【要約と感想】フェリペ・フェルナンデス=アルメスト『1492コロンブス 逆転の世界史』

【要約】ダサダサだった辺境ヨーロッパは、1492年をきっかけに大逆転して、世界を制覇しました。

■確認したかったことで、期待通り書いてあったこと=コロンブスは無知で無謀だった。地球の大きさを完全に見誤っていた。コロンブス以外の知識人は地球が丸いことを知っていたし、コロンブスよりも正確に地球の大きさを把握していた。他の知識人は、地球が平らだと勘違いしてコロンブスを止めたのではなく、地球の正確な大きさを把握していたから止めた。コロンブスが読んでいた本は地理書の類ではなく、荒唐無稽な冒険活劇騎士道ものだった。コロンブスは香辛料を求めてインドに行こうとしたわけではなく、中国との交易ルートを開拓したかった。15世紀末の時点でヨーロッパは極めて貧しい世界の辺境であり、世界の中心は中国にあった。しかし1492年を境として、西洋と東洋の立場が逆転していく。

■図らずも新たに得た知識=15世紀末におけるロシアの領土拡大過程。イベリア半島におけるユダヤ人追放の過程とその影響。スペインによるカナリア諸島征服の思想と具体的展開。アフリカ大陸におけるイスラム教の拡大過程とキリスト教徒の拮抗。アステカ帝国とインカ帝国の崩壊の理由に関わる知見。

■要確認事項=ルネサンスの意義をほぼ全面的に否定する見解。宗教改革の意義を過小評価しつつ、一方でサヴォナローラのような神秘主義が西洋近代の個人主義の源泉になったという見解。

【感想】記述が戦術レベルの地政学的観点や自然環境決定論に偏りすぎている。いかがなものか。

フェリペ・フェルナンデス=アルメスト/関口篤訳『1492 コロンブス 逆転の世界史』青土社、2011年