目次
前回のおさらい
・民主主義の教育:哲学編(人格とは何か?)
今回の目標
・近代の代表的な教育思想家の考え方を理解しよう!
・「義務教育」の思想を理解しよう!
・「自由権」とは異なる「社会権」の思想を理解しよう!
近代の教育思想家
・ロック/ルソー/カントが市民社会全体の構想を行った(教育はその中の一部)あと、学校教育分野に特化した専門家たちが活躍します。
ペスタロッチー Johann Heinrich Pestalozzi
・1746年~1827年。スイス出身。
・主著『隠者の夕暮』『シュタンツだより』『ゲルトルートはいかにその子を教えたか』『白鳥の歌』
・キャッチフレーズ:実物教授。直感教授。労作教育。3つのH(Hand、Heart、Head)=知徳体。
名言:「玉座の上にあっても、木の葉の屋根の蔭に住まっても同じ人間だ」=身分に関係なく、普遍的な人間を教育するということです。「生活が陶冶する」
・孤児や貧民の子供の教育を通じて、身分や階級に関わらない人間一般の教育原理を打ち立てました。ルソーが理論だけだったのに対して、ペスタロッチーは実践を通じて教育原理を明らかにしました。
・アメリカを経由したペスタロッチー主義(開発主義教育)は、明治初期に日本でも流行しました。
ヘルバルト Johann Friedrich Herbart
・1776年~1841年。ドイツ出身。
・主著『一般教育学』『ペスタロッチー直感教授のABC』
・キャッチフレーズ:教育学の父。目的としての倫理学、方法としての心理学。
・名言:「教授のない教育などというものの存在を認めないし、逆に、教育のないいかなる教授も認めない」
・四段階教授法。明瞭→連合→系統→方法。
・ペスタロッチーの実物教授を引き継ぎながら、教育学を体系化された学問へと鍛えました。家庭教師による教育ではなく、学校における教師の教授法を理論化しました。
ヘルバルト主義教育学
・ヘルバルトを引き継いで、科学的な教育学を発展させました。
・チラー、ライン。
・五段階教授法。予備→提示→比較→総合→応用。
フレーベル Friedrich Wilhelm August Fröbel
・1782年~1852年。ドイツ出身。
・キーワード:幼稚園の創始者。恩物。
・主著:『人間の教育』
・ペスタロッチーの影響を受け、幼児教育に人生を捧げました。
▼小テスト
義務教育の思想
・近代の教育思想で、教育は本当にすべてうまくいくのでしょうか?
・学校を否定し、個人主義を貫くような、「自由権としての教育」の実態。→現実には貧民の子供が「児童労働」を行っていました。
・「義務教育」とは、誰の誰に対するどのような義務でしょうか?
・「子供が教育を受ける権利」はどのように生まれたのでしょうか?
思考実験:自由の落とし穴
・自由を拡大したとき、得をするのはどういう人たちでしょうか?
・自由を拡大すると、実際には強者と弱者の間の格差が拡大します。
・自由を<実質的に>使いこなすことができるのは金持ちだけです。貧乏人はそもそも自由に<実質的に>手が届きません。形式的に自由が与えられても、まったく意味がありません。
・「自由権としての教育」だけでは、金持ちは十分な教育を受けることができたとしても、貧乏人は教育を受けることができません。教育によって、ますます貧富の格差が広がります。
・貧富の格差=資本家と労働者の階層分化が進行し、児童労働が自然発生します。
社会権としての教育
*社会権:<形式的>に自由が与えられるだけでなく、全ての人が<実質的>に自由を使いこなすことができるように、強者に対してハンデを設け、弱者に対して様々なアドバンテージが与えられます。具体的には、生存権、労働基本権、教育を受ける権利があります。
・たとえば、最低賃金や労働時間の設定、労働組合の結成等により、成人の労働環境が守られ、児童労働の自然発生を抑制することができます。
・工場法制定など、児童労働の撤廃に向けての具体的な動きも必要です。
・誰が責任を持つのでしょうか?←「国家」の積極的な関与が期待されます。
復習
・代表的な教育思想家の考え方を確認しておこう。
予習
・「産業革命」について、おさらいしておこう。