教育原論(保育)-12

前回のおさらい

・義務教育の思想:コンドルセとロバート・オーエン。
・資本主義の世の中で学校が果している役割。選抜。隠れたカリキュラム。

今回の目標

・新教育の理論と代表的な思想家の考えを理解しよう!
・子どもの権利条約について理解しよう!

新教育

・20世紀初頭から世界的に広まった教育運動のことです。様々な人が活躍しますが、ほぼ共通して、主知主義的な教育を批判し、子供の自発性や能動性、創造性を重視します。
・日本では大正期(1912年~1926年)に流行し、大正新教育運動と呼ばれます。
児童中心主義:子供を「客体」として扱うのではなく、子供が「主体」となります。「教育する=教師や学校が主語」のではなく「学習する=子供が主語」へと転換します。

ジョン・デューイ John Dewey

・アメリカ出身。1859年~1952年。
・著書:『学校と社会』『民主主義と教育』
・キーワード:コペルニクス的転回。実験学校。学校は小さな社会。生活との関連。問題解決学習。
・名言:「なすことによって学ぶ。」

エレン・ケイ Ellen Karolina Sofia Key

・スウェーデン出身。女性。1849年~1926年。
・著書:『児童の世紀』
・名言:「教育の最大の秘訣は、教育しないことにある。」←ルソーの消極教育の影響が指摘されています。

モンテッソーリ Maria Montessori

・イタリア出身。女性。1870年~1952年。
・著書:『幼児の秘密』『子どもの発見』
・キーワード:子供の家。感覚教育法。教具(着衣枠、重量板、触覚板、円柱さし、ピンクタワー、算数棒、音感ベル)。自発性。整えられた環境。

▼小テスト

子どもの権利条約

・児童の権利に関する宣言(1959年)。子どもは子どもとしての権利をそれぞれもつとした宣言。
・国際児童年(1979年)。国連人権委員会の中に「子どもの権利条約」の作業部会が設置された。
・児童の権利条約(1989年)。国連総会で採択されました。児童を、保護の対象から、権利の主体へと捉え直します。日本は1994年に批准しました。

人間の範囲の拡大

・「白人+男性+キリスト教徒+中産階級」のみを人間とした市民社会から、様々な人々の努力により、徐々に人間(人格を持ち、自由と権利を行使できる者)の範囲が拡大していきます。たとえば、労働者、女性、異教徒(無神論者)、子供、障害者。→動物?
・具体的な権利の拡大過程として、男子普通選挙権(労働者への公民権拡大)。女性参政権、フェミニズム(女権拡大論)。植民地の独立。公民権運動。

子どもの権利条約の内容

(1)生きる権利:すべての子どもの命が守られること。
(2)育つ権利:もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療や教育、生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること。
(3)守られる権利。暴力や搾取、有害な労働などから守られること。
(4)参加する権利。自由に意見を表したり、団体を作ったりできること。

※子どもの最善の利益:子どもに関することが行われる時は、「その子どもにとって最もよいこと」を第一に考えます。

特別支援教育の理念

*障害者権利条約(2006年)→障害者基本法改正、障害者差別解消法(2013年)。
共生社会:障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、様々な人々が活き活きと活躍できる社会です。誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様なあり方を相互に認め合える全員参加型の社会です。
インクルーシブ教育:障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするためにも、障害のある子供が障害のない子供と共に教育を受けられる仕組みです。
教育的ニーズ:子供が必要としている支援です。
合理的配慮:障害のある子供が、他の子供と平等に教育を受ける権利を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子供にたいし、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるものです。体制面・財政面において、均衡を失した過度の負担は課しません。
ユニヴァーサル・デザイン:あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方です。

復習

・新教育の理論と代表的な思想家について説明してみよう。
・子どもの権利条約の意義を、自分の言葉で捉え直してみよう。

予習

・「持続可能な教育」について調べておこう。