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教育概論Ⅰ(栄養)-9

▼短大栄養科 6/13

前回のおさらい

・自由の罠。「働いたら負け」になってしまうメカニズム。
・社会権としての教育。全ての子どもが教育を受ける権利を持つ。子どもの学習権。
・コンドルセとロバート・オーエン。

産業革命と階層分化

・産業革命が進行すると、独立自営農民がいなくなり、資本家と労働者に分解していく。
・自給自足の世界から、分業の世界へ。
・土地利用法の変化。生活(衣食住)のためにあらゆるニーズを生産→換金するために商品価値のある単一作物を生産。
・余談:生活(衣食住)の市場化。「家事」とは何か?
・年貢(モノ中心経済)から賃金労働(お金中心経済)への変化。
・エンクロージャー(囲い込み)。農村からの人口流出。労働力しか売るもののない人々の発生。
・大量の労働力を必要とする産業。急速な都市の形成(たとえばマンチェスターやリバプール)。腐敗選挙区問題。都市スラム問題。浮浪者問題。
・ヒトとカネとモノの大量移動と流動化=原始蓄積。「二つの国民(資本家と労働者)」の形成。階層分化。

分業と個性

・分業によって生産性が格段に上がる。アダム・スミス。
・分業が促進されるほど、個性が意味を持つ。社会に人材を送り出すとき、それぞれの特性に応じた持ち場に就けることができれば、社会全体の効率が上がる。適材適所。
・この場合の「個性」とは? 「人格の完成」に関わる「個性」なのか?
メリトクラシー:身分や血筋の高い者が社会を統治する体制を否定する。出自に関係なく個人の持っている能力によって地位が決まり、能力の高い個人が社会を統治する。
学歴主義:学校の勉強に高い適応能力を示した個人が、きっと社会一般でも高い能力を発揮するだろうと期待する態度。しかし、学校の勉強に高い適応能力を示す個人が、一般社会で高い適応能力を示すとは限らないということは、広く気がつかれている。それにも関わらず、どうして学歴主義が説得力を持つのか?→「隠れたカリキュラム」及び「文化的再生産」参照。

モニトリアル・システム

ベル・ランカスター法:助教法。大勢の生徒に対する一斉授業方法。教師はまず成績優秀な学生に教え、優秀な学生(モニター・助教)が一般学生に教える。
・「人格の完成」を目指すというよりも、工場労働で必要となる必要最低限のリテラシーとモラルを身につけることを目指す。

隠れたカリキュラム

・カリキュラム:教育目的を達成するために、文化財から選ばれ、教育意図を持って計画的に配列された、教育内容。
・正式のカリキュラム:学校や教師が教えていると公式に表明されている教育内容。学生や保護者や世間にとって、学生が学校で身につけることを期待している学習内容。
隠れたカリキュラム:教師は教えていると思っていないし、保護者や世間も学校でそれを教えているとは思っていないにもかかわらず、いつのまにか学生たちが身につけている暗黙の内容。
・知識や考え方、行動様式が、意図されないまま、いつのまにか教えられている。
・学校で身につける意識と行動様式=労働者として必要な意識と行動様式。(他に性別役割分業に関する意識等)

文化的再生産

・学歴の高い親の子どもの学歴も高くなりやすいのはなぜか?
・遺伝=生物的再生産か、環境=文化的再生産か?

近代教育のさまざまな相

(1)リテラシーの教育:自分自身の能力や可能性を開発するために必要となる知識や技術を身につける。伝統的な世界で生きていくためには必ずしも必要ではないが、世界が大きく変化するときには身につけないと死んでしまうような基本能力となる。文字の読み書き能力や、コンピュータを使う能力など。
(2)民主主義の教育:民主主義社会の構成員にふさわしい、自由で平等な個人として人格を完成する。市民権を行使する(契約行為の主体となることができる)ために必要な知識や教養を身につける。(自由権としての教育)
(3)義務教育:全ての子どもが自律した個人となれるよう、国家の援助によって平等な教育機会を保障する。(社会権としての教育)
(4)産業革命の教育:経済的な成長を支える優秀な労働者を供給するために、低予算かつ大量に人材を養成する。その一方で、分業体制に対応し、産業界が必要とする多様な人材を供給するため、特性と長所を見極めた育成と配分を行う。それぞれのステータスに応じた科学教育を伴う。

復習

・産業革命に伴って生じた教育の変化について、「メリトクラシー」などの言葉と一緒に押さえておこう。

予習

・教育における「国家」の役割を考えてみよう。「自由権としての教育」では、国家は目立たなければ目立たないほど良かった。しかし「社会権としての教育」では、国家は積極的な役割補果たすことが期待された。国家は活躍するべきか、しないべきか?

教育概論Ⅰ(栄養)-8

▼短大栄養科 6/6

前回のおさらい

・近代の教育思想:ペスタロッチー、ヘルバルト、フレーベル。
*ドラえもん構造で考えてみよう。
→リテラシー:自分のための教育
→民主主義:新しい時代に相応しい人間を作る教育。

義務教育の思想

・「義務教育」とは、誰の誰に対するどのような義務か?
・「子供が教育を受ける権利」はどこから生まれたか?
・「自由権としての教育」だけでは問題が発生する。

思考実験:自由の落とし穴

・自由を拡大したとき、得をするのはどういう人たちか?
・強者と弱者の間の格差拡大。
・自由を<実質的に>使いこなすことができるのは金持ちだけ。貧乏人はそもそも自由に<実質的に>手が届かない。形式的に自由を与えるだけでは、意味がないかもしれない。
・「自由権としての教育」だけでは、金持ちは十分な教育を受けることができたとしても、貧乏人は教育を受けることができない。教育によって、ますます貧富の格差が広がる。
・独立自営農民の解体。資本家と労働者への階層分化。

労働力の売買

・「働く」とは、経済学的にはどういうことか?
*労働力:「働く」と言うのではなく、「労働力を売る」と言う。「雇う」と言うのではなく、「労働力を買う」と言う。
・労働力の再生産は、家庭で行われる。
・労働力をモノのように売買できるようにしたことで、市場原理によって必要なところに迅速に労働力が供給され、資本主義の展開が加速する。(奴隷労働のままでは労働力の流動化が促進されず、資本主義は加速しない。)

思考実験:働いたら負け

・働いていない人ほどお金儲けができる?
・ワーキングプア:働けば働くほど貧乏になる?
・労働力は、売るよりも買う方が得?
・労働力を買うには、生産手段(土地や工場)がなければならない。
・生産手段+原材料+労働力→商品
・モノの価格は市場原理(競争)によって決まる→労働力の価格も市場原理(競争)によって決まる。
・失業者問題。
・努力すればするほど悪循環に陥るのはなぜか。←競争する相手を間違えている。
・最も安いのは、子供の労働力。→児童労働の発生。
・児童労働を防ぐにはどうしたらよいか???←誰もが自由で平等だったからこそ児童労働が発生してしまったのであって、もはや形式的な自由権では対処不可能。

社会権としての教育

*社会権:形式的に自由が与えられるだけでなく、全ての人が実質的に自由を使いこなすことができるように、強者に対してハンデを設け、弱者に対して様々なアドバンテージが与えられる。生存権、労働基本権、教育を受ける権利。
・たとえば、最低賃金や労働時間の設定、労働組合の結成等により、成人の労働環境が守られ、児童労働の自然発生を抑制することができる。
・児童労働の撤廃に向けての具体的な動き。
・誰が責任を持つのか?←「国家」の積極的な関与。

コンドルセ marquis de Condorcet

・1743年~1794年、フランス出身。
・愛称:公教育の父
(1)子供の学習権。
(2)教育費無償。
(3)ライシテ:政治的中立や宗教的中立。

ロバート・オーエン Robert Owen

・1771年~1858年、イギリス出身。
・キーワード:性格形成学院
・工場法の展開

1802年徒弟の健康と道徳に関する法律制定。
1819年繊維工場では9歳以下の労働禁止。16歳以下は1日12時間以内に制限。
1833年12時間労働。9歳未満の労働禁止。13歳未満は週48時間。
1844年女性労働者の労働時間制限。
1847年若年労働者の労働時間を1日10時間に制限。
1870年教育法制定。公費による学校設立。

復習

・自由が拡大すると格差も拡大する理屈について押さえておこう。
・「社会権」の意義について押さえておこう。
・「義務教育」が成立する過程について、理論と実践の両面から押さえておこう。

予習

・労働と教育の関係について考えてみよう。

教育概論Ⅰ(栄養)-7

▼短大栄養科 5/30(火)

前回のおさらい

・憲法の存在意義。
・近代の教育思想。エラスムス。コメニウス。ロック。ルソー。

近代の教育思想(つづき)

ペスタロッチー Johann Heinrich Pestalozzi

・1746年~1827年。スイス出身。
・主著『隠者の夕暮』『シュタンツだより』『ゲルトルートはいかにその子を教えたか』『白鳥の歌』
・キャッチフレーズ:実物教授。直感教授。労作教育。3つのH(Hand、Heart、Head)=知徳体。
名言:「王座の上にあっても、木の葉の屋根の蔭に住まっても同じ人間だ」「生活が陶冶する」
・孤児や貧民の子供の教育を通じて、身分や階級に関わらない人間一般の教育原理を打ち立てた。ルソーが理論だけだったのに対して、ペスタロッチーは実践を通じて教育原理を明らかにした。
・アメリカを経由したペスタロッチー主義(開発主義教育)は、明治初期に日本でも流行した。

伊沢修二

・1851年~1917年。長野県出身。
・アメリカに留学して教育学を学んだ後、日本で開発主義を広めた。
・主著『教育学』。
・音楽教育や体操の普及、植民地での国語教育などにも深く関わった。

高嶺秀夫

・1854年~1910年。福島県出身。
・アメリカに留学して教育学を学んだ後、日本で開発主義を広めた。
・主著『教育新論』。ジョホノット教育学の翻訳。
・高等師範学校の校長として、開発主義の普及に貢献した。

ヘルバルト Johann Friedrich Herbart

・1776年~1841年。ドイツ出身。
・主著『一般教育学』『ペスタロッチー直感教授のABC』
・キャッチフレーズ:教育学の父。目的としての倫理学、方法としての心理学。段階教授法。
・名言:「教授のない教育などというものの存在を認めないし、逆に、教育のないいかなる教授も認めない」
・ペスタロッチーの実物教授を引き継ぎながら、教育学を体系化された学問へと鍛えた。家庭教師による教育ではなく、学校における教師の教授法を理論化した。

ヘルバルト主義教育学

・ヘルバルトを引き継いで、科学的な教育学を発展させた。
・チラー、ライン。
五段階教授法。予備→提示→比較→総合→応用。
・中心統合法。宗教(道徳)を中心としたカリキュラム(スコープ)構成の原理。
・開化史的段階。カリキュラム配列(シークエンス)の原理。

谷本富

・1867年~1946年。香川県出身。
・主著『実用教育学及教授法』『科学的教育学講義』
・ヘルバルト主義を日本人にわかりやすく改変し、流行をさせた。後にヘルバルト主義を捨てて、新教育にコミットした。

フレーベル Friedrich Wilhelm August Fröbel

・1782年~1852年。ドイツ出身。
・キーワード:幼稚園の創始者。恩物
・主著:『人間の教育
・ペスタロッチーの影響を受け、幼児教育に人生を捧げた。

倉橋惣三

・1882年~1955年。静岡県出身。
・形式化した幼児教育を批判し、子供の個性と自発性を重んじた幼児教育の発展に尽くした。
・「自ら育つものを育たせようとする心、それが育ての心である。世の中にこんな楽しい心があろうか」

復習

・時代背景を考慮しながら、各教育思想を押さえよう。

予習

・義務教育とは何か、その導入経緯について考えておこう。

 

教育概論Ⅰ(栄養)-6

▼短大栄養科 5/23(火)

前回のおさらい

・ヨーロッパが強くなった理由。個人主義+民主主義。
・市民革命と、その理論としての社会契約論。ホッブズ→ロック→ルソー。
・新しい社会(契約によって結ばれる世の中)を作るためには、新しい人間(独立した自由で平等な個人)を作る教育が必要。
・普遍的な人間を作るための教育=人格の完成

※自然発生的に広まった教育(日本の江戸時代や印刷術発明後のヨーロッパ)と、普遍的な人間を作るための教育(市民革命後のヨーロッパ)の違いを考えてみよう。教育を受ける人や、教育の内容や、教育への国家の関与などが、どのように異なるだろうか?

憲法と「教育の自由」

思考実験:憲法がないとどうなるか?

・もしも多数決だけで世の中がきまるどうなるか?
・「多数の専制」とは何か。
・誰がリーダーになったとしても「これだけは絶対にやってはいけない」という、リーダーの暴走を防ぐ禁じ手をあらかじめ定めておく必要がある。
・憲法の原理=一般意志 人間性に関する普遍的な原則から導き出すことができるような、合理的かつ普遍的なルール。

基本的人権

基本的人権:誰がリーダーになったとしても、絶対に人々から奪うことができない生まれながらの権利。→社会契約論で議論された、自然状態の人間が持っていた自由。
自由権:国家からの自由。国家が侵害することができない、個人が持つ権利。

教育の自由。自由権としての教育

・自分の子供をどのように教育するかは、国家から関与されることではない。←信仰の自由 どのような思想信条を持つかについて、国家が個人に命令することはできない。
・この場合の教育とは、知識を注入したり偏差値を上げるような教育ではなく、または特定の職業を目指すような教育ではなく、普遍的な人間を作るための「人格の完成」を目指す教育。
・Instruction=専門教育とEducation=普通教育の違い。

近代の教育思想

・特定の職業や身分のための人間形成を超えるような、普遍的な人間を作ることを目指す教育思想は、近代から始まる。

エラスムス Desiderius Erasmus Roterodamus

・ルネサンス、人文主義。
・1466年~1536年。ネーデルラント出身。
・主著『痴愚神礼讃
・体罰を否定し、子供の自由と人格を尊重する。
・子供の興味に即した教育。

コメニウス Johannes Amos Comenius

・宗教改革、プロテスタント。
・1592年~1670年。モラヴィア出身。
・主著『大教授学』『世界図絵
・教育学的愛称:近代教授学の父
・キャッチフレーズ:全ての人にに全ての事柄を教授する

ロック John Locke

・市民革命、経験主義。
・1632年~1704年。イングランド出身。
・主著『市民政府論』(政治思想)、『人間悟性論』(認識論)、『教育論』あるいは『教育に関する一考察』(教育思想:翻訳が異なるだけ)
・キャッチフレーズ:紳士教育タブラ・ラサ(白紙説)
・名言:健全なる精神は健全なる身体に宿る
・新しい市民社会を担う紳士(ジェントルマン)を作る。子供期の独自性を認めるというより、理性ある大人になるための教育。習慣形成の重要性。

ルソー Jean-Jacques Rousseau

・市民革命、ロマン主義。
・1712年~1778年。ジュネーヴ出身。
・主著『社会契約論』(政治思想)、『人間不平等起源論』(政治思想)、『エミール』(教育思想)
・キャッチフレーズ:子どもの発見消極教育
・名言:万物を創る者の手を離れるときはすべてよいものであるが、人間の手に移るとすべてが悪くなる
・子供期の独自性を初めて主張する。消極教育とは、書物による早期教育をいましめ、まず自然による教育(たとえば感覚の訓練など)を重視する姿勢。

近代教育思想の特徴

・完成した大人の理想像から教育を組み立てる考え(ロック的なもの)と、純粋な子供の理想像から教育を組み立てる考え(ルソー的なもの)の両側面。子供の誕生=大人の誕生。
・いずれにせよ、あらゆる人間が共通して持つ「理性」に対する全面的な信頼。
・個人を育てる私教育。集団の軽視。

復習

・近代の教育思想家の主張について、単に暗記するのではなく、時代背景を思い浮かべながら、それぞれの考えを味わってみよう。

予習

・ペスタロッチーやヘルバルトという人物について調べよう。

教育概論Ⅰ(栄養)-5

▼短大栄養科 5/16(火)

前回のおさらい

・ヨーロッパが強くなったのは、「人間の欲望」を積極的に肯定したからだった。
・だがしかし、人間の欲望には際限がなく、放置していたら世の中が成り立たなくなってしまう。
・人間の欲望を肯定し、利己的な人間だらけでも世の中が壊れないような仕組みはあるのか? →民主主義
・民主主義とは何かを考えるとき、その成立過程を捉えるために市民革命について見ていく必要がある。

社会契約論

市民革命重要人物政治思想書教育思想書
清教徒革命1642トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』
名誉革命1688ジョン・ロック『市民政府論』『教育論』
アメリカ独立戦争1776トマス・ペイン『コモン・センス』
フランス革命1789ジャン・ジャック・ルソー『社会契約論』『エミール』

・現実に世の中を変えたのは市民革命。市民革命の理論的根拠となったのが、社会契約論
*社会契約論:アプリオリに世の中の存在を前提することが不可能となったとき、「剥き出しの個人」という理想的な状態を仮説的な考察の土台として、個体としての人間の本質から合理的に結論を演繹した、理想的な世の中のありかたを考える政治思想。
・ホッブズ『リヴァイアサン』→ロック『市民政府論』→ルソー『社会契約論』

「社会」とは何か?

*社会:もともと日本語には存在せず、sociaeyやassociationの翻訳語として普及した。ヨーロッパで成熟した個人主義(人間の欲望を積極的に肯定する考え)を土台として組み立てられた世の中。
・「社会」と伝統的な「共同体」の違いとは何か。個人優先か、世の中優先か。
・そもそも、伝統的な共同体理論においては、共同体から独立した「個人」なるものは想定されるべくもなかった。アリストテレスが言うように、「人間はポリス的な動物」であり、ポリス(=政治的共同体)から独立した人間本性は考えられなかった。しかし貨幣経済の進展の末に人間の欲望が解放された結果として、どうしても利己的な人間の姿を人間性の正体として想定せざるを得なくなる。
・逆に言えば、人間の欲望が解放されず、「人間はポリス的な動物」と言って皆が納得するような状況においては、民主主義はそもそも必要とされない。

「契約」とは何か?

・自由で平等な個人同士が合理的な判断を下した結果として成立する合意と約束。自由や平等が損なわれているところでは成立しない。
・西洋社会における「契約」の伝統。
・神と人との契約から、人間同士の契約へ。

ホッブズ『リヴァイアサン』

自然状態においては、人間は自由で平等だった。→自然権
・しかし人間の欲望には制限がなく、放置していたら人々は他人の自然権の根幹(いちばん大事な生命)を侵害してしまう。→万人の万人に対する闘争
・そこで人々は理性的に考えて、自分の生命を守るために、自らの自然権を放棄し、契約を結んで、共通権力を作り上げる。→自然法
・もしも自分の生命を脅かすものがいたら、この共通の巨大権力に懲らしめてもらう。
・自分の生命を保護してもらう代わりに、人々は共通権力が決めたルールには従わなくてはならない。

ロック『市民政府論』

・共通権力(政府)は、単に人々の生命を守るというだけの必要悪に留まるものではなく、積極的に人々の私有財産を保護する義務を持つ。
・所有権の理論的根拠を、身体の所有権と労働に求める。(ただしここでロックの言う労働が、本当に彼自身が働くことかどうかについては注意。実際に肉体労働に従事したのは、彼が私有財産として所有している奴隷たちかもしれないのだ。)
・もしも政府が個々人の生命・自由・財産を侵害するのであれば、もはや政府としての役割を果たしていないのであって、人民には契約を破棄する権利がある。→抵抗権

ルソー『社会契約論』

一般意志:単なる生命の保障や、私有財産の保障は、社会契約の基礎的な理由にはならない。自由な討論の過程を通じて、個々の利害には関係がないような、全ての人々に共通する人間性に照らして妥当する普遍的な法則が引き出される。社会契約は、この一般意志を社会の根本的なルール(公共の福祉)として、普遍的な人間性を最大限に保障することを目指す。
・この一般意志が、単なる多数決とはまったく異なることに注意。多数決で得られる利害調整は、全ての人々に共通する人間性から引き出されているわけではない。そもそも、全ての人間に共通するようなものは、当然一つしかありえないのであって、最初から多数決に諮れるはずがないものである。
・人間が身分制や地域性によってバラバラに分断されていては、全ての人々に共通する普遍的な人間性を抽出することはできない。全ての人間は、自由で平等で独立した「個人」でなければならない。
・単なる欲望の単位としての人間から、共通する人間性を持つ自由で平等な主体としての人間へ。

新しい社会を作るために、まず新しい個人を作る

・「個人」とは、身分や地域の特殊性にはまったく関係がない、普遍的な人間。伝統的共同体から切り離された、剥き出しの人間=自然人。
・新しい社会を作る=新しい「個人」を作る→普遍的な人間のための教育=人格の完成を目的とする教育

復習

・「社会契約論」の理屈を、おさらいしておこう。
・「自由権としての教育」の論理について、確認しておこう。

予習

・ロックとルソーの教育論のあらましを押さえておこう。

課題

・締め切り:2週間 5/30(火)
・形式:800字程度。手書きOK、コンピュータOK。用紙サイズなど、日本語で読めれば何でも可。
・内容「新聞や雑誌などから、現代日本の教育に関わる問題のうち、最も重要だと思うものを選んで、問題の概要を説明し、自分の見解を述べよ。」