【要約と感想】小山静子編『男女別学の時代―戦前期中等教育のジェンダー比較』

【要約】1899年の高等女学校令以降に確立した戦前中等教育の男女別学体制の内実を多面的に明らかにしますが、特に一般的という表現で隠蔽されてきた男性の特殊性に留意しながら比較を試みたところ、世紀転換期から1930年代にかけて、標準と見なされていた男子中等教育が、高等女学校や実業学校からの影響を受けて変化していく様子が見られました。具体的には教科目の違い、生理衛生教科書、音楽の扱い、投書文化の男女差、スポーツの表象などを通じて、従来から明らかにされてきた女子中等教育のジェンダー格差だけでなく、一般的と見なされていた男子中等教育にも男性性を付与しようとするジェンダー圧力が確認されました。

【感想】本書のテーマとなっているジェンダー関連の歴史的知見を深められただけでなく、人種論の諸相とかポピュラー音楽差別の実態とか野球表現作法の原点など、いろいろ勉強になった。確かに教育にとってジェンダーという境界線は極めて大きな問題だけれども、世の中には他にも様々な境界線(進学と就職・階層・人種・学校文化と民間文芸)があって、簡単には割り切れないことを改めて確認した。
 個人的な研究に関わっていちばん知りたかった裁縫や家庭科関連についてはほとんど触れられていなかったけれども、書いてなかったことをちゃんと確認しておくのも研究の一環なのだった。

小山静子編『男女別学の時代―戦前期中等教育のジェンダー比較』柏書房、2015年