「講義」カテゴリーアーカイブ

教育の基礎理論-3

▼短大栄養科 10/2

前回のおさらい

・大人と子どもの境界線は、今と昔ではかなり異なっていました。
・生理的早産:人間の赤ちゃんは「能なし」で生まれてきますが、だからこそ人間は他の動物と違って様々な可能性に満ちています。
・子育ての仕方は、今と昔で家族の形が違っているため、かなり様子が異なっていました。

「形成」と「教育」の違い

・要するに、私たちが現在当たり前だと思っている「教育」は、昔は行われていませんでした。
・「学校」がなかったころも人々は人間形成を行っていました。「教育」と異なる形の人間形成のことを専門用語で「形成」と呼びます。

形成と教育の違い
カテゴリー形成(前近代)教育(近代)
【何を習得するか】カンとコツ知識と教養
【どこに修めるか】身体
【どうやって伝えるか】行動文字
【規範意識】恥じ・しつけ公共性・道徳
【根拠】経験と仕来り科学と合理性
【指導する人】村落共同体資格を持った教師
【見える光景】背中
【労働との関係】労働と一体労働と分離
【祭祀との関係】祭祀と連続祭祀と分離
【遊びとの関係】遊びと連続遊びを排除
【カリキュラム】実践的・偶然的意図的・計画的
【行政】自治中央集権
【大人の条件】一人前人格の完成
【人間像】身分・地域の特殊性普遍的人間

・「親方-弟子」の疑似親子関係:徒弟制、丁稚奉公、ギルド等。
*昔の子どもは活き活きしていた? →子どもが変わったわけではなく、子どもを取り巻く環境のほうが変化したと考えれば、理解できそうです。
*昔のお父さんは尊敬されていた? →お父さんが変わったわけでも、子どもが変わったわけでもなく、労働と教育のあり方が変わったことを考慮すれば、理解できそうです。
*どうして「形成」ではなく「教育」が必要となったのか? →親と一緒の仕事をするなら「形成」で問題なさそうですが、別の職業に就く場合には「形成」はむしろ意味がなくなりそうです。

イニシエーション

・イニシエーションとは:日本語では「成人式」や「通過儀礼」とも呼ばれています。一人前の共同体(ムラ)のメンバーになるために、全ての若者が突破しなければならない試練のことです。日本だけではなく、世界全体に共通して見られます。
・イニシエーションの必要性:肉体的に一人前の条件を揃えつつあるとき、精神的にも一人前になる必要があります。
・イニシエーションの内容:「死」と「再生」を象徴するものと言えます。一人前の共同体(ムラ)メンバーになるために、家族と分離(親離れ、子離れ)し、ムラ全体の子供として再び生まれなおす必要があるということです。

若者組……学校がない世界での人間形成

・一人前になるために、年齢別集団へ加入して、様々な知識や技術を身につけます。(女性の場合は「娘宿」など)
・「家族」でも「学校」ではない場所で、親や先生ではない人から、知識が伝達されます。
・若者組の役割:集団労働力の提供、祭礼や村芝居の執行、消防・警察、性や結婚の管理など。
・近代の学校と決定的に異なるのは、「死」と「生=性」の重要性かもしれません。

復習

・「形成」という概念について、現在の教育の在り方と比較しながら理解しておこう。
・「イニシエーション」の理念と実際の在り方について、現在の教育の在り方と比較しながら理解しておこう。

予習

・江戸時代の日本の教育について調べておこう。
・「リテラシー」という言葉の意味を調べておこう。

参考文献

ファン・ヘネップ『通過儀礼』
文化人類学の観点からイニシエーション(通過儀礼)を捉え、人生の節目で危機を乗り越えるための儀礼と理解し、越境の過程を「分離→過渡→統合」という図式で理解する。古典的名著。

佐野賢治『ヒトから人へ』
「大人になる」ために昔の人々が行っていた伝統的な習俗を、「一人前」という視点から描き出すエッセイ集。高度経済成長後に失われた伝統的な人間形成の在り方について考えさせられる。

教育課程の意義と編成-2

▼第2回=10/1

前回のおさらい

・「教育課程」とは、教育の目的を実現するために定められた計画です。
・「学習指導要領」とは、文部科学省が示す教育課程の基準です。

教育課程を編成してみよう

(1)学校名を決めよう。
(2)学校の教育目標を決めよう。
←子供たちが卒業後にどんな知識や能力を獲得しているのか望ましいか考えよう。
(3)教育目標を実現するために、どんな教科が必要か考えよう。
←場合によっては、実際の学校に存在しない教科を新しく産み出しても良いでしょう。
(4)具体的に時間割を考えてみよう。

復習

・それぞれのプレゼンテーションを踏まえて、良かったところ、改善すべきところを考えておこう。

予習

・学校教育法と学校教育法施行規則を読んでおこう。

教育学Ⅱ-2

■新松戸キャンパス 9/28(金)
■龍ケ崎キャンパス 10/8(月)

ナショナリズム

ナショナリズム:国家の構成員が「私は○○人である」という自覚を持っている状態。
・どうして私たちは、日本が勝つと(たとえばスポーツやノーベル賞など)嬉しくなるのでしょうか。会ったこともなければ話したこともない赤の他人が受賞したとしても、なぜ誇りに思えるのでしょうか。→「同じ日本人だから」。
・しかし、同じ血液型や同じ身長や同じ足のサイズの人が受賞したとしても、特に嬉しいとは思いません。「同じ日本人」と「同じ血液型」との違いは何でしょうか?

前近代:封建国家の自己認識(日本)

・たとえば江戸時代、日本人の多くは「私は日本人である」という自覚を持っていなかったし、持つ必要もありませんでした。
←身分制社会では、自己認識は身分に依拠していました。たとえば「私は侍である」とか「私は農民である」など。そうでなければ、身分制を基礎とした社会秩序が保てません。「侍と農民で身分が違おうが、同じ日本人だ」とはならないし、なってはいけないわけです。
←あるいは幕藩体制においては、自己認識は主従関係に依拠し、日本という単位は視野に入ってきませんでした。たとえば「私は赤穂藩士である」とか「私の殿様は吉良だ」などとなります。主従関係が強固に結ばれることによって、社会秩序が保たれました。「主人が異なっていようが、同じ日本人だ」とはならないし、なってはいけないわけです。
・このように、前近代=封建国家においては、身分地域によって自己認識が分裂していました。
・逆に言えば、身分制が廃止され、地域間格差がなくならないと、「同じ○○人である」と思える条件ができません。
・国家の構成員が「私は日本人である」という自覚を強烈に持つ条件が整うのは、身分制が廃止(四民平等)され、中央集権国家(廃藩置県)ができる近代以降のことになります。
・明治維新によって日本に誕生したのが、国民国家(nation-state)です。

前近代の自己認識(ヨーロッパ)

・中世は、国家というよりも、家が拡大したものとしての国「家」でした。
←百年戦争(1337年~1453年)の推移を参考のこと。現代の国家間同士での戦争とはかなり様相が異なっています。
・具体的には、ブルボン家やハプスブルグ家など領邦君主による封建制。「家政学(Oikonomicos)」とは、もともとこのような「国-家」を運営するための学でした。もともと「家政」を行っていたのは「家長=男性」です。
・絶対王政(貴族の没落によって王権に主権が一極集中する)を経て封建制が崩れ、市民革命(国民に主権が集中する)に伴って国民国家が完成します。典型例は、フランス革命(1789年)です。

国民国家と教育

*「国家」を英語に翻訳すると?
(1)country:国土。田舎。ふるさと。
(2)state:一定の領土を有し政治的に組織され主権を有するもの。法律的・理念的な意味での統一体としての国家。
(3)nation:共通の文化言語などを有する国民が作る国家。

国民国家

・stateとnationは同じものでしょうか? 韓国、スイス、中国等の例を考えてみましょう。
→韓国:state=2、nation=1
→スイス:state=22、nation=4
→中国:state=1、nation=56
・日本はどうでしょうか?
国民国家:nation(国家の文化的側面)とstate(国家の政治的側面)が一致している状態です。
民族自決:一つのnation(民族)はそれぞれ一つのstate(政治的に組織された主権)を持つべきという考えです。
・nationとstateを一致させるには、どうしたらよいでしょうか? たとえば1つのstateの中に3つのnationがあったら→
(1)3つのnationそれぞれに対応する新しいstateを作る=分離独立
(2)3つのnationを1つのnationに統合してstateに合わせる=国民統合
・どうやって?←教育で。

復習

・封建国家と国民国家の違いを押さえておこう。それを踏まえて、具体的に江戸時代と明治時代の違いを説明できるようにしよう。
・nationとstateの違いについて押さえておこう。

予習

・フランス革命の推移をおさらいしておこう。
・国歌の働きについて考えてみよう。

道徳教育指導論-1

第1回=9/28

授業の目的

・本講義は教員免許状取得に関わる授業であり、特に「道徳の理論及び指導法」について扱います。

目標

・道徳の意義や原理等を踏まえ、学校における道徳教育の目標や内容を理解する。
→道徳の本質(道徳とは何か)を説明できる。
→道徳教育の歴史や現代社会における道徳教育の課題(いじめ・情報モラル等)を理解している。
→子供の心の成長と道徳性の発達について理解している。
→学習指導要領に示された道徳教育及び道徳科の目標及び主な内容を理解している。

・学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育及びその要となる道徳科における指導計画や指導方法を理解する。
→学校における道徳教育の指導計画や教育活動全体を通じた指導の必要性を理解している。
→道徳科の特質を生かした多様な指導方法の特徴を理解している。
→道徳科における教材の特徴を踏まえて、授業設計に活用することができる。
→授業のねらいや指導過程を明確にして、道徳科の学習指導案を作成することができる。
→道徳科の特性を踏まえた学習評価の在り方を理解している。
→模擬授業の実施とその振り返りを通して、授業改善の視点を身に付けている。

教科書

※現行(平成29年3月)の『中学校学習指導要領』および『中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』を手に入れておくこと。冊子でも手に入るし、無料でpdfファイルを手に入れることもできます。
・必要に応じてプリントを配布します。プリントの内容はWEBサイトにアーカイブします。

指導案と模擬授業

・一人一回は必ず模擬授業を行ってもらいます。人数が多い場合は、グループを作って、複数で一つの授業を行います。
・模擬授業開始は、第6回目か第7回目あたりに始めます。(人数やグループ数によって調整します)。
・模擬授業に当たって、必ず「指導案」を作成してください。
・指導案は、模擬授業終了後に各自必ず提出すること。

評価

・期末テスト、模擬授業、指導案によって評価します。
・目標に即して、評価の基準を設定します。
・テストには、スマートホンを含めて、あらゆるものを持ち込み可とします。
・出席が足りなかった者には受験を認めません。

その他

・非常勤講師なので、金曜日のこの時間以外には学校に来ません。
・質問等は、できるだけ授業後に対応します。込み入った質問は、解答をサイトに掲載することで対応します。
・模擬授業前には確認したくなることが多くなるだろうと思います。どうしても確認したい場合は、eメールを送って下さい。

道徳教育の目的

人格の完成(教育基本法)

・「教育基本法」第一条

教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

・「人格の完成」とはどういう状態でしょうか?
・そもそも「人格」とは何でしょうか?

生きる力(学習指導要領)

・「学習指導要領」では、児童生徒に「生きる力」を身につけさせることが目標となっています。
・生きる力=知・德・体のバランス。

豊かな心(学習指導要領:総則)

道徳教育や体験活動、多様な表現や鑑賞の活動等を通して、豊かな心や創造性の涵養を目指した教育の充実に努めること。
学校における道徳教育は、特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり、道徳科はもとより、各教科、総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて、生徒の発達の段階を考慮して、適切な指導を行うこと。
道徳教育は、教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき、自己の生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とすること。
道徳教育を進めるに当たっては、人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭、学校、その他社会における具体的な生活の中に生かし、豊かな心をもち、伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛し、個性豊かな文化の創造を図るとともに、平和で民主的な国家及び社会の形成者として、公共の精神を尊び、社会及び国家の発展に努め、他国を尊重し、国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓く主体性のある日本人の育成に資することとなるよう特に留意すること。(3頁)

復習

・道徳教育の目的について、自分の言葉で説明してみよう。

予習

・『学習指導要領』の「特別の教科 道徳」(139~143頁)を読んでおくこと。
・模擬授業のグループ分けや日程調整を行います。目星をある程度つけてきてください。

教育概論Ⅱ(中高)-3

▼語学・心カ・教福・服美・表現 9/29
▼栄養・環教 10/2

前回のおさらい

・前近代にはナショナリズムがありませんでした。
・country、state、nationそれぞれニュアンスが違います。国民国家とは、stateとnationの境界線が一致することを理想とする国家です。
・フランス革命の展開に伴って、ナショナリズムが発生しました(発明されました)。

国旗・国歌・国語・歴史・地理

・nationとstateを一致させるため、「教育」に期待がかかります。
・国旗:「旗」に期待される統一への働き。
・国歌:「歌」に期待される統一への働き。
・国語:「ことば」に期待される統一への働き。
・歴史:「物語」に期待される統一への働き。
・地理:「風景」「風土」に期待される統一への働き。

各国の国歌

・それぞれ国民統合の象徴として働く一方で、同時に何かしらの問題を抱えているのはどういうことでしょうか?

フランスの国歌

・「ラ・マルセイエーズ」
・国民統合=国民全員で祖国を守ったときの記憶。
・歌詞に対する疑問。

イングランドの国歌

・「God Save the Queen」
・国民統合=英国王室の賛歌。
・6番の歌詞に対する疑問。イングランドとスコットランドの関係。

ドイツの国歌

・「ドイツ国民の歌」
・国民統合=国家統合の象徴。
・1番と2番が封印。

スペインの国歌

・「国王行進曲」
・歌詞のない国歌。スペインとカタルーニャの関係。

国語による国民統合

・フランスの言語状況。フランス革命当時、フランス人が話していたのは何語でしょうか?
・「国語」と「方言」は、どこがどう違っているのでしょうか・←「方言札」による方言撲滅運動。
・東ティモール:2002年にインドネシアから独立しました。

東ティモールが実際に国語に選んだのは何語でしょうか?(ヒント:インドネシアから独立)
(1)インドネシア語:90%
(2)テトゥン語:40%
(3)英語:10%
(4)ポルトガル語:5%

・言葉は単なるコミュニケーション・ツールではなく、国家のアイデンティティとなるものです。
・しかし、言葉はコミュニケーション・ツールでもあります。科学や社会に必要なボキャブラリーも大切です。

日本語廃止論

・森有礼(もりありのり)が明治初期に日本語廃止を主張しました。
・どうして後に初代文部大臣にまでなる森が日本語廃止を主張したのでしょうか?
・明治初頭では、方言(身分と地域)が多様すぎて、お互いに言葉が通じませんでした。また、科学や社会に関する語彙が貧弱でした。

方言矯正と標準語

・第一期国定国語教科書:1904年、いわゆる「イエスシ読本」。
・東北方言と関東方言の矯正。
・方言札。
・「標準語」の開発。「お父さん」「お母さん」。
・新しい日本語を作っていくのは、文学者の役割かもしれません。

復習

・国歌や国語が国民統合に果たす役割について押さえておこう。

予習

・「教育勅語」について調べておこう。