教職基礎論(栄養)-6

▼短大栄養科 6/2

前回のおさらい

・「人格」の性質、代わりがない=個性、変わらない=アイデンティティについて考えました。

自由と責任(つづき)

思考実験:自由と責任

case1:殺人 選択肢がある場合
case2:リモコン 選択肢がない場合
case3:運命 選択肢はあったのか?→(余談)悲劇とは何か
case4:隕石 物理法則には選択肢の余地がない
case5:因果関係 因果関係に選択肢はあるか→(余談)決定論
case6:責任 選択肢は、あったはずだ

・「責任をとる」ということは「自由」でなければ起こりえません。自由だから責任があるのではなく、責任をとれるから自由があると言えそうです。
・「自由」であるということは、因果律に支配された「モノ」とは違うということです。モノは外部の物理法則に従わなければなりませんが、人間は自分(たち)で作ったルールに従うことができます。「自律」=自分で自分をルールに従わせることです。
・因果律に支配されないものとは何でしょうか? →人格
立法能力:自分でルールを作って、自分で守ることができるような力のことです。
自律:他人の作ったルールに従う(他律)のではなく、自らの意志でルールに従います(自律)。
→みんなで作ったルールには、みんなで従います。

・「自立心自律性は、児童がよりよい生き方を目指し、人格を形成していく上で核となるものであり、自己の生き方や人間関係を広げ、社会に参画をしていく上でも基盤となる重要な要素である。」『小学校学習指導要領解説 総則編』p.138
・「互いの人格を尊重し、個性の伸長とともに、社会的資質や行動力を高める上では、先述したように、自発的、自治的な活動を中心とした学級活動の充実が重要である。」『小学校学習指導要領解説 特別活動編』p.143

理性

*理性:人間だけが持っている(つまり他の動植物は持っていない)であろう、ルール(法則)を発見する力です。モノについてのルールを発見する力(純粋理性)と、人格についてのルールを発見する力(実践理性)は、別のものかもしれません。
*科学:ルール(法則)を発見する手続きのことです。→「分析/総合」「演繹/帰納」。

分析:ひとつのものをいくつかの要素に分けて、本質的な要素を析出します。
総合:析出された本質的な要素をつなぎ合わせて観念を構成します。
観察:個別具体的なもののうち、似ているところや異なっているところを把握します。
感覚:客観的な対象を主観的な印象として取り込むための窓口です。

演繹:抽象的な理論から個別具体的なものや現象を説明します。
帰納:個別具体的なものから抽象的な理論を発見します。
推論:具体的なものを改めて観察するまでもなく、頭の中だけで論理的に考えて結論を導き出す力です。

自己実現

・どのように人格は完成へと向かうのでしょうか。
・自己実現≒ほんとうのわたしデビュー、わたしらしいわたし。社会的な成功とは基本的にはあまり関係がありません。
・直線的な発達ではなく、矛盾と葛藤が連続する、ジグザグの成長です。
・弁証法的発展:自己耽溺(自己中心主義)と自己疎外(世間中心主義)の葛藤から、自由で主体的な決断を経て、責任を引き受けて、自己実現へ向かいます。
・「自分こわし」と「自分つくり」の連続が、人格を完成へと向かわせます。

「児童が、自己の存在感を実感しながら、よりよい人間関係を形成し、有意義で充実した学校生活を送る中で、現在及び将来における自己実現を図っていくことができるよう、児童理解を深め、学習指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図ること。」
『小学校学習指導要領』総則、p.9
「(3)自主的、実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして、集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに、自己の生き方についての考えを深め、自己実現を図ろうとする態度を養う。」『小学校学習指導要領』特別活動の目標、p.164

「近代教育」まとめ:人格の完成とは・・

・個性の尊重:独立。かけがえのないわたし。
・アイデンティティの確立:自主。まさにこのわたし。
・自由の獲得:自律。わたしが作ったルールに従うわたし。
・自己実現:夢。ほんとうのわたし。

復習

・「自由」と「わがまま・自分勝手」の違いについて、自分なりに考えておこう。
・「自己実現」と「自己満足」の違いについて、自分なりに考えておこう。

予習

・「学力」について、文部科学省の見解を調べておこう。