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教育概論Ⅰ(栄養)-8

▼短大栄養科 6/5(火)

前回のおさらい

・民主主義の世の中を作る上で憲法は極めて重要です。
・民主主義の世界で、普遍的な人間を作る教育が始まります。コメニウスやロックが活躍します。

近代初期の教育思想(つづき)

ルソー Jean-Jacques Rousseau

・市民革命、ロマン主義。
・1712年~1778年。ジュネーヴ出身。
・主著『社会契約論』(政治思想)、『人間不平等起源論』(政治思想)、『新エロイーズ』(恋愛小説)、『エミール』(教育思想)
・キャッチフレーズ:子どもの発見消極教育
・名言:万物を創る者の手を離れるときはすべてよいものであるが、人間の手に移るとすべてが悪くなる
・子供期の独自性を初めて主張しました。消極教育とは、書物による早期教育をいましめ、まず自然による教育(たとえば感覚の訓練など)を重視する姿勢を指します。また、思春期や青年期の持つ独特の意義について意識を向けたのも大きな特徴です。

近代初期教育思想の特徴

・完成した大人の理想像から教育を組み立てる考え(ロック的なもの)と、純粋な子供の理想像から教育を組み立てる考え(ルソー的なもの)の両側面が確認できます。子供の誕生=大人の誕生。
・いずれにせよ、あらゆる人間が共通して持つ「理性」に対して全面的な信頼が置かれています。新しい社会に必要な人間とは、既存の権威に無批判に従うような人間ではなく、自分で考えて行動することができる理性的な人間であることが示されています。
・学校教育を非難し、個人を育てるために家庭教育の意義を強調します。個人の自由としての教育(国家からの自由)を重視し、集団(学校教育の固有性)を軽視します。

近代教育学の展開

・他の学問分野から独立した、固有の教育学が形成されていきます。

ペスタロッチー Johann Heinrich Pestalozzi

・1746年~1827年。スイス出身。
・主著『隠者の夕暮』『シュタンツだより』『ゲルトルートはいかにその子を教えたか』『白鳥の歌』
・キャッチフレーズ:実物教授。直感教授。労作教育。3つのH(Hand、Heart、Head)=知徳体。
名言:「王座の上にあっても、木の葉の屋根の蔭に住まっても同じ人間だ」=身分に関係なく、普遍的な人間を教育するということです。「生活が陶冶する」
・孤児や貧民の子供の教育を通じて、身分や階級に関わらない人間一般の教育原理を打ち立てました。ルソーが理論だけだったのに対して、ペスタロッチーは実践を通じて教育原理を明らかにしました。
・アメリカを経由したペスタロッチー主義(開発主義教育)は、明治初期に日本でも流行しました。

伊沢修二

・1851年~1917年。長野県出身。
・アメリカに留学して教育学を学んだ後、日本で開発主義を広めました。
・主著『教育学』。
・音楽教育や体操の普及、植民地での国語教育などにも深く関わりました。

高嶺秀夫

・1854年~1910年。福島県出身。
・アメリカに留学して教育学を学んだ後、日本で開発主義を広めました。
・主著『教育新論』。ジョホノット教育学の翻訳。
・高等師範学校の校長として、開発主義の普及に貢献しました。

ヘルバルト Johann Friedrich Herbart

・1776年~1841年。ドイツ出身。
・主著『一般教育学』『ペスタロッチー直感教授のABC』
・キャッチフレーズ:教育学の父。目的としての倫理学、方法としての心理学。段階教授法。
・名言:「教授のない教育などというものの存在を認めないし、逆に、教育のないいかなる教授も認めない
・ペスタロッチーの実物教授を引き継ぎながら、教育学を体系化された学問へと鍛えました。家庭教師による教育ではなく、学校における教師の教授法を理論化しました。

ヘルバルト主義教育学

・ヘルバルトを引き継いで、科学的な教育学を発展させました。
・チラー、ライン。
五段階教授法。予備→提示→比較→総合→応用。
・中心統合法。宗教(道徳)を中心としたカリキュラム(スコープ)構成の原理。
・開化史的段階。カリキュラム配列(シークエンス)の原理。

谷本富

・1867年~1946年。香川県出身。
・主著『実用教育学及教授法』『科学的教育学講義』
・ヘルバルト主義を日本人にわかりやすく改変し、流行をさせました。後にヘルバルト主義を捨てて、新教育にコミットしました。

復習

・時代背景を考慮しながら、各教育思想の本質を押さえよう。

予習

・義務教育とは何か、その導入経緯について考えておこう。

教職基礎論(栄養)-6

▼短大栄養科 6/2

前回のおさらい

・「人格」の性質、代わりがない=個性、変わらない=アイデンティティについて考えました。

自由と責任(つづき)

思考実験:自由と責任

case1:殺人 選択肢がある場合
case2:リモコン 選択肢がない場合
case3:運命 選択肢はあったのか?→(余談)悲劇とは何か
case4:隕石 物理法則には選択肢の余地がない
case5:因果関係 因果関係に選択肢はあるか→(余談)決定論
case6:責任 選択肢は、あったはずだ

・「責任をとる」ということは「自由」でなければ起こりえません。自由だから責任があるのではなく、責任をとれるから自由があると言えそうです。
・「自由」であるということは、因果律に支配された「モノ」とは違うということです。モノは外部の物理法則に従わなければなりませんが、人間は自分(たち)で作ったルールに従うことができます。「自律」=自分で自分をルールに従わせることです。
・因果律に支配されないものとは何でしょうか? →人格
立法能力:自分でルールを作って、自分で守ることができるような力のことです。
自律:他人の作ったルールに従う(他律)のではなく、自らの意志でルールに従います(自律)。
→みんなで作ったルールには、みんなで従います。

・「自立心自律性は、児童がよりよい生き方を目指し、人格を形成していく上で核となるものであり、自己の生き方や人間関係を広げ、社会に参画をしていく上でも基盤となる重要な要素である。」『小学校学習指導要領解説 総則編』p.138
・「互いの人格を尊重し、個性の伸長とともに、社会的資質や行動力を高める上では、先述したように、自発的、自治的な活動を中心とした学級活動の充実が重要である。」『小学校学習指導要領解説 特別活動編』p.143

理性

*理性:人間だけが持っている(つまり他の動植物は持っていない)であろう、ルール(法則)を発見する力です。モノについてのルールを発見する力(純粋理性)と、人格についてのルールを発見する力(実践理性)は、別のものかもしれません。
*科学:ルール(法則)を発見する手続きのことです。→「分析/総合」「演繹/帰納」。

分析:ひとつのものをいくつかの要素に分けて、本質的な要素を析出します。
総合:析出された本質的な要素をつなぎ合わせて観念を構成します。
観察:個別具体的なもののうち、似ているところや異なっているところを把握します。
感覚:客観的な対象を主観的な印象として取り込むための窓口です。

演繹:抽象的な理論から個別具体的なものや現象を説明します。
帰納:個別具体的なものから抽象的な理論を発見します。
推論:具体的なものを改めて観察するまでもなく、頭の中だけで論理的に考えて結論を導き出す力です。

自己実現

・どのように人格は完成へと向かうのでしょうか。
・自己実現≒ほんとうのわたしデビュー、わたしらしいわたし。社会的な成功とは基本的にはあまり関係がありません。
・直線的な発達ではなく、矛盾と葛藤が連続する、ジグザグの成長です。
・弁証法的発展:自己耽溺(自己中心主義)と自己疎外(世間中心主義)の葛藤から、自由で主体的な決断を経て、責任を引き受けて、自己実現へ向かいます。
・「自分こわし」と「自分つくり」の連続が、人格を完成へと向かわせます。

「児童が、自己の存在感を実感しながら、よりよい人間関係を形成し、有意義で充実した学校生活を送る中で、現在及び将来における自己実現を図っていくことができるよう、児童理解を深め、学習指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図ること。」
『小学校学習指導要領』総則、p.9
「(3)自主的、実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして、集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに、自己の生き方についての考えを深め、自己実現を図ろうとする態度を養う。」『小学校学習指導要領』特別活動の目標、p.164

「近代教育」まとめ:人格の完成とは・・

・個性の尊重:独立。かけがえのないわたし。
・アイデンティティの確立:自主。まさにこのわたし。
・自由の獲得:自律。わたしが作ったルールに従うわたし。
・自己実現:夢。ほんとうのわたし。

復習

・「自由」と「わがまま・自分勝手」の違いについて、自分なりに考えておこう。
・「自己実現」と「自己満足」の違いについて、自分なりに考えておこう。

予習

・「学力」について、文部科学省の見解を調べておこう。

流通経済大学「教育学Ⅰ」(7)

■新松戸キャンパス 6/1(金)
■龍ケ崎キャンパス 6/4(月)

レポート課題

・締め切り:新松戸=7/20(金)、龍ケ崎7/16(月)。授業時間内に回収する。教務課や学務課には提出しないように。この日に来られないことがあらかじめ分かっている場合は、締め切り前に提出するよう工夫すること。
・形式:800字~2000字。手書き可。コンピュータ使用可。B5でもA4でも原稿用紙でもレポート用紙でも可。表紙無用。名前を忘れないように。
・内容:授業で扱ったトピックから興味・関心があるものを自分で選んで、分かったことや考えたこと、調べて深めたことなどを書く。2つ以上を組み合わせても良い。
・注意事項:剽窃が発覚した場合は、不可とする。

*休講と補講に関する特別ルール
・補講に出られなかった者は、その分(3時間)の学習を自分で行ったことを示せば、欠席扱いとはしない。具体的には、レポートの分量を800字増加する。1,600字~2,800字。
*今後もう一度休講の予定がある(新松戸=6/226/8体調不良のため休講、龍ケ崎6/25)。そこに出なかった場合は、2,400字~3,600字。

前回のおさらい

・自給自足(お金をまったく必要としない生活スタイル)から、分業(生きるために絶対にお金が必要な生活スタイル)へと変化した。
・かつては、生活に必要なもの(衣食住)はすべて土地から生み出していた。

働くことと生きること(つづき)

産業革命と階層分化

・自給自足の世界から、分業の世界へ。
・土地利用法の変化。生活(衣食住)のためにあらゆるニーズを土地から生産→換金するために商品価値のある単一作物を生産。
・余談:生活(衣食住)の市場化。「家事」とは何か? 市場化されないものなどあるのか?
・年貢(モノ中心経済)から賃金労働(お金中心経済)への変化。
・エンクロージャー(囲い込み)。農村からの人口流出。労働力しか売るもののない人々(→労働者)の発生。
・労働力を購入するのは、工場。大量の労働力を必要とする産業。急速な都市の形成(たとえばマンチェスターやリバプール)。腐敗選挙区問題。都市スラム問題。浮浪者問題。
・「疎外」。生きることと働くことの距離が離れてしまう。働くことに生きがいを感じられない。
・ヒトとカネとモノの大量移動と流動化=原始蓄積。「二つの国民(資本家と労働者)」の形成。
・産業革命は単に機械を発明しただけではなく、世界の形や人々の生き方を決定的に変える。
・余談:サッカーは貧乏人のスポーツなのか問題。
・産業革命が進行すると、独立自営農民(ジャイアン)がいなくなり、資本家(スネ夫)と労働者(のび太)に分解していく。→階層分化。

モニトリアル・システム

・産業革命で変化した世の中に対応する教育が登場する。安く、早く、大量に教育する。まるで工場のよう。
*ベル・ランカスター法:助教法。大勢の生徒に対する一斉授業方法。教師はまず成績優秀な学生に教え、優秀な学生(モニター・助教)が一般学生に教える。
・「人格の完成」を目指すというよりも、工場労働で必要となる必要最低限のリテラシーとモラルを身につけることを目指す。

働くことと生きることが一体だった頃

・働くこと=生きること=育つこと
・「教育」と「形成」の違い。教育=脳みそに知識をたたき込む。形成=身体にカンとコツをしみこませる。
・「学校」がなかったころの人間形成。徒弟制、丁稚奉公。
・「子供」と「大人」の区別。子供=働かなくていい人、大人=働かなくてはいけない人。かつて大人と子供の間に区別はなかった。大人も子供も生きるために働いていた。
・一人前への憧れ。かつては、子供たちは早く一人前になりたかった。

復習

・産業革命の影響を理解しておこう。
・教育と形成の違いを押さえよう。

予習

・「イニシエーション」と「成人式」について調べておこう。

教育概論Ⅰ(中高)-6

栄養・環教 6/1
語学・心カ・教福・服美・表現 6/2

前回のおさらい

・ヨーロッパが強くなったのは、(1)大航海時代(2)宗教改革(3)ルネサンスをきっかけとしていました。
・それらはすべて印刷術を前提として実現していました。そして結果として、人間の欲望が積極的に肯定されることになりました。
・リテラシーを獲得するために、人々は社会から切り離された場所と時間でトレーニングをする必要が生じました。大人としての義務を免除されてトレーニングに励む期間のことをモラトリアムと呼びます。

市民革命と社会契約論

市民社会:欲望の解放と制御

市民社会:欲望の体系とも呼ばれます(ヘーゲル『法の哲学』)。個人主義(欲望にまみれた利己的人間)を満足させるために組み立てられた世の中のことです。
・経済的発展は「欲望の解放」によって促進されます。「欲望の制御」を厳しくしすぎると、世界は停滞してしまいます。
・しかし人間の欲望には際限というものがありません。解放された欲望は、そのままでは世界そのものを破壊してしまいます。実際に、ヨーロッパの16世紀と17世紀は宗教戦争や侵略戦争が続いて荒れ狂った時代となりました。
・人間の欲望を解放して、自分勝手な利己的人間だらけになって、なおかつ世界を破滅させないような方法はあるでしょうか? →民主主義

市民革命と社会契約論

・ヨーロッパの政治体制を決定的に変えた事件をまとめて市民革命と呼びます。
*市民:農村の生産者ではなく、都市に暮らし、市場でお金を使う人々を指します。基本的にお金持ちです。
*革命:「一揆」と勘違いする日本人が多いですが、いわゆる一揆は支配者の交代を伴いません。支配階級が覆る事態を革命と呼びます。
*市民革命:ヨーロッパでは様々な地域と時期に革命が発生しましたが、全て共通して「市民」が支配者になる革命だったので、「市民革命」と呼びます。

市民革命重要人物政治思想書教育思想書
清教徒革命1642トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』
名誉革命1688ジョン・ロック『市民政府論』『教育論』
アメリカ独立戦争1776トマス・ペイン『コモン・センス』
フランス革命1789ジャン・ジャック・ルソー『社会契約論』『エミール』

・市民革命には、それぞれ理論的指導者と代表的な政治思想書が関わっています。市民革命の理論的根拠となったのが、社会契約論と呼ばれる考え方です。ホッブズ『リヴァイアサン』→ロック『市民政府論』→ルソー『社会契約論』というように展開します。

社会契約の「社会」とは?

社会:もともと日本語には存在せず、sociaeyやassociationの翻訳語として普及しました。ヨーロッパで成熟した「個人」を土台として組み立てられた世の中を指します。
・伝統的な「共同体」と新しい「社会」では、集団優先か個人優先かで世の中の形が決定的に違ってきます。共同体では身分が固定して人々の役割が決まっていましたが、社会では個人の力によって役割や組み合わせを変えることができます。

社会契約の「契約」とは?

・自由で平等な個人同士が合理的な判断を下した結果として成立する合意と約束のことです。自由や平等が損なわれ、合理的な意志と判断が存在しない場合には、契約は成立しません。
・西洋社会には古くから「契約」を重んじる伝統がありました。神と人との契約から、人間同士の契約へと理論が展開します。

ホッブズ『リヴァイアサン』

自然状態においては、人間は自由で平等でした。→自然権
・しかし人間の欲望には制限がなく、放置していたら人々は他人の自然権の根幹(いちばん大事な生命)を侵害してしまいます。→万人の万人に対する闘争
・そこで人々は理性的に考えて、一番大事な自分の生命を守るためにこそ、自らの自然権を放棄し、契約を結んで、共通権力を作り上げることが必要だと考えます。→自然法
・もしも自分の生命を脅かすものがいたら、この共通の巨大権力に懲らしめてもらえばいいわけです。しかし自分の生命を保護してもらう代わりに、人々は共通権力が決めたルールには従わなくてはなりません。

ロック『市民政府論』

・共通権力(政府)は、単に人々の生命を守るというだけの必要悪に留まるものではなく、積極的に人々の私有財産を保護する義務を持ちます。
・所有権の理論的根拠を、身体の所有権と労働に求めます。(ただしここでロックの言う労働が、本当に彼自身が働くことかどうかについては注意が必要です。実際に肉体労働に従事したのは、彼が私有財産として所有している奴隷たちかもしれません。)
・もしも政府が個々人の生命・自由・財産を侵害するのであれば、もはや政府としての役割を果たしていないのであって、人民には契約を破棄する権利があります。→抵抗権

ルソー『社会契約論』

一般意志:単なる生命の保障や、私有財産の保障は、社会契約の基礎的な理由にはなりません。自由な討論の過程を通じて、個々の利害には関係がないような、全ての人々に共通する人間性に照らして妥当する普遍的な法則を土台にするべきです。社会契約は、この一般意志を社会の根本的なルール(公共の福祉)として、普遍的な人間性を最大限に保障することを目指します。
・この一般意志が、単なる多数決とはまったく異なることに注意する必要があります。多数決で得られる利害調整は、全ての人々に共通する人間性から引き出されているわけではありません。そもそも、全ての人間に共通するようなものは、当然一つしかありえないのであって、最初から多数決に諮れるはずがないものです。
・人間が身分制や地域性によってバラバラに分断されていては、全ての人々に共通する普遍的な人間性を抽出することはできません。全ての人間は、自由で平等で独立した「個人」でなければなりません。
・最初は「欲望むき出しで自分勝手でわがままな人間」から考察を始めたにも関わらず、その人間が最終的に「共通する人間性を持つ自由で平等な主体としての人間=市民」へと落ち着いてしまうところに、社会契約論のすごさと面白さと意義があります。

新しい社会にふさわしい新しい教育

・「個人」とは、身分や地域の特殊性にはまったく関係がなく、何の特殊な属性も持たない、普遍的な人間のことです。伝統的共同体の様々なしがらみから切り離された、剥き出しの人間のことです。
・人間はわがままで自分勝手な本性(自然権)を持っているからこそ、その本性を外部から押さえ込まずに最後まで貫き通すことによって、自由で平等で平和な世の中を作り上げることができます。
・しかしそう判断できる(自然法を導き出す)ためには、合理的に物事を考える「理性」がなければなりません。
・新しい社会を作ることは、必然的に、新しい社会にふさわしい新しい「個人」を作ることを意味します。だから新しい社会について考えた思想家は、それにふさわしい新しい「個人」についても考えるし、それにふさわしい教育の形についても構想することになります。
・普遍的な教育とは、人間を作る=人格の完成を目的とする教育です。
・自発的に広がったリテラシーの教育(日本の江戸時代や印刷術発明後のヨーロッパ)と、普遍的な人間を作るための教育(市民革命後のヨーロッパ)の違いを考えてみましょう。教育を受ける人や、教育の内容や、教育への国家の関与などが、どのように異なるでしょうか? →決定的な違いは、教育が「人間の権利」であると考えられるようになったことです。
・「人間の権利」としての教育とは、性別や才能や財産や地位などの特殊性に関係なく、あらゆる人間に共通する資質を育てることを目指す普遍的な教育です。知識を注入したり偏差値を上げるような教育でもなければ、または特定の職業を目指すような教育でもありません。 →Instruction=専門教育(特殊性)とEducation=普通教育(普遍性)の違いを考えてみましょう。

復習

・「社会契約論」の理屈を、おさらいしておこう。

予習

・「憲法」とは何かについて、「法律」との違いを中心に調べておこう。

教育概論Ⅰ(保育)-7

短大保育科 5/31、6/2

前回のおさらいと補足

・ヨーロッパが強くなった理由は、欲望を解放した個人主義に加えて、民主主義の仕組みを発明したからです。
・民主主義の世の中を実際に作ったのは市民革命で、その理論的根拠として社会契約論が考えられました。ホッブズ→ロック→ルソーと発展します。
・新しい社会(個人を契約によって結ぶ)を作るためには、新しい人間(身分や属性に縛られない、自由で平等で理性的な個人)を作る教育が必要となります。
・新しい人間を作る教育とは、属性に関係なく「人格の完成」を目指す教育です。
シティズンシップ教育:シティズン=市民。民主主義の世の中に主体的に参画することができるような力と意欲を持った人間を育てようという教育です。参考=日本保育学会「関東地区研究集会」の個人的まとめ

憲法と教育の自由

・自発的に広がったリテラシーの教育(日本の江戸時代や印刷術発明後のヨーロッパ)と、普遍的な人間を作るための教育(市民革命後のヨーロッパ)の違いを考えてみましょう。教育を受ける人や、教育の内容や、教育への国家の関与などが、どのように異なるでしょうか? →決定的な違いは、教育が「人間の権利」であると考えられるようになったことです。
・「人間の権利」としての教育とは、性別や才能や財産や地位などの特殊性に関係なく、あらゆる人間に共通する資質を育てることを目指す普遍的な教育です。知識を注入したり偏差値を上げるような教育でもなければ、または特定の職業を目指すような教育でもありません。 →Instruction=専門教育(特殊性)とEducation=普通教育(普遍性)の違いを考えてみましょう。
・「人間の権利」を保障するために、憲法というものが存在しています。

思考実験:法律を破ったことはありますか?

・市民は、リーダーが作った法律は従う義務があります。法律を破ったときには、ペナルティが課されます。
・法律は、それぞれの市民が平和かつ幸福に暮らすことができるよう、選ばれたリーダーによって定められます。
・市民は、法律を破ることはできますが、憲法を破ることはできません。法律と憲法は、どこがどう違っているのでしょうか?
・そもそも憲法を守る義務があるのは誰でしょうか?→日本国憲法第99条。
・憲法は市民に何を期待しているのでしょうか?→日本国憲法第97条と第98条。

思考実験:憲法がないとどうなるでしょうか?

・もしも多数決だけで世の中がきまるどうなるでしょうか?→「多数の専制」の怖さ。
・誰がリーダーになったとしても「これだけは絶対にやってはいけない」という、リーダーの暴走を防ぐ禁じ手をあらかじめ定めておく必要があります。
・憲法の原理=一般意志 人間性に関する普遍的な原則から導き出すことができるような合理的かつ普遍的なルールに基づいて、法律が作られる必要があります。
・たとえば、どんな人にとっても命は大切であったり、理由なく財産を奪われることは嫌だったり、奴隷にされることは嫌だったりしますし、全ての人は自分が幸福であることを望むはずです。それには男か女か、金持ちか貧乏か、才能があるかないかなどという特殊性にはいっさい関係がない、あらゆる人間に共通すること(普遍)です。

基本的人権

基本的人権:誰がリーダーになったとしても、絶対に人々から奪うことができない生まれながらの人間の権利です。性別や才能などの特殊性に関係なく、あらゆる人が平等に持っている普遍的なものです。
自由権:国家が侵害することができない、個人が持つ権利です。「国家からの自由」のことです。具体的には、身体の自由、財産の自由、居住の自由、職業選択の自由、教育の自由などなどがあります。
教育の自由:自分の子供をどのように教育するかは、国家から関与されることではありません。←信仰の自由:どのような思想信条を持つかについて、国家が個人に命令することはできません。
・Education(教育)とInstruction(教授)の違いを思い出しましょう。国家はEducationには直接関与することができなくとも、Instructionに関与することは必ずしも制限されていないかもしれません。

教育基本法と日本国憲法

・教育基本法は、1947年に日本国憲法と一体のものとして制定され、準憲法的性格を持つと考えられています。→つまり、教育基本法を守らなければいけないのはリーダーの側であって、一般国民は守らせる側ということになります。

人格の完成

・教育基本法第一条に、教育の目的は「人格の完成」であると書いてありました。
人格とは何でしょうか? 目に見えないし、触ることができないし、科学的に存在を確かめることができません。
・「好き」と「愛してる」という言葉の意味の違いをヒントに考えてみましょう。

 好き愛してる
個性代わりがある代わりがない
タイプ言える言えない
数値化表せる表せない
アイデンティティ変わる変わらない
様相主観的な感情存在のあり方
対象モノ(純粋理性)人格(実践理性)

・人格とは、比較できず、束ねられず、代わりがなく、変わらないようなものです。
・モノと人格は決定的に違うものです。
・「人格を尊重する」とは、どういうことでしょうか。

復習

・憲法の性格と、教育基本法との関係について押さえておこう。

予習

・「個性」や「アイデンティティ」という言葉について調べておこう。

発展的な学習の参考

稲垣良典『人格《ペルソナ》の哲学』
「人格」という概念をどのように理解するべきかをキリスト教神学の立場から根本的に考察した本で、歴史的考察としても哲学的思索の参考としてもたいへん読み応えがある。

大澤真幸『恋愛の不可能性について』
好きであることの理由を具体的にいくつ積み重ねていっても、その人だけを好きであることは絶対に証明できないということが、分析哲学の立場から明らかにされている。

プラトン『パイドロス』
プラトン哲学のなかで、恋愛について最も深く語っている著作。恋愛というものが人間の言葉で合理的に説明できるものではなく、存在の深淵に関わることが明らかにされている。