅語には「いいことも書かれている」と主張する人々は、第二段落しか見ていない。しかし、単に「いいことも書かれている」だけで良いとしたら、聖書でもコーランでも論語でもいいはず。なぜ、聖書でもコーランでも論語でもなく「教育勅語」である必要があったのか。
・「日本人」という自己意識の形成にとって重要なのは、AパートとCパート。Aパートの理解を抜きにして、Bパートを語ることはできないし、語る意味がない。
・Aパート=日本人の「団結力」が世界一であるという主張。その根拠としての天皇。
・日本神話。天孫降臨。
・Bパートの徳目の全体構成。
・教育勅語を中心とした教育体制の構築。修身、国語、歴史、地理との関係。
・教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのか?

ナショナリズムの力と問題

・身分制秩序を破壊して、国民を平等に向かわせる力。
・異質な集団を一つにまとめる力。戦争の強さ。
・一方で、異質なものを排除しながら「純粋」さを追求していく傾向。
・排除したものを「敵」として固定し、憎しみを増幅させる作用。
・巨大な力と、コントロールの難しさ。

復習

・「教育勅語」の構造について押さえておこう。

予習

・教育基本法と学校教育法について調べておこう。