状況
7月19日、終業式を終えた6年生たちは、ランドセルを背負ったまま近所の公園に集まっていた。
のび太「あ〜あ。また通知表オール1だったよ……。またママに怒られる……」
しずか「でも、のび太さんには、いいところがたくさんあるわ。」
出来杉「そうだよ。テストの点だけが人間の価値を決めるわけじゃない。」
スネ夫「でも現実には、テストの点で進路が決まっちゃうのが日本の教育でしょ? 僕は塾の成績が思うように上がらないから、パパの出身校の私立星陽学院を受験することにしたんだ。」
出木杉「私立の中高一貫校で、海外大学への進学率も高いって評判だね。」
のび太「えっ!スネ夫、別の学校に行くの?」
スネ夫「まあね。」
ジャイアン「寂しくなるぜ。」
スネ夫「(ジャイアンと一緒の学校に行きたくないという本音は言えないけどな)。出木杉くんも中受するんでしょ。」
出来杉「ぼくは饕餮館にチャレンジだ。今年新しくできた公立中高一貫だけど、探究学習に力を入れていて魅力的だ。」
スネ夫「饕餮館って、今年の倍率17倍だったでしょ! やっぱり“いい学校”ってのは、どれだけ入るのが難しいかで決まるんだよね〜。入れたら超勝ち組って感じ!」
出来杉「うん……確かに、そう思われがちなところもあるよね。でもね、教育が“効率”や“成果”で評価されるようになりすぎると、教えることが“商品”みたいになってしまう危険もあるんだ。塾やAIが“できる子”をより早く伸ばすサービスになる一方で、“できない子”や“まわり道する子”が見えなくなってしまう。本当は、学びって一人ひとりの人生にとって大切なプロセスなのに、いつの間にか“競争”とか“選別”が前に出てきてる気がする。それに、昔は地域の人たちが学校とつながって、みんなで子どもを育てるっていう感覚がもっとあった。でも今は、保護者も学校も“サービスの受け手と提供者”みたいになりかけてる気がして……。だからぼくは将来、社会の中で困っている人を支えたり、仕組みを変えたりするような仕事がしたい。まず今は、探究学習で“自分にできること”を見つけたいんだ。」
のび太・スネ夫・ジャイアン「(何を言っているかさっぱり分からないぞ)」
ジャイアン「……将来の仕事か〜。オレはプロ野球選手になるぜ!7年生になったら野球部に入って、バリバリ練習だ!」
スネ夫「でも、来年から部活動は学校でやらなくなるって聞いたよ。地域クラブに移行するんだって。」
ジャイアン「ええっ!? なんでだよ!!?」
しずか「うちのママが言ってた。夏休みに説明会があるらしいよ。私は吹奏楽に入りたかったけど、地域の教室に変わるみたい。」
のび太「部活もなくなるし、通知表はオール1だし……ぼくなんて、なんにも取り柄がないよ……」
しずか「そんなことないわ。私ね、先生になれたら、そういう子のいいところを見つけられる先生になりたいなって思ってるの。」
のび太「へえ……しずかちゃんが先生かあ。宿題忘れても見逃してくれるかなあ。」
しずか「だめよ。」
のび太「ですよね。」
スネ夫「最近は先生になる人減ってるってニュースで見たよ。働き方がきついし、責任も重いって。」
出来杉「やりがいのある大切な仕事であることは間違いないよ。それに文部科学省が発表した『令和の日本型学校教育』では、従来とは異なる新しい教師像を示している。」
スネ夫「でもパパが言ってたけど、“教えるだけ”ならAIで十分って。今や家庭教師ロボットの方が成績も上がるし、効率的なんだって。」
ジャイアン「AIの先生じゃ、キャッチボールができないじゃねえか!」
しずか「そうね。私、発表が苦手だったけど、先生が“声の大きさより、気持ちが大事よ”って励ましてくれたの。本当にうれしかった。」
出来杉「だからこそ、先生って“知識”だけじゃなく“信頼”や“人間性”が大切なんだ。」
のび太「うーん……なんか先生ってカッコイイかも。ぼく、先生目指してみようかな。」
スネ夫「え〜? のび太が先生? すぐ信用失墜行為でニュースになりそうだけどな。」
のび太「シンヨーシッツイコーイ? なにそれ?」
出来杉「( A )」
しずか「子どもたちは先生のこと、ちゃんと見てるものね。」
ジャイアン「オレ、プロ野球選手じゃなかったら……体育の先生になるかもな!」
のび太「(先生かあ。あれ、でもどうやったらなれるんだろう??)」
問題
(1)のび太には先生のなり方が分かっていないようです。どうしたら先生になれるか、説明してあげてください。
(2)のび太とジャイアンは地元の公立義務教育学校に在籍を続ける一方、出来杉とスネ夫はそれぞれ私立・公立中高一貫校を受験します。こうした学校間接続の多様化には、どのような意義と課題があるでしょうか。
(3)スネ夫の家庭は「教えるだけならAIで十分」という教育観のようです。なぜそのような考え方が出てくるのでしょうか? あなたが教師になったとしたら、スネ夫のような子どもとどう向き合いますか?
(4)ジャイアンは「部活動の地域移行」についてよく分かっていないようです。どう説明しますか?
(5)出来杉が語る「令和の日本型学校教育」で示されている新しい教師像について説明してください。
(6)出木杉の空欄(A)のセリフを埋め、のび太に信用失墜行為について教えてあげてください。
(7)のび太には将来のビジョンが見えていないようです。キャリア教育の観点から、アドバイスしてあげてください。
(8) 出来杉は「昔は地域の人たちが学校とつながって、みんなで子どもを育てる感覚があったが、最近はそうしたつながりが弱くなっている」と述べています。現在の学校と地域との関係には、コミュニティ・スクールや地域学校協働活動など、さまざまな取り組みがあります。こうした取り組みについて調べたり授業で学んだことをふまえ、地域と学校はどのような関係であるべきか、あなたの考えを述べてください。