【要約と感想】吉川浩満・山本貴光『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。―古代ローマの大賢人の教え』

【要約】ストア派の哲学者エピクテトスの教えについて単純な根本原理を理解してトレーニングを重ねれば、現代社会における問題もすっきりと解決します。ポイントは「権外/権内」を切り分け、自分の力ではどうにもできないことについてはあれこれ考えずに素直に受け容れ、自分にできることをしっかりとやりきることです。

【感想】まあ、もりもりと問題解決をして、強く生きていこうというときには、とても役に立つ実践的な教えでしょう。私も日々の生活の中で活用していきたいと思います。
ただし人間とは弱いもので、合理的に問題解決に向かうよりは、単に共感してもらいたい時もあるものです。「なんで私が打ち首に?」と聴いた人は、合理的な答えが聞きたかったのではなく、「かわいそうだね」と共感してほしかったのだと思いますよ?
そんなわけで、「権外/権内」の切り分けだけでなく、「そもそも問題解決すべきものか/共感して終わりでいいものか」の切り分けもしていいように思います。そして「共感して終わりでいい」ものに対しては、ストア派的にやるとむしろ変なことになると思います。

吉川浩満・山本貴光『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。―古代ローマの大賢人の教え』筑摩書房、2020年