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【要約と感想】大村はま『教室に魅力を』

【要約】教室にいる子ども全員が実力を発揮して伸び、成長を実感できるのが、魅力ある教室です。現在の学校では、遅れた子どものケアばかりに集中し、優秀な子どもがほったらかしにされているのが問題です。
子どもの自主性に任せるだけでは、子どもは伸びません。教師が適切に背中を押していく必要があります。それをしないのは、教師の怠慢です。
魅力的な教室を作るためには、子ども一人一人を知り、教師が楽をしないことが重要です。

【感想】圧倒的な実践者である。生半可な覚悟では、この人に対して何も言うことができない。ものすごい迫力だ。

技術的には、もちろん「単元学習」から学ぶべきものが極めて多い。現代のいわゆる総合学習の先駆けのような実践である。
しかし単に子どもの興味関心に寄りかかって教師が何もしないのではなく、適切な指導が入るところが特徴だ。一人一人の子どもの個性を理解し、適切な教材を用意し、授業中にはさりげなく背中を押し、子どもの学力実態を把握するための適切な評価を行なう。抽象的にまとめるとこうなるが、具体的な実践を目の前の子どもに合わせて積み重ねてきた過程が極めて尊い。

「同じ教材、同じ方法、これがいちばんまずいと思います。スタートラインが一緒で、同じ教材で、同じ方法でしたら、同時にゴールにはいらないのが、あたりまえです。」30頁

いま、イエナプランのような個別学習が流行の兆しを見せている。まあ外国の魅力的な実践を参照することは確かに大切ではあるのだが、それと同時に、日本には大村はまがいたことを知ることも大事なはずだ。

大村はま『教室に魅力を』国土社、2005年<1988年