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流通経済大学 教育学Ⅰ(9)龍ケ崎

■龍ケ崎キャンパス 6/5(月)

課題について

・締め切り:龍ケ崎7/17(月)、新松戸7/21(金)
・形式:800字~2000字。手書き可。コンピュータ使用可。B5でもA4でも原稿用紙でもレポート用紙でも可。表紙無用。名前を忘れないように。
・内容:授業で扱ったトピックから興味・関心があるものを自分で選んで、分かったことや考えたこと、調べて深めたことなどを書く。
・注意事項:剽窃が発覚した場合は、不可とする。

前回のおさらい

・アイデンティティの確立とは、常に主語として一致している状態。
・自由には責任が伴う。責任をとれるからこそ、事後的に自由であったことが分かる。人格は、自由である。
・自由は、「わがまま」や「自分勝手」とはまったく違う状態を指している。

予習

・労働と教育の関係について考えてみよう。
・「児童労働」とは何かについて、どうして子供が働かなければならなかったのか、時代背景に気をつけて調べてこよう。
・「社会権」という言葉の意味について調べてこよう。
・「義務教育」とは「誰の誰に対するどのような義務なのか」について、調べてこよう。
・コンドルセの思想について調べてこよう。
・ロバート・オーエンの仕事と業績について調べてこよう。

【要約と感想】上尾信也『音楽のヨーロッパ史』

【要約】書影の帯には「のだめカンタービレでクラシックにハマった人へ」などと書いてあるけれど、そういう人を落胆させ、憤慨させる本です。クラシック中心の音楽史を完全否定しています。帯のコピーを作った人は、内容をしっかり読まずに目次だけ見て適当に作ったか、軽薄な流行に乗せられる人々を意図的に騙して「ざまあみろ」とほくそ笑んでいるか、どちらかでしょうね。

■確認したかったことで、期待通り書いてあったこと=ルネサンス期のヨーロッパ音楽は、ビザンティン帝国やイスラーム文化の影響なしには考えられない。十字軍を通じ、楽器や演奏技法などがイスラームやビザンティン帝国から西方にもたらされた。オスマン・トルコの軍楽は、ルネサンス以降のヨーロッパ音楽に多大な影響を与えた。

宗教改革は印刷術によるプロパガンダ合戦だっただけでなく、情緒と感情の優越を競う音の戦争でもあった。

【感想】この前読んだ岡田暁生『西洋音楽史』に対する不満は、この本で解消される。中世ヨーロッパ音楽に対するイスラームやビザンティンの影響が的確に指摘されていて、「ヨーロッパ」がしっかり相対化されている。タイトルが『ヨーロッパの音楽史』ではなく『音楽のヨーロッパ史』となっている所以か。おそらく「音楽史」という表題では、ヨーロッパを相対化することが難しい。「ヨーロッパ史」とすることで、ヨーロッパを相対化しようとする意志が可能となる。

また、『西洋音楽史』が19世紀クラシックの内的発展を一生懸命に語っている裏で、実際にはナショナリズムの進展に伴って音楽が外在的にしていたことを、本書は教えてくれる。具体的には「国歌」のあり方。本書の最後の一文、「音楽によって無自覚に感情や感覚を支配されるのではなく、音楽を奏し聴く個人個人が音楽を自律的に支配することこそ、音楽の力を自らの内にしたことになる。」という言葉は、なかなか「ヨーロッパ史」的に含蓄が深い。

上尾信也『音楽のヨーロッパ史』講談社現代新書、2000年

【要約と感想】岡田暁生『西洋音楽史』

【要約】いわゆるクラシック音楽は、普遍的でも不滅でもなく、「時代を超越」しない民族音楽の一種です。しかし敢えてそれが普遍的だったり「時代を超越」しているように見える理由を挙げるとしたら、「書かれている」からです。このように西洋音楽を相対化することで、時代との相克がはっきりと見えてきます。

■確認したかったことで、期待通り書いてあったこと=クラシックは、べつに普遍的でもないし、時代を超越しているわけでもない。

音楽を一心不乱に傾聴するような生真面目な鑑賞態度は、19世紀のドイツで生み出された特殊な歴史的産物である。バッハが急に持ち上げられるようになったのも、内向的なドイツのナショナリズム高揚と関係がある。同時代のフランスやイタリアの音楽を視野に入れると、まったく別の様相が見えてくる。

【感想】「クラシック以外は音楽と認めない」なんて野蛮なことを平気で言っちゃうような知り合いがいた。おそらく彼はそう主張することでマウンティングしてるつもりなんだろうけれど、逆に中二病にありがちな教養の欠如が露呈しちゃうわけで。本書は、そういう独りよがりな人にちゃんとした大人の教養を身につけてもらうために存在している感じはする。

とはいえ、個人的な関心からして気になることは、やっぱり「西洋」の定義とルネサンスの意味。たとえば本書で語られることは専らイタリアから西の地域に限られていて、ビザンティン帝国はまったく視野に入っていない。まあ、本書はそういう類の課題設定をしているわけではないから、それで問題ない。とはいえ、現在の我々の常識における観念的な「西洋」を基準として、そこから逆算したところで成立しているような語り口であることも明白であって。ビザンティン帝国やトルコの文化まで視野に入れたとき、特にルネサンス期の語り口は変わるんではないかという気もする。また一方で19世紀についての語り口は、ナショナリズムという切り口が加わるとまるで違うものになるような気もする。ということは、そのあたりに「近代」とか「ヨーロッパ」というものの成立を考える上で、何かしらのフックがある。

それから、音楽について語る人は、語彙がとても豊富。大いに見習っていきたい。

岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』中公新書、2005年

教職基礎論(栄養)-7

▼短大栄養科 6/3(土)

前回の復習

・「義務教育」と「普通教育」の意味。
・「学力」の三要素。
・『学習指導要領』の意義と構造。

学習指導(つづき)

生きる力と知識基盤社会

生きる力:知徳体のバランスがとれた成長。
知識基盤社会:21世紀は、新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す、いわゆる「知識基盤社会」(knowledge-based society)の時代である。
(1)知識には国境がなく、グローバル化が一層進む。
(2)知識は日進月歩であり、競争と技術革新が絶え間なく生まれる。
(3)知識の進展は旧来のパラダイムの転換を伴うことが多く、幅広い知識と柔軟な思考力に基づく判断が一層重要になる。
(4)性別や年齢を問わず参画することが促進される。

「社会の構造的な変化の中で大人自身が変化に対応する能力を求められている。そのことを前提に、次代を担う子どもたちに必要な力を一言で示すとすれば、まさに平成8年の中央教育審議会答申で提唱された「生きる力」にほかならない。」

OECDの主要能力(キーコンピテンシー)

OECDOrganisation for Economic Co-operation and Development=経済協力開発機構。
PISA:Programme for International Student Assessment=学習到達度評価。
キーコンピテンシー:OECDが2000年から開始したPISA調査の概念的な枠組みとして定義付けられた。
・単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な課題に対応することができる力。
(1)社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する力
(2)多様な社会グループにおける人間関係形成能力
(3)自立的に行動する能力

(いわゆる)ゆとり教育

ゆとり教育:いわゆる「詰め込み教育」からの転換。(文部科学省による正式名称ではない)。いつから「ゆとり教育」が始まったかや、実質的な定義、評価等については、立場によって見解が大きく分かれているものの、1990年代後半から2000年代前半にかけてがピークだったことについてはおおむね一致する。
新学力観:従来の「知識・技能」を中心とした学力観を脱却して、思考力や問題解決能力、一人一人の個性を重視しようとする新しい「学力」に対する考え方。1998年の学習指導要領から示された。
学力低下:1990年代から2000年代にかけて、子供たちの学力が低下したのではないかという問題関心を示す言葉。実際に学力が低下したかどうかは吟味の必要がある。また、現実的には学力格差の拡大のほうが問題の根が深いかもしれない。
PISAショック:2003年と2006年のPISA調査結果で、日本の子供たちの学力が国際的な水準から見て急激に低下したことに、多くの人々が驚愕したという事態。いわゆるゆとり教育を見直すきっかけとなった。
全国学力・学習状況調査:2007年より開始された、日本全国の小中学校生徒全員を対象としたテスト。

ゆとり教育の是非

・「(いわゆる)ゆとり教育」に賛成か反対か、「どのような能力を伸ばすのか」という観点から考えてみよう。

復習

・「生きる力」が目指している教育や、「キーコンピテンシー」といったものが目指している人間形成について、現代社会の変化を踏まえて、概要を押さえておこう。

予習

・「学校選択制」や「教育改革特区」とは何かについて、調べておこう。

教育概論Ⅰ(中高)-7

▼栄養・環教 6/2
▼語学・心カ・教服・服美・表現 6/3

前回のおさらい

・ヨーロッパが強い理由=個人主義+民主主義。
・社会契約論の論理。
・民主主義で憲法が果たす役割。
・民主主義の世の中で普遍的な「人間の教育」が始まる。EducationとInstructionの違い。

人格の完成

・個人主義+民主主義の教育=「普遍的な人間」を作るための教育とは何か?
・教育基本法第一条:教育の目的は「人格の完成」
・人格とは何か? 目に見えない、触ることができない、科学的に存在を確かめることができない。
・「好き」と「愛してる」という言葉の意味の違いを通して、「人格」について考えてみる。

 好き愛してる
個性代わりがある代わりがない
タイプ言える言えない
数値化表せる表せない
アイデンティティ変わる変わらない
様相主観的な感情存在のあり方
対象モノ(純粋理性)人格(実践理性)

・人格とは、比較できず、束ねられず、代わりがなく、変わらないようなもの。
・モノと人格の違い。
・「人格を尊重する」とは、どういうことか。

個性

・他のものと交換することができない、なにか。
・それが取り去られたら、私が私でなくなってしまう、なにか。
・「個性を尊重する」とはどういうことか?
・教育者が言ってはならない、個性を否定するような言葉。
・「名前」とは何か?

児童の権利条約第7条-1

「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」
*児童の権利条約:1989年に国連総会で採択。日本は1994年に批准。

アイデンティティ

・日本語では「自我同一性」や「存在証明」などと訳されることがある。
・自同律:「A=A」「わたし は わたし」
・この世に変化しないものなどあるのか? 「A→A’」
・私は常に変化し続けている(新陳代謝)にも関わらず、どうして常に「わたしはわたし」と言うことができるのか?
・わたしの属性について考えてみる。A=X、A=Y、A=Z・・・・。常に一致しているのは何か?
・主語と述語。常に主語であるものにはアイデンティティが成立している。
・述語に重点を置くか、主語に重点を置くか。
・「主体性」とは何か。

個人主義の教育

人間の尊厳:かけがえのない、他の何者とも交換不可能な、独立した、一人の人間として認められる。
・日本国憲法第13条:「すべて国民は、個人として尊重される。」
・日本国憲法第24条2項:「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」

自由と責任

・「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」とは何か?
・モノは自由ではないが、人格は自由である。
・教育とは、自由でないようなものを、自由にするための営みである。
・子供は不自由で、大人が自由? →子供は生理現象に無条件に従わざるを得ないが、大人は同じ生理現象に対しても様々な選択肢を持っている。
・人間は、本当に自由なのだろうか?

思考実験:自由と責任

case1:殺人 選択肢がある場合
case2:リモコン 選択肢がない場合
case3:運命 選択肢はあったのか?→(余談)悲劇とは何か
case4:隕石 物理法則には選択肢の余地がない
case5:因果関係 因果関係に選択肢はあるか→(余談)決定論
case6:責任 選択肢は、あったはずだ

・「責任をとる」ということは「自由」でなければ起こりえない。自由だから責任があるのではなく、責任をとれるから自由がある。
・「自由」であるということは、因果律に支配された「モノ」とは違うということである。
・因果律に支配されないものとは何か? →人格
立法能力:自分でルールを作って、自分で守ることができるような力。他人の作ったルールに従う(他律)のではなく、自らの意志でルールに従う(自律)。

復習

・「個性を尊重する」というとき、教師は具体的に何をするべきか、考えてみよう。

予習

・「自己実現」という言葉について調べておこう。