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教育概論Ⅰ(栄養)-14

▼短大栄養科 7/17(火)

前回のおさらい

・子どもを主人公と考える「新教育」の展開。
・特別支援教育の理念と学校の仕事。

「近代教育」のさまざまな形

自分の言葉で説明できるかどうか、チェックしよう。

(1)昔の教育(1~3)

前近代では、人々は所属する身分や共同体で生きるのに必要な知識・技能を身につけるため、基本的に親と同じような人間になれば問題ありませんでした。

□前近代の子供が置かれていた状況を、「労働」や「遊び」という観点から、現代と比較して説明することができる。
□「形成」という専門用語によって表される人間形成のあり方が、現在の人間形成とどのように異なっているか説明することができる。
□「イニシエーション」という言葉の意味と、人間形成における意義を説明することができる。
□「生理的早産」という言葉を使って、人間が他の動物とどう違っているか説明できる。

(2)リテラシーと個人主義の教育(4~6)

前近代では、生きるためにリテラシーは特に必要ありませんでした。しかし近代以降、印刷術による情報伝達革命に対応するうち、リテラシーが生きる上で必要不可欠な知識・技能となりました。リテラシーを身につけるために、人々は労働から解放され、隔離された施設(学校)で、もっぱらトレーニングに励む期間を必要とするようになりました。このトレーニング期間のことを「モラトリアム」と呼びます。
さらにコンピュータの登場に典型的なように、情報伝達手段が大きく変化した時、新しい知識・技能に対応できなければ、生き残ることができなくなってしまいます。人々はリテラシーを習得するため、学校に行くようになりました。

□「リテラシー」という言葉の意味や、リテラシーの習得が必要不可欠になっていった過程を説明できる。
□リテラシーを習得する教育が、前近代の人間形成とどのように違っているか、「形成」や「イニシエーション」や「モラトリアム」という専門用語を使って説明できる。
□個人主義が発達した過程を説明できる。

(3)人格形成の教育(自由権としての教育:6~9)

個人主義が台頭してくると、自分勝手でワガママな人ばかりでも王様なしで社会が成立する新しい社会理論(=社会契約論)が登場してきます。それに伴って、民主主義にふさわしい新たな人間像が生まれてきます。前近代では、身分や共同体に応じた人間形成を行っており、身分や共同体の違いを超えた普遍的な人間形成は必要とされませんでした。しかし市民社会においては、すべての人間を生まれながらに自由で平等なものと考えます。すべての人間に共通する教育が、新たに必要とされることになります。これが「人格の完成」を目指す教育の土台となります。
教育とは、かけがえのない個性を自覚し、アイデンティティを確立し、責任を伴った自由を獲得し、理性を育み、自分自身の人生を自分で決定することができる(=自己実現)ような人間を作る仕事です。自分の人生を決めるに当たっては、どんな権力者からも命令されるいわれはありません(=自由権)。

□社会契約論の考え方を説明できる。
□民主主義を成立させるために憲法が果たしている役割を説明できる。
□「自由権」について説明できる。
□「人格の完成」について説明できる。
□「個性」「アイデンティティ」「自由」「理性」「自己実現」という言葉の意味を説明できる。
□近代教育思想について説明できる。

(4)義務教育(社会権としての教育:9~10)

産業革命の進展によって、資本家と労働者の階層分化が激しくなり、資本家は自由権としての教育を享受することができる一方で、貧しい労働者の子供たちは児童労働を余儀なくされていました(=自由のワナ)。すべての子供たちが教育を受ける権利を保障されるためには、有利な側の人間たちの自由を制限し、自分では自由に到達できない人々に実質的な自由を与えるような、新しい権利が必要となります(=社会権)。社会権を保障するのは、国家に期待される役割です。
子供たちの学習権を守るのは、大人の役割です。特に教師に期待されるのは、親が安心して教育権を信託できるような、教職の専門性です。

□自由権だけでは世の中がうまくいかない理由を説明できる。
□学習権の思想について説明できる。
□「社会権」について説明できる。
□「義務教育」について説明できる。
□「教職の専門性」について説明できる。
□教育において国家の果たす役割を説明できる。

(5)産業が必要とする教育(11~13)

急速な階層分化により、都市には貧しい労働者たちが大量に流れ込み、衛生や治安に関する問題が発生しました。この新たな都市問題を解決しようとする時、安く早く大量に優秀な労働者を作るような学校システムが開発されます。
一方で、産業をさらに発展させるためには、有能な人材をより難しく重要な仕事に、取り柄のない人材を誰でもできる単純な仕事に割り振るなど、適材適所の人材配分を行う必要があります。人々の個性を見極め、適切に配分する機能が教育に期待されます(メリトクラシー、学歴主義)。難しい仕事を受け持つことが期待される優秀な人物には最先端の知識を着実に身につけてもらう必要があります(正式のカリキュラム)が、特に難しい仕事をする訳ではない人々には難しい知識を身につけてもらう必要はありません。しかし自分の生活と切り離された(分業された)単純労働を文句も言わずに黙々と続けてもらうための能力は、知らず知らずのうちにいつの間にか身につけてもらう必要があります(=隠れたカリキュラム)。
人間をただの歯車として扱おうとする閉塞的な状況を打破するために、人間の範囲を拡大していこうという動きが一方で進んでいます。

□産業革命の進展(=分業体制)によって、効率的に人材を配分する役割が教育に期待されるようになったメカニズムを説明できる。
□人々がどうして人生に必要ないと思われる知識を一生懸命勉強しなければならないか、理由を説明できる。
□人生に必要な教育とはどういうものか考えようとした理論(新教育)について説明できる。
□特別支援教育について説明できる。

予習・復習

・来週はテストです。しっかり準備しましょう。

教職基礎論(栄養)-11

短大栄養科 7/14

前回のおさらい

・道徳。教科化されました。
・体育。(1)食育の推進(2)体力の向上(3)安全に関する指導(4)心身の健康の保持増進の4つの領域があります。

生徒指導

・「学習指導」と「生徒指導」は、学校教育の二本柱です。(自治体によっては生活指導とも言ったりします)
・学習指導は教師と生徒の間を「教育内容」が媒介しますが、生徒指導は教師と生徒の人格が直接的にふれあうのが特徴です。

『生徒指導提要』

・生徒指導の方針は、文部科学省が平成22年に提示した『生徒指導提要』にかなり細かく書いてあります。

1ー1-1 生徒指導の意義
・「 生徒指導とは、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のこと」
・「生徒指導は、すべての児童生徒のそれぞれの人格のよりよき発達を目指すとともに、学校生活がすべての児童生徒にとって有意義で興味深く、充実したものになることを目指す」
・「生徒指導は学校の教育目標を達成する上で重要な機能を果たすものであり、学習指導と並んで学校教育において重要な意義を持つ」

1-1-2-(1)生徒指導の基盤となる児童生徒理解
・「生徒指導を進めていく上で、その基盤となるのは児童生徒一人一人についての児童生徒理解の深化を図ること」
・「教員と児童生徒との信頼関係を築くことも生徒指導を進める基盤」

1-1-2-(2)望ましい人間関係作りと集団指導・個別指導
・「自他の個性を尊重し、互いの身になって考え、相手のよさを見付けようと努める集団、互いに協力し合い、よりよい 人間関係を主体的に形成していこうとする人間関係づくりとこれを基盤とした豊かな集団 生活が営まれる学級や学校の教育的環境を形成することは、生徒指導の充実の基盤であり、 かつ生徒指導の重要な目標の一つ」

1-1-2-(3)学校全体で進める生徒指導
・「生徒指導を進めるに当たっては、全教職員の共通理解を図り、学校として の協力体制・指導体制を築くことは欠くことのできない大切なこと」
・「学校が中心となって生徒指導を進めていくことは当然のことですが、家庭や地域の力を活用できれば、より豊かな生徒指導を進めていくことができる」

学級経営

・経営=マネジメント。様々な資源・資産・リスクを管理し、目的実現のために効果を最大化する手法のことです。
・学校の先生には、「教科担任」だけではなく、「学級担任」としての役割が期待されています。
・自分が学級担任としたら、どんなクラスにしたいですか?
・目標、ルール、役割分担、人間関係、支持的風土。
・物的環境:掲示物、学級通信。

問題行動

懲戒と体罰

【学校教育法第11条】
「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」

・何がどこまで「懲戒」で、どこから「体罰」なのでしょうか?
・「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について(通知)
・「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例

いじめ

・「いじめ防止対策推進法

【(定義)第二条】
この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

・いじめの防止:第15条。
・いじめの早期発見:第16条。
・いじめに対する措置:第23条。

・「埼玉県いじめの防止等のための基本的な方針
・「家庭用いじめ発見チェックシート

復習

・「生徒指導」について、意義を押さえよう。
・「体罰」の定義、「いじめ」の定義を理解しよう。

予習

・「チーム学校」という言葉について、調べておこう。

教育概論Ⅰ(中高)-11

栄養・環教 7/13
語学・心カ・教福・服美・表現 7/14

前回のおさらい

・義務教育の思想。コンドルセとオーエン。

教育権の構造

・教育に関わる4つの立場「子供/親(保護者)/教師/国家」が、それぞれどのような「権利/義務」を持っているかを明らかにするのが「教育権の構造」です。それぞれが教育で果たすべき役割が明確になります。

子供の学習権

・子供は学習権を持っています。教育を受ける権利があります。
・学習する権利が保障されなければ、自分にどのような自由や権利があるかすら分からなくなってしまいます。
・この場合の教育とは、普遍的な「普通教育」であり、人格の完成を目指す教育です。特定の知識や技術を身につける職業訓練ではなく、「人間」になるための教育です。

日本国憲法第26条-1
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

親の教育義務

・親には、子供を教育する義務=子どもの権利を保障する義務があります。

日本国憲法第26条-2(前半)
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。
教育基本法第5条-1
国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。

親の教育権

・子供を教育する第一の権利は、親にあります。
・しかしその自由は無限に認められるのではなく、あくまでも「子供の学習権」を保障するために与えられているという責任が伴っています。
→親には「監護権」が与えられますが、それはあくまでも「子の利益」のためです。

民法第820条、822条
*民法第820条:親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
*民法第822条:親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。
教育基本法第10条-1
父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

国家による親への支援

・どんな貧乏な親でも義務を果たすことができるよう、国家が支援する必要があります。社会権としての教育を保障します。

日本国憲法第26条-2(後半)
義務教育は、これを無償とする。
教育基本法第5条3・4
3  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
教育基本法第16条-4
国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

国家による教育介入の制限

・国家はあくまでも親に対する支援者であって、積極的に教育の内容へ介入することは期待されていません。自由権としての教育を保障します。
*教育基本法が「準憲法的性格」を持っていることを再確認してください。

教育基本法第14条-2、第15条-2
*14条-2:法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
*15条-2:国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
教育基本法第16条-1
教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
外的事項と内的事項

・国家は外的事項には積極的に関与すべきですが、内的事項に関与することには抑制的であるべきです。
*外的事項:財政的措置=学校設立費・水光熱費・授業料・教科書代、法的措置=就学義務・学校制度・教員資格・機会均等、教育環境整備=教員配置・補助員配置・衛生的配慮
*内的事項:教育内容、教育課程、教育方法。

教師の教育権

・教師は、親でもないのに、どうして権力を持ち、どういう根拠で子供を指導することができるのでしょうか。
→医師は、親でもないのに、どうして権力を持つのでしょうか?
・営造物理論、特別権力関係論:学校は刑務所等と同じなのでしょうか?
・親の教育権が信託されるから、教師は力を持つと考えることができそうです。

教職の専門性

・安心して権利を信託してもらうためには、教師は教育のプロフェッショナルでなければなりません。教師が教育のプロである根拠を「教職の専門性」と呼びます。
・教師はどのような点で教育のプロなのでしょうか?
(1)教える内容:教科、教育課程、学習指導要領
(2)教え方:教授法、教育理論
(3)子供の個性:心理学、教育相談
(4)集団:学級経営、特別活動、いじめ防止
(5)プロとしての自覚:教職基礎論

資本主義と「学校」

・はたして「教育」には意味があるでしょうか? 子供たちはなぜ「勉強」しなければいけないのでしょうか? 「学校」にはどんな存在意義があるのでしょうか?
・「学校」が資本主義の世界でどう機能しているかを見えやすくするために、思考実験をしてみましょう。

【思考実験】ジャイアン・スネ夫・のび太のうち、「学校」の成績が人生を左右するのは誰でしょうか?

▼答え:のび太

▼理由:(1)ジャイアンの家は「自営業」で、ジャイアンは跡継ぎです。学校のテストの点が良かろうと悪かろうと、ジャイアンの将来の職業は変わりません。
(自営業は、誰かから給料がもらえるわけではないので、自分自身の活動によって商品価値のある物や情報やサービスを生み出さなければなりません。しかしその活動をうまく行うための具体的・実践的・高度に専門的なスキルを「学校」で教えてもらえることはあまり期待できません。)

(2)スネ夫の家は「資本家」で、自分自身が労働する必要はありません。スネ夫は出来杉くんのような才能ある人材に投資するだけで儲かるので、自分自身が高学歴である必要はあまりないわけです。スネ夫にとって「学校」とは、自分が投資するに値する有能な人間を生産してくれる場所です。スネ夫が出来杉くんにはラジコンを貸すのに、のび太には貸さない理由を考えてみてください。

(3)のび太の家は「労働者」で、自分自身が労働する必要があります。生涯賃金を上げようと思ったら、良い企業に雇用される必要があります。そのためには良い大学を出なければならないし、そのためには良い高校を出なければなりません。学校のテストの点は、のび太の人生をダイレクトに左右します。
(ちなみに、自営業は自分の活動で生み出した物や情報やサービスを売ってお金を稼いでいますが、労働者が売っているものは労働力でしたね。)

(4)オマケ:しずかちゃんの生き方には「専業主婦」という選択肢が色濃く反映されています。彼女はどうしていつもお風呂に入っているのでしょうか? 「ジェンダー論」等で学んだ知見を活用して考えると、いろいろ見えてきます。

選抜

・資本主義世界の立場によって、「学校」への期待のかけかたの重点が異なります。
・「実家の商店の跡継ぎ」になるジャイアンにとって、「学校」の試験の結果は人生にとってあまり重要なものではありません。しかし「労働者」のキャリアは、少なくとも就職先は学校でのテストの結果が大きく左右します。
選抜:学校が現実に果たしている機能を指す言葉です。学校では試験を繰り返して各人の才能と個性を測定し、進学時の配分によって才能を選り分け、社会に出る際には個性と能力に合った持ち場に適切に配置します。

・我々の現実の目から見える教育の姿は、これまで勉強してきた「人格の完成」を目指す教育や、すべての子どもたちの学習権を保障する「義務教育」の考え方とは、大きくズレているようです。どうしてこうなっているのでしょうか?

復習

・教育権の構造を確認して、教師の立場を自覚しよう。
・立場によって「学校」の機能の見え方が異なる理屈を押さえておこう。

予習

・「隠れたカリキュラム」について様々な例を調べてみよう。

教育概論Ⅰ(保育)-12

短大保育科 7/12、7/14

前回のおさらい

・義務教育の思想。コンドルセとオーエン。

資本主義と「学校」

・はたして「教育」には意味があるでしょうか? 子供たちはなぜ「勉強」しなければいけないのでしょうか? 「学校」にはどんな存在意義があるのでしょうか?
・「学校」が資本主義の世界でどう機能しているかを見えやすくするために、思考実験をしてみましょう。

【思考実験】ジャイアン・スネ夫・のび太のうち、「学校」の成績が人生を左右するのは誰でしょうか?

▼答え:のび太

▼理由:(1)ジャイアンの家は「自営業」で、ジャイアンは跡継ぎです。学校のテストの点が良かろうと悪かろうと、ジャイアンの将来の職業は変わりません。
(自営業は、誰かから給料がもらえるわけではないので、自分自身の活動によって商品価値のある物や情報やサービスを生み出さなければなりません。しかしその活動をうまく行うための具体的・実践的・高度に専門的なスキルを「学校」で教えてもらえることはあまり期待できません。)

(2)スネ夫の家は「資本家」で、自分自身が労働する必要はありません。スネ夫は出来杉くんのような才能ある人材に投資するだけで儲かるので、自分自身が高学歴である必要はあまりないわけです。スネ夫にとって「学校」とは、自分が投資するに値する有能な人間を生産してくれる場所です。スネ夫が出来杉くんにはラジコンを貸すのに、のび太には貸さない理由を考えてみてください。

(3)のび太の家は「労働者」で、自分自身が労働する必要があります。生涯賃金を上げようと思ったら、良い企業に雇用される必要があります。そのためには良い大学を出なければならないし、そのためには良い高校を出なければなりません。学校のテストの点は、のび太の人生をダイレクトに左右します。
(ちなみに、自営業は自分の活動で生み出した物や情報やサービスを売ってお金を稼いでいますが、労働者が売っているものは労働力でしたね。)

(4)オマケ:しずかちゃんの生き方には「専業主婦」という選択肢が色濃く反映されています。彼女はどうしていつもお風呂に入っているのでしょうか? 「ジェンダー論」等で学んだ知見を活用して考えると、いろいろ見えてきます。

選抜

・資本主義世界の立場によって、「学校」への期待のかけかたの重点が異なります。
・「実家の商店の跡継ぎ」になるジャイアンにとって、「学校」の試験の結果は人生にとってあまり重要なものではありません。しかし「労働者」のキャリアは、少なくとも就職先は学校でのテストの結果が大きく左右します。
選抜:学校が現実に果たしている機能を指す言葉です。学校では試験を繰り返して各人の才能と個性を測定し、進学時の配分によって才能を選り分け、社会に出る際には個性と能力に合った持ち場に適切に配置します。

・我々の現実の目から見える教育の姿は、これまで勉強してきた「人格の完成」を目指す教育や、すべての子どもたちの学習権を保障する「義務教育」の考え方とは、大きくズレているようです。どうしてこうなっているのでしょうか?

隠れたカリキュラム

・学校の勉強で本当に身についているものは何でしょうか? あるいは、学校で身につけるべきだと子どもたちに期待されているものは何でしょうか?

カリキュラム:教育目的を達成するために、計画的に配列された、教育内容のことです。
・正式のカリキュラム:学校や教師が教えていると公式に表明されている教育内容です。学生や保護者や世間にとって、学生が学校で身につけることを期待している学習内容です。
・正式のカリキュラムは、完璧に身についているわけではありません。が、まったく人生で困らないのは何故でしょうか?

隠れたカリキュラム:教師は教えていると思っていないし、保護者や世間も学校でそれを教えているとは思っていないにもかかわらず、いつのまにか学生たちが身につけている暗黙の内容のことです。
・たとえば、勉強はつまらないし人生で役に立たない。→役に立たないものでもガマンして努力しなければならない。→つまらないし役に立たないものをガマンして身につける習慣がつきます。
・学校で時間を過ごすうちに、知識や考え方、行動様式が、意図されないまま、いつのまにか身についています。このような習慣形成の方が、正式なカリキュラムで学ぶ知識よりも、優秀な労働者になる上で決定的に重要かもしれません。
・たとえば。遅刻しない、早退しない、無断欠席しない、授業中は席を立たない、先生の命令には無条件に従う、無意味に思えることでもとりあえずやる、相互監視する、競争する、出る杭を打つ、密告する。
・学校で身につける意識と行動様式は、すなわち、労働者として必要な意識と行動様式となります。
・隠れたカリキュラムとして、他に性別役割分業に関する意識等があると考えられています。

モニトリアル・システム

ベル・ランカスター法:助教法と翻訳されます。大勢の生徒に対する一斉授業方法です。教師はまず成績優秀な学生に教え、優秀な学生(モニター・助教)が一般学生に教えます。
・安価に、大量に、早く、労働者を作ることができます。「人格の完成」を目指すというよりも、工場労働で必要となる必要最低限のリテラシーとモラルを身につけることを目指す教育です。
・ベル・ランカスター方式の学校で子供たちが身につける能力とは、実際はどういうものでしょうか?

学歴主義

メリトクラシー:能力主義と翻訳されます。もともとは身分や血筋の高い者が社会を統治する体制を否定して、出自に関係なく個人の持っている能力によって地位が決まり、能力の高い個人が社会を統治する体制を指しました。一転して、能力によって人間を序列化する世の中を意味するようになります。←しかしこれは正式なカリキュラムの考え方です。
学歴主義:学校の勉強に高い適応能力を示した個人が、きっと社会一般でも高い能力を発揮するだろうと期待する態度です。しかし、学校の勉強に高い適応能力を示す個人が、一般社会で高い適応能力を示すとは限らないということは、広く気がつかれています。それにも関わらず、どうして学歴主義が説得力を持つのでしょうか?←隠れたカリキュラムを考慮に入れるとカラクリが見えてくるかもしれません。

文化的再生産

・学歴の高い親の子どもの学歴も高くなりやすいのはなぜでしょうか?
・遺伝=生物的再生産でしょうか、環境=文化的再生産でしょうか?
文化資本:支配階級の習慣や考え方を教育システムでも高く評価することにより、もともとそういう習慣を身につけていた層が高い学歴を得て、結局は高い階級へと再生産されます。
・労働者にとってはつまらないし役に立たないように見えるものも、文化資本を独占する人々にとっては極めて優れた意味があるように見えます(音楽や美術に対する興味・関心を比べてみよう。あるいは文化資本が高い家庭と低い家庭では、見るテレビ番組をにどういう違いがでるか、考えてみよう)。
・文化資本が高ければ高いほど学校文化に親和的な人間になり、そういう人間ほど高い学歴になる傾向がありますが、それは必ずしも人間としての能力が高いことを意味しないかもしれません。
→しかし、いったん文化資本を独占した人々(つまり学校文化に親和的な人々)が大きな力を持ったとき、その権力を他の人間に渡さない理屈として、学歴主義は十分に機能します。

復習

・立場によって「学校」の機能の見え方が異なる理屈を押さえておこう。
・「隠れたカリキュラム」について様々な例を調べてみよう。

予習

・「新教育」について調べておこう。

教育概論Ⅰ(栄養)-13

▼短大栄養科 7/10(火)

前回のおさらい

・隠れたカリキュラムと文化的再生産。学校は実際にはどういう機能を果たしているのでしょうか。
・新教育。人間の範囲が徐々に拡大していきます。

新教育

・新教育とは、20世紀初頭から世界的に広まった教育運動です。主知主義的な教育を批判し、子供の自発性や能動性、創造性を重視します。
児童中心主義:子供を「客体」として扱うのではなく、子供が「主体」となります。「教育する=教師や学校が主語」のではなく「学習する=子供が主語」へと転換します。

ジョン・デューイ John Dewey

・アメリカ出身。1859年~1952年。
・著書:『学校と社会』『民主主義と教育』
・キーワード:コペルニクス的転回。実験学校。問題解決学習。
・名言:「なすことによって学ぶ。」

エレン・ケイ Ellen Karolina Sofia Key

・スウェーデン出身。女性。1849年~1926年。
・著書:『児童の世紀』
・名言:「教育の最大の秘訣は、教育しないことにある。」←ルソーの消極教育の影響が指摘されています。

モンテッソーリ Maria Montessori

・イタリア出身。女性。1870年~1952年。
・著書:『幼児の秘密』『子どもの発見』
・キーワード:子供の家。感覚教育法。教具。自発性。整えられた環境。

特別支援教育

・平成19年の学校教育法改正により、すべての学校(幼稚園含む)で特別支援教育を推進することが明確となりました。
・「特別支援教育の推進について(通知)」2007年。
・「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」2012年。

特別支援教育の理念

共生社会:障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、様々な人々が活き活きと活躍できる社会です。誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様なあり方を相互に認め合える全員参加型の社会です。
インクルーシブ教育:障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするためにも、障害のある子供が障害のない子供と共に教育を受けられる仕組みです。
教育的ニーズ:子供が必要としている支援です。
合理的配慮:障害のある子供が、他の子供と平等に教育を受ける権利を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子供にたいし、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるものです。体制面・財政面において、均衡を失した過度の負担は課しません。
ユニヴァーサル・デザイン:あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方です。

発達障害

発達障害:これまでの特殊教育の対象とはなっていなかった、知的な遅れのない障害のことです。
→LD(学習障害):知的発達に遅れはありませんが、聞く・話す・読む・書く・計算するなどの能力のうち、特定の分野に極端に苦手な側面が見られます。
→ADHD(注意欠陥多動性障害):注意力や衝動性、多動性などが年齢や発達に不釣り合いで、社会的な活動や学業に支障をきたすことがあります。
→高機能自閉症・アスペルガー症候群:他者の気持ちを察することや周りの状況に合わせたりする行動が苦手だったり、特定のものにこだわる傾向が見られます。

学校の仕事

校内委員会:校長のリーダーシップの下、全校的な支援体制を確立し、実態把握や支援方策の検討等を行うために設けなければならない組織です。
特別支援教育コーディネーター:各学校における特別支援教育の推進のために、情報収集、校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口となります。
個別の教育支援計画:特別支援学校では、ひとりひとりの教育的ニーズに応じた支援を効果的に実施するため、乳幼児期から学校卒業後までの一貫した長期的な計画を作成しなければなりません。作成にあたり、医療・福祉・労働などの関係機関と連携し、保護者の参画や意見を聞きます。
個別の指導計画:特別支援学校では、障害のある子供ひとりひとりの教育的ニーズに対応して工夫され、学校における指導内容・方法を盛り込んだ指導計画を作成しなければなりません。

復習

・新教育にかかわる人物を、著作やキーワードとともに押さえておこう。
・「特別支援教育」の理念と、学校や先生が携わる具体的な仕事について理解しよう。

予習

・現在の教育が抱える問題について考えてみよう。