教育原論(栄養)-1

栄養科 4/16

半年間の予定

・本講義は教員免許(中学・高校)取得に関わる授業であり、特に「教育」の原理・哲学・思想・歴史に関わる領域を扱います。
・中でも「教育基本法」の精神を理解することに重点を置きます。
・「教育基本法」を本質的に理解するために、教育の思想と歴史を学ぶことが必要となります。人の名前や教育理論がたくさん出てきます。
・テストを行います。スマートフォンや電子辞書等も含めて、あらゆるものが持ち込み可です。
・課題を出すかもしれません。

今回の目標

・「教育基本法」の存在を認識しよう!
・大昔の「教育」の姿を知って、現在の教育とずいぶん違っていたことを理解しよう!
・「知識」中心の教育になった原因を押さえよう!

教育って何ですか?

「教育基本法」の概要を把握しよう

・「教育基本法」には、日本の教育が目指す根本的な理念が示されています。日本の「教育」にとって一番重要な法律です。
・日本の教育の目的は「人格の完成」です。←つまり、知識をたくさん獲得することだけが目的ではありません。もちろん偏差値を上げて難関大学に入ったり、たくさん給料をくれる大企業に入ることが目的なのではありません。
・私たちが常識的に考える「教育=勉強ができるようになること」は、教育基本法に書いてある「教育=人格の完成」とはずいぶん違っているようです。常識が変なのですか?それとも教育基本法が変なのですか?
・では、「人格の完成」とはどういう状態でしょうか?
・そもそも「人格」とは何でしょうか?

教育って何ですか? 西洋古代篇

小テスト

・教育とは、先生から生徒に「知識」を授けるものではありません。
・ソクラテスの思想:無知の知産婆術
※無知の知:「知らない」ということを知っている。
※産婆術:対話相手の内部に眠っている知恵を出産させる技術。
→教育とは、自覚していない知恵を内側から引き出す技術です。

・プラトン 哲人政治・イデア論・アカデメイア
・アリストテレス 万学の祖・リュケイオン

教育って何ですか? 西洋近世篇

・教育を「知識を与えること」と考えるようになったのは、いつのことでしょうか?
・西洋でも中世では「知識」を与えることはあまり重要だと考えられていませんでした。
・しかしコメニウスという人には、人々に知識を与えようとする並々ならぬ情熱を見ることができます。

コメニウス Johannes Amos Comenius

・宗教改革、プロテスタント。
・1592年~1670年。モラヴィア出身。
・主著『大教授学』、『世界図絵』(世界初の絵本)
・キャッチフレーズ:近代教授学の父
・名言:全ての人に全ての事柄を教授する

・どうしてコメニウスは、「全ての人に全ての事柄を教授する」ということを言い出したのでしょうか?

ルターの宗教改革(1517年)

・カトリックとプロテスタントの違いは、大雑把には「神父/牧師」や「教会/聖書」の重要性の違いにあります。
・「聖書を読む」という行為を可能にするためには、聖書というモノそのものを低価格で供給する印刷術の存在が前提になります。

印刷術とリテラシー

印刷術:1450年前後にグーテンベルクが発明し、急速にヨーロッパ全体に広がりました。高価で希少であった本というものが、安価で身近なものへと変化します。印刷物を通じて知識や情報の伝達が行われるようになり、それまでと比べて圧倒的に早く広範囲に情報が届けられるようになります。
リテラシー:文字を読んだり書いたりして情報を交換する能力。ヨーロッパでも、かつてはリテラシーを持っている人はほとんどいませんでしたし、リテラシーが役に立つ技能だとも認識されていませんでした。しかし印刷術の普及を転換点として、リテラシーが極めて重要な技能として理解されるようになります。

・ルターとヤン・フスの運命を比べてみると、印刷術が存在しない世界での情報発信の難しさが分かります。印刷術があると、自分の意見を大量かつ広範囲に伝えることができるようになります。リツイートができることも大きな要素です。
・世界を変革するためには、自分の意見を無差別かつ広範囲に、そして正確に発信することが必要です。情報発信の決定的な手段として、リテラシーを持っていることがとても重要になります。

復習

・「教育基本法」を熟読吟味しよう。
・「教育」とは何かについて、ソクラテスの考え方を踏まえて、自分のこれまでの常識を捉え直そう。
・次の記事を読んでおこう。
ソクラテスの教育思想―魂の世話―
プラトンの教育思想―善のイデアを見る哲学的対話法―

予習

・「寺子屋」や「藩校」について調べておこう。