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教育学Ⅱ-4

■新松戸キャンパス 10/12(金)
■龍ケ崎キャンパス 10/22(月)

前回のおさらい

・ナショナリズムを維持するために、教育に期待がかかります。
・具体的には、国旗・国歌・国語・歴史・地理などの「隠れたカリキュラム」によって、知らず知らずにうちに「わたしは○○人」という自覚を生み出します。
・各国の国家:国民を統合する力があると同時に、取り残されてしまう人々も生み出します。

日本のナショナリズム

・明治維新(1868年):身分制社会から国民国家へ転換しました。
・文明開化:日本の伝統文化をことごとく否定し、外来文化を崇拝するムーブメントです。鹿鳴館時代とも言われたりします。
・学制(1872年):フランスの真似をした教育制度です。教育内容も西洋の翻訳にとどまります。
福沢諭吉:『学問のすすめ』など、学制の基本的な考え方に影響を与えています。
・日本の日本らしさとは何でしょうか?→天皇の再発見。

日本の祝祭日の由来について考えてみよう。

・日本の祝祭日には、必ず連休になるものと、火曜日や水曜日ならそのままになるものと、2種類に分けられます。どうしてこのような違いがあるのでしょうか?

教育勅語

・1891年渙発、1948年失効確認(衆議院、参議院)。
元田永孚(もとだながざね)と井上毅(いのうえこわし)が中心となって作成します。儒学主義と近代主義がミックスされた内容になっています。

教育勅語の構造

・3つのパートに分けると、理解しやすくなります。
・教育勅語には「いいことも書かれている」とか「普遍的なことも書かれている」と主張する人々は、第二パートにしか注目していません。しかし、もし単に「いいことも書かれている」だけで良いとしたら、聖書でもコーランでも論語でも良くなってしまいます。なぜ、聖書でもコーランでも論語でもなく「教育勅語」である必要があったのでしょうか。
・「日本人」という自己意識の形成にとって決定的に重要なのは、第一パートと第三パートです。第一パートの理解を抜きにして第二パートを語ることはできませんし、語る意味がありません。
・第一パートを理解するためには、日本神話(とくに天孫降臨)に対する知識が不可欠です。
・第二パートの徳目は、「儒教」の伝統的徳目に近代主義を混ぜたものです。
・教育勅語を中心とした教育体制が構築されます。修身、国語、歴史、地理との関係。
・しかしそもそも、教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのでしょうか?

日本近代と戦争

・日本が外国とどれくらい戦争したか、考えてみよう。
・日本の歴史全体を考えたときに、近代の戦争の特徴について考えてみよう。

ナショナリズムの力と問題

・身分制秩序を破壊して、国民を平等に向かわせる力を持っています。
・異質な集団を一つにまとめる力があり、戦争に強くなります。
・一方で、異質なものを排除しながら「純粋」さを追求していく傾向を強めます。
・排除したものを「敵」として固定し、憎しみを増幅させる作用があります。
・巨大な力と、コントロールの難しさを、併せ持っています。

復習

・「教育勅語」の構造について押さえておこう。

予習

・「高度経済成長」について調べておこう。

教育学Ⅱ-3

■新松戸キャンパス 10/5(金)
■龍ケ崎キャンパス 10/15(月)

フランス革命と国民国家形成

・フランス革命の具体的展開。反革命からヨーロッパ全体を巻き込んだ戦乱へ。
・対仏大同盟v.s.ナポレオン。フランス大勝利。どうしてフランスは強かったのでしょうか?
・騎士+傭兵v.s.国民軍。国家総動員体制。
・名誉と金v.s.愛国心。「散兵戦術」のような戦い方。
・身分制v.s.自由と平等。ベートーベン交響曲第3番「英雄」。
・中世国家よりも国民国家のほうが強いことが誰の目にも明らかとなります。国民国家の強さの源はなんでしょう?
・ナショナリズムは、愛国心の根拠であると同時に、自由と平等の根拠ともなります。
・フランスのナショナリズムはヨーロッパ全土へ輸出され、各地域でナショナリズムが勃興します。
・その後、教育によってナショナリズムが創出、維持されます。

国旗・国歌・国語・歴史・地理

・ナショナリズムを維持するため、「教育」に期待がかかります。
・国旗:「旗」に期待される統一への働き。
・国歌:「歌」に期待される統一への働き。
・国語:「ことば」に期待される統一への働き。
・歴史:「物語」に期待される統一への働き。
・地理:「風景」「風土」に期待される統一への働き。

各国の国歌

・それぞれ国民統合の象徴として働く一方で、同時に何かしらの問題を抱えているのはどういうことでしょうか?

フランスの国歌

・「ラ・マルセイエーズ」
・国民統合=国民全員で祖国を守ったときの記憶。
・歌詞に対する疑問。

イングランドの国歌

・「God Save the Queen」
・国民統合=英国王室の賛歌。
・6番の歌詞に対する疑問。イングランドとスコットランドの関係。

ドイツの国歌

・「ドイツ国民の歌」
・国民統合=国家統合の象徴。
・1番と2番が封印。

スペインの国歌

・「国王行進曲」
・歌詞のない国歌。スペインとカタルーニャの関係。

復習

・国歌が国民統合に果たす役割について押さえておこう。

予習

・「教育勅語」について調べておこう。

教育学Ⅱ-2

■新松戸キャンパス 9/28(金)
■龍ケ崎キャンパス 10/8(月)

ナショナリズム

ナショナリズム:国家の構成員が「私は○○人である」という自覚を持っている状態。
・どうして私たちは、日本が勝つと(たとえばスポーツやノーベル賞など)嬉しくなるのでしょうか。会ったこともなければ話したこともない赤の他人が受賞したとしても、なぜ誇りに思えるのでしょうか。→「同じ日本人だから」。
・しかし、同じ血液型や同じ身長や同じ足のサイズの人が受賞したとしても、特に嬉しいとは思いません。「同じ日本人」と「同じ血液型」との違いは何でしょうか?

前近代:封建国家の自己認識(日本)

・たとえば江戸時代、日本人の多くは「私は日本人である」という自覚を持っていなかったし、持つ必要もありませんでした。
←身分制社会では、自己認識は身分に依拠していました。たとえば「私は侍である」とか「私は農民である」など。そうでなければ、身分制を基礎とした社会秩序が保てません。「侍と農民で身分が違おうが、同じ日本人だ」とはならないし、なってはいけないわけです。
←あるいは幕藩体制においては、自己認識は主従関係に依拠し、日本という単位は視野に入ってきませんでした。たとえば「私は赤穂藩士である」とか「私の殿様は吉良だ」などとなります。主従関係が強固に結ばれることによって、社会秩序が保たれました。「主人が異なっていようが、同じ日本人だ」とはならないし、なってはいけないわけです。
・このように、前近代=封建国家においては、身分地域によって自己認識が分裂していました。
・逆に言えば、身分制が廃止され、地域間格差がなくならないと、「同じ○○人である」と思える条件ができません。
・国家の構成員が「私は日本人である」という自覚を強烈に持つ条件が整うのは、身分制が廃止(四民平等)され、中央集権国家(廃藩置県)ができる近代以降のことになります。
・明治維新によって日本に誕生したのが、国民国家(nation-state)です。

前近代の自己認識(ヨーロッパ)

・中世は、国家というよりも、家が拡大したものとしての国「家」でした。
←百年戦争(1337年~1453年)の推移を参考のこと。現代の国家間同士での戦争とはかなり様相が異なっています。
・具体的には、ブルボン家やハプスブルグ家など領邦君主による封建制。「家政学(Oikonomicos)」とは、もともとこのような「国-家」を運営するための学でした。もともと「家政」を行っていたのは「家長=男性」です。
・絶対王政(貴族の没落によって王権に主権が一極集中する)を経て封建制が崩れ、市民革命(国民に主権が集中する)に伴って国民国家が完成します。典型例は、フランス革命(1789年)です。

国民国家と教育

*「国家」を英語に翻訳すると?
(1)country:国土。田舎。ふるさと。
(2)state:一定の領土を有し政治的に組織され主権を有するもの。法律的・理念的な意味での統一体としての国家。
(3)nation:共通の文化言語などを有する国民が作る国家。

国民国家

・stateとnationは同じものでしょうか? 韓国、スイス、中国等の例を考えてみましょう。
→韓国:state=2、nation=1
→スイス:state=22、nation=4
→中国:state=1、nation=56
・日本はどうでしょうか?
国民国家:nation(国家の文化的側面)とstate(国家の政治的側面)が一致している状態です。
民族自決:一つのnation(民族)はそれぞれ一つのstate(政治的に組織された主権)を持つべきという考えです。
・nationとstateを一致させるには、どうしたらよいでしょうか? たとえば1つのstateの中に3つのnationがあったら→
(1)3つのnationそれぞれに対応する新しいstateを作る=分離独立
(2)3つのnationを1つのnationに統合してstateに合わせる=国民統合
・どうやって?←教育で。

復習

・封建国家と国民国家の違いを押さえておこう。それを踏まえて、具体的に江戸時代と明治時代の違いを説明できるようにしよう。
・nationとstateの違いについて押さえておこう。

予習

・フランス革命の推移をおさらいしておこう。
・国歌の働きについて考えてみよう。

教育学Ⅱ-1

■新松戸キャンパス 9/21(金)
■龍ケ崎キャンパス 9/24(月)

単位について

・試験は行わず、レポートで成績を決定する。
・レポート提出期限は学期最後の授業時間内とする。(新松戸1/18、龍ケ崎1/21予定)
・レポートの形式および内容については、11月中に指示する。
・出席数が足りていない者については、レポート提出を認めない。
・レポートに関して、コピペが発見された場合は、カンニングと同じ扱いとする。

出席について

・出席確認は「出席調査システムC-learning」で行う。
・スマホを忘れた、電池が切れた、電波が届かない等の理由でC-learningが使用できなかった場合は、必ずその日のうちに申し出ること。いかなる理由があろうと後日の申し出は認めない。
・事由ある欠席の場合は、必ず公式な文書を作成して提出すること。
・公式文書の作成が認められない場合(就職活動等)による欠席も、やむを得ない理由がある場合は必ず書面で報告すること。
・遅刻は出席と認めない。
・出席に関して不正が確認された場合は、どれだけ出席していようと単位は認められない。

予習復習について

・大学設置基準によれば、1回90分の授業につき3時間の予習復習が要求されている。
・本講義も、予習と復習を前提として構成される。本講義の内容が理解できないとしたら、予習と復習が足りていない可能性が高い。
・予習と復習の具体的な指示、参考文献等の提示については、このサイトで行う。

質問について

・非常勤講師なので、授業日以外には出校しない。
・質問がある場合は、時間がある限り授業後に対応する。
・込み入った質問の場合は、回答をこのサイトに掲載することで対応する。

半年間の予定

・具体的にはシラバスを参照のこと。
・本講義は主に2つのトピックを扱う。一つは「ナショナリズム」、一つは「ゆとり教育」を予定している。
・「ナショナリズム」とは、国家が人々の意識をどのように規定するかという問題である。現代の教育を考えるとき、国家は非常に大きな存在である。
・「ゆとり教育」は、一般的に失敗したと思われている節がある。しかしそれが本当に何を目指していたのかは理解されていない。臨時教育審議会以降の教育改革の流れを確認することで、「ゆとり教育」に関して間違ったイメージを取り除く。

予習

・「国家」と「教育」の関係について考えておくこと。