【要約と感想】テオプラストス『人さまざま』

【要約】ギリシアでは気候も環境も教育も一緒のはずなのに、なぜか人々の性格が違ってしまいます。その現象に興味を持ち、様々な性格の特徴について書き記しました。
この本には、噂好きとか恥知らずなど、特に真似すべきでない人々の事例が集まっています。

【感想】著者は、アリストテレスの同僚で友人。アリストテレスも『弁論術』で人々の性格の相違について論じており、本書もそれに通じる。人々の性格が異なる現象に対して、昔から多大な興味関心が寄せられることを確認できるという点だけでも、本書の存在意義は大きいように思う。
ただしアリストテレスが比較的体系的に人間の性格を論じているのに対し、本書には体系性をまったく感じない。おもいつくままに様々な性格が列挙されているだけのように思える。
まあ、2300年も前の異国の人間たちについて書いているにも関わらず、現代日本人の私にも思い当たることが多く、なかなか興味深く読める。細かいギャグも多く、さくっと楽しみながら読める。

【備忘録】
「無駄口」について語る個所では、「今の人間は昔の人間よりも悪い」という例のアレを見ることができる。こういう話題は下劣な人間が口にするものだということが示されている好例。

▼無駄口
「さてそこで、いよいよ話に身がはいってくると、しゃべりつづける。近頃の人間は、ひと昔前のものより、相当たちがわるいですね、とか」p.21

テオプラストス『人さまざま』森進一訳、岩波文庫、1982年