「講義」カテゴリーアーカイブ

道徳教育指導論-3

第3回=10/12

前回のおさらい

・何を教えるか=22の徳目を全部あつかいます。

道徳教育の意義

我が国の教育は、教育基本法第1条に示されているとおり「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われ」るものである。
人格の完成及び国民の育成の基盤となるものが道徳性であり、その道徳性を育てることが学校教育における道徳教育の使命である。(『学習指導要領解説 特別の教科道徳編』1頁)

・道徳教育の意義を、教育の目的と関連づけて理解しよう。

人格の完成

・教育基本法第一条:教育の目的は「人格の完成」です。
・人格とは何か? 目に見えないし、触ることができないし、科学的に存在を確かめることができません。
・「好き」と「愛してる」という言葉の意味の違いを通して、「人格」について考えてみよう。

 好き愛してる
個性代わりがある代わりがない
タイプ言える言えない
数値化表せる表せない
アイデンティティ変わる変わらない
様相主観的な感情存在のあり方
対象モノ(純粋理性)人格(実践理性)

・モノと人格は、存在のしかたが全く異なります。人格とは、代わりがなく、変わらないようなものです。
・「人格を尊重する」とは、どういうことでしょうか。→モノとして扱わないことです。

個性

・個性=Individualityの翻訳語です。
・「個」性と見るか、個「性」と見るかで、意味が異なってきます。もともとは「個」性で、長所とか特徴とか持ち味などという言葉とはニュアンスが異なります。
・他のものと交換することができない、かけがえのない、なにか。それが取り去られたら、私が私でなくなってしまう、なにかのことです。それは究極的には「自由」とか「意志」とか「自律」という概念に関わってきそうです。
・「個性を尊重する」とはどういうことでしょうか?
・教育者が言ってはならない、個性を否定するような言葉に気をつけましょう。
・一人一人の個性を大事にするとはどういうことでしょうか?

アイデンティティ

・日本語では「自我同一性」や「存在証明」などと訳されることがあります。「あの私」と「この私」が一致していることを証明したいときなどに用いられます。「IDカード」=Identity card。
・自同律(principle of Identity):「A=A」「わたし は わたし」
・この世に変化しないものなどあるでしょうか? 「A→A’」
・私は常に変化し続けている(新陳代謝)にも関わらず、どうして常に「わたしはわたし」と言うことができるのでしょうか?
・わたしの属性について考えてみましょう。A=X、A=Y、A=Z・・・・。常に一致しているのは何でしょうか? 主語と述語の関係に注目してみましょう。
・常に主語であるものにはアイデンティティが成立していそうです。
・述語に重点を置くか、主語に重点を置くかで、同じ文章でも世界の見え方や関わり方が異なってきます。
・「主体性」や「自主性」とは何でしょうか?

自由と責任

・教育基本法第一条に続けて書かれている「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」とは何でしょうか?
・モノは自由ではないが、人格は自由です。
・教育とは、自由でないようなものを、自由にするための営みであると言えそうです。→カント「人間は教育によって初めて人間となることができる。」
・子供は不自由で、大人が自由? →子供は生理現象に無条件に従わざるを得ませんが、大人は同じ生理現象に対しても様々な選択肢を持っています。
・モノは物理法則に従わざるを得ませんが、人格を持つ者は自分でルールを作ってそれに従うことができます。
*立法能力:自分でルールを作って、自分で守ることができるような力のことです。他人の作ったルールに従う(他律)のではなく、自らの意志でルールに従う(自律)ことができる力のことです。

復習

・教育基本法第一条「人格の完成」は何を目指しているのか、自分の言葉で説明できるようにしよう。
・「人格」の形成が道徳教育の土台となることを意識しておこう。

予習

・特別の教科道徳の時間ではなく各教科で行なう道徳教育とはどのようなものか、具体的に考えてみよう。

教育学Ⅱ-4

■新松戸キャンパス 10/12(金)
■龍ケ崎キャンパス 10/22(月)

前回のおさらい

・ナショナリズムを維持するために、教育に期待がかかります。
・具体的には、国旗・国歌・国語・歴史・地理などの「隠れたカリキュラム」によって、知らず知らずにうちに「わたしは○○人」という自覚を生み出します。
・各国の国家:国民を統合する力があると同時に、取り残されてしまう人々も生み出します。

日本のナショナリズム

・明治維新(1868年):身分制社会から国民国家へ転換しました。
・文明開化:日本の伝統文化をことごとく否定し、外来文化を崇拝するムーブメントです。鹿鳴館時代とも言われたりします。
・学制(1872年):フランスの真似をした教育制度です。教育内容も西洋の翻訳にとどまります。
福沢諭吉:『学問のすすめ』など、学制の基本的な考え方に影響を与えています。
・日本の日本らしさとは何でしょうか?→天皇の再発見。

日本の祝祭日の由来について考えてみよう。

・日本の祝祭日には、必ず連休になるものと、火曜日や水曜日ならそのままになるものと、2種類に分けられます。どうしてこのような違いがあるのでしょうか?

教育勅語

・1891年渙発、1948年失効確認(衆議院、参議院)。
元田永孚(もとだながざね)と井上毅(いのうえこわし)が中心となって作成します。儒学主義と近代主義がミックスされた内容になっています。

教育勅語の構造

・3つのパートに分けると、理解しやすくなります。
・教育勅語には「いいことも書かれている」とか「普遍的なことも書かれている」と主張する人々は、第二パートにしか注目していません。しかし、もし単に「いいことも書かれている」だけで良いとしたら、聖書でもコーランでも論語でも良くなってしまいます。なぜ、聖書でもコーランでも論語でもなく「教育勅語」である必要があったのでしょうか。
・「日本人」という自己意識の形成にとって決定的に重要なのは、第一パートと第三パートです。第一パートの理解を抜きにして第二パートを語ることはできませんし、語る意味がありません。
・第一パートを理解するためには、日本神話(とくに天孫降臨)に対する知識が不可欠です。
・第二パートの徳目は、「儒教」の伝統的徳目に近代主義を混ぜたものです。
・教育勅語を中心とした教育体制が構築されます。修身、国語、歴史、地理との関係。
・しかしそもそも、教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのでしょうか?

日本近代と戦争

・日本が外国とどれくらい戦争したか、考えてみよう。
・日本の歴史全体を考えたときに、近代の戦争の特徴について考えてみよう。

ナショナリズムの力と問題

・身分制秩序を破壊して、国民を平等に向かわせる力を持っています。
・異質な集団を一つにまとめる力があり、戦争に強くなります。
・一方で、異質なものを排除しながら「純粋」さを追求していく傾向を強めます。
・排除したものを「敵」として固定し、憎しみを増幅させる作用があります。
・巨大な力と、コントロールの難しさを、併せ持っています。

復習

・「教育勅語」の構造について押さえておこう。

予習

・「高度経済成長」について調べておこう。

教育概論Ⅱ(中高)-5

▼語学・心カ・教福・服美・表現 10/13
▼栄養・環教 10/16

前回のおさらい

・日本語廃止論と方言矯正。
・日本のナショナリズム。教育勅語は3つのパートにわけると理解しやすい。

日本のナショナリズム(つづき)

教育勅語の構造

・第一パートを理解するためには、日本神話(とくに天孫降臨)に対する知識が不可欠です。
・第二パートの徳目は、「儒教」の伝統的徳目に近代主義を混ぜたものです。
・教育勅語を中心とした教育体制が構築されます。修身、国語、歴史、地理との関係。
・しかしそもそも、教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのでしょうか?

日本近代と戦争

・日本が外国とどれくらい戦争したか、考えてみよう。
・日本の歴史全体を考えたときに、近代の戦争の特徴について考えてみよう。

教育勅語の失効

・1948年、衆議院と参議院での決議。何が問題だったのでしょうか?
・問題は「主権在君」と「神話的国体観」にありそうです。

ナショナリズムの力と問題

・身分制秩序を破壊して、国民を平等に向かわせる力を持っています。
・異質な集団を一つにまとめる力があり、戦争に強くなります。
・一方で、異質なものを排除しながら「純粋」さを追求していく傾向を強めます。
・排除したものを「敵」として固定し、憎しみを増幅させる作用があります。
・巨大な力と、コントロールの難しさを、併せ持っています。

教育基本法体制

・1947年法律第25号。日本国憲法と密接に関係。(2006年改訂)
・日本国憲法が国作りの「理念」を表現しているとすれば、教育基本法は具体化への「方法」を示していると言えます。
・「教育勅語」と正反対の理念が示されています。

主権在民と基本的人権

*主権在民:国民ひとりひとりが「主人公」であるという政治体制。人間は誰か別の存在のために使われる「脇役」ではありません。
*基本的人権:ひとりひとりが自分の人生の主人公となって生きることができるためには、これだけはどうしても必要になるという最低限の権利のことです。幸福権や職業選択の自由や財産の自由や身体の自由などなど。

学校教育法

・1947年法律第26号。いわゆる「6・3・3制」
・複線制(フォーク型)から単線制へ。
・女性の地位の変化。
・教員養成の変化。師範学校から開放制へ。

学習指導要領(1947年版)

・「学習指導要領(試案)」。「試案」とはどういうことでしょうか。
・法的拘束力なし。
・道徳科なし。
・社会科の新設。「主人公」として生きるためには、基本的人権だけでは不十分で、ガイドブックも必要になります。
・家庭科の男女共修。

復習

・教育基本法体制の仕組みについて押さえよう。

予習

・高度経済成長について調べておこう。

課題

・締め切り:語学・心カ・教福・服美・表現=11/10(土)、栄養・環教=11/13(火)
・形式:800字程度。手書きOK、コンピュータOK。用紙サイズなど、日本語で読めれば何でも可。
・内容「2017年3月に出た新しい『中学校学習指導要領』の特徴について具体的に調べ、これからの教育が具体的にどのように変わるか考えよう。」:ヒント=「社会に開かれた教育課程」「カリキュラム・マネジメント」「主体的・対話的で深い学び」
・『中学校学習指導要領』のpdfファイル。

教育概論Ⅱ(栄養)-4

▼10/9

前回のおさらい

・フランス革命の展開。ナショナリズムの強さの理由。
・各国の国歌。国民を統合する役割がある一方、取り残される人々の問題がありました。
・国語には国民を統合する機能がありますが、一方で方言は撲滅されていきます。

日本のナショナリズム

・明治維新(1868年):身分制社会から国民国家へ転換しました。
・文明開化:日本の伝統文化をことごとく否定し、外来文化を崇拝するムーブメントです。鹿鳴館時代とも言われたりします。
・学制(1872年):フランスの真似をした教育制度です。教育内容も西洋の翻訳にとどまります。
福沢諭吉:『学問のすすめ』など、学制の基本的な考え方に影響を与えています。立身出世主義、国民皆学、実学主義、受益者負担。
・日本の日本らしさとは何でしょうか?→天皇の再発見。

日本の祝祭日の由来について考えてみよう。

・日本の祝祭日には、必ず連休になるものと、火曜日や水曜日ならそのままになるものと、2種類に分けられます。どうしてこのような違いがあるのでしょうか?

教育勅語

・1891年渙発、1948年失効確認(衆議院、参議院)。
元田永孚(もとだながざね)と井上毅(いのうえこわし)が中心となって作成します。儒学主義と近代主義がミックスされた内容になっています。

日本近代と戦争

・日本が外国とどれくらい戦争したか、考えてみよう。
・日本の歴史全体を考えたときに、近代の戦争の特徴について考えてみよう。

教育勅語の構造

・3つのパートに分けると、理解しやすくなります。
・教育勅語には「いいことも書かれている」とか「普遍的なことも書かれている」と主張する人々は、第二パートにしか注目していません。しかし、もし単に「いいことも書かれている」だけで良いとしたら、聖書でもコーランでも論語でも良くなってしまいます。なぜ、聖書でもコーランでも論語でもなく「教育勅語」である必要があったのでしょうか。
・「日本人」という自己意識の形成にとって決定的に重要なのは、第一パートと第三パートです。第一パートの理解を抜きにして第二パートを語ることはできませんし、語る意味がありません。
・第一パートを理解するためには、日本神話(とくに天孫降臨)に対する知識が不可欠です。
・第二パートの徳目は、「儒教」の伝統的徳目に近代主義を混ぜたものです。
・教育勅語を中心とした教育体制が構築されます。修身、国語、歴史、地理との関係。
・しかしそもそも、教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのでしょうか?

ナショナリズムの力と問題

・身分制秩序を破壊して、国民を平等に向かわせる力を持っています。
・異質な集団を一つにまとめる力があり、戦争に強くなります。
・一方で、異質なものを排除しながら「純粋」さを追求していく傾向を強めます。
・排除したものを「敵」として固定し、憎しみを増幅させる作用があります。
・巨大な力と、コントロールの難しさを、併せ持っています。

復習

・「教育勅語」の構造について押さえておこう。
・教育基本法と教育勅語の違いについて押さえておこう。

予習

・「カリキュラム」という言葉の意味について調べておこう。

教育の基礎理論-4

▼短大栄養科 10/9

前回のおさらい

・かつて「教育」は行われていませんでした。「教育」とは異なる形による発達や成長への働きかけを「形成」と呼びます。
・「成人式」の形は、いまと昔はまったく異なっていました。「死」と「再生」を象徴する儀式を突破して共同体の正式メンバーに加入することを「イニシエーション」と呼びます。
・人々は、学校や教育がなくとも、知恵と経験を後の世代に継承し、生活を続けていました。

日本での近代教育の始まり

・江戸時代中期(西暦1750年頃)あたりから子供に対する意識が変わり始めます。
←生産力の向上、遺産相続への関心、家意識の形成
←商品経済の展開、識字能力の有効性の拡大、寺子屋の増加

寺子屋

寺子屋:一般庶民が自分たちのために必要とした教育機関です。幕府や藩など支配者層が上から押しつけたのではなく、下からの自発的な要求によって自然発生的に増加していきました。
・庶民の生活と要求に対応して、そろばんや習字を教えていました。
※「往来物」と呼ばれるテキストを使っていました。

リテラシー

リテラシー:文字を読んだり書いたりすることができる能力を指します。そこからさらに、様々な道具を使って情報を得たり発信したりすることができる能力のことを意味するようになります。
コンピュータ・リテラシー:コンピュータを使って情報を獲得したり発信したりすることができる能力を意味します。現在はコンピュータ・リテラシーを持っていることが当たり前とされ、学校で習得するようになっています。この能力がないと就職活動すらできません。
・リテラシーと学校:学校に行って勉強する目的の一つは、リテラシーを獲得することです。
・「話し言葉」は意図的にトレーニングしなくても身につけることができますが、「書き言葉」は意図的・計画的にトレーニングすることで初めて身につけることができます。
・かつてリテラシーを持っていたのはごく一握りの知的エリートだけで、大半の人々は文字の読み書きができませんでした。
・最初は一部の意欲のある人々だけが学校に行ってリテラシーを獲得していましたが、リテラシーの有用性が広く認識されてくると、次第に全ての人が強制的にリテラシーを持たされるような制度に変わっていきます。

江戸時代の文化

長期間にわたる平和と繁栄によって、学問が独自に発達を遂げていました。
*儒学:中国発祥の学問ですが、徳川家が推奨したのをきっかけとして、江戸時代の日本で独特の発展を遂げます。昌平坂学問所藩校などで教えられていました。基本的には支配者階級のための学問で、主に武士が学んでいました。
*蘭学:日本は外国との交流を避けていましたが、長崎などを通じて入ってくる海外情報を元に、ヨーロッパの学問が研究されていました。
*国学:中国とは異なる日本独自の文化を特に尊重して研究する姿勢が生まれていました。

明治維新と文明開化

・日本は独自に近代化への準備を始めていました。が、決定的な転換点はヨーロッパとの接触に刺激を受けた明治維新(1868年)となります。
文明開化=日本を文明化から遅れた後進国であると自覚し、多くの日本の伝統的な習慣や仕来りを野蛮な習俗として否定し、西洋由来のモノや制度や考え方を崇拝しました。
明治維新≒西欧列強に由来する国民国家システムと市民社会を学習し、模倣しました。教育制度に関しては、明治5年(西暦1872年)の「学制」が重要な出来事になります。

世界史のなかの明治維新

・かつて、ヨーロッパは貧乏な辺境地域に過ぎませんでした。世界の中心は中華帝国とイスラム帝国にありました。
・西暦1500年あたりから逆転が始まります。
・ペリー来航時(1853年)の世界情勢を踏まえて、ヨーロッパの手が及んでいない地域がどれくらい残されているか考えてみよう。

>1828年:オーストラリア全土植民地化
>1840年:アヘン戦争(中華帝国)
>1853年:クリミア戦争(イスラム帝国)
>1857年:インド大反乱(インド亜大陸)
>1882年:エジプト保護国化(アフリカ大陸)
>1890年:フロンティアの消滅(アメリカ大陸)
>19世紀末:東南アジア、タイ以外植民地化

・日本では福沢諭吉が西欧列強の強さの秘密を理解します。『学問ノススメ』『文明論之概略』。
・表面上の物質的繁栄が重要なのではなく、人間に対する根本的な理解や社会制度の仕組みが重要だと気がつきます。

→資本主義
→民主主義
→国民国家

復習

・日本の教育が近代化する前提を押さえておこう。
・「リテラシー」という言葉の意味と、それが教育に対して持つ意義を押さえよう。

予習

・近代ヨーロッパの歴史をふりかえっておこう。