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A級順位戦と将棋界の一番長い日

3/2は、将棋の名人戦A級順位戦の最終戦。将棋界の一番長い日でした。
で、衝撃の結果となりました。トップを走っていた豊島八段と久保王将が負け、追っていた3人が全員勝ち、抜け番だった羽生竜王に勝ち星が並んで、史上最大の6人によるプレーオフとなったのです。フィクションでもやらないような胸熱の展開に、びっくりです。
久保王将は終盤でそこそこ指しやすい局面があったように思ったけど、角切りが悪手だったのかな? そこはさすが藤井くんも負かした深浦九段の粘りが凄かったということでしょうか。久保王将が勝っていたら、2002年以来史上2回目の非眼鏡棋士同士での名人戦ということでヒヤヒヤしましたが、まずは阻止されて個人的には良かったです。まあ、まだ久保王将の挑戦の目は残っていますが。
ともかく、6人によるパラマス式プレーオフ、とても楽しみです。個人的には豊島八段の5人抜きが見てみたいけれども、羽生竜王の挑戦になるのも熱い展開です。どうなるにしても、とても楽しみです。

それから、三浦九段の残留と渡辺棋王の降格も印象的でした。三浦九段の攻めを、渡辺棋王が角を上手に使っていったんは切らしたように見えたんですけども。
渡辺棋王は、自分が負けても深浦九段が負ければ残留だったのですが、深浦九段は見事に久保王将に粘りの逆転勝ちを収めたんですね。最終日に三浦九段と渡辺棋王の直接対決が組まれているというのは、なかなかの因縁でした。久保王将と深浦九段も因縁に絡んでいることもあって、なかなか味わい深い結果となりました。

藤井くんの大躍進に始まって、A級順位戦での史上最大のプレーオフになるという、将棋界にとって実にエキサイティングな年度になっております。名人戦がどうなるか、今からとても楽しみです。
やっぱり人間がやるから将棋はおもしろいですね。

A級順位戦とC級2組順位戦

C級2組順位戦で藤井四段が勝ち、C1への昇級を決めました。一期抜けで、すごいなあ。あとは、増田五段も勝って自力昇級の目が復活したので、こちらも注目。

で、世間の耳目はC2に集まっているようだけれども、個人的に興奮しているのは、同日に行われたA級順位戦。なんと豊島八段が負けて、名人挑戦の目が6人に残るという大混戦になったのだった。6人が6勝4敗で並んだら、パラマス方式のプレーオフになるわけですが。豊島八段が6人のパラマス方式プレーオフから5人抜きで挑戦者になるのが、個人的には一番盛り上がる展開だけれども。羽生竜王が名人挑戦というのも胸熱だし。はてさて、どうなるのか、とても楽しみ。

そして気になるのが、A級順位戦の降級者。一人は残念ながら屋敷九段に決まってしまったのだけれども、もう二人の枠が大問題。最終戦に因縁(?)の渡辺棋王-三浦九段の直接対決が組まれていて、負けた方が降級する可能性が極めて高いという、ものすごい緊迫感(降級が決まるかどうかは深浦九段の勝敗にもよる)。

将棋界の一番長い日は、本当に長い一日になりそうです。

永世七冠

羽生棋聖が渡辺竜王に勝利し、永世七冠の資格を得ました。感無量です。応援しながらも、「もう無理かもしれない」と頭のどこかで思っていました。去年あたりから竜王挑戦者にすらなれないかもと悲観してたり。しかし真のヒーローは、やっぱり違う。凡人が「無理かも」と思っていることを実現してしまうのが本物のヒーローだなあ。

今回の第5戦も、見応えがありました。角換わりは戦型の中では一番好きでよく見るのですが、37手目の4五銀は新鮮すぎました。まあ、近年の角換わりは進化が激しすぎて(2九飛と4八金のコンビネーションとか、序盤からの桂跳ねとか)、何が出てきても驚かない感じはあったとは言え、昔からよく見た形の腰掛銀からの一見無茶な仕掛けが見事に炸裂することにびっくり。今日のために暖めていた戦法だったのかなあ。凄いなあ。

個人的には穴熊みたいにガチガチに防御を固めてから細い攻めをつなぐスタイルは好きではなくて(まあ、単に技術的な凄さが分からないだけという可能性が高いのですが)、また逆に横歩取りのような極端な空中戦もよく分からなくて、角換わりとか、矢倉急戦とか、振り飛車急戦のような、攻防が入り乱れるような戦いが好きです。最近の若手主流の仕掛けが早い将棋は、見ていて興奮します。今日の羽生さんの戦いは、若手にも負けないアグレシッブな仕掛けでした。グッときました。

羽生さんは、勝ちを意識すると差す手がぶるぶる震えるという癖があって、今日も8四香のときは震えていたようですが。しかし相手の渡辺竜王は、羽生さんの手がぶるぶる震えるという勝利宣言を受けながらも、そこから逆転勝ちを引き寄せるような豪腕で(NHK杯のときだったかな)、今日も何かあるかもしれないと思いながら見ていましたが、最後まで圧倒して終わりました。番勝負を通じて、よく意味の分からなかったチグハグな中飛車以外では、羽生さんが全部圧倒していたように思います。

渡辺さんの元気のなさは気になりますね。去年の騒動でケチがついたのが影響しているような気もしますが。実際のところが分からないので僕がコメントするような事ではありませんが、モヤモヤしたところがあって、あまり応援する気にならなかったのも確かではあって。衰え方が急激な気はします。渡邊さんが得意としていた、しっかり玉を囲ってから細かい攻めをつなぐスタイルが時代遅れになってしまった感は強いです。が、まだまだ将棋界を盛り上げるために頑張って欲しいです。

渡辺竜王が投了したのは、ちょうど太陽が西の地平線に沈むタイミングでした。窓の外を見ると、夕焼けを背にした富士山のシルエットが見えたのでした。