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【要約と感想】岡田祥吾『英語学習2.0』

【要約】英語ができるようになるために決定的に重要なのは、自分に最適な学習方法を見つけることです。メタ認知とセルフモニタリングが大切です。学習法を効率化し、永続きする方法を選び、学習効果を実感しながら英語を身につけましょう。

【感想】著者本人はコンサル時代に身につけた「問題解決アプローチ」だと言っているけれども、私が専攻する教育学の文脈では、それを「メタ認知」あるいは「セルフモニタリング」という概念で説明する。目標を定め、自分の性向を分析し、方法を意識的に選択し、その効果を客観的に測定して、方法を微調整する。いわゆるPDCAサイクルを適切に回すためには、自分自身の適性を見極め、方法が最適化されているかを確認する視点が必要となる。それが「メタ認知」であり「セルフモニタリング」だ。それができる人間は、英語に限らず、目標さえ定まれば、自然と伸びていくに決まっているのだった。逆に言えば、力がつかないのは、目標が適切に定まっていないか、メタ認知ができていない可能性が極めて高いことになる。
そんなわけで、本書は本気で英語を身につけたい自発的な大人のための本であって、むりやり学習させられる受け身な学生向けの本ではない。

岡田祥吾『英語学習2.0』角川書店、2019年

【要約と感想】阿原成光・瀧口優一編著『どうする小学校英語―英語ぎらいを出さないために』

【要約】財界主導で小学校に英語教育が導入されますが、お金も出さないし少人数制にもしない無責任のせいで、破綻するに決まっています。もし破綻しないとしたら、現場が無理をして頑張っているだけです。教育行政は本来果すべき役割を放棄しています。
それでも子どもたちが海外の事情を知って平和な世界を目指せるように、現場はいろいろ工夫して教材開発や授業に取り組んでいます。
本当に英語教育を良くしようと思ったら、一学級15人にして、学習指導要領の法的拘束性をなくし、教科書を教師が自由に採択できるようにすべきです。

【感想】まあ、英語教育は小学校から大学まで迷走している。大学入試の英語は、ほんと、どうするつもりなんだろう。このままの体制が続くと、小学校から英語嫌いが大量発生して、ますます日本人は英語コンプレックスをこじらせるだけに終わりそうだ。

10年前の本で、学習指導要領も一つ前のものが対象となっているが、危機的状況はさほど変わらない(というか悪化すらしているか)。小学校への英語教育導入時の混乱が垣間見える歴史史料としても意味がある本なのかもしれない。

阿原成光・瀧口優一編著『どうする小学校英語―英語ぎらいを出さないために』大月書店、2009年

【要約と感想】榎本博明『間違いだらけの早期教育―その「英語」が子どもをダメにする』

【要約】小さい頃から英語をやらせると、かえってバカになります。英会話産業の陰謀に踊らされないようにしましょう。大人になってから英語を習得するのは、簡単です。というか、これから自動翻訳が進化するので、英語を話せるだけの人間は社会で必要なくなります。
本当に大事なのは、母語を大切にして、知力を磨くことです。AI時代に生き残るのは、知力の高い人間です。英語を喋れるだけのバカは、仕事を失います。

【感想】まあ、英語教育に関してはいろいろな意見があるよなあ、という。それこそ森有礼の英語国語化論から議論百出なわけで。
個人的には著者と同じく早期の英語教育には慎重な立場ではあるけれども、本書のようにエビデンス抜きで完全不要だと言い切る度胸もない。本書は、誰かに英語教育について聞かれときに、様々な立場の一つとして「こういう見解もあるよ」と示すための材料としては役に立つという感じか。そういう意味では、とても分かりやすい立場と表現であったようには思う。
まあ、なんにせよ、グローバル化がさらに進展するに決まっている状況で、英語とどう付き合っていくかという課題が消えてなくなることはない。どうなるにせよ、英語に関する話題が教育関係者のメシの種になり続けることは間違いないのであった。いやはや。

榎本博明『間違いだらけの早期教育―その「英語」が子どもをダメにする』青春新書インテリジェンス、2017年

【要約と感想】森山善之『誰にでも分かる英語の教え方―英語教育にコペルニクス的転回を』

【要約】「読み取りカード」という独自のツールを開発して英語教育に取り組んだところ、生徒の成績は伸び、やる気も増進しました。ポイントは英語の語順を自然に身に付けることです。語順が変わっても意味が通じるという日本語の特性をうまく利用しました。

【感想】現場で工夫を重ねて独自にツールを開発した努力が、とても尊い。こういう現場の先生たちのオリジナルの工夫は、もっともっと奨励されてよい。ツール自体の効果はともかく、ツールを独自に開発する努力を重ねて授業に臨む態度と姿勢そのものが、きっと生徒たちに感銘を与えることになる。知恵と時間と愛情がツールとして具体的な形になっているところに、口先だけでは生じない説得力が発生する。私もがんばろう。

森山善之『誰にでも分かる英語の教え方―英語教育にコペルニクス的転回を』近代文藝社、2010年

【要約と感想】木塚雅貴編著『小・中連携を「英語」ではじめよう!―「小学校英語」必修化へ向けて―』

【要約】小・中連携を成功させる鍵は、「育てたい子ども像」というビジョンの共有と、小中お互いの教員が信頼を高めるための交流、そしてコーディネーターの活躍です。小中連携を試みた3年計画の実践が記録されています。

【感想】本書は2008年刊行で、一つ前の学習指導要領に準拠している。英語も大幅に変わっていて、現在は3・4年生が外国語活動で、5・6年生では教科となっている。内容そのものは古くなっているので、われわれとしては知識をアップデートしておく必要がある。
とはいえ、「小中連携」という観点から見れば、特に本書が古くなっているというわけではない。貴重な実践記録と言える。

が、さらに長い目で見れば、現在の「小中連携」が将来の学制改革への露払い的な役割を背負わされているだろうことは想像がつく。今後おそらく、小学校は4年制に向けて変化をしていくだろうと思われる。
まあ過渡期とはいえ、目の前の子どもの成長は待ってくれないから、全力を尽くすしかないのではあるが。

木塚雅貴編著『小・中連携を「英語」ではじめよう!―「小学校英語」必修化へ向けて―』日本標準ブックレット、2008年