【要約と感想】苫野一徳『勉強するのは何のため?』

【要約】「どうして勉強しなければならないのか?」や「どうして学校に行かなければならないのか?」という疑問に応える本です。子ども向けに、平易な言葉で書いてあります。一方で、著者が専攻する教育哲学の知見がしっかり反映されていて、土台が確かなので、説得力があります。
「どうして勉強しなければならないのか?」の答えは、「自由になるため」です。「どうして学校に行かなければならないのか?」の答えは、「お互いに自由を認め合えるようになるため」です。

【感想】教育哲学の理論書『どのような教育が「よい」教育か』の応用実践編とも言える本で、難しい内容を平易な言葉でしっかり伝えている、とても良い本だ。類書はたくさんあるものの、それら類書と異なっているのは、「学校に行くこと」の意味に対しても真正面から応えようとするところだ。多くの類書では「勉強すること」の意義は説き明かそうとするものの、「学校に行くこと」の意味について真正面から踏み込むことはない。難しいからだ。しかし本書は「勉強すること」の意味と論理内在的に結びつけながら「学校に行くこと」の意味を語る。その答えに納得するかしないかは人によって異なるのかもしれないが、とにもかくにも難しい問題に対して真正面から問いに答えようとする姿勢自体が極めて尊いことは強調したい。
悩んでいる子どもだけでなく、教職を目指す学生たちにも読んでもらいたい本だと思った。

苫野一徳『勉強するのは何のため?―僕らの「答え」のつくり方』日本評論社、2013年