【要約と感想】内藤朝雄・荻上チキ『いじめの直し方』

【要約】子ども向けの、いじめ対策本です。
いじめが起こるのは劣悪な環境のせいです。そして学校は、劣悪な環境の最たるものです。少しでもいじめが減るよう、環境を直していきましょう。
仮にいじめられたら、外部の権威(たとえば警察)をどんどん利用しましょう。

【感想】理論的にいじめを考え抜いた研究者と、ネットや若者論に詳しい批評家が組んで作った本だけあるということか、なかなか迫力がある。いじめに苦しんでいる子どもが読んだら、勇気をもらえるのではないだろうか。

まあ、学校が「いじめが起きやすい環境」というのは、言わば当たり前の話ではある。というのは、そもそも意図的に集団にストレスをかけることによって個人を成長させようという狙いが込められた施設だからだ。そして学校制度を信奉する人々は、集団に対する負荷こそが教育的に重要なのだと言うわけだ。
しかしその前提自体、無個性な機械的集団労働を強いた産業社会に噛み合った信念に過ぎない可能性は考慮していい。産業社会が終わりつつあるいま、意図的に集団にストレスをかける学校のやり方に疑問が持たれている。いじめ問題は、学校及びそれを支える社会の変化と矛盾を炙り出す。

内藤朝雄・荻上チキ『いじめの直し方』朝日新聞出版、2010年