【要約と感想】内山勝利『対話という思想』

【要約】イデア論とか想起説とかいったものは、対話の流れの中から要請されるものであって、固定された学説=ドグマではありません。プラトンを理解するためには、確定された学説を見出そうとするのではなく、対話という形式自体がもつ意味について考る態度が必要です。

【感想】諸々の先行研究を読む前は、イデア論を相対化するという姿勢はとても自然に見えたわけだけど。しかし分厚い研究史を踏まえてみると、手を突っ込むと火傷必至の恐ろしい領域だと認識させられる。そんななかで、本書は対話という形式に着目することで、イデア論を相対化しようと試みている。その試みを説得力あるものに育てるためには、本当にたくさんの細かい手続きを踏まえなくてはならない。後期著作の位置づけや、「書かれたもの」に対するプラトンの評価など、厄介な問題が多い。たいへんだ。

とりあえず私としては、イデア論を相対化したほうが自分にとって都合がいいときには、本書の成果を援用することにしたい。ありがたや。

内山勝利『対話という思想―プラトンの方法叙説』岩波書店、2004年

→参考:研究ノート「プラトンの教育論―善のイデアを見る哲学的対話法」