【要約と感想】清水義範『行儀よくしろ。』

【要約】学力低下とか、心配する必要はありません。そもそも学校にそんなに期待しても仕方ありません。そもそも「学力」と「知力」は違うものです。
子どもは、社会全体が育てるものです。学校や教師を批判する前に、ひとりひとりの大人がしっかりしましょう。普段からぴりっと行儀よくしてますか。大人が文化を大切にしないのに、子どもがよく育つわけがありません。

【感想】まあ、教育を学校や教師にまかせず、大人たちがよってたかって、社会全体で育てていこうよ、という。当たり前のことではあるが、この当たり前のことが高度経済成長では通じないということではある。
著者は文化退廃の原因を戦後のアメリカナイズに求めているようだが、本当だろうか。ちゃんと調べれば、決定的なポイントが高度経済成長にあることが見えるはずだ。

【言質】「学力」の用法に関して、いろいろサンプルを得ることができた。

「日本人の学力が低下しているという明確な根拠はほとんどない。」27頁
学力なんて、学習したことをよく修得してテストでいい店が取れる、というだけのことなんですけど。そのいい点が取れる子は、知力が高いんでしょうか。」33頁
「人間にあらまほしきは知力である。学力は知力の一部分ではあるが、知力とイコールなのではない。」35頁

まあ、世間一般の空気を上手に掬った表現であるように思う。「学力」なんて所詮そんなもんよ、という。

清水義範『行儀よくしろ。』ちくま新書、2003年