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教育概論Ⅱ(中高)-4

▼語学・心カ・教福・服美・表現 10/7
▼栄養・環教 10/10

前回のおさらい

・フランス革命の展開。ナショナリズムの強さの理由。
・各国の国歌。国民統合と、問題。
・国語と国民統合。

国語による国民統合(つづき)

・言葉は単なるコミュニケーション・ツールではなく、国家のアイデンティティとなる。
・しかし、言葉はコミュニケーション・ツールでもある。科学や社会に必要なボキャブラリー。

日本語廃止論

・森有礼(もりありのり)が明治初期に日本語廃止を主張。
・どうして後に初代文部大臣にまでなる森が日本語廃止を主張したのか?
・明治初頭に日本語が置かれていた状況。方言(身分と地域)が多様で、言葉が通じなかった。また、科学や社会に関する語彙が貧弱だった。

方言矯正と標準語

・第一期国定国語教科書:1904年、いわゆる「イエスシ読本」。
・東北方言と関東方言の矯正。
・方言札。
・「標準語」の開発。「お父さん」「お母さん」。
・新しい日本語を作っていくのは、文学者の役割。

日本のナショナリズム

・明治維新(1868年):身分制社会から近代国民国家へ。
・板垣退助が見た戊辰戦争。サムライとノーミンの意識の落差。すべての国民に「主人公」意識を持ってもらうための自由民権運動。
・文明開化:日本の伝統文化をことごとく否定し、外来文化を崇拝する。鹿鳴館時代。
・学制(1872年):フランスの真似をした学校制度。教育内容も西洋の翻訳。
・福沢諭吉:『学問のすすめ』と学制。立身出世主義、国民皆学、実学主義、受益者負担。
・日本の日本らしさとは何か?→天皇の再発見。

日本の祝祭日の由来について考えてみよう。

・日本の祝祭日には、必ず連休になるものと、火曜日や水曜日ならそのままになるものと、2種類に分けられる。どうしてこのような違いがあるのか?

復習

・国語が国民統合に果たす役割について押さえよう。
・日本のナショナリズムの特質について考えておこう。

予習

・「教育基本法」の意義について、考えよう。

教育概論Ⅱ(中高)-3

▼語学・心カ・教福・服美・表現 9/30
▼栄養・環教 10/3

前回のおさらい

・country、state、nation。国民国家。
・中世国家と近代国家の違い。

フランス革命と国民国家形成

・フランス革命の具体的展開。ヨーロッパ全体を巻き込んだ戦乱へ。
・対仏大同盟v.s.ナポレオン。フランス大勝利。どうしてフランスは強かったのか?
・騎士+傭兵v.s.国民軍。国家総動員体制。
・名誉と金v.s.愛国心。「散兵戦術」のような戦い方。
・身分制v.s.自由と平等。ベートーベン交響曲第3番「英雄」。
・中世国家よりも国民国家のほうが強いことが誰の目にも明らか。国民国家の強さの源は?
・ナショナリズムは、愛国心の根拠であると同時に、自由と平等の根拠ともなる。
・ナショナリズムのヨーロッパ全土への輸出。各地域でナショナリズム勃興。ナポレオン戦争の終焉。
・教育によるナショナリズム創出。

国旗・国歌・国語・歴史・地理

・nationとstateを一致させるため、「教育」に期待がかかる。
・国旗:「旗」に期待される統一への働き。
・国歌:「歌」に期待される統一への働き。
・国語:「ことば」に期待される統一への働き。
・歴史:「物語」に期待される統一への働き。
・地理:「風景」に期待される統一への働き。

各国の国歌

・それぞれ国民統合の象徴として働く一方で、同時に何かしらの問題を抱えているのはどういうことか?

フランスの国歌

・「ラ・マルセイエーズ」
・国民統合=国民全員で祖国を守ったときの記憶。
・歌詞に対する疑問。

イングランドの国歌

・「God Save the Queen」
・国民統合=英国王室の賛歌。
・6番の歌詞に対する疑問。イングランドとスコットランドの関係。

ドイツの国歌

・「ドイツ国民の歌」
・国民統合=国家統合の象徴。
・1番と2番が封印。

スペインの国歌

・「国王行進曲」
・歌詞のない国歌。スペインとカタルーニャの関係。

国語による国民統合

・フランスの言語状況。フランス革命当時、フランス人が話していたのは何語か?
・「国語」と「方言」の違い。
・「方言札」による方言撲滅運動。
・『最後の授業』に見る、アルザス地方の言語。フランス語とドイツ語。
・東ティモール:2002年にインドネシアから独立。

東ティモールが実際に国語に選んだのは何語でしょうか?(ヒント:インドネシアから独立)
(1)インドネシア語:90%
(2)テトゥン語:40%
(3)英語:10%
(4)ポルトガル語:5%

・言葉は単なるコミュニケーション・ツールではなく、国家のアイデンティティとなる。
・しかし、言葉はコミュニケーション・ツールでもある。科学や社会に必要なボキャブラリー。

 

復習

・フランス革命を踏まえ、国民国家の形成について押さえておこう。
・国歌や国語が国民統合に果たす役割について押さえておこう。

予習

・「教育勅語」について調べよう。

教育概論Ⅱ(中高)-2

▼語学・心カ・教福・服美・表現 9/23
▼栄養・環教 9/26

前回のおさらい

・近代から現代への変化に応じて教育の形も変わらざるをえない。

ナショナリズム

*ナショナリズム:国家の構成員が「私は○○人である」という自覚を持っている状態。
・どうして私たちは、日本が勝つと(たとえばスポーツやノーベル賞など)嬉しくなるのか。会ったこともなければ話したこともない赤の他人が受賞したとしても、なぜ誇りに思えるのか。→「同じ日本人だから」という理由以外にはない。
・しかし、同じ血液型や同じ身長や同じ足のサイズの人が受賞したとしても、特に嬉しいとは思わない。「同じ日本人」と「同じ血液型」との違いは何か?

前近代:封建国家の自己認識(日本)

・たとえば江戸時代、日本人の多くは「私は日本人である」という自覚を持っていなかったし、持つ必要はなかった。
←身分制社会では、自己認識は身分に依拠していた。たとえば「私は侍である」とか「私は農民である」など。そうでなければ、身分制を基礎とした社会秩序が保てない。「侍と農民で身分が違おうが、同じ日本人ではないか」とはならないし、なってはいけない。
←あるいは幕藩体制においては、自己認識は主従関係に依拠し、日本という単位は視野に入ってこなかった。たとえば「私は赤穂藩士である」とか「私の殿様は吉良だ」など。主従関係が強固に結ばれることによって、社会秩序が保たれた。「主人が異なっていようが、同じ日本人ではないか」とはならないし、なってはいけない。
・このように、前近代=封建国家においては、身分地域によって自己認識が分裂していた。
・逆に言えば、身分制が廃止され、地域間格差がなくならないと、「同じ○○人である」と思える条件ができない。
・国家の構成員が「私は日本人である」という自覚を強烈に持つ条件が整うのは、身分制が廃止(四民平等)され、中央集権国家(廃藩置県)ができる近代以降。
・明治維新によって日本に誕生したのが、国民国家(nation-state)

前近代の自己認識(ヨーロッパ)

・中世は、国家というよりも、国「家」。家が拡大したものとしての国。
←百年戦争(1337年~1453年)の推移。現代の国家間同士での戦争とはかなり様相が異なっている。
・ブルボン家やハプスブルグ家。日本の大名家。封建制。領邦君主。「家政学(Oikonomicos)」とは、もともとこのような「国-家」を運営するための学。もともと「家政」を行っていたのは「家長=男性」。
・絶対王政(貴族の没落によって王権に主権が一極集中する)を経て封建制が崩れ、市民革命(国民に主権が集中する)に伴って国民国家が完成する。典型例としてのフランス革命。

国民国家と教育

*「国家」を英語に翻訳すると?
(1)country:国土。田舎。ふるさと。
(2)state:一定の領土を有し政治的に組織され主権を有するもの。法律的・理念的な意味での統一体としての国家。
(3)nation:共通の文化言語などを有する国民が作る国家。

国民国家

・stateとnationは一致するのか? 韓国、スイス、中国、韓国等の例を考える。
→韓国:state=2、nation=1
→スイス:state=22、nation=4
→中国:state=1、nation=56
・日本はどうか?
国民国家:nation(国家の文化的側面)とstate(国家の政治的側面)が一致している状態。
民族自決:一つのnation(民族)はそれぞれ一つのstate(政治的に組織された主権)を持つべきという考え。
・nationとstateを一致させるには、どうしたらよいか? たとえば1つのstateの中に3つのnationがあったら→(1)3つのnationそれぞれに対応する新しいstateを作る=分離独立、(2)3つのnationを1つのnationに統合してstateに合わせる=国民統合
・どうやって?←教育で。

 

復習

・封建国家と国民国家の違いを押さえておこう。それを踏まえて、具体的に江戸時代と明治時代の違いを説明できるようにしよう。
・nationとstateの違いについて押さえておこう。

予習

・国歌の働きについて考えよう。

教育概論Ⅱ(中高)-1

▼語学・心カ・教福・服美・表現 9/16
▼栄養・環教 9/19

授業の目的と評価

・最終的な目的は、「教育課程」とは何か?を理解すること。
・前半は「ナショナリズム」について考え、国家が教育に果たす役割について理解する。
・評価は、期末テストと提出課題(全2回予定)によって行う。出席が足りていない者には受験を認めない。
・出席は、基本的にmanabaを利用する。スマホが使えない者は、紙媒体等で出席を取るので、授業後すみやかに申し出ること。
・質問は、120周年記念館11階1110室まで。

教育概論Ⅰのおさらいと反省

・様々な近代教育の形。リテラシーの教育、人格形成の教育、義務教育、産業が必要とする教育。
・様々な矛盾が噴出。「近代」から「現代」への変化に伴って、教育に期待される働きや機能も変化する。近代教育は賞味期限切れなのか?
・近代と現代の境界線については様々な議論があるが、ある特定の年代を想定するわけではない。近代という時代の特徴(市民社会・資本主義・世界史等)を踏まえた上で、その有効性が崩れてきている新たな時代を「現代」と捉える。

(1)メディアと教育

・リテラシーの在りようが根本的に変化する。
・ポストマン『子どもはもういない』1985年。子供のような大人、大人のような子供。秘密のないメディア。大人と子供の境界性の崩壊。
・インターネットの急速な展開。コミュニケーション様式の根底からの変貌。「1×1」→「1×n」→「n×n」。タテマエとホンネの境界線の崩壊。
・そもそも教育にとって学校という形は絶対に必要なものなのか?

(2)自己実現のワナ

・「人格の完成」の有り様が根本的に変化する。
・「自由」は本当にすべての人々を幸せにするのか?
・すべてを自分で決めなければいけないことのつらさ。「夢を持つ」ことの難しさ。「やりたいこと」や「なりたい自分」が見つからないとき。
・たとえば「自由に作文を書け」と言われた時の子供たちの困惑。「内面」の強制的な捏造。むりやりに「やりたいこと」や「なりたい自分」を捏造しなければならない圧力。
・肥大化する自己愛と自己顕示欲。リア充アピール。
・承認の欠如。自分探しの旅と自己啓発セミナー。ひきこもり。
・個人主義の限界。そもそも「何が幸せ」なのか、わかっているのか?
・かといって「絆」とか「愛は地球を救う」などという言葉に信頼を置けるか?

(3)権利としての教育?

・義務教育の有り様が根本的に変化する。
・貧困の再生産。権利を保障されない子供たち。
・単なる再配分機関としての学校。偏差値至上主義。権利を権利と思えない子供たち。学校に期待を寄せるどころか、学校によって希望を奪われる。
・学校化する社会。マンガ家養成校、アイドル養成校等。あらゆる専門知識が学校知に分解・再編成され、パッケージ化され、商品化・市場化される。学校に行けば(金を払えば)必要な知識が手に入る。
・教育は市場化されたサービス(消費財)の一種に過ぎないのか?→「教育と市場」に関わる問題は、教育学Ⅱで詳述。

(4)労働と教育

・産業構造が根本的に変化する。
・分業体制によって、「働く」ということの意味が拡散。生活することと働くことの乖離=疎外。生活することが「消費すること=お金を使うこと」と同じ意味になってしまうと、働くことは生きることではなく単に「お金を稼ぐこと」になる。
・生活の全体性(生きる意味)を取り戻すことはできるか?
・AI(人工知能)への恐怖と期待。仕事を奪われるのか、それとも人間が働くことの意味を取り戻すのか?
・人間だからこそやれることとは、何か?

(5)国家と教育

・国家が教育に果たす役割が大きく変化する。
・内的事項と外的事項の区別は実際に成立しているか?
・個人の人格形成と国家が求める人材養成との関係。
・国家の教育への関与の実際→学習指導要領、教科書検定。

復習

・近代になって成立した「教育」の形を総合的に捉えよう。
・近代教育が崩れかけて様々な問題が生じていることを認識し、これからの教育の姿を構想してみよう。

予習

・「国家」とは何か、「国家が教育に果たすべき役割」とは何かについて、考えておこう。