2025年の秋も、私は池袋西口の東武百貨店に日参します。というのも、東京家政大学の栄養学部の学生と東武百貨店レストラン街Spiceの各店舗がコラボして新メニューを開発する「チャレンジ・ザ・グルメ2025」が開催されているからです。(開催期間:2025.10.23~12.3)
今年のテーマは――ずばりブロッコリー。2026年度に「特に重要な野菜」として国の指定野菜に追加される予定の、今もっとも旬な野菜とのことです。不勉強にも知らなかった!
ビタミンCや葉酸、カリウム、鉄分などを豊富に含み、免疫力アップや抗酸化作用、さらには幸福ホルモン・セロトニンの材料にもなるという、まさに「食べる元気のかたまり」。不勉強にも知らなかった!
昨年のテーマは代替肉でしたが、今年は緑のモサモサ。栄養満点で、しかも美味しく、まさにサステナブルの極み。というわけで、43店舗44メニューのブロッコリー料理を食べ歩いております。以下、自腹(研究費からは出ません)で実食したメニューをいくつかご紹介します。
目次
【京の鳥どころ 八起庵】彩り豊かに和洋ミックスの洋風親子丼!
ブロッコリーとトマトを使った“和洋折衷”の親子丼。公式紹介文によると、和風出汁にコンソメを合わせ、トマトの酸味が強くなりすぎないよう分量を何度も調整したとのこと。まさに研究に研究を重ねた一品のようだ。
実際に食べてみると――これが、まじ旨い。ふわふわの卵の中に、シャキシャキのブロッコリーが絶妙に絡み合う。トマトの赤、卵の黄、ブロッコリーの緑が彩りも鮮やかで、目にもおいしい。和風だしの優しい旨みに、トマトの爽やかな酸味がほんのりアクセント。「親子丼ってまだ進化できるのか…?」と驚く新感覚の一皿だったぞ。
【海鮮和食 海鮮魚力】ぷりぷりエビブロもち
小さくカットした海老と、すり身にした海老。さらに小房のブロッコリーとみじん切りのブロッコリー――4種類の素材を組み合わせた、こだわりの「エビブロもち」。ぷりぷりとした海老の食感に、ブロッコリーの甘味とほのかな苦みがアクセントとなり、噛むほどに旨みが増す。半分にカットして提供されるため、断面の鮮やかな緑が目にも楽しい一品だとのこと。
今回は刺身定食と一緒に注文したら前菜の感じで提供された。アツアツの状態で出てきて、口に入れた瞬間に海老の弾力と旨味が広がる。ジューシーなうえ、ブロッコリーの香りがふんわりと立ちのぼり、全体のバランスも抜群。色合いなど見た目のインパクトもユニークな完成度。ブロッコリーが海鮮の世界でも違和感なく溶け込む、印象的な一皿だったぞ。
【ベトナム料理 ロータスパレス】海老と5種の野菜のバインセオ
ブロッコリーのペーストを練りこんだオリジナルの生地で焼いた、ベトナム風お好み焼き「バインセオ」。具には海老と5種類の野菜がたっぷり入っており、この一皿で成人1日分の野菜摂取目標量350gのうち、なんと約300gをカバーできるという。葉物で巻いてもよし、甘酸っぱいタレにつけてもよし、食べ方いろいろの一品とのことだ。
正直、この企画がなければ一生口にすることはなかったかもしれないバインセオ。店員さんに「食べ方わかりますか?」と聞かれ、素直に「わかりません」と答えたら、「巻いて食べるんです」と教わった。……が、うまく巻けずに結局バラして食べた。精進が必要だ。味は文句なし。薄い緑と濃い緑で統一された見た目は、まるでブロッコリーの正装。香ばしい生地とシャキッとした野菜、ぷりぷりの海老が調和した、オリジナリティあふれる一皿だった。
【季節の天ぷら 銀座ハゲ天】ブロッコリーソースで食べるサクサクかき揚げサラダ
かき揚げを「ざくざくと崩しながら食べる」という新発想のサラダ。ブロッコリーに含まれるβ-カロテンは体内でビタミンAに変わり、油と一緒に摂ると吸収率が高まる――そんな栄養学的な裏づけのもと、かぼちゃとチーズを組み合わせたそう。かぼちゃの甘味とブロッコリーのほのかな苦味のバランスが絶妙で、味わいだけでなく栄養面でも抜群の一皿のようだ。
……が、私はやらかした。「ざくざく崩して食べる」と紹介されていたのに、予習なしで行ったから天つゆにつけてバリバリと完食してしまった。でも、うまいものはうまい。衣の香ばしさとチーズのとろりとしたコクが合わさり、サラダというより「ご褒美天ぷら」のような満足感。普段の食卓ではなかなか出会えない、特別感のあるメニューだったぞ。期間中に本来の「ざくざく崩しながら食べる」にチャレンジしたい。
【とんかつ 伊達かつ】緑の恵みかつ御膳
サクッとかじると現れるのは、まさかの「肉とブロッコリーの交互サンド」。お肉のジューシーさとブロッコリーの爽やかな歯ざわりがリズムよく続き、仕上げには、ブロッコリーをたっぷり使った特製ソース――中も外もブロッコリーづくしの、まさにブロッコリー二刀流だ。
食べてみると、これは確かに新感覚。他に似たような料理を知らない。たぶん人生で初めて味わった料理だ。サクサクの衣の中に野菜の食感が潜んでいて、口の中でジューシーとシャキシャキが交互に押し寄せる。そして追い打ちのブロッコリーソース――これがまたうまい。「とんかつ×ブロッコリー」って聞くと冗談みたいだけど、食べてみるとまっとうに成立している。ブロッコリーの可能性、思っていたよりずっと広いようだぞ。
【牛たんと和牛焼き 青葉】ブロッコリー餡の白玉団子~バニラアイス添え~
メインの牛タンと山形芋煮のセットを美味しくいただいたあと、いざチャレンジメニューへ。
牛タンを食べて仙台にいるつもりになると、はっきり言って見た目は完全に「ずんだ」なのだが、食べてみると違う――ごまのコクとブロッコリーの自然な風味がふわっと広がる。ずんだとは異なる、これはれっきとした新ジャンルのブロッコリースイーツだ。白玉とのコラボが効いたしっとり上品な甘さで、食後の余韻がすこぶる心地よいぞ。
【抹茶ダイニングカフェ 京都 茶寮翠泉】秋香る翠のひとさら お飲み物セット
二種のブロッコリースイーツを一皿にまとめた、まさに「翠」名前の通りの逸品。ひとつはブロッコリーピューレを練りこんだ生地に、まろやかな栗入りクリームを巻いたロールケーキ。もうひとつは、細かく刻んだブロッコリーが忍ばされた抹茶のテリーヌとのこと。どちらも秋の味覚と調和し、見た目にも味にも静かな驚きをもたらす。ブロッコリーがスイーツに入っていると聞かなければ、まず気づかないほど自然な仕上がりだ。
私はお酒を飲まない分、甘いものとコーヒーには目がない。とはいえ、おっさん一人でスイーツを注文するのは、正直ちょっとした勇気がいるが、今回は堂々と胸を張って入店だ(特に意味はない)。結果――これは普通にうまい。栗のやさしい甘さと抹茶のほろ苦さ、そこにブロッコリーのささやかな青みが加わって、ああ、秋だねえ、という感じになる。ブロッコリー、ついに和菓子界にも進出。恐るべしだ。
【ベーカリーレストラン サンマルク】ブロッコリーミートパイ
サクッとしたクロワッサン生地に、細かく刻んだブロッコリーとミートソースを包み込んだ小ぶりのパイ。ハーブの爽やかな香りと仕上げのゴーダチーズが全体をまとめ、一口ごとにじんわりと旨味が広がる。軽食にもおやつにもぴったりなベーカリーメニューとのこと。
この店は、メインを頼むとパンが食べ放題で、そのうちの一品。定番のバターロールから、よもぎやコーヒーを練り込んだ変わり種まで並ぶ中、今年はそこにブロッコリーが仲間入り。見た目は小ぶりながら、サクサクとした食感と中のとろりとしたミートソースが絶妙。焼きたてでもってきてくれて、すこぶる香ばしい。グラタンと一緒にいただいたが、ヨモギやコーヒーよりもブロッコリーのほうが不思議と合っている気がしたぞ(※あくまで個人の感想です)。







