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教職基礎論(栄養)-3

短大栄養科 4/28

前回のおさらい

・公務員の服務義務は法律で決められています。
・公務員は憲法を遵守し尊重する義務があります。
・法律と憲法は、果たすべき役割が異なっています。
・地方公務員法には8つの服務義務が規定されており、3つの職務上の義務と5つの身分上の義務があります。
・さらに教職公務員特例法に教員の義務が規定されています。

教員免許状

・教師になるには、まず教員免許状を取得しなければなりません。
開放性の原理:教師養成専門施設ではなく、一般の大学で教師を養成します。というのは、戦前の師範学校で行われていた師範教育と違って、教員の資質として一般教養(リベラル・アーツ)が重要だと考えられているからです。
・師範学校:かつて存在していた、教員養成専門の機関です。

・教員免許状には、3種類あります。
(1)普通免許状:学位および教職課程の履修における単位の修得により授与されます。専修免許状(修士)、一種免許状(学士)、二種免許状(短大)の3種類があります。
(2)特別免許状:優れた知識経験を持つ社会人を学校現場に迎えるために授与される免許状です。
(3)臨時免許状:普通免許状を有する者を採用できない場合、例外的に授与される助教諭の免許状です。

教員免許更新制:教員免許には10年の有効期限があります。更新するためには免許状更新講習(30時間以上)を受講・修了しなければいけません。

*細かいことは教育職員免許法教育職員免許法施行規則を参照してください。

教職課程

普通免許状を取得するために、(1)教科に関する科目、(2)教職に関する科目、(3)教科又は教職に関する科目、(4)教育職員免許法施行規則第66条の6に関する科目を、法律の規定通りに修得しなければなりません。

(1)教科に関する科目:教師になったときに教える学問領域の内容に関わって、専門の知識や技能を修得します。
(2)教職に関する科目:教科指導の方法や生徒指導、学級経営、進路指導、道徳教育など、「教育者」としての専門的知識や技能を修得します。
(3)教科又は教職に関する科目:多様な教師を確保するために、科目を選択できるようになっています。
(4)66条科目:日本国憲法、体育、外国語コミュニケーション、情報機器の操作。

教育実習・栄養教育実習

・教職に関する科目の必修単位です。
・事前指導、事後指導(1単位)があります。
・学校での実習(栄養教諭=1週間、中学校=3週間)があります。

○指導教諭等からの説明
・学校経営、校務分掌の理解、服務等
○児童及び生徒への個別的な相談、指導の実習
・指導、相談の場の参観、補助等
○児童及び生徒への教科・特別活動等における指導の実習
・学級活動及び給食の時間における指導の参観、補助
・教科等における教科担任等と連携した指導の参観、補助
・給食放送指導、配膳指導、後片付け指導の参観、補助
・児童生徒集会、委員会活動、クラブ活動における指導の参観、補助
・指導計画案、指導案の立案作成、教材研究等
○食に関する指導の連携・調整の実習
・校内における連携・調整(学級担任、研究授業の企画立案、校内研修等)の参観、補助
・家庭・地域との連携・調整の参観、補助等

教員採用試験

・公立学校の教員採用選考試験は、各都道府県および政令指定都市の教育委員会がそれぞれ実施しています。
・試験内容は、教育委員会ごとに異なります。
・主に、筆記試験(一般教養・教職教養・専門教養)、面接試験(集団・個人)、模擬授業、論文試験、実技試験などがあります。
・特別選考枠があります。
・近年は、「人物重視」の傾向にあります。
・正規採用の他に、臨時採用というものがあります。

・国立大学付属学校や私立学校は、各学校・法人単位で採用が行われています。
*興味がある人は「私学教員適性検査」について確認しておいて下さい。

教員採用試験の勉強の仕方

・各自治体の試験の特徴を知るために、過去問の収集と分析を行いましょう。
・自分の資質と個性について自覚しましょう。
・目指す教師像、なりたい教師像、志望動機を明確に言語化しましょう。
・個性と志望動機にマッチした勉強法を考えましょう。

復習

・教師のなりかたを踏まえて、自分のキャリアについて見通しを立てよう。

予習

・教師の仕事の内容について、どういうことをするのか、自分の学校での経験を振り返って考えてみよう。

教職基礎論(栄養)-2

短大栄養科 4/21

前回のおさらい

・日本の公教育にとって最も大事な法律は「教育基本法」です。
・教育基本法第1条には、教育の目的が規定してあります。
・教育基本法第9条には、教員の義務や責任、立場について規定してあります。

教員の服務義務

公立学校の教員は「公務員」です。「公務員」の服務義務は法律で規定されています。

服務の根本を押さえよう
(日本国憲法 第15条)
1.公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2.すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
【服務の根本基準】(地方公務員法30条)
すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

「全体の奉仕者」とはどういうことでしょうか?

・全国民の利益のために奉仕する者のことです。特定の集団や特定の個人の利益のために奉仕するのは「全体の奉仕者」のすることではありません。

地方公務員法に定める3つの職務上の義務

・教員の服務義務については、地方公務員法30条以降、8つの服務義務が規定されています。8つの服務義務は、3つの職務上の義務と、5つの身分上の義務に分かれています。

【服務の宣誓】(地方公務員法31条)
職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。

【法令等上司の職務上の命令に従う義務】(地方公務員法32条)
職員は、その職務を遂行するに当って、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、かつ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

【職務に専念する義務】(地方公務員法35条)
職員は、法律又は条令に特別の定めがある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

服務の宣誓の内容とは?

・公務員として職員の服務義務に従うことを「住民」に対し宣言するものです。
・憲法の尊重、擁護及び公務の民主的かつ能率的運営に資するための全体の奉仕者として誠実かつ公正な職務の執行を誓うものです。
*そもそも憲法とはどういうものでしょうか? たとえば法律とはどこがどのように違っているのでしょうか?
*「立憲主義」や「法治主義」という言葉の意味について確認しよう。

地方公務員法に定める5つの身分上の義務

【信用失墜行為の禁止】(地方公務員法33条)
職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

信用失墜行為とは、具体的にどのような行為でしょうか?

  • 交通事故、飲酒運転、飲酒運転幇助など道路交通法違反
  • 窃盗、万引きなど刑法犯
  • わいせつ行為、ハラスメント行為
  • 体罰
  • 情報漏洩、個人情報流出
  • 不正経理、公金横領、着服、リベート収受、贈収賄

【秘密を守る義務】(地方公務員法34条)
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。

【政治的行為の制限】(地方公務員法36条)
職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、もしくはこれらの団体の役員となってはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。

【争議行為の禁止】(地方公務員法37条)
職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、または地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人もこのような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。

【営利企業等の従事制限】(地方公務員法38条)
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

教育公務員特例法に定める服務規程

・地方公務員法の他、「教育公務員特例法」という法律によって服務義務が定められています。たくさんの種類の公務員(役所の職員や警察官など)のうち、特に教員だけが守らなければならない内容を定めています。教員が「教育の専門家」であるということがポイントになります。

【兼職及び他の事業等の従事】(教育公務員特例法17条)
教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。

【公立学校の教育公務員の政治的行為の制限】(教育公務員特例法18条)
公立学校の教育公務員の政治的行為の制限については、当分の間、地方公務員法第36条の規定にかかわらず、国家公務員の例による。

【研修】(教育公務員特例法21条)
教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に勤めなければならない。

【研修の機会】(教育公務員特例法22条)
教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
3 教育公務員は、任命権者の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。

【初任者研修】(教育公務員特例法23条)
公立の小学校等の教諭等の任命権者は、当該教諭等に対して、その採用の日から一年間の教諭又は保育教諭の職務の遂行に必要な事項に関する実践的な研修を実施しなければならない。

【十年経験者研修】(教育公務員特例法24条)
公立の小学校等の教諭等の任命権者は、当該教諭等に対して、その在職期間が十年に達した後相当の期間内に、個々の能力、適性等に応じて、教諭等としての資質の向上を図るために必要な事項に関する研修を実施しなければならない。

復習

・「公務員」とは何か、整理しておこう。
・「憲法」がどういう性質の文章か、「立憲主義」や「法治主義」という言葉と一緒に理解しているか確認しよう。
・「地方公務員法」と「教育公務員特例法」の内容を整理して、服務義務について理解しておこう。

予習

・教員免許状にはどういう種類があるか、調べてみよう。

教職基礎論(栄養)-1

短大栄養科 4/14

半年間の予定

・本講義は教員免許(栄養教諭・中学家庭科)取得に関わる授業であり、特に「教職の意義」に関わる領域を扱います。
・「教育基本法」や「地方公務員法」および「教育公務員特例法」、「地教行法」など、法令に規定された教職の地位や身分、義務について理解してもらいます。
・「教員に求められる資質・能力」について、背景となる教育課題とともに理解を深め、「教職の専門性」に対する自覚を持ってもらいます。
・「学校」という組織と職務分掌について理解してもらいます。

・学期末にテストを行います。スマートフォンや電子辞書等も含めて、あらゆるものが持ち込み可です。
・課題を2~3回出します。

教えるという職業の基本

教育基本法の核心を押さえる

・「教育基本法」には、日本の教育が目指す根本的な理念が示されています。
・教育基本法第1条によれば、日本の教育の目的は「人格の完成」です。
・「人格の完成」とはどういう状態でしょうか?
・そもそも「人格」とは何でしょうか?
・「教育基本法」(第9条)が「教師」をどのような役割を果たすべき人間と考えているか、確認しましょう。→「修養」に励むことと「研修」の充実が大切だと書かれています。

「教師」に必要な資質・能力を把握する

・教師に必要な資質・能力を考えるためには、まず「どのような人間を社会に送り出すべきと、学校は期待されているのか?」を理解する必要があります。
・学校に対する期待を理解するためには、「いまはどのような社会か?」を理解する必要があります。

・いま、社会は急激に変化しつつあります。具体的には、(1)グローバル化(2)情報化(3)少子高齢化が大きな課題です。
・学校や教師には、高度化・複雑化する課題へ対応することが期待されています。
・教師に期待される資質・能力には、大きく分けて「不易」と「流行」という区別があります。
・不易とは:時代や地域によって変わらないものです。たとえば、熱意や使命感、教育的愛情が挙げられます。
・流行とは:時代によって変わるものです。たとえば情報通信技術への対応、グローバル化への対応等が挙げられます。

・このような現状と課題を踏まえて、文部科学省は教員に求められる資質能力を3つの領域に整理しました。
(1)教職に対する使命感や責任感、教育的愛情
(2)専門職としての高度な知識・技能:教科や教職に関する高度な専門的知識+新たな学びを展開できる実践的指導力+教科指導、生徒指導、学級経営等を的確に実践できる力。
(3)総合的な人間力:豊かな人間性や社会性+コミュニケーション力+同僚とチームで対応する力+地域や社会の多様な組織等と連携・協働できる力。
・教職を目指す人には、この3つの領域に関わる力を身につけることが期待されています。

・まとめて、文部科学省は「学び続ける教師像」というモデルを強く打ち出しました。

復習

・「教育基本法」を熟読吟味しよう。特に第1条と第9条について、何が書いてあるのか理解しよう。
・「教師」に必要な資質・能力を確認して、どうして「学び続ける教師像」というキャッチフレーズが登場してきたのか、理解しよう。

予習

・「立憲主義」や「法治主義」という言葉の意味を調べて、「公務員」の立場について予備知識を持とう。

参考サイト

現状と課題。(文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会配付資料「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について(審議の最終まとめ(案))):2012年