「講義」カテゴリーアーカイブ

教育概論Ⅰ(中高)-13

栄養・環教 7/19
語学・心カ・教福・服美・表現 7/20

前回のおさらい

・新教育運動の理論と人物。
・子どもの権利条約や障害者権利条約<人間の範囲の拡大。

今回の目標

・「生涯学習」と「持続可能な開発のための教育」について理解しよう!

生涯学習

・従来、教育とは大人になったら終了するものでした。「子ども/大人」の区別は、そのまま「教育/労働」の区別に対応していました。
・ところが20世紀後半以降、「労働」のあり方が大きく変化します。第二次産業(製造業)から第三次産業(サービス業)へ変化し、流動性と不確定性が高まります。
・本来は子どものもののはずだった「教育」を、大人にも広げていく必要が生じました。
・人生百年時代をどのように生きるか?

ポール・ラングラン

・フランスの教育思想家。1910年-2003年。
・著書『生涯教育入門』
・キーワード:1965年のユネスコ成人教育推進国際委員会
・垂直的統合=人生という時系列に沿った学習や教育を統合する。水平的統合=生活・社会の次元で有機的に関連づけて教育機会を統合する。
・名言:「教育は学校教育だけに終わらず、生涯を通じて行われる創造的なものでなければならない」

2006年教育基本法改定

(生涯学習の理念)
第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

リカレント教育(recurrent education)

・一度学校を卒業して社会に出た人が、もう一度教育機関に入り直して教育を受けられるシステムや考え方のことです。
・現在の仕事や将来の職業・転職、就職等などに役立てるための需要が増えています。
・学校教育:フォーマル教育
・公民館、生涯学習センター、公開講座等:ノンフォーマル
・書籍、講演会、ボランティア:インフォーマル

▼小テスト

持続可能な開発のための教育

・これまでの教育や社会は、「生産と消費」を拡大させ、右肩上がりに発展することを前提に組み立てられていました。しかしそのような世の中には限界が見えつつあります。

持続可能な開発目標(SDGs)

・持続可能な開発目標(Sustainamle Development Goals)は通称「グローバル・ゴールズ」は、「ミレニアム開発目標(MDGs)」に代わる目標として、2012年にリオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)で議論が始まりました。
・2015 年9月に「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」が国連で採択されました。
・貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけています。17の目標と169のターゲットがあります。

ESD(Education for Sustainable Development)

・国際連合は、2005 年から 2014 年までを「国連持続可能な開発のための教育の 10 年(UNDESD)」とし、ユネスコ主導のもとESDの重要性を提唱しました。
・ESDはEducation for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されています。
・今、世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題があります。ESDとは、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。
・つまり、ESDは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育です。(出典:ユネスコ国内委員会)

復習

・20世紀後半から21世紀初頭にかけての教育の動きを自分なりにまとめてみよう。

教育概論Ⅰ(中高)-12

栄養・環教 7/12
語学・心カ・教福・服美・表現 7/13

前回のおさらい

・資本主義の世の中で学校が果している役割。選抜。隠れたカリキュラム。

今回の目標

・新教育の理論と代表的な思想家の考えを理解しよう!
・子どもの権利条約について理解しよう!

新教育

・20世紀初頭から世界的に広まった教育運動のことです。様々な人が活躍しますが、ほぼ共通して、主知主義的な教育を批判し、子供の自発性や能動性、創造性を重視します。
・日本では大正期(1912年~1926年)に流行し、大正新教育運動と呼ばれます。
児童中心主義:子供を「客体」として扱うのではなく、子供が「主体」となります。「教育する=教師や学校が主語」のではなく「学習する=子供が主語」へと転換します。

ジョン・デューイ John Dewey

・アメリカ出身。1859年~1952年。
・著書:『学校と社会』『民主主義と教育』
・キーワード:進歩主義教育。コペルニクス的転回。実験学校。学校は小さな社会。生活との関連。問題解決学習。
・名言:「なすことによって学ぶ。」

キルパトリック William Heard Kilpatrick

・アメリカ出身。1871年~1965年。
・キーワード:デューイの後継者。
・プロジェクト・メソッド。目標設定、計画、展開、評価の4段階の教授段階として組織化しました。

エレン・ケイ Ellen Karolina Sofia Key

・スウェーデン出身。女性。1849年~1926年。
・著書:『児童の世紀』
・名言:「教育の最大の秘訣は、教育しないことにある。」←ルソーの消極教育の影響が指摘されています。

モンテッソーリ Maria Montessori

・イタリア出身。女性。1870年~1952年。
・著書:『幼児の秘密』『子どもの発見』
・キーワード:子供の家。感覚教育法。教具(着衣枠、重量板、触覚板、円柱さし、ピンクタワー、算数棒、音感ベル)。自発性。整えられた環境。

▼小テスト

子どもの権利条約

・児童の権利に関する宣言(1959年)。子どもは子どもとしての権利をそれぞれもつとした宣言。
・国際児童年(1979年)。国連人権委員会の中に「子どもの権利条約」の作業部会が設置されました。
・児童の権利条約(1989年)。国連総会で採択されました。児童を、保護の対象から、権利の主体へと捉え直します。日本は1994年に批准しました。

人間の範囲の拡大

・「白人+男性+キリスト教徒+中産階級」のみを人間とした市民社会から、様々な人々の努力により、徐々に人間(人格を持ち、自由と権利を行使できる者)の範囲が拡大していきます。たとえば、労働者、女性、異教徒(無神論者)、子供、障害者。→動物?
・具体的な権利の拡大過程として、男子普通選挙権(労働者への公民権拡大)。女性参政権、フェミニズム(女権拡大論)。植民地の独立。公民権運動。

子どもの権利条約の内容

(1)生きる権利:すべての子どもの命が守られること。
(2)育つ権利:もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療や教育、生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること。
(3)守られる権利。暴力や搾取、有害な労働などから守られること。
(4)参加する権利。自由に意見を表したり、団体を作ったりできること。

※子どもの最善の利益:子どもに関することが行われる時は、「その子どもにとって最もよいこと」を第一に考えます。

特別支援教育の理念

*障害者権利条約(2006年)→障害者基本法改正、障害者差別解消法(2013年)。
共生社会:障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、様々な人々が活き活きと活躍できる社会です。誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様なあり方を相互に認め合える全員参加型の社会です。
インクルーシブ教育:障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするためにも、障害のある子供が障害のない子どもと共に教育を受けられる仕組みです。
教育的ニーズ:子どもが必要としている支援です。障害をもつ子どもだけでなく、全ての子どもに広げていくべき考え方です。
ユニヴァーサル・デザイン:あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方です。

復習

・新教育の理論と代表的な思想家について説明してみよう。
・子どもの権利条約の意義を、自分の言葉で捉え直してみよう。

予習

・「生涯教育」と「持続可能な教育」について調べておこう。

教育原論(保育)-12

前回のおさらい

・義務教育の思想:コンドルセとロバート・オーエン。
・資本主義の世の中で学校が果している役割。選抜。隠れたカリキュラム。

今回の目標

・新教育の理論と代表的な思想家の考えを理解しよう!
・子どもの権利条約について理解しよう!

新教育

・20世紀初頭から世界的に広まった教育運動のことです。様々な人が活躍しますが、ほぼ共通して、主知主義的な教育を批判し、子供の自発性や能動性、創造性を重視します。
・日本では大正期(1912年~1926年)に流行し、大正新教育運動と呼ばれます。
児童中心主義:子供を「客体」として扱うのではなく、子供が「主体」となります。「教育する=教師や学校が主語」のではなく「学習する=子供が主語」へと転換します。

ジョン・デューイ John Dewey

・アメリカ出身。1859年~1952年。
・著書:『学校と社会』『民主主義と教育』
・キーワード:コペルニクス的転回。実験学校。学校は小さな社会。生活との関連。問題解決学習。
・名言:「なすことによって学ぶ。」

エレン・ケイ Ellen Karolina Sofia Key

・スウェーデン出身。女性。1849年~1926年。
・著書:『児童の世紀』
・名言:「教育の最大の秘訣は、教育しないことにある。」←ルソーの消極教育の影響が指摘されています。

モンテッソーリ Maria Montessori

・イタリア出身。女性。1870年~1952年。
・著書:『幼児の秘密』『子どもの発見』
・キーワード:子供の家。感覚教育法。教具(着衣枠、重量板、触覚板、円柱さし、ピンクタワー、算数棒、音感ベル)。自発性。整えられた環境。

▼小テスト

子どもの権利条約

・児童の権利に関する宣言(1959年)。子どもは子どもとしての権利をそれぞれもつとした宣言。
・国際児童年(1979年)。国連人権委員会の中に「子どもの権利条約」の作業部会が設置された。
・児童の権利条約(1989年)。国連総会で採択されました。児童を、保護の対象から、権利の主体へと捉え直します。日本は1994年に批准しました。

人間の範囲の拡大

・「白人+男性+キリスト教徒+中産階級」のみを人間とした市民社会から、様々な人々の努力により、徐々に人間(人格を持ち、自由と権利を行使できる者)の範囲が拡大していきます。たとえば、労働者、女性、異教徒(無神論者)、子供、障害者。→動物?
・具体的な権利の拡大過程として、男子普通選挙権(労働者への公民権拡大)。女性参政権、フェミニズム(女権拡大論)。植民地の独立。公民権運動。

子どもの権利条約の内容

(1)生きる権利:すべての子どもの命が守られること。
(2)育つ権利:もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療や教育、生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること。
(3)守られる権利。暴力や搾取、有害な労働などから守られること。
(4)参加する権利。自由に意見を表したり、団体を作ったりできること。

※子どもの最善の利益:子どもに関することが行われる時は、「その子どもにとって最もよいこと」を第一に考えます。

特別支援教育の理念

*障害者権利条約(2006年)→障害者基本法改正、障害者差別解消法(2013年)。
共生社会:障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、様々な人々が活き活きと活躍できる社会です。誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様なあり方を相互に認め合える全員参加型の社会です。
インクルーシブ教育:障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするためにも、障害のある子供が障害のない子供と共に教育を受けられる仕組みです。
教育的ニーズ:子供が必要としている支援です。
合理的配慮:障害のある子供が、他の子供と平等に教育を受ける権利を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子供にたいし、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるものです。体制面・財政面において、均衡を失した過度の負担は課しません。
ユニヴァーサル・デザイン:あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方です。

復習

・新教育の理論と代表的な思想家について説明してみよう。
・子どもの権利条約の意義を、自分の言葉で捉え直してみよう。

予習

・「持続可能な教育」について調べておこう。

教育概論Ⅰ(中高)-11

栄養・環教 7/5
語学・心カ・教福・服美・表現 7/6

前回のおさらい

・義務教育の思想。コンドルセとオーエン。
・教育権の構造。

今回の目標

・隠れたカリキュラムの概念について理解しよう。
・選抜と文化的再生産の論理を理解しよう。

資本主義と「学校」

・はたして「教育」には意味があるでしょうか? 子供たちはなぜ「勉強」しなければいけないのでしょうか? 「学校」にはどんな存在意義があるのでしょうか?
・「学校」が資本主義の世界でどう機能しているかを見えやすくするために、思考実験をしてみましょう。

【思考実験】ジャイアン・スネ夫・のび太のうち、「学校」の成績が人生を左右するのは誰でしょうか?

▼答え:のび太

▼理由:(1)ジャイアンの家は「自営業」で、ジャイアンは跡継ぎです。学校のテストの点が良かろうと悪かろうと、ジャイアンの将来の職業は変わりません。
(自営業は、誰かから給料がもらえるわけではないので、自分自身の活動によって商品価値のある物や情報やサービスを生み出さなければなりません。しかしその活動をうまく行うための具体的・実践的・高度に専門的なスキルを「学校」で教えてもらえることはあまり期待できません。)

(2)スネ夫の家は「資本家」で、自分自身が労働する必要はありません。スネ夫は出来杉くんのような才能ある人材に投資するだけで儲かるので、自分自身が高学歴である必要はあまりないわけです。スネ夫にとって「学校」とは、自分が投資するに値する有能な人間を生産してくれる場所です。スネ夫が出来杉くんにはラジコンを貸すのに、のび太には貸さない理由を考えてみてください。

(3)のび太の家は「労働者」で、自分自身が労働する必要があります。生涯賃金を上げようと思ったら、良い企業に雇用される必要があります。そのためには良い大学を出なければならないし、そのためには良い高校を出なければなりません。学校のテストの点は、のび太の人生をダイレクトに左右します。
(ちなみに、自営業は自分の活動で生み出した物や情報やサービスを売ってお金を稼いでいますが、労働者が売っているものは労働力です。そういう意味で、のび太=出来杉くんです)

(4)オマケ:しずかちゃんの生き方には「専業主婦」という選択肢が色濃く反映されています。彼女はどうしていつもお風呂に入っているのでしょうか? 「ジェンダー論」等で学んだ知見を活用して考えると、いろいろ見えてきます。

・我々の現実の目から見える教育の姿は、これまで勉強してきた「人格の完成」を目指す教育や、すべての子どもたちの学習権を保障する「義務教育」の考え方とは、大きくズレているようです。どうしてこうなっているのでしょうか?

選抜

・資本主義世界の立場によって、「学校」への期待のかけかたの重点が異なります。
・「実家の商店の跡継ぎ」になるジャイアンにとって、「学校」の試験の結果は人生にとってあまり重要なものではありません。しかし「労働者」のキャリアは、少なくとも就職先は学校でのテストの結果が大きく左右します。
選抜:学校が現実に果たしている機能を指す言葉です。学校では試験を繰り返して各人の才能と個性を測定し、進学時の配分によって才能を選り分け、社会に出る際には個性と能力に合った持ち場に適切に配置します。同じ労働者でも、出来杉くんとのび太の配置先は最終的に異なります。

隠れたカリキュラム

・学校の勉強で本当に身についているものは何でしょうか? あるいは、学校で身につけるべきだと子どもたちに期待されているものは何でしょうか?

カリキュラム:教育目的を達成するために、計画的に配列された、教育内容のことです。
・正式のカリキュラム:学校や教師が教えていると公式に表明されている教育内容です。学生や保護者や世間にとって、学生が学校で身につけることを期待している学習内容です。この学習内容をしっかり身につけた人(出来杉くん)ほど、高い能力があると考えられています。
・正式のカリキュラムは、完璧に身についているわけではありません。が、まったく人生で困らないのは何故でしょうか?

隠れたカリキュラム:教師は教えていると思っていないし、保護者や世間も学校でそれを教えているとは思っていないにもかかわらず、いつのまにか学生たちが身につけている暗黙の内容のことです。
・たとえば、勉強はつまらないし人生で役に立たない。→役に立たないものでもガマンして努力しなければならない。→つまらないし役に立たないものをガマンして身につける習慣がつきます。
・学校で時間を過ごすうちに、知識や考え方、行動様式が、意図されないまま、いつのまにか身についています。役に立つ労働者になる上では、このような習慣形成の方が、正式なカリキュラムで学ぶ知識よりも決定的に重要かもしれません。
・たとえば。遅刻しない、早退しない、無断欠席しない、授業中は席を立たない、先生の命令には無条件に従う、無意味に思えることでもとりあえずやる、相互監視する、競争する、出る杭を打つ、密告する。
・学校で身につける意識と行動様式は、すなわち、労働者として必要な意識と行動様式となります。のび太は、仮に勉強が身につかなくとも、労働者として役に立つスキルは知らず知らずのうちに身につけます。
・隠れたカリキュラムとして、他に性別役割分業に関する意識等があると考えられています。

文化的再生産

・学歴の高い親の子どもの学歴も高くなりやすいのはなぜでしょうか?
・遺伝=生物的再生産でしょうか、環境=文化的再生産でしょうか?
文化資本:これを持っている人ほど高い権力や社会的地位が与えられるような、文化的な教養です。学校で教えられる正式な内容として採用されやすいものです。もともと支配的な文化(メインカルチャー)に馴染んでいた子供は高い学歴を得て高い地位へと再生産され、支配的でない文化(サブカルチャー)に馴染んでいた子供は低い学歴を得て低い地位へと再生産されやすくなります。
・文化資本は、労働者にとってはつまらないし役に立たないように見えます。しかし文化資本を独占する人々にとっては極めて優れた意味があるように見えます。→音楽や美術に対する興味・関心を比べてみよう。あるいは文化資本が高い家庭と低い家庭では、見るテレビ番組にどういう違いがでるか、考えてみよう。
・文化資本が高ければ高いほど学校文化に親和的な人間になり、そういう人間ほど高い学歴になる傾向があります。
・が、それは必ずしも人間としての能力が高いことを意味しないかもしれません。
→しかし、いったん文化資本を独占した人々(つまり学校文化に親和的な人々)が大きな力を持ったとき、その権力を他の人間に渡さない理屈として、学歴主義は十分に機能します。支配的な地位にある人々の子供は知らず知らずのうちに支配的な地位につき、支配される人々の子供は知らず知らずのうちに支配される地位につきやすくなります。

社会関係資本

*社会関係資本(Social capital):人と人とのつながりの豊かさを表す概念です。「コネ」に似て非なる考え方です。
・経済資本や文化資本が乏しい環境であっても、社会関係資本を充実させることで教育効果が上がるという報告もあります。

復習

・隠れたカリキュラムの具体例を調べてみよう。
・選抜の意味を改めて考えてみよう。

予習

・新教育について調べよう。

教育原論(保育)-11

前回のおさらい

・ペスタロッチー、ヘルバルト、フレーベル。
・義務教育の思想。自由権と社会権。

今回の目標

・コンドルセとロバート・オーエンの思想を理解しよう。
・教育権の構造を理解しよう。

義務教育の思想

社会権としての教育

社会権:自由権は「誰でも勝手に自由を取っていい」というものだったが、手が届かない人もいる。ハシゴをかけて、全ての人の手が自由に届くようにする。
※「自由権」と「社会権」の本質的な違いに気をつけよう!
自由権=国家からの自由/社会権=国家による自由

コンドルセ marquis de Condorcet

・1743年~1794年、フランス出身。
・愛称:公教育の父。
・著書:『フランス革命期の公教育理論』『公教育に関する五つの覚書』
(1)子供の学習権。
(2)教育費無償。
(3)ライシテ:政治的中立や宗教的中立。

ロバート・オーエン Robert Owen

・1771年~1858年、イギリス出身。
・キーワード:性格形成学院。世界初の保育施設(1816年)。

小テスト

資本主義と「学校」

・はたして「教育」には意味があるでしょうか? 子供たちはなぜ「勉強」しなければいけないのでしょうか? 「学校」にはどんな存在意義があるのでしょうか?
・「学校」が資本主義の世界でどう機能しているかを見えやすくするために、思考実験をしてみましょう。

【思考実験】ジャイアン・スネ夫・のび太のうち、「学校」の成績が人生を左右するのは誰でしょうか?

▼答え:のび太

▼理由:(1)ジャイアンの家は「自営業」で、ジャイアンは跡継ぎです。学校のテストの点が良かろうと悪かろうと、ジャイアンの将来の職業は変わりません。
(自営業は、誰かから給料がもらえるわけではないので、自分自身の活動によって商品価値のある物や情報やサービスを生み出さなければなりません。しかしその活動をうまく行うための具体的・実践的・高度に専門的なスキルを「学校」で教えてもらえることはあまり期待できません。)

(2)スネ夫の家は「資本家」で、自分自身が労働する必要はありません。スネ夫は出来杉くんのような才能ある人材に投資するだけで儲かるので、自分自身が高学歴である必要はあまりないわけです。スネ夫にとって「学校」とは、自分が投資するに値する有能な人間を生産してくれる場所です。スネ夫が出来杉くんにはラジコンを貸すのに、のび太には貸さない理由を考えてみてください。

(3)のび太の家は「労働者」で、自分自身が労働する必要があります。生涯賃金を上げようと思ったら、良い企業に雇用される必要があります。そのためには良い大学を出なければならないし、そのためには良い高校を出なければなりません。学校のテストの点は、のび太の人生をダイレクトに左右します。
(ちなみに、自営業は自分の活動で生み出した物や情報やサービスを売ってお金を稼いでいますが、労働者が売っているものは労働力でしたね。)

(4)オマケ:しずかちゃんの生き方には「専業主婦」という選択肢が色濃く反映されています。彼女はどうしていつもお風呂に入っているのでしょうか? 「ジェンダー論」等で学んだ知見を活用して考えると、いろいろ見えてきます。

・我々の現実の目から見える教育の姿は、これまで勉強してきた「人格の完成」を目指す教育や、すべての子どもたちの学習権を保障する「義務教育」の考え方とは、大きくズレているようです。どうしてこうなっているのでしょうか?

選抜

・資本主義世界の立場によって、「学校」への期待のかけかたの重点が異なります。
・「実家の商店の跡継ぎ」になるジャイアンにとって、「学校」の試験の結果は人生にとってあまり重要なものではありません。しかし「労働者」のキャリアは、少なくとも就職先は学校でのテストの結果が大きく左右します。
選抜:学校が現実に果たしている機能を指す言葉です。学校では試験を繰り返して各人の才能と個性を測定し、進学時の配分によって才能を選り分け、社会に出る際には個性と能力に合った持ち場に適切に配置します。

隠れたカリキュラム

・学校の勉強で本当に身についているものは何でしょうか? あるいは、学校で身につけるべきだと子どもたちに期待されているものは何でしょうか?

カリキュラム:教育目的を達成するために、計画的に配列された、教育内容のことです。
・正式のカリキュラム:学校や教師が教えていると公式に表明されている教育内容です。学生や保護者や世間にとって、学生が学校で身につけることを期待している学習内容です。
・正式のカリキュラムは、完璧に身についているわけではありません。が、まったく人生で困らないのは何故でしょうか?

隠れたカリキュラム:教師は教えていると思っていないし、保護者や世間も学校でそれを教えているとは思っていないにもかかわらず、いつのまにか学生たちが身につけている暗黙の内容のことです。
・たとえば、勉強はつまらないし人生で役に立たない。→役に立たないものでもガマンして努力しなければならない。→つまらないし役に立たないものをガマンして身につける習慣がつきます。
・学校で時間を過ごすうちに、知識や考え方、行動様式が、意図されないまま、いつのまにか身についています。このような習慣形成の方が、正式なカリキュラムで学ぶ知識よりも、優秀な労働者になる上で決定的に重要かもしれません。
・たとえば。遅刻しない、早退しない、無断欠席しない、授業中は席を立たない、先生の命令には無条件に従う、無意味に思えることでもとりあえずやる、相互監視する、競争する、出る杭を打つ、密告する。
・学校で身につける意識と行動様式は、すなわち、労働者として必要な意識と行動様式となります。
・隠れたカリキュラムとして、他に性別役割分業に関する意識等があると考えられています。

モニトリアル・システム

ベル・ランカスター法:助教法と翻訳されます。大勢の生徒に対する一斉授業方法です。教師はまず成績優秀な学生に教え、優秀な学生(モニター・助教)が一般学生に教えます。
・安価に、大量に、早く、労働者を作ることができます。「人格の完成」を目指すというよりも、工場労働で必要となる必要最低限のリテラシーとモラルを身につけることを目指す教育です。
・ベル・ランカスター方式の学校で子供たちが身につける能力とは、実際はどういうものでしょうか?

復習

・「義務教育」が成立する過程について、理論と実践の両面から押さえておこう。
・立場によって「学校」の機能の見え方が異なる理屈を押さえておこう。
・「隠れたカリキュラム」について様々な例を調べてみよう。

予習

・「新教育」について調べておこう。