【要約と感想】平井聡一郎編『GIGAスクール構想で進化する学校、取り残される学校』

【要約】一人一台端末が実現しましたが、従来のICTのイメージを引きずっていると取り残されます。単にICTを授業内で活用するだけでなく、学校活動全体をDX化して組織を根本から変革できる学校がどんどん進化していきます。端末を触って分かった気になるのではなく、少なくともクラウドについては理解しておいた方がいいでしょう。
 大事なのは、まずやってみることです。教員が完璧でなくても、子どもの方はどんどん先に進めます。むしろそうやって子どもが自主的に学びを進められるのが、ICT本来の強みです。管理職や教育委員会は、過剰な規制強化などで改革の芽を潰してはいけません。ICTをバリバリ使いこなすカッコいい教員を目指しましょう。

【感想】日本で何かを売りつけようとするときには、「みんなもう持っていますよ」と働きかけるのが一番効果が高いわけだが、この本はタイトルからしてそういう日本人の弱みに上手につけ込んできている感じがすごい。とはいえ実際、できる学校とできない学校、やれる自治体とやれない自治体で、どんどん格差が拡大している。不甲斐ない自治体の有様は公教育に対する不信感を広げて、私立受験の誘因にもなる始末だ。
 本書は、幅広い領域から著者を集め、多面的・多角的に教育DXとGIGAスクール構想について取り上げており、さしあたってこの一冊で全体像を概観できるようになっている。ICTを実際の日々の授業に活かしたい教員は別の即戦力系実践本を買った方がいいが、まず話の前提とか大雑把な全体像を把握しておきたい管理職や教育委員会の中の人には丁度いいのではないだろうか。というか、これくらいは知っておかないと、本当に取り残されてしまうだろう。

■平井聡一郎編『GIGAスクール構想で進化する学校、取り残される学校』教育開発研究所、2021年