「matsudo2018z」タグアーカイブ

流通経済大学「教育学Ⅰ」(7)

■新松戸キャンパス 6/1(金)
■龍ケ崎キャンパス 6/4(月)

レポート課題

・締め切り:新松戸=7/20(金)、龍ケ崎7/16(月)。授業時間内に回収する。教務課や学務課には提出しないように。この日に来られないことがあらかじめ分かっている場合は、締め切り前に提出するよう工夫すること。
・形式:800字~2000字。手書き可。コンピュータ使用可。B5でもA4でも原稿用紙でもレポート用紙でも可。表紙無用。名前を忘れないように。
・内容:授業で扱ったトピックから興味・関心があるものを自分で選んで、分かったことや考えたこと、調べて深めたことなどを書く。2つ以上を組み合わせても良い。
・注意事項:剽窃が発覚した場合は、不可とする。

*休講と補講に関する特別ルール
・補講に出られなかった者は、その分(3時間)の学習を自分で行ったことを示せば、欠席扱いとはしない。具体的には、レポートの分量を800字増加する。1,600字~2,800字。
*今後もう一度休講の予定がある(新松戸=6/226/8体調不良のため休講、龍ケ崎6/25)。そこに出なかった場合は、2,400字~3,600字。

前回のおさらい

・自給自足(お金をまったく必要としない生活スタイル)から、分業(生きるために絶対にお金が必要な生活スタイル)へと変化した。
・かつては、生活に必要なもの(衣食住)はすべて土地から生み出していた。

働くことと生きること(つづき)

産業革命と階層分化

・自給自足の世界から、分業の世界へ。
・土地利用法の変化。生活(衣食住)のためにあらゆるニーズを土地から生産→換金するために商品価値のある単一作物を生産。
・余談:生活(衣食住)の市場化。「家事」とは何か? 市場化されないものなどあるのか?
・年貢(モノ中心経済)から賃金労働(お金中心経済)への変化。
・エンクロージャー(囲い込み)。農村からの人口流出。労働力しか売るもののない人々(→労働者)の発生。
・労働力を購入するのは、工場。大量の労働力を必要とする産業。急速な都市の形成(たとえばマンチェスターやリバプール)。腐敗選挙区問題。都市スラム問題。浮浪者問題。
・「疎外」。生きることと働くことの距離が離れてしまう。働くことに生きがいを感じられない。
・ヒトとカネとモノの大量移動と流動化=原始蓄積。「二つの国民(資本家と労働者)」の形成。
・産業革命は単に機械を発明しただけではなく、世界の形や人々の生き方を決定的に変える。
・余談:サッカーは貧乏人のスポーツなのか問題。
・産業革命が進行すると、独立自営農民(ジャイアン)がいなくなり、資本家(スネ夫)と労働者(のび太)に分解していく。→階層分化。

モニトリアル・システム

・産業革命で変化した世の中に対応する教育が登場する。安く、早く、大量に教育する。まるで工場のよう。
*ベル・ランカスター法:助教法。大勢の生徒に対する一斉授業方法。教師はまず成績優秀な学生に教え、優秀な学生(モニター・助教)が一般学生に教える。
・「人格の完成」を目指すというよりも、工場労働で必要となる必要最低限のリテラシーとモラルを身につけることを目指す。

働くことと生きることが一体だった頃

・働くこと=生きること=育つこと
・「教育」と「形成」の違い。教育=脳みそに知識をたたき込む。形成=身体にカンとコツをしみこませる。
・「学校」がなかったころの人間形成。徒弟制、丁稚奉公。
・「子供」と「大人」の区別。子供=働かなくていい人、大人=働かなくてはいけない人。かつて大人と子供の間に区別はなかった。大人も子供も生きるために働いていた。
・一人前への憧れ。かつては、子供たちは早く一人前になりたかった。

復習

・産業革命の影響を理解しておこう。
・教育と形成の違いを押さえよう。

予習

・「イニシエーション」と「成人式」について調べておこう。

流通経済大学「教育学Ⅰ」(6)

■新松戸キャンパス 5/25(金)
■龍ケ崎キャンパス 5/28(月)

日大タックル問題を教育的に考える

・タックル問題はあくまでも「教材」であって、問題そのものをh評論するというよりも、それを教育的素材として利用し、具体的な検討を通じて、教育の「本質」に到達しようとするもの。
・仮に百歩譲って「解釈の違い」としても教育する側の責任は極めて重い。教える者と学ぶ者とのディス=コミュニケーション。しっかり教えたつもりの事柄がまったく伝わらず、教えたつもりのないことが身についてしまう。←大人や経験者にとっては当たり前のことが、必ずしも子供や学生にとっては当たり前ではないことを踏まえる必要がある。一般論としての「発達段階」に対する理解と、個別的な「児童理解」が重要になる。
・ディス=コミュニケーションの構造を考えるときに、「正式なカリキュラム/隠れたカリキュラム」の理論が役に立つ。学ぶ者は「正式なカリキュラム」は学び取らないのに、「隠れたカリキュラム」は強烈に学び取る。教えた方としては「教えたはずだ」とか「そう受けとられるのは不本意」と思うかもしれないが、完全に力量が不足していたことを自覚しなければならない。
・ディス=コミュニケーションを避けるためには、「対話」が重要になる。対話のための窓口が開かれていて、コミュニケーションの回路が繋がっているときには、お互いの真意や理解度を相互に確認し、調整することが可能となる。対話が閉ざされているとき、予想しなかったことが起こる。
・そもそも、何が一番大事なのかを分かっているのかどうか、不安になる。人生にとって大事なものの優先順位の付け方が決定的に間違っているのではないかという恐れ。

前回のおさらい

・義務教育。
・メインカルチャーとサブカルチャー。
・教育の3類型。

働くことと生きること

・「働く」ということの意味が、いま分かりにくくなっている。働くことが「金を稼ぐこと」とほぼ同じ意味になっているが、それで大丈夫か?
・何のために働くのか?→生きるため。
・生きるために、どうしてお金が必要なのか?
・お金がなくても生きる方法はいくらでもある←自給自足。
自給自足:生活に必要なものは、全部自分(家族)で調達する。他人の仕事にまったく頼らない。だから、生きるために「お金」はまったく必要がない。
衣食住:生活する上での基本。かつては、すべて自分(家族)で調達していた。
・生活に足りないものを補うために「交換」が行われ、交換のための道具として「貨幣」が使われることはあった。が、補助的なものであって、生活の全体が貨幣でまかなわれることはなかった。
・ところが、自給自足体制が決定的に崩れる。→分業。何をするにもお金が必要な世の中。生きるために、何よりもお金を必要とする世の中。

産業革命と階層分化

産業革命:ワットの蒸気機関やアークライトの紡績機などの発明。製造業が決定的に重要になった転換点。
・自給自足の世界から、分業の世界へ。
・土地利用法の変化。生活(衣食住)のためにあらゆるニーズを土地から生産→換金するために商品価値のある単一作物を生産。
・余談:生活(衣食住)の市場化。「家事」とは何か? 市場化されないものなどあるのか?
・年貢(モノ中心経済)から賃金労働(お金中心経済)への変化。
・エンクロージャー(囲い込み)。農村からの人口流出。労働力しか売るもののない人々(→労働者)の発生。
・労働力を購入するのは、工場。大量の労働力を必要とする産業。急速な都市の形成(たとえばマンチェスターやリバプール)。腐敗選挙区問題。都市スラム問題。浮浪者問題。
・ヒトとカネとモノの大量移動と流動化=原始蓄積。「二つの国民(資本家と労働者)」の形成。
・産業革命が進行すると、独立自営農民がいなくなり、資本家と労働者に分解していく。→階層分化。

復習

・自給自足の世の中と分業体制の世の中がどのように異なるかを押さえておこう。

予習

・自給自足の世の中の教育と、分業体制の世の中の教育がどう違うか、考えておこう。

流通経済大学「教育学Ⅰ」(補講1)

■新松戸キャンパス 5/16(水)
■龍ケ崎キャンパス 5/17(木)

教育って何ですか? 東洋古代篇

・私たちが考える「教育」は実はつい最近になってから始まったものであって、昔はまったく違う営みが行われていた。

・そもそも「育」とは何を意味している漢字なのか。
・そもそも「教」とは何を意味している漢字なのか。

※「教」と「育」という漢字が持つイメージが、大きく離れていることに注意しよう。そもそも「教」と「育」がつながって「教育」と呼ばれる言葉は、江戸時代までは一般的に使われるものではなかった。(例外=『孟子』)。「教育」という言葉は、明治時代になってから、educationの翻訳語として普及することになる。
→孔子の思想:儒教・『論語』

教育って何ですか? 西洋古代篇

・教育とは、先生から生徒に「知識」を授けるものではない。
・ソクラテスの思想:無知の知産婆術汝みずからを知れ
※無知の知:「知らない」ということを知っている。
※産婆術:対話相手の内部に眠っている知恵を出産させる技術。
※汝みずからを知れ:いちばん重要な知恵とは、自分自身に対する知恵。
→教育とは、自覚していない知恵や才能を引き出す技術である。

参考文献

プラトン『ソクラテスの弁明・クリトン』
ソクラテスが処刑されことになる裁判と刑務所での様子を描いている。ソクラテスの活動の本質的な意味を知ることができる。

プラトン『国家』
古代ギリシアに熟成された教育思想が記されている。ただ、ソクラテスの活動そのものと一致しているかどうかには慎重な判断が必要。

流通経済大学「教育学Ⅰ」(5)

■新松戸キャンパス 5/18(金)
■龍ケ崎キャンパス 5/14(月)

前回のおさらい

・自由の落とし穴。自由が拡大すると、格差が拡大する。強いものはますます強くなり、弱いものはますます弱くなる。
・労働力売買の仕組み。労働力は売るよりも買う方が得をするが、労働力を買うことができるのは「生産手段」を持っている者だけ。失業者が存在する限り、必ず労働力の値段は下がり続ける。

社会権と義務教育

・自由を拡大すると格差が拡大するだけだということを理解すれば、格差の拡大を防ぐためには自由を制限すればいいことに気がつく。

社会権

社会権:形式的に自由が与えられるだけでなく、全ての人が実質的に自由を使いこなすことができるように、強者に対してハンデを設け、弱者に対して様々なアドバンテージが与えられる。具体的には、生存権、労働基本権、教育を受ける権利。
・たとえば、最低賃金や労働時間の設定、労働組合の結成等により、労働力の価格が低下することを抑えられる。
・誰が責任を持つのか?←「国家」の積極的な関与。

義務教育

教育を受ける権利:すべての子どもには「教育を受ける権利」がある。
・もともと教育とは贅沢なものであって、経済的時間的にゆとりがある者しか享受できないものだった。たとえば「学校=school」という言葉はもともと「暇」という意味だった。労働している者=奴隷には教育を受けることなど不可能だった。
・教育を受けた者はますます強くなり、教育を受けられなかった者はますます弱くなる。自由によって格差が拡大していく。
←どんな弱い者であっても教育が受けられるようにしなければならない。全ての人間に「教育を受ける権利」が保障されなければならない。
義務教育:保護者(およびそれを援助する国家や自治体)が子供に教育を受けさせる義務。子供の義務ではないことに注意。子供が持っているのはあくまでも「権利」であって、義務を課せられているわけではない。

教育内容=教材と文化財

・しかし、多くの子供たちには「権利としての教育」に対する実感がない。教育はむりやり受けさせられているものだと思っている。「権利としての教育」への実感をまったく欠いている問題。
←子供たちが勘違いしているというよりも、実際に与えられている教育が、とてもじゃないが「権利としての教育」とは思えないものだから。
教育内容:子供たちが教育で身につけるべき知識や技術の本質。学ぶ対象。
教材:子供たちが教育内容を身につけるべく、実際に学校で教えられる材料。学ぶ手段。
教科書:学ぶ人にも教える人にも使いやすいように、手際よく効果的に教材を並べたもの。学ぶ手段の手段。
・教科書に取りあげられているのは、ひとつの例にすぎない。「例」を身につけても何の意味もない。重要なのは、教科書に載っているような例を通じて「物事の本質」を理解すること。
←最悪なのは、「教科書を教える」こと。手段の手段を教えるのでは、何をしたいのかわからない。本来は「教科書教える」のではなく「教科書教える」でなければならない。

文化財の選択基準

文化財:人類が作り上げた様々な文物のうちで、特に後の世代に引き継いで伝えていくべきだと考えられる価値のあるもの。学校で子供たちに教えられるべき教育内容と重なるところが多い。
メインカルチャー:主要文化。上位文化。後の世代に末永く伝えられるべき重要な文化。美術館や博物館に展示されたり、教材として取りあげられたりする。
サブカルチャー:副次文化。下位文化。後の世代に伝えられなくてもまったく困らないであろう文化。美術館や博物館に展示されることなく、教材として取りあげられることもない。

・子供が意義を感じるのはことごとくサブカルチャーであって、メインカルチャーの方には関心を示さない。
・が、学校で教えられるのはメインカルチャー。
←子供は放っておいても勝手にサブカルチャーを学び取るが、メインカルチャーは強制しなければ学び取らない。

・支配層(資本家)にとって価値があるのはメインカルチャーであって、自営業や労働者にとって価値があるのはサブカルチャー。
・支配層が支配を続けていくためには、メインカルチャーがいつまでも価値がある方が都合が良い。学校で教えられるのは、常にメインカルチャー。メインカルチャーに親和性が高い人々(支配層)は、学校で教えられる文化財に馴染んでおり、簡単に習得することができる。しかしメインカルチャーに親和性が低い人々(労働者)は、学校で教えられる文化財に馴染みがなく、修得するためのハードルが高い。

階級的観点による教育の3類型

(1)支配層による支配層のための教育=メインカルチャーの伝達。公式のカリキュラム。
(2)支配層に都合が良い労働者の教育=従順で優秀な労働者の形成。隠れたカリキュラム。
(3)労働者による労働者のための教育=?

復習

・社会権と義務教育の論理について押さえておこう。
・文化財の選択基準について理解を深めておこう。

予習

・「働く」ことと「生きる」ことの関係について考えておこう。

流通経済大学「教育学Ⅰ」(4)

■新松戸キャンパス 5/4(金)
■龍ケ崎キャンパス 5/7(月)

前回のおさらい

・隠れたカリキュラム。
・メリトクラシーと学歴主義。

自由はいいものか?

思考実験:自由の落とし穴

・自由を拡大したとき、得をするのはどういう人たちか?
・強者と弱者の間の格差拡大。
・自由を<実質的に>使いこなすことができるのは金持ちだけ。貧乏人はそもそも自由に<実質的に>手が届かない。形式的に自由を与えるだけでは、意味がないかもしれない。
・「自由」は、金持ちには十分な恩恵を与えるが、貧乏人にはあまり意味がない。自由を拡大することによってますます貧富の格差が広がる。
・貧富の格差=資本家(働かずにお金持ちになる人)と労働者(働いても貧乏になる人)への階層分化。働いている人たちの中での格差拡大と考えると実態を見失うことに注意。

労働力の売買

・「働く」とは、経済学的にはどういうことか?
*労働力:「働く」と言うのではなく、「労働力を売る」と言う。「雇う」と言うのではなく、「労働力を買う」と言う。
・労働力の再生産は、家庭で行われる。
・労働力をモノのように売買できるようにしたことで、市場原理によって必要なところに迅速に労働力が供給され、資本主義の発展が加速する。(奴隷労働のままでは労働力の流動化が促進されず、資本主義の発展は加速しない。)

労働力売買の仕組み

思考実験:働いたら負け

・働いていない人ほどお金儲けができる?
・ワーキングプア:働けば働くほど貧乏になる?
・労働力は、売るよりも買う方が得?
・労働力を買うには、生産手段(土地や工場)がなければならない。
・生産手段+原材料+労働力→商品
・モノの価格は市場原理(競争)によって決まる→労働力の価格も市場原理(競争)によって決まる。
・失業者問題。失業者が存在する以上、労働力を売る側が競争すれば、必ず労働力の値段は下がる。
・努力すればするほど悪循環に陥るのはなぜか。←競争する相手を間違えている。本当に戦うべき相手を見失って、のび太同士で競争してしまうから、おかしなことになる。努力の方向を間違っているから、努力すればするほど自分の首を絞めることになる。
・もはや形式的な自由を拡大するだけでは対処不可能。努力の問題ではない。

復習

・自由が拡大すると格差も拡大する理屈について押さえておこう。
・労働力が売買されるメカニズムについて理解しておこう。

予習

・義務教育の意味について考えておこう。