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教育概論Ⅱ(中高)-9

▼語学・心カ・教福・服美・表現 11/25
▼栄養・環教 11/14

前回のおさらい

・学習指導要領の改訂、1977年、1989年。
・ゆとり教育の開始。個性を育成する教育。
・臨時教育審議会。自由化、民営化、規制緩和、構造改革。
・競争原理の導入による個性化と質の向上。

学習指導要領の改訂(2)つづき

・1998年の学習指導要領改訂。
・「生きる力」の育成。教育内容の厳選、「総合的な学習の時間」の新設。
・いわゆる「ゆとり教育」。学校週五日制=1995年から月2回。2002年から完全実施。
学校週5日制のめざすものは…

学校週5日制は、学校、家庭、地域社会の役割を明確にし、それぞれが協力して豊かな社会体験や自然体験などの様々な活動の機会を子どもたちに提供し、自ら学び自ら考える力や豊かな人間性などの「生きる力」をはぐくむことをねらいとしています。
子どもたちの「生きる力」をはぐくむためには、豊かな体験が不可欠です。自然体験などが豊富な子どもほど、道徳観や正義感が身についているという調査結果も出ています。

・授業時間削減=公的部門の割合を減らし、市場に委ねる割合を増やす。

自由化、民営化、規制緩和、構造改革のデメリット

(1)本当に「個性」の育成につながるのか? 単に「序列化」が進行し格差が拡大するだけではないか?
(2)本当に質が向上するのか? 競争に際して不正を行う者が多いとどうなるか。
(3)教育は「サービス」なのか?

学力格差の拡大

・いわゆる「学力低下」の実態。
・授業時間削減:教育の市場化による格差拡大。十分な教育資金で子供を塾にやれる家庭と、アルバイトをしてしまう子供がいる家庭との格差。
・学校選択制:文化資本の差による格差拡大。十分な教育情報を集める文化資本(金・時間・情報・人脈)がある家庭とない家庭の格差。
*春学期に扱った「自由のワナ」。

競争の底抜け

・賞味期限詐欺、耐震偽造詐欺←規制緩和によって未熟なプレイヤーが競争に参加する。
・競争の質。真っ当に努力した者が報われているのか?
・たとえば2011年の大津市いじめ問題。大津市には学校選択制が導入されていたが、いじめは隠蔽された。理屈通りなら学校選択制によっていじめがなくなってもいいのに、現実にそうならなかったのはなぜか?

教育とサービス消費

・教育は本質的に「サービスの消費」ではなく、生徒との共同的な「価値の生産」の過程である。
・学生に人気のある先生は、本当に良い先生か?

学習指導要領の改訂(3)

・2003年、学習指導要領の一部改訂。(ゆとり教育の終わりの始まり)
・2008年、学習指導要領改訂。授業時間増、指導内容の充実。

PISAショック

*PISA:学習到達度調査。Programme for International Student Assessment。高校1年生対象。
*OECD:経済協力開発機構。Organisation for Economic Co-operation and Development
*PISAショック:2003年と2006年の調査で日本の順位が大幅に下がったことに教育関係者一同衝撃を受けたこと。←しかし2009年と2012年の調査では順位が上昇。
*全国学力・学習状況調査:2007年より毎年実施。小6と中3を対象。
・A問題とB問題。

復習

・「ゆとり教育」という見かけの教育問題の下で、本当に進行していた自由化・民営化・規制緩和・構造改革について把握しよう。
・メリットとデメリットについて押さえよう。

予習

・「生きる力」について調べておこう。

教育概論Ⅱ(中高)-8

▼語学・心カ・教福・服美・表現 11/18
▼栄養・環教 11/7

前回のおさらい

・教育基本法体制での教育実践。生活綴方、地域教育計画、コア・カリキュラム。
・学習指導要領の改訂(1958年):逆コース、高度経済成長。
・学習指導要領の改訂(1968年):教育の現代化。ブルーナー『教育の過程』。

学習指導要領の変遷(1)つづき

高度経済成長

・親の権威の低下→教師の権威増大。教育の黄金時代(見かけ上)。
・でもしか先生。
・受験競争の激化。詰め込み教育。
・「ムラを育てる教育」→「ムラを捨てる教育」

学習指導要領の変遷(2)

・1977年と1989年の学習指導要領改訂。
・いわゆる「ゆとり教育」の開始。「個性」の尊重。
*「ゆとり教育」という言葉が意味するものについて、注意しよう。見かけの教育現象ではなく、日本社会で本質的に進行していた自体に目を向けよう。
・1984年の「臨時教育審議会」。

オイルショックと産業構造の転換

・1973年のオイルショック。高度経済成長の終わり。低成長へ。ただし日本だけ早期に復活。Japan as No.1(1979年)からハイテク景気とバブル景気へ。
・重厚長大型産業(石油を莫大に使用する産業、少品種大量生産)から軽薄短小型産業(ロボットとコンピュータ、多品種少量生産)への転換。
・生産主導から消費主導へ=マーケティングと宣伝広告の重要性。
・人材雇用の転換=アウトソーシング。終身雇用から流動的な雇用へ。
・知識観の転換=知識や技術の賞味期限の短縮。暗記型(知識の量)から検索活用型(思考力・判断力・表現力)へ。
・教育観の転換=「まじめ」から「個性」へ。
→1977年の学習指導要領改訂:「ゆとりある充実した学校生活の実現=学習負担の適正化」
→1989年の学習指導要領改訂:新学力観。個性。
・どうしたら「個性」を育てることができるのか?

臨時教育審議会

*中曽根康弘:臨時教育審議会。1984年に総理府に設置。教育改革ブーム。
・中央教育審議会(文部省)と臨時教育審議会(総理府)。内閣が直々に「教育改革」の前面に出てくるとはどういう事態なのか。
・民営化、自由化、規制緩和、構造改革、小さな政府。
・電電公社→NTT(1985年)、専売公社→JT(1985年)、国鉄→JR(1987年)。
・自由化、民営化のメリット=公共部門の縮小による歳出削減。市場原理(競争原理)により、個性が伸張し、サービス全体の質が向上する。
・自由化、民営化のデメリット=後述。
・学校における競争原理=学校選択制。個性の伸張と全体のレベルアップ。「学区制」との違い。
・たとえば、いじめはどうしたらなくなるか? 大学の授業がつまらないとしたら?
→バウチャー制度。私立学校も含めた競争原理。
→学校民営化。すべてを競争原理に委ねる。

聖域なき構造改革

*高校多様化:1990年代~。中高一貫校。総合学科。単位制高等学校。
*小泉純一郎:構造改革特区(2002年)。

・学習指導要領によらない多様なカリキュラム編成(構造改革特区研究開発学校制度)。
・株式会社による学校設置の容認。
・不登校児童生徒等の教育を行うNPO法人で一定の実績等を有するものの学校設置の容認。
・大学設置基準の緩和(校地面積,運動場設置,空地確保の弾力化)。
・教員の特別免許状の授与権者として特区市町村教育委員会も追加。
・インターネットを利用した教育を行う大学・大学院についての各種施設基準の弾力化。
・「公私協力学校」の設置。
・学校施設の管理及び整備に関する権限を教育委員会から地方公共団体の長への移譲。

→小学校1年生から英語の授業を実施。
→小中一貫、9年間を4・3・2に区切って教育課程を実施。
→「市民科」や「情報科」を新設。
→小中高12年一貫教育で、授業を全部英語で行う。(構造改革特区第1号)

復習

・いわゆる「ゆとり教育」に関して、実際には臨時教育審議会(1984)による規制緩和と構造改革が進行していた事実を認識しておこう。
・1977年と1989年の学習指導要領改訂の背景について押さえておこう。

予習

・民営化のデメリットについて考えておこう。

教育概論Ⅱ(中高)-7

▼語学・心カ・教福・服美・表現 11/11
▼栄養・環教 10/31

前回のおさらい

・教育基本法体制
・学校教育法。教育委員会法。学習指導要領(試案)。

教育基本法体制(つづき)

生活綴方(せいかつつづりかた)

*無着成恭『山びこ学校』。1948年、山形県山元中学校。1951年、クラス文集を『山びこ学校』として刊行。
*綴方:いわゆる作文。

地域教育計画、コア・カリキュラム

*川口プラン:海後宗臣
*コア・カリキュラム:梅根悟、ジョン・デューイ

学習指導要領の変遷(1)

・1958年と1968年に学習指導要領改訂。
・いわゆるゆとり教育から詰め込み教育へと変化。

逆コース

・冷戦体制と東アジア情勢の変化によって、GHQの方針が転回。中国(1949年)と朝鮮半島(1950年)の情勢。
サンフランシスコ平和条約(1951年)。
池田ロバートソン会談(1953年)
・教育二法(1954年)。「教育公務員特例法の一部を改正する法律」と「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」。
・地方教育行政の組織及び運営に関する法律(1956年)。教育委員選出を公選制から首長による任命制に転換。
・学習指導要領改訂(1958年)。法的拘束力あり。特設道徳の登場。
*スプートニクショック:1957年、ソ連の人工衛星スプートニク打ち上げ成功。
*教育の現代化:ブルーナー『教育の過程』。発見学習。「どの教科でも、知的性格をそのままに保って、発達のどの段階の子供にも効果的に教えることができる。」→1968年の学習指導要領改訂。

高度経済成長

・1955年~1973年にかけての経済成長。1964年=東京オリンピック、1970年=大阪万博。
・生活の急激な変化。三種の神器(白黒テレビ、電気冷蔵庫、電気洗濯機)
・大卒初任給の急激な増加。貧乏→豊か。
・産業構造の転換。農業→工業。3チャン農業。出稼ぎ。
・進学率の上昇(高校:50%→90%、大学:10%→30%)。半分しか高校進学できなかった時代から、ほとんど高校進学する時代へ。
・親の権威の低下(親が子供に教えてやれることは何もない)→教師の権威増大(高校進学・大学進学の実態について知っているのは教師だけ)。
・教育に関して親が頼れるのは学校と教師しかない。学校と教育の黄金時代(見かけ上)。
・でもしか先生。教師に「でも」なるか。教師に「しか」なれない。
・受験競争の激化。詰め込み教育。
・親が子供にかける期待。マンガの事例。
・「ムラを育てる教育」→「ムラを捨てる教育」

復習

・冷戦構造と高度経済成長によって教育が大きく変化する理屈を把握しておこう。

予習

・オイルショックと「臨時教育審議会」について調べておこう。

 

教育概論Ⅱ(中高)-6

▼語学・心カ・教福・服美・表現 10/21
▼栄養・環教 10/24

前回のおさらい

・教育勅語の内容と働き。
・ナショナリズムの力と問題。

教育基本法体制

・1947年法律第25号。日本国憲法と密接に関係。(2006年改訂)
・日本国憲法が国作りの「理念」を表現しているとすれば、教育基本法は具体化への「方法」を示す。
・「教育勅語」と正反対の理念。

教育勅語の失効

・1948年。衆議院と参議院での決議。何が問題だったのか?
・「主権在君」と「神話的国体観」。

主権在民と基本的人権

*主権在民:国民ひとりひとりが「主人公」であるという政治体制。人間は誰か別の存在のために使われる「脇役」ではない。
*基本的人権:ひとりひとりが自分の人生の主人公となって生きることができるためには、これだけはどうしても必要になるという最低限の権利。幸福権や職業選択の自由や財産の自由や身体の自由などなど。

学校教育法

・1947年法律第26号。いわゆる「6・3・3制」
・複線制(フォーク型)から単線制へ。
・女性の地位の変化。
・教員養成の変化。師範学校から開放制へ。

教育委員会法

・1948年。公選制教育委員会。
・教育基本法第10条。「不当な支配」とは何か?
・政治と教育の分離。

学習指導要領(1947年版)

・「学習指導要領(試案)」。「試案」とはどういうことか。
・法的拘束力なし。
・道徳科なし。
・社会科の新設。「主人公」として生きるためには、基本的人権だけでは不十分。ガイドブックも必要。
・家庭科の男女共修。

逆コース

・冷戦体制と東アジア情勢の変化によって、GHQの方針が転回。中国(1949年)と朝鮮半島(1950年)の情勢。
サンフランシスコ平和条約(1951年)。
池田ロバートソン会談(1953年)
・教育二法(1954年)。「教育公務員特例法の一部を改正する法律」と「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」。
・地方教育行政の組織及び運営に関する法律(1956年)。教育委員選出を公選制から首長による任命制に転換。
・学習指導要領改訂(1958年)。法的拘束力あり。特設道徳の登場。

復習

・教育基本法体制の仕組みについて押さえよう。

予習

・「逆コース」という言葉について調べよう。
・高度経済成長について調べておこう。

教育概論Ⅱ(中高)-5

▼語学・心カ・教福・服美・表現 10/14
▼栄養・環教 10/17

前回のおさらい

・日本語廃止論。方言矯正と標準語。
・日本のナショナリズムの特質→天皇の再発見。

日本のナショナリズム(つづき)

教育勅語

・1891年渙発、1948年失効確認(衆議院、参議院)。
・元田永孚と井上毅。儒学主義と近代主義のミックス。

日本近代と戦争

・日本が外国とどれくらい戦争したか、考えてみよう。
・日本の歴史全体を考えたときに、近代の戦争の特徴について考えてみよう。

教育勅語の構造

・段落が3つに分かれている。
・教育勅語には「いいことも書かれている」と主張する人々は、第二段落しか見ていない。しかし、単に「いいことも書かれている」だけで良いとしたら、聖書でもコーランでも論語でもいいはず。なぜ、聖書でもコーランでも論語でもなく「教育勅語」である必要があったのか。
・「日本人」という自己意識の形成にとって重要なのは、第一段落と第三段落。第一段落の理解を抜きにして、第二段落を語ることはできないし、語る意味がない。
・日本神話。天孫降臨。
・第二段落の徳目の全体構成。
・教育勅語を中心とした教育体制の構築。修身、国語、歴史、地理との関係。
・教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのか?

ナショナリズムの力と問題

・身分制秩序を破壊して、国民を平等に向かわせる力。
・異質な集団を一つにまとめる力。戦争の強さ。
・一方で、異質なものを排除しながら「純粋」さを追求していく傾向。
・排除したものを「敵」として固定し、憎しみを増幅させる作用。
・巨大な力と、コントロールの難しさ。

復習

・「教育勅語」の構造について押さえておこう。
・教育基本法と教育勅語の違いについて押さえておこう。

予習

・「冷戦」について調べておこう。

課題

・締め切り:語学・心カ・教福・服美・表現=11/4(土)、栄養・環教=11/7(火)
・形式:800字程度。手書きOK、コンピュータOK。用紙サイズなど、日本語で読めれば何でも可。
・内容「2017年3月に出た新しい『中学校学習指導要領』の特徴について具体的に調べ、これからの教育が具体的にどのように変わるか考えよう。」:ヒント=「開かれた教育課程」「カリキュラム・マネジメント」「家庭・地域との連携」「主体的・対話的で深い学び」
・『中学校学習指導要領』のpdfファイル。