【紹介と感想】鴨志田英樹『次世代リーダーを育てる!ファーストレゴリーグ』

【紹介】「ファーストレゴリーグ」(FLL)とは、ブロックおもちゃのレゴを使用して自律型のロボットを作り、課題をこなして獲得した得点を競いあう、全世界の子どもたち32万人が参加する、世界最大級のロボット競技会です。
競技といっても、勝ち負けが重要なのではありません。この競技を通じて様々なことに気づき、成長することこそが一番の眼目です。
本書は、FLLに参加した日本の子どもたちや指導者たちへ、FLLで何を学んだのか、何ができるようになったか、自分がどう成長したか等をインタビューし、それを通じて教育にとって大切なことは何かを考えています。

【感想】いいなあ、うらやましいなあ。私もいま子どもだったら、絶対にFLLに参加するのになあ。と、心から思う。めちゃめちゃ楽しそう。小さい頃から世界を相手に戦えるのも、ほんとう、うらやましい。

プログラミング教育が論理的思考力や粘り強く目標を実現する力、あるいは問題発見・解決能力を養うことは様々な人が指摘しているけれども、本書が明らかにするのは、それ以上に「コミュニケーション能力」や「リーダーシップ/フォロワーシップ」や「団結力」など、「人間関係調整能力」が有意に発達するということだ。参加した子どもも指導者も、異口同音に人間関係調整能力の重要性を指摘する。お互いの個性を認め合い、異なる多様な考えを受けとめて総合し、一つの目標に向けて全員の持ち味を存分に発揮すること。これがFLLで成功するための決定的な秘訣なのだ。参加者や指導者が口々に言う「一人でやるよりも仲間といっしょにやったほうが成功しやすい」という世界の真理は、学校の勉強だけではなかなか気がつかないことだ。

「21世紀型スキル」とか「ソフトスキル」とか「生きる力」とか、いろいろな言葉で抽象的に表現されてきていることが、FLLでは極めて具体的な姿で目に見える。本当に素晴らしい実践だと思う。私は子どもとして参加することはできないけれども、教育に関わる者として何かしらの形で関わってみたい、そう思わせる熱量の高い実践だ。

鴨志田英樹『次世代リーダーを育てる!ファーストレゴリーグ』KTC中央出版、2018年