【要約と感想】鶴見俊輔『教育再定義への試み』

【要約】教育とは、「死」や「老い」も含めて「生き方」を伝える試みで、正しいことからではなく失敗や逸脱から糸口が見つかるようなものです。大人から子どもに一方的に伝えるものではなくて、お互いに乗り入れるようなものです。
 あるいは、教育とは無抵抗に植え付けられた「痛み」から始まり、逃走や抵抗から自己教育に向かうようなものです。老いや耄碌も含みこんで、言葉にならないようなまなざしや仕草として、死ぬ準備のための自己教育を行いたいのです。

【感想】内容よりも先に、その著述形式の斬新さに驚いた。注で話を続けるのかい!
 内容については、とりとめもまとまりもない、としか言いようがない。だからこそ、多様な読み込みが可能な隙も多い。おそらく著者が言いたいだろうこととは無関係に、読者自身が分かりたいと望むことを勝手に読み取るような文章になっている。そしてそういうものでいいと著者本人も言っている。なら、そう読むしかない。何かを学ぶために読むものではなく、まなざしや仕草を自分らしくするために読む本なのだろう。

鶴見俊輔『教育再定義への試み』岩波現代文庫、2010年<1999年